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平成28年9月28日判決言渡同日原本受領裁判所書記官
平成27年(行ケ)第10229号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成28年9月14日
判決
原告東洋ライス株式会社
同訴訟代理人弁理士岡健司
被告特許庁長官
同指定代理人森竜介
清水稔
山村浩
冨澤武志
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が不服2014-21259号事件について平成27年9月7日にした審
決を取り消す。
第2事案の概要
1特許庁における手続の経緯等
(1)原告は,平成21年8月25日,発明の名称を「色彩選別機及び色彩選別
機の運転制御方法」とする特許出願(特願2009-194357。以下「本願」
という。甲3)をしたが,平成26年7月24日付けで拒絶査定を受けた。
(2)原告は,平成26年10月21日,これに対する不服の審判を請求すると
ともに,同日付け手続補正書により,特許請求の範囲等の補正をした(以下「本件
補正」という。請求項数7。甲4,5)。
(3)特許庁は,これを不服2014-21259号事件として審理し,平成2
7年9月7日,本件補正を却下した上で,「本件審判の請求は成り立たない。」との
別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,
同月29日,原告に送達された。
⑷原告は,平成27年10月27日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提
起した。
2本件審決の理由の要旨
(1)本件補正前(平成25年9月2日付け手続補正書(甲17)による補正後
のもの。請求項数10)の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,次のとおりであ
る。以下,本件補正前の請求項1に記載された発明を「本願発明」という。なお,
「/」は,原文の改行部分を示す(以下同じ。)。
【請求項1】被選別物を送り出すフィーダと,/前記フィーダに前記被選別物を
供給する供給筒と,/前記フィーダより送り出された前記被選別物を流下させるシ
ュートと,/前記シュートの下端部に設けた判別センサと,/空気を噴射して不良
品を選別する空気噴射口と弁が設けられた空気噴射装置と,/前記判別センサの判
別結果に基づいて前記弁を開閉制御する弁制御手段とを備えた色彩選別機において,
/前記空気噴射装置の支持部材に設置された,前記空気噴射装置の動作異常を検査
する異常検査手段が設けられていることを特徴とする色彩選別機。
(2)本件補正後の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,次のとおりである
(下線部は本件補正による補正部分である。甲4)。以下,本件補正後の請求項1
に記載された発明を「本件補正発明」という。また,本件補正後の明細書(甲3,
4,17)を,図面を含めて「本件補正明細書」という。
【請求項1】被選別物を送り出すフィーダと,/前記フィーダに前記被選別物を
供給する供給筒と,/前記フィーダより送り出された前記被選別物を流下させる複
数の溝からなるシュートと,/前記シュートの下端部に設けられた,各素子が前記
シュートの各溝に対応するように割り当てられたカメラを用いた判別センサと,/
前記シュートの各溝に対応するように割り当てられた,空気を噴射して不良品を選
別する複数の空気噴射口および複数の弁が設けられた空気噴射装置と,/前記判別
センサの判別結果に基づいて対応する前記弁を開閉制御する弁制御手段とを備えた
色彩選別機において,/前記空気噴射装置は,/正面上部に前記空気噴射口を設け
た縦長の筐体と,前記筐体の背面に設けた電磁弁を備えるとともに,前記空気噴射
口の背面側の位置において支持部材で支持されることによって前記色彩選別機に固
定されたものであり,/さらに前記空気噴射装置の動作異常を検査する異常検査手
段を備え,/前記異常検査手段は,/前記支持部材に設置した振動センサと,/前
記カメラの前面を左から右または/および右から左に順次移動することによって前
記各素子を遮蔽する遮蔽材を備えており,/前記遮蔽材が前記各素子を遮蔽するこ
とにより,前記弁制御手段によって前記各弁を開閉制御させて前記空気噴射口から
圧縮空気を噴射させ,/前記空気噴射口から噴射される圧縮空気の振動を前記振動
センサによって電圧値または電流値に変換するとともに,前記電圧値または前記電
流値のピーク値(デジタル信号)を取得し,/前記ピーク値と予め記憶しておいた
しきい値とを比較することによって,/前記ピーク値が前記しきい値以下である場
合に前記空気噴射装置の動作異常が発生していることを検査するように構成されて
いることを特徴とする色彩選別機。
3本件審決の理由の要旨
(1)本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。要するに,①本
件補正は,「空気噴射装置」について,「縦長の筐体」との事項を追加するものであ
るところ,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面(以下
「本願当初明細書等」という。)の記載から導かれる技術的事項との関係において
新たな技術的事項を追加するものであり,本願当初明細書等に記載した事項の範囲
内においてするものではないから,特許法17条の2第3項の規定に違反し,②仮
に,本件補正が同規定に違反するものではないとしても,本件補正発明は,下記ア
の引用例1に記載された発明(以下「引用発明1」という。)及び下記イの引用例
2に記載された発明(以下「引用発明2」という。)並びに下記ウ,エの周知例1,
2に記載された周知技術等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもの
であり,同法29条2項の規定により,特許を受けることができないものであるか
ら,本件補正は,同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定
に違反するとして,本件補正を却下した上で,③本願発明は,引用発明1であり,
