弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人中村慶七の上告理由第一点、第四点及び第五点について。
 論旨は、自作農創設特別措置法三条一項三号の規定に基づいて樹立された第一審
判決添付第二目録記載の農地の買収計画(以下、単に本件買収計画という。)の適
否に関する原審の判断に判断遺脱・審理不尽・理由不備・理由齟齬の違法がある、
という。
 自作農創設特別措置法三条一項三号の規定によつて買収される農地は、在村地主
の保有面積を超える面積の小作地であるから、右超過面積算定の基礎となるべき小
作地は、地主がその住所のある市町村の区域内において所有する小作地のみに限ら
れ、隣接市町村の区域内において所有する小作地はこれに含まれないといわなけれ
ばならない。しかるに、原判決は、上告人が昭和二二年初め頃所有していた小作地
合計五町八反六畝六歩からその後の買収に係る小作地合計三町八反三畝六歩を差し
引いた二町三畝歩が本件買収計画樹立当時上告人の所有していた小作地であると認
定し、これをもつて超過面積算定の基礎としたのであるが、右五町八反六畝六歩及
び三町八反三畝六歩のうちには、上告人がその住所のある旧向村の区域外において
所有する小作地が含まれていることは、その挙示の乙第一八号証の一、二及び添付
別表の各記載に徴し、疑いを容れないところである。したがって、原判決には、自
作農創設特別措置法三条一項三号の規定の解釈、適用を誤り、審理不尽の違法があ
るもの、といわなければならない。
 しかし、原審は、適正な超過面積の算定を誤つたとはいえ、本件買収計画が保有
面積を侵害する違法なものであるとの上告人の主張を肯認し、しかるうえで、右の
違法は本件買収計画を当然無効たらしめるほどの重大かつ明白な瑕疵とはいえない
と判断し、結局、上告人の本訴請求を棄却した第一審判決を支持したものであり、
原審のこの点についての判断は、その確定した事実関係の下では是認し得ないわけ
ではなく、また、その判断の過程にも所論の違法があることを見出し難い。
 されば、論旨は、判決の結果に影響を及ぼすことの明らかな法令違背の主張でな
いことに帰し、排斥を免かれない。
 同第二点について。
 論旨は、要するに、原判決には証拠によらないで農地の認定をした違法がある、
という。
 原判示は、簡略に失するきらいはあるが、そこに所論の違法があるものとは認め
られない。
 それ故、論旨は、理由がない。
 同第三点について。
 論旨は、第一審判決添付第一目録記載の農地の買収計画に保有面積侵害の違法は
ないとした原判決に自作農創設特別措置法三条五項六号の規定(但し、昭和二四年
法律第二一五号八条による改正前のもの。以下同じ。)の解釈、適用を誤つた違法
がある、という。
 しかし、自作農創設特別措置法三条五項六号の規定に基づく農地の買収について
は保有面積の制限がないこと、法文上明らかである。
 それ故、原判決(その引用に係る第一審判決)には所論の違法はなく、論旨は、
採用の限りでない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎

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