同法29条1項3号の規定により,又は,引用発明1に基づいて当業者が容易に発
明をすることができたものであり,同条2項の規定により,特許を受けることがで
きないものであるから,本願は拒絶すべきものである,というものである。
ア引用例1:特開平11-267596号公報(甲1)
イ引用例2:特開平5-146764号公報(甲2)
ウ周知例1:特開平11-51845号公報(乙3)
エ周知例2:特開2000-354831公報(乙4)
(2)本件審決が認定した引用発明1,本件補正発明と引用発明1との一致点及
び相違点は,以下のとおりである。
ア引用発明1
玄米や精米等の米粒群からなる粒状体群を検査対象物として予定移送経路に沿っ
て移送しながら,不良物の検出及び除去を行う粒状体検査装置であって,/貯溜タ
ンク7は下端側ほど先細筒状に形成され,タンク7からフィーダ9上に落下した米
粒群kのシュータ1への供給量は,フィーダ9の振動による米粒群kの搬送速度を
変化させて調節され,/シュータ1の下端部から流下する米粒群kが広幅状態で存
在する長尺状の検出位置Jが,米粒群kの流下経路中に設定され,/ラインセンサ
5A,5Bは,複数個の受光部5aとしての受光素子が直線状に並置されたモノク
ロタイプのCCDセンサ50と,検出位置Jでの米粒群kの像を上記CCDセンサ
の各受光素子上に結像させる光学系51とから構成され,/上記検出位置Jから流
下方向下流側に,上記検出位置Jでの両ラインセンサ5A,5Bの受光情報に基づ
いて検出された着色粒kや異物等の不良物と正常物(正常な米粒k)とを異なる経
路に分離させるために,不良物に向けてエアを噴出する複数のエア噴出部としての
噴出ノズル6aが前記予定移送経路の幅方向に沿って並置され,/エアマニホルド
16から複数の噴出ノズル6aそれぞれへのエアの供給を各別に断続する電磁弁駆
動回路11Aにより駆動される制御弁11が設けられ,その各制御弁11から,各
ノズル6aへの流路を形成する樹脂材料等からなる各配管17を介して,エアマニ
ホルド16から各噴出ノズル6aにエアが分岐供給され,/上部に複数の噴出ノズ
ル6aが形成された横長の噴出ケーシング6は,噴出ノズル6aとは反対側の面で
支持板部26に取り付けられ,制御弁11は,配管17を介して噴出ケーシング6
に接続され,/支持板部26に,噴出ケーシング6と振動センサーS2が横並び状
態で取り付けられ,噴出ケーシング6の振動が支持板部26に伝わり,その支持板
部26の振動を振動センサーS2で検出するのであり,/異常判別手段101は,
噴出ノズル6aが正常に噴出作動したときは,上記噴出ケーシング6が比較的大き
い振幅で振動するのに対して,ノズル6aが正常に噴出作動しない場合には,噴出
ケーシング6の振動の振幅が小さいので,所定の判定レベルを設けて不良の有無を
検出することができ,検査対象のノズル6aの制御弁11をオンして,それぞれに
対する振動センサーS2の出力を調べ,振動センサーS2の出力信号の振幅が判定
レベルを越えていれば,正常であると判別する,/粒状体検査装置。
イ本件補正発明と引用発明1との一致点
被選別物を送り出すフィーダと,/前記フィーダに前記被選別物を供給する供給
筒と,/前記フィーダより送り出された前記被選別物を流下させるシュートと,/
前記シュートの下端部に設けられた,カメラを用いた判別センサと,/空気を噴射
して不良品を選別する複数の空気噴射口および複数の弁が設けられた空気噴射装置
と,/前記判別センサの判別結果に基づいて対応する前記弁を開閉制御する弁制御
手段とを備えた色彩選別機において,
前記空気噴射装置は,
正面上部に前記空気噴射口を設けた筐体と,電磁弁を備えるとともに,前記空気
噴射口の背面側の位置において支持部材で支持されることによって前記色彩選別機
に固定されたものであり,/さらに前記空気噴射装置の動作異常を検査する異常検
査手段を備え,
前記異常検査手段は,
前記支持部材に設置した振動センサと,/前記弁制御手段によって前記各弁を開
閉制御させて前記空気噴射口から圧縮空気を噴射させ,/前記空気噴射口から噴射
される圧縮空気の振動を前記振動センサによって電圧または電流としきい値とを比
較することによって,/前記しきい値以下である場合に前記空気噴射装置の動作異
常が発生していることを検査するように構成されている
ことを特徴とする色彩選別機。
ウ本件補正発明と引用発明1との相違点
(ア)相違点1
シュートについて:本件補正発明において,シュートが,複数の溝からなり,各
素子,空気噴射口および複数の弁が前記シュートの各溝に対応するように割り当て
られているのに対し,引用発明1は,その点が不明な点で相違する。
(イ)相違点2
筐体,電磁弁について:本件補正発明は,空気噴射装置は,縦長の筐体と,前記
筐体の背面に設けた電磁弁を備えるのに対し,引用発明1は,噴出ケーシング6
(筐体に相当)は横長であり,電磁弁駆動回路11Aにより駆動される制御弁11
(電磁弁に相当)は,配管17を介して噴出ケーシング6に接続されており,噴出
ケーシング6の背面に設けられていない点で相違する。
(ウ)相違点3
弁制御について:弁制御手段によって前記各弁を開閉制御させて前記空気噴射口
から圧縮空気を噴射させる際に,本件補正発明は,「前記カメラの前面を左から右
または/および右から左に順次移動することによって前記各素子を遮蔽する遮蔽材
を備えており,前記遮蔽材が前記各素子を遮蔽することにより」行っているのに対
し,引用発明1は,「検査対象のノズル6aの制御弁11をオン」させているにと
どまり,どの様に制御弁11をオンさせるか不明である点で相違する。
(エ)相違点4
検査において比較する対象について:空気噴射装置の動作異常が発生しているこ
とを検査において,比較する対象が,本件補正発明は,「振動センサによって電圧
値または電流値に変換するとともに,前記電圧値または前記電流値のピーク値(デ
ジタル信号)」と「予め記憶しておいたしきい値」であるのに対し,引用発明1は,
「振動センサーS2の出力信号の振幅」と「所定の判定レベル」である点で相違す
る。
4取消事由
本件補正を却下した判断の誤り
(1)新規事項の追加に当たるとした判断の誤り(取消事由1)
(2)独立特許要件に違反するとした判断の誤り(取消事由2)
ア本件補正発明の認定の誤り
イ引用発明1の認定の誤り
ウ本件補正発明と引用発明1との相違点の看過
エ看過した相違点に係る容易想到性判断の誤り
オ顕著な効果の看過
第3当事者の主張
1取消事由1(新規事項の追加に当たるとした判断の誤り)について
〔原告の主張〕
(1)新規事項の追加
ア本件審決は,「空気噴射装置」に,「縦長の筐体」との事項を追加することが
新規事項の追加に当たるとした。
イ本願発明において,空気噴射装置が縦長であるか,横長であるかは重要なも
のではない。本願発明は,空気噴射装置を縦方向に見た場合に,空気噴射装置に支
持部材によって支持されている部分と支持部材によって支持されていない部分とが
存在し,支持部材によって支持されている部分は空気噴射口の背面近傍に位置する
ことを特徴とするものである。
そして,本件補正は,「空気噴射装置」について,支持部材によって支持されて
いる空気噴射装置の上方部分と,支持部材によって支持されていない空気噴射装置
の下方部分とに着目した場合,当該空気噴射装置は下方部分の方(支持部材によっ
て支持されていない方)が,上方部分の方(支持部材によって支持されている方)
よりも縦方向に長いことから,「正面上部に前記空気噴射口を設けた縦長の筐体」
を備えるとの事項を追加するに至ったものである。
一方,本願当初明細書等には,空気噴射装置を縦方向に見た場合に,空気噴射装
置は支持部材によって支持されている部分と支持部材によって支持されていない部
分とが存在することが,明らかに記載又は開示されている(【図2】,【図3】等)。
ウまた,原告は,本件補正において,「横長」の筐体とすべきところを「縦長」
の筐体と誤記載をしてしまっただけであり,「縦長の筐体」との事項を追加したも
のではない。
エしたがって,「空気噴射装置」に,「縦長の筐体」との事項を追加することは,
新規事項の追加には当たらない。
(2)小括
よって,新規事項の追加に当たるとして本件補正を却下した本件審決は,誤りで
ある。
〔被告の主張〕
(1)新規事項の追加
ア本件補正により追加された「縦長の筐体」における「縦長の」は,「筐体」
を修飾する用語であるから,「縦長」であるものは筐体の形状であると解するのが
自然である。また,本件補正後の請求項1の「正面上部に前記空気噴射口を設けた
縦長の筐体」との記載からすれば,空気噴射口が「正面上部」となるようにみたと
きに「縦長」であることを要すると解するのが自然である。
したがって,本件補正は,「空気噴射装置」について,空気噴射口が正面上部と
なるようにみたときに,横よりも縦に長くなっている形状の「筐体」を備えるとす
るものである。
一方,本願当初明細書等には,「空気噴射装置」が,縦長の形状の「筐体」を備
える旨の記載はない。
イしたがって,「空気噴射装置」に,「縦長の筐体」を備えるとの事項を追加す
ることは,新規事項の追加に当たる。
(2)小括
よって,新規事項の追加に当たるとして本件補正を却下した本件審決に誤りはな
い。
2取消事由2(独立特許要件に違反するとした判断の誤り)について
〔原告の主張〕
(1)本件補正発明の認定の誤り
ア本件審決は,本件補正発明について,前記第2の2(2)のとおり認定した。
イしかし,本件補正発明は,空気噴射装置を縦方向に見た場合に,空気噴射装
置に支持部材によって支持されている部分と支持部材によって支持されていない部
分とが存在し,支持部材によって支持されている部分は空気噴射口の背面近傍に位
置すること,換言すれば,空気噴射装置が支持部材にぶら下がるような形態で支持
されることを特徴とするものである。そして,本願当初明細書等の【0059】,
【図2】,【図3】等には,空気噴射装置11の正面に圧縮空気噴射口20が設けら
れ,特にその背面側の位置で支持部材23に固定されていることが開示され,また,
支持部材23に振動センサ24が設置されていることが開示されている。
ウしたがって,本件補正発明は,「…前記空気噴射装置は,正面上部に前記空
気噴射口を設けた『横』長の筐体と,前記筐体の背面に設けた電磁弁を備えるとと
もに,『前記筐体は支持部材によって支持されている部分と支持部材によって支持
されていない部分とが存在し,前記支持部材によって支持されている部分は,前記
筐体における』前記空気噴射口の『背面側近傍の位置において』支持されることに
よって前記色彩選別機に固定されたものであり,さらに前記空気噴射装置の動作異
常を検査する異常検査手段を備え,前記異常検査手段は,前記支持部材に設置した
振動センサと,…を備えており…」と認定されるべきである。
(2)引用発明1の認定の誤り
ア本件審決は,引用発明1について,前記第2の3(2)アのとおり認定し,特
に「支持板部26に,噴出ケーシング6と振動センサーS2が横並び状態で取り付
けられ,噴出ケーシング6の振動が支持板部26に伝わり,その支持板部26の振
動を振動センサーS2で検出する」ものと認定した。
イしかし,引用発明1の認定においては,噴出ケーシング6の支持板部26に
対する設置形態を詳細に検討する必要があるところ,引用例1の【図16】は,噴
出ケーシング6の背面全面が支持板部26に取り付けられる構造を開示している。
ウしたがって,引用発明1は,噴出ケーシング6(空気噴射装置に相当)の背
面全面が支持板部26(支持部材に相当)によって支持されていると認定すべきで
ある。
(3)本件補正発明と引用発明1との相違点の看過
ア本件審決は,本件補正発明と引用発明1との相違点について,前記第2の3
(2)ウ(ア)ないし(エ)のとおり認定した。
イしかし,前記(1)ウ,(2)ウによれば,本件補正発明と引用発明1は,空気噴
射装置を縦方向に見た場合に,「空気噴射装置には支持部材によって支持されてい
る部分と支持部材によって支持されていない部分とが存在し,さらに支持部材によ
って支持されている部分は空気噴射口の背面近傍に位置する部分であるという構成」
と「係る構成の支持部材に振動センサを設置するという構成」において相違すると
いうべきである。
ウ被告は,本件補正発明と引用発明1の上記相違を,実質的に相違点2の判断
の問題として扱っていると主張するが,相違点2の文言からそのように解釈するこ
とはできるものではない。また,本件補正発明は,空気噴射装置が支持部材にぶら
下がるような形態で支持されることを特徴とするものであって,かかる観点から見
た上記相違と,相違点2にいう「筐体」と「電磁弁」との位置関係の相違とは関係
がない。
(4)看過した相違点に係る容易想到性判断の誤り
ア本件審決は,引用発明1に,周知例1及び周知例2に記載されている周知の
エジェクター手段(空気噴射装置)を適用することは,当業者が適宜なし得ること
であると判断した。
しかし,周知例1には穀物中の異物の検出性能の向上と,光量及びバックグラウ
ンドの調整を容易迅速に行うことを解決する発明が記載され(【0006】),周知
例2には透明体の清掃を確実かつ容易に行うことを解決する発明が記載されており
(【0005】),これらは,本件補正発明の技術的課題とは全く異なる技術的課題
を解決する発明に関するものである。また,周知例1及び周知例2には,特に支持
部材に振動センサが設置されることは何ら記載されていない。
したがって,引用発明1に,周知例1及び周知例2に記載された事項を組み合わ
せる動機付けはない。
イまた,引用発明1において,本件審決が看過した前記(3)記載の相違点に係
る構成を備えるようにするには,引用発明2を適用することなしではなし得ない。
しかし,本件補正発明においては,特定の形態で空気噴射装置を支持した支持部
材に振動センサを設置する構成であることが必要であるところ,引用発明2では,
移動を繰り返す検査バー44にセンサ取付体51を介して空気噴射検知器52を取
り付けているから,空気噴射装置に噴射異常が発生している場合に,どの噴射口に
異常が発生しているかはもとより,噴射異常が発生していることすら正確に検知す
ることができない。したがって,引用発明2のように振動センサが遮蔽材とともに
移動するような構造を,本件補正発明に適用することには阻害要因がある。
ウしたがって,引用発明1において,本件審決が看過した前記(3)記載の相違
点に係る構成を備えるようにすることは,当業者が容易に想到することができたも
のということはできない。
(5)顕著な効果
本件補正発明は,噴出ケーシング6の振動が支持板部26に伝わり,その振動が
振動センサーS2で検出できればよいという単純なものではなく,空気噴射装置を
特定の形態で支持し,さらに特定の形態で支持した支持部材に振動センサを設置す
ることが重要であって,そのような構成とすることによって,引用発明1などの従
前の技術にはない下記の顕著な効果が発現する。
ア数多くの空気噴射口を有する空気噴射装置のうち,全く噴射していない状態
はもとより半開状態の場合についても噴射異常を起こしている空気噴射口を正確に
特定することができるという技術的効果(【0018】,【0045】)
イ選別運転中やロット切換えのような選別運転の合間においても検査を行うこ
とができるという技術的効果(【0070】,【0083】)
ウ色彩選別機以外の他の精米設備が稼働しているような様々な振動が発生して
いる精米プラント内においても,設置場所の振動環境に左右されることなく正確に
噴射異常を起こしている空気噴射口を特定することができるという技術的効果
(【0016】,【0018】)
(6)小括
よって,本件補正発明は,引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすること
ができたものということはできないから,独立特許要件に違反するとして本件補正
を却下した本件審決は,誤りである。
〔被告の主張〕
(1)本件補正発明の認定の誤り
ア本件審決は,本件補正発明を前記第2の2(2)のとおり認定しているところ,
これは,本件補正後の特許請求の範囲(請求項1)に係る発明のとおりのものであ
るから,本件審決がした本件補正発明の認定に誤りがないことは明らかである。
イ原告は,本件補正発明は前記〔原告の主張〕(1)ウのとおり認定されるべき
であると主張するが,要旨認定は特段の事情のない限りは特許請求の範囲の記載に
基づいてなされるべきであるから,失当である。
なお,本件審決は,原告の主張と実質的に同一の態様に基づいて進歩性欠如の判
断をしている。
(2)引用発明1の認定の誤り
ア本件審決の引用発明1の認定のうち,「支持板部26に,噴出ケーシング6
と振動センサーS2が横並び状態で取り付けられ,噴出ケーシング6の振動が支持
板部26に伝わり,その支持板部26の振動を振動センサーS2で検出する」との
認定は,引用例1の【0047】の記載のとおりである。
また,噴出ケーシング6の振動を振動センサーS2により間接的に検出するとい
う原理において,支持板部26の役割は,振動を伝達できれば足りるものである。
したがって,引用例1の【図16】に「噴出ケーシング6の背面全面が支持板部2
6に取り付けられる」という構造が開示されていたとしても,これは,上記原理が
機能するために必須な構造とはいえないから,当業者が,このような構造に係る発
明しか把握できないとはいえない。
したがって,本件審決がした引用発明1の認定に誤りはない。
イなお,引用発明1に,「噴出ケーシング6の背面全面が支持板部26に取り
付けられる」という構造を含めて認定したとしても,本件審決の進歩性欠如の判断
は同様に成り立つ。
(3)本件補正発明と引用発明1との相違点の看過
ア原告は,本件補正発明と引用発明1は,「空気噴射装置には支持部材によっ
て支持されている部分と支持部材によって支持されていない部分とが存在し,さら
に支持部材によって支持されている部分は空気噴射口の背面近傍に位置する部分で
あるという構成」において相違すると主張するが,かかる相違について,本件補正
発明の特許請求の範囲(請求項1)の文言から導かれる根拠が不明であるから,原
告の主張は失当である。
仮に,かかる相違が,本件補正発明の特許請求の範囲(請求項1)の「前記空気
噴射口の背面側の位置において支持部材で支持される」との文言を根拠に導かれる
としても,同文言は,「背面側の位置において『のみ』」と記載されているわけでは
ないから,本件補正発明は,支持部材が,空気噴射口の背面側の位置以外の場所を
も併せて支持する態様を排除していない。したがって,原告の主張する相違点を,
本件補正発明と引用発明1の一致点としても誤りではない。
イまた,本件審決は,①「正面上部に前記空気噴射口を設けた縦長の筐体」,
②「前記筐体の背面に設けた電磁弁」,③「前記空気装置は,」「前記空気噴射口の
背面側の位置において支持部材で支持される」,④「前記支持部材に設置した振動
センサ」の各特定事項を分解して把握した上で,②を相違点2として認定し,②か
ら④の相互関係は実質的に相違点2の判断の中で検討したものである。
一方,原告は,②から④の相互関係を前提に,これらを分解せずに把握した上で,
本件補正発明と引用発明1には,上記相違がある旨主張するものである。
そうすると,本件審決は,原告が主張する相違点を,実質的に相違点2の判断の
問題として取り扱っているといえるから,当該相違点を看過したものではない。
(4)看過した相違点に係る容易想到性判断の誤り
ア本件審決は,相違点2の判断において,引用発明1で②から④が同時に備え
られることの容易想到性を判断することで,原告が主張する相違点を,実質的に取
り扱っている。
イそして,以下のとおり,本件審決の相違点2の判断に誤りはない。
(ア)周知技術
本件審決は,周知例1及び周知例2を根拠として,ノズルを設けた筐体とその筐
体の背面に設けた電磁弁を備えるエジェクター手段(空気噴射装置)が,粒状体選
別装置のエジェクター手段(空気噴射装置)において周知技術であるとまでしか明
示していないものの,これは,②のみを相違点2として便宜上取り扱ったからであ
る。
そして,本件審決は,上記周知技術に関連して,粒状体選別機の技術分野におい
て,ノズルを備える筐体とその筐体の背面に設けた電磁弁を備える空気噴射装置で
あって,その筐体は,支持部材によって支持されている部分と支持されていない部
分とが存在し,さらに,支持部材によって支持されている部分は,ノズルの背面近
傍に位置する部分であるものが周知技術であることを当然の前提としている。
(イ)周知技術の適用
引用発明1と周知技術は,いずれも空気噴射装置に係る構造についてのものであ
る。また,引用発明1の構造は,支持板部26の正面側には噴出ケーシング6のみ
が存在し,制御弁11が存在しない構造となっているところ,周知技術も同様の構
造をしている。さらに,筐体と電磁弁との間に形成される配管が露出していない周
知技術の構造は,噴出ケーシング6と制御弁11との間に配管が露出している引用
発明1よりも,構造として簡素であって,取り扱いやすいことは明らかである。
したがって,引用発明1に周知技術を組み合わせる動機付けがある。
(ウ)阻害要因
原告が主張する阻害要因(前記〔原告の主張〕(4)イ)の趣旨は判然としないが,
引用発明2は,相違点3の判断のために引用されたものであるから,引用発明2の
適用による阻害要因は,原告が主張する相違点の判断や,これと実質的に同一であ
る相違点2の判断とは関係がない。また,振動センサの取付位置等を考慮しても,
阻害要因は生じない。
(エ)よって,当業者であれば,引用発明1に周知技術に係る構成を採用して,
相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは,適宜なし得たものである。
(5)顕著な効果
ア前記〔原告の主張〕(5)アの技術的効果については,原告の主張する相違点
に係る構成から,そのような効果が導かれるメカニズムが明らかではなく,また当
該構成とは無関係な効果でもあるから,本件補正明細書に記載された技術的効果と
いうことはできない。
また,当該技術的効果は,引用例1に実質的に記載されていること(【0012】,
【0040】,【0047】)に加え,引用発明1には,同効果を奏するための本質
的な構成,すなわち支持板部26に振動センサーS2が取り付け,所定の判定レベ
ルを設けて不良の有無を検出するという構成が備わっていることからすれば,引用
発明1でも奏される効果ということができ,格別なものとはいえない。
イ前記〔原告の主張〕(5)イの技術的効果については,原告の主張する相違点
に係る構成とは無関係な効果であるから,本件補正明細書に記載された技術的効果
ということはできない。
また,当該技術的効果を奏するための本質的な構成,すなわち遮蔽材によって各
素子を遮蔽することにより,弁制御を行うという構成は引用発明2に備わっている
から,同効果は引用発明2でも奏される効果ということができ,格別なものとはい
えない。
ウ前記〔原告の主張〕(5)ウの技術的効果を奏するための本質的な構成,すな
わち支持部材に振動センサが設置されているという構成は,引用発明1に備わって
いるから,同効果は引用発明1でも奏される効果ということができ,格別なものと
はいえない。
エ以上のとおり,原告が主張する技術的効果によっても,本件補正発明の進歩
性は認められるものではない。
(6)小括
よって,本件補正発明は,引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすること
ができたものであるから,独立特許要件に違反するとして本件補正を却下した本件
審決に誤りはない。
第4当裁判所の判断
1本件補正発明について
(1)本件補正発明の特許請求の範囲の記載は,前記第2の2(2)に記載のとおり
であるところ,本件補正明細書(甲3,4,17)には,おおむね,次のような記
載がある(図1ないし3については,別紙1の本件補正明細書図面目録を参照)。
ア技術分野
【0001】本発明は色彩選別機に係り,さらに詳しくは色彩選別機の異常検査
手段及びこの検査手段を用いた色彩選別機の運転制御方法に関するものである。
イ背景技術
【0002】従来から,米などの穀物類の中に含まれる異色粒などの不良品を選
別し,除去する色彩選別機は知られており,各種のものが開発されている。
この色彩選別機は供給筒から供給された粒状物などの被選別物をフィーダによっ
て流量を調整しながら,シュートに均等に流下させる構造となっており,シュート
の下部に設けられた照明装置から照射された光が被選別物を透過する際の透過率や
光量,または反射する際の反射率や光量などを,判別センサによって検査して不良
品であるか否か判別し,不良品である場合にはその下に設けられている空気噴射装
置から空気を噴射して,流下中の不良品などを除去するものである。
【0003】これらの色彩選別機は,判別,除去をするための設備類に異常があ
ると正確な選別ができなくなることから,これらの設備類が正常に稼働するかを定
期的に検査する必要がある。
【0005】…空気噴射装置が糠やごみなどによって空気の通過障害が生じ,最
終的に空気噴射装置から空気が噴射されない状態になれば正確な選別ができなくな
ることから,最終的には,色彩選別機の稼働中に空気噴射装置の噴射口の一つ一つ
から不良品が通過する際実際に空気が正常に噴射されているか否かを検査すること
が最も重要となる。
【0006】従前においては,選別運転の前や合間に色彩選別機を空運転し,人
手にて疑似異物を噴射口の一つ一つに対応するように判別センサに移動させながら
かざして,噴射口の一つ一つから実際に空気が正常に噴射されているか否かを検査
していた。
【0007】また近年では,特許文献1に記載の色彩選別機のように,空気系や
電気系の異常を検知する色彩選別機が開発されている。
特許文献1に係る色彩選別機は,具体的には,圧縮空気供給源と空気噴射装置の
圧縮空気供給口との間に気密タンクを設けて該タンク内の空気圧を検知することに
よって空気系の異常を検知し,電磁弁と電磁弁の制御装置とをつなぐ配線の間に電
流検査回路を設けて圧縮空気供給口に設けられた電磁弁に該弁を開閉するための信
号が送信されているかを検知することによって電気系の異常を検査するものである。
【0008】さらに,特許文献2には,スプレーポンプの噴射口から実際に空気
が正常に噴射されているか否かを,スプレーポンプを稼働させながら振動センサを
用いて検査する方法が開示されている。
ウ発明が解決しようとする課題
【0010】しかしながら,従前の色彩選別機を空運転し,人手にて疑似異物を
噴射口の一つ一つに対応するように判別センサに移動させながらかざす検査方法は,
検査に長時間を要するだけでなく,検査する者にとっても重労働の作業であり,さ
らに色彩選別機の稼働効率が低下してしまうという問題がある。すなわち,色彩選
別機に用いられる空気噴射装置は,粒状物が流下するシュートの溝の一つ一つに対
応するため,図3に示すように1ユニットだけでも噴射口が90箇所程度設けられ
ていることから,これら噴射口の一つ一つを検査しようとすると,検査に長時間を
要し,検査する者の負担が大きくなり,稼働効率が低下してしまうのである。
【0012】また,特許文献1に記載の色彩選別機は,噴射口の一つ一つを検査
できるものではないという問題もある。
【0013】さらに特許文献1に記載の色彩選別機は,これらの検査手段が正常
に稼働していると判断した場合においても,色彩選別機の異常状態を完全に検査で
きるものではないという問題もある。
すなわち,特許文献1に記載の色彩選別機は,圧縮空気供給口に所定の圧力の圧
縮空気が供給されていると検知し,電磁弁に正常な信号が送信されていると検知し
た場合においても,空気噴射装置の内部に詰りなどの空気の通過障害が生じている
場合には,噴射口から圧縮空気が噴射されず,正常な選別が行われないことになる
からである。
【0014】これに対し,特許文献2に記載の検査方法は,最も重要である噴射
口から実際に空気が正常に噴射されているか否かを検査することができるという長
所を有している。
【0015】しかし,特許文献2に記載の検査方法は,化粧品容器などに使用さ
れるスプレーポンプの商品検査に用いられる方法であり,特許文献2の段落001
0に記載の通り,良品と不良品との間に認められる若干の音の違いを利用するもの
である。
また,係る検査方法は,特許文献2の段落0011に記載されている通り,検査
環境における僅かなノイズが検査結果に大きく影響するものであり,段落0012
には,この僅かなノイズの影響を排除するために検査した信号の低周波成分に基づ
いて異常か否かの判別をすることが記載されている。
【0016】従って,色彩選別機のような他の設備類などが併存する使用環境下
においては,色彩選別機の稼働を停止しても,他の設備類から生じるノイズの影響
を排除することが困難であることから,色彩選別機の異常検査に本検査方法を適用
することはできないという問題がある。
【0018】本発明は,上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって,
空気噴射装置の噴射口の一つ一つについて,不良品が通過する際実際に空気が正常
に噴射されているかを確実に,かつ,迅速に検査するとともに,数多くある噴射口
のどの噴射口に異常が発生しているかについても確実に検知することができる色彩
選別機及び色彩選別機の運転制御方法の提供を目的とする。
エ課題を解決するための手段
【0019】上記目的を達成するために,本発明の請求項1に係る色彩選別機は,
被選別物を送り出すフィーダと,フィーダに被選別物を供給する供給筒と,フィー
ダより送り出された被選別物を流下させる複数の溝からなるシュートと,シュート
の下端部に設けられた,各素子がシュートの各溝に対応するように割り当てられた
カメラを用いた判別センサと,シュートの各溝に対応するように割り当てられた,
空気を噴射して不良品を選別する複数の空気噴射口および複数の弁が設けられた空
気噴射装置と,判別センサの判別結果に基づいて対応する弁を開閉制御する弁制御
手段とを備えた色彩選別機において,空気噴射装置は,正面上部に空気噴射口を設
けた縦長の筐体と,筐体の背面に設けた電磁弁を備えるとともに,空気噴射口の背
面側の位置において支持部材で支持されることによって色彩選別機に固定されたも
のであり,さらに空気噴射装置の動作異常を検査する異常検査手段を備え,異常検
査手段は,支持部材に設置した振動センサと,カメラの前面を左から右または/お
よび右から左に順次移動することによって各素子を遮蔽する遮蔽材を備えており,
遮蔽材が各素子を遮蔽することにより,弁制御手段によって各弁を開閉制御させて
空気噴射口から圧縮空気を噴射させ,空気噴射口から噴射される圧縮空気の振動を
振動センサによって電圧値または電流値に変換するとともに,電圧値又は電流値の
ピーク値(デジタル信号)を取得し,ピーク値と予め記憶しておいたしきい値とを
比較することによって,ピーク値がしきい値以下である場合に空気噴射装置の動作
異常が発生していることを検査するように構成されている。
【0030】(異常検査手段)本発明における空気噴射装置の動作異常を検査す
る異常検査手段としては,空気噴射装置の噴射口から実際に空気が正常に噴射され
ているか否かを検査できる手段であれば特に限定されず,例えば,振動,音,歪,
荷重,変位,磁気,位置,画像,温度センサなどの各種の検査手段を挙げることが
できる。
そして,これらの中でも構成が簡単であり,かつ,正確な判定ができるという点
から振動センサまたは音センサを用いることが好ましい。
【0032】本発明の異常検査手段の設置位置についても,異常検査手段が異常
か否かを判定するために必要な信号を検査することができる位置であれば特に限定
されないが,被選別物を送り出すためにフィーダに取り付けられている電磁石によ
る振動やシュートを被選別物が流下する際の振動などによって,検査能力が低下す
ることが懸念される場合には,空気噴射装置の近傍に設置することが好ましく,よ
り好ましくは空気噴射装置の支持部材に設置することが好ましい。
オ発明の効果
【0045】本発明の請求項1に係る色彩選別機によれば,空気噴射装置は,正
面上部に空気噴射口を設けた縦長の筐体と,筐体の背面に設けた電磁弁を備えると
ともに,空気噴射口の背面側の位置において支持部材で支持されることによって色
彩選別機に固定されたものであり,さらに空気噴射装置の動作異常を検査する異常
検査手段を備え,異常検査手段は,支持部材に設置した振動センサと,カメラの前
面を左から右または/および右から左に順次移動することによって各素子を遮蔽す
る遮蔽材を備えており,遮蔽材が各素子を遮断することにより,弁制御手段によっ
て各弁を開閉制御させて空気噴射口から圧縮空気を噴射させ,空気噴射口から噴射
される圧縮空気の振動を振動センサによって電圧値または電流値に変換するととも
に,電圧値または電流値のピーク値(デジタル信号)を取得し,ピーク値と予め記
憶しておいたしきい値とを比較することによって,ピーク値がしきい値以下である
場合に空気噴射装置の動作異常が発生していることを検査するように構成されてい
るので,色彩選別機の発生する異常のなかでも最も重要である噴射口から実際に空
気が正常に噴射されているか否かを検査することができる。
また,空気噴射装置が,正面上部に空気噴射口を設けた縦長の筐体と,筐体の背
面に設けられた電磁弁を備えるとともに,空気噴射口の背面側の位置において支持
部材で支持されており,さらにかかる支持部材に振動センサが設置されているので,
空気噴射装置の噴射口の一つ一つに対応するように判別センサが稼働しているか否
かを確実に,かつ,迅速に検査するとともに,数多くある噴射口のどの噴射口に異
常が発生しているかについても確実に検査することができる。加えて,選別運転の
前だけでなく,選別するロットが変更される際などの選別運転の合間においても,
噴射口から実際に空気が正常に噴射されているか否かを確実に検査することができ
る。
カ発明を実施するための形態
【0057】図1は本発明の色彩選別機の側面図,図2は本発明の色彩選別機の
選別機構部分を示す模式図である。
【0059】空気噴射装置11の正面には圧縮空気噴射口20が設けられており,
背面には圧縮空気を空気噴射装置11に供給するための圧縮空気供給管21が接続
されている。圧縮空気噴射口20の背面には空気噴射装置11内に供給された圧縮
空気を圧縮空気噴射口20から噴射させるための電磁弁22が設けられている。
空気噴射装置11は支持部材23によって固定されており,支持部材23には振
動センサ24が設置されている
【0060】ここで,図3は本発明の色彩選別機に用いられる空気噴射装置を正
面から見た状態を示す模式図である。図3に示すように,空気噴射装置11は1ユ
ニットに圧縮空気噴射口20が90個設けられており,空気噴射装置11の支持部
材23には振動センサ24が設置されている。
【0070】次に,本実施の形態における異常検査手段16の作動を説明する。
選別運転の前や合間に,運転制御手段18によって噴射口の一つ一つに対応する
ように清掃部材10を移動させて,色判別センサ5a,異物判別センサ5bの各素
子(図示せず)が捉える光量を人為的に変化させる。
【0071】この際,電磁弁制御手段19内の2値化コンバータ28は,色判別
センサ5a,異物判別センサ5bの各素子が検知した光量値と予め記憶しておいた
被選別物中の良品と不良品とを選別するための判別領域とを比較し,不良品35b
が流下したと判断する。
そして,処理手段30において色判別センサ5a及び異物判別センサ5bの判断
結果が集約され,いずれか一つの判別センサが不良品35bが流下したと判断した
場合には,処理手段30からドライブ基板31に光量が変化した素子に対応する圧
縮空気噴射口20の弁の開放信号が送信される。
その後,ドライブ基板31において電磁弁22を開閉するために必要な電圧に調
整され,電磁弁22に所定の電圧が送られ,圧縮空気噴射口20から圧縮空気が噴
射される。
【0072】ここで,圧縮空気が噴射される際,空気噴射装置11から発生する
振動は,振動センサ24によって計測され,増幅器25によって増幅され,A/D
変換器26によってデジタル信号に変換され,運転制御手段18において解析され
る。
【0073】この際,空気噴射装置11の内部や圧縮空気噴射口20において,
圧縮空気の通過障害が生じている場合には,空気噴射装置11から発生する振動に
変化が生じ,電圧値または電流値のピーク値が低くなる。
従って,運転制御手段18においては,取得された電圧値または電流値のピーク
値と,予め記憶しておいたしきい値とを比較し,ピーク値がしきい値以下であるこ
とを検知した場合に異常と判定する。
【0074】そして,運転制御手段18が異常と判定した場合には,運転制御手
段18がモニタ画面への表示やフィーダの振動を停止するなどの選別運転の制御を
行う。
(2)前記(1)によれば,本件補正発明の特徴は以下のとおりであると認められる。
ア本件補正発明は,判別センサによって不良品であるか否かを判別し,不良品
である場合には空気噴射装置から空気を噴射して不良品などを除去する色彩選別機
であって,設備類の異常検査手段を有するものに関する(【0001】~【000
3】)。
イ色彩選別機の異常検査においては,色彩選別機の稼働中に空気噴射装置の噴
射口の一つ一つから不良品が通過する際に実際に空気が正常に噴射されているか否
かを検査することが最も重要となるところ,人手にて検査する場合には,検査に長
時間を要するなどの問題があり,自動化するにしても,噴射口の一つ一つを検査で
きるものでないと意味はなく,他の設備類などが併存する使用環境下においては,
他の設備類から生じるノイズの影響を排除する必要があるという問題があった
(【0005】),【0010】,【0012】,【0016】)。
ウ本件補正発明は,上記イの問題に鑑み,空気噴射装置の噴射口の一つ一つに
ついて,不良品が通過する際,実際に空気が正常に噴射されているかを確実かつ迅
速に検査する色彩選別機を提供することを課題とし,かかる課題の解決手段として,
請求項1に記載の構成を採用したものである。(【0018】,【0019】)。
特に,空気噴射装置の支持部材に振動センサを設置し,振動センサによって取得
された電圧値又は電流値のピーク値を計測することにより,選別運転の制御を行う
ようにしたものである(【請求項1】,【0019】,【0059】,【0060】,【0
070】~【0074】)。
エ本件補正発明によれば,空気噴射装置の噴射口の一つ一つについて,実際に
空気が正常に噴射されているか否かを,簡単な構成で,確実に,かつ,迅速に検査
することができるという効果を奏する(【0018】,【0045】)。
2取消事由1(新規事項の追加に当たるとした判断の誤り)について
(1)明細書,特許請求の範囲又は図面について補正をするときは,願書に最初
に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしな
ければならないところ(特許法17条の2第3項),補正が,当業者によって,願
書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合すること
により導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないもの
であるときは,当該補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図
面に記載した事項の範囲内においてしたものということができる。
(2)「縦長の筐体」に関して本件補正により追加された技術的事項
ア本願当初明細書等の特許請求の範囲(請求項1)の構成
本願当初明細書等の特許請求の範囲(請求項1)には,「空気噴射装置」につい
て,「空気を噴射して不良品を選別する空気噴射口と弁が設けられた」ものであっ
て,「動作異常を検査する異常検査手段が設けられている」ものという構成が開示
されている。
イ本件補正発明の特許請求の範囲(請求項1)の構成
(ア)本件補正は,前記第2の2(2)のとおり,「空気噴射装置」の構成について,
「正面上部に前記空気噴射口を設けた縦長の筐体と,前記筐体の背面に設けた電磁
弁を備える」という構成を付加するものである。
そして,「縦長の」は「筐体」を修飾する用語であるから,「縦長」であるものは
筐体の形状であることは明らかである。また,「正面上部に前記空気噴射口を設け
た縦長の筐体」との記載からすれば,空気噴射口が「正面上部」となるようにみた
ときの筐体の形状を「縦長」と表現しているものと解するのが自然である。
したがって,本件補正は,「空気噴射装置」について,空気噴射口が正面上部と
なるようにみたときに,「筐体」の形状が縦長であるとの構成を付加するものであ
る。
(イ)また,本件補正は,前記第2の2(2)のとおり,「空気噴射装置」の構成に
ついて,「前記シュートの各溝に対応するように割り当てられた,…複数の空気噴
射口および複数の弁」を設けるという構成,「正面上部に前記空気噴射口を設けた
縦長の筐体と,前記筐体の背面に設けた電磁弁を備える」という構成,「前記空気
噴射口の背面側の位置において支持部材で支持されることによって前記色彩選別機
に固定され」るという構成を付加するものであって,さらに「前記支持部材」に振
動センサを設置するという構成を付加するものである。
ウ追加された技術的事項
前記ア,イによれば,本件補正は,「空気噴射装置」について,空気噴射口が正
面上部となるようにみたときに,筐体の形状が縦長であって,複数の空気噴射口及
び複数の電磁弁が筐体に設けられ,空気噴射口が縦長の筐体の正面の上部に設けら
れ,電磁弁が縦長の筐体の背面に設けられ,さらに,空気噴射装置が,空気噴射口
の背面側の位置において振動センサが設置された支持部材で支持されるという構成
に特定するものということができる。
そして,一般に「縦長」とは,「横よりも縦に長いさま」という意味であって
(乙5),縦方向に着目するものであるから,「空気噴射装置」について「縦長の筐
体」を備えるという構成を付加することは,空気噴射口が正面上部となるようにみ
たときの縦方向に着目した上で,①筐体の形状を横方向よりも縦方向に長いものと
した上で,②筐体の正面上部に空気噴射口を設け,筐体の背面上部よりも下方に電
磁弁を設けることを可能にし,空気噴射口の背面側の位置に,振動センサの設置さ
れた支持部材を設けるという技術的事項を追加するものということができる(以下,
この技術的事項を「本件技術的事項」という。)。
(3)本願当初明細書等の記載との比較
ア本件技術的事項が,当業者によって,本願当初明細書等の全ての記載を総合
することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入し
ないものと認められるかについて検討する。
イまず,本願当初明細書等には,「空気噴射装置11の正面には圧縮空気噴射
口20が設けられており」,「圧縮空気噴射口20の背面には…電磁弁22が設けら
れている」,「空気噴射装置11は支持部材23によって固定されており,支持部材
23には振動センサ24が設置されている」と説明され(【0059】),さらに,
本願当初明細書等の【図面1】ないし【図面3】(別紙1本件補正明細書図面目録
の【図面1】ないし【図面3】に同じ。)には,筐体の正面上部に空気噴射口があ
り,筐体の背面上部よりも下方に電磁弁があり,空気噴射口の背面側の位置に,振
動センサの設置された支持部材がある空気噴射装置が描かれている。そうすると,
本願当初明細書等には,本件技術的事項のうち,空気噴射口が正面上部となるよう
にみたときの縦方向に着目した上で,②筐体の正面上部に空気噴射口を設け,筐体
の背面上部よりも下方に電磁弁を設けることを可能にし,空気噴射口の背面側の位
置に,振動センサの設置された支持部材を設けるという技術的事項については説明
されているということができる。
しかし,本件技術的事項には,空気噴射口が正面上部となるようにみたときの縦
方向に着目した上で,①筐体の形状を横方向よりも縦方向に長いものとするという
技術的事項も含まれるところ,本願当初明細書等の【図面2】には,横方向よりも
縦方向に短い筐体の形状を備える空気噴射装置が描かれており,本願当初明細書等
には,その他に,空気噴射装置の形状について言及されていない。そうすると,本
願当初明細書等には,本件技術的事項のうち,空気噴射口が正面上部になるように
みたときに縦方向に着目した上で,①筐体の形状を横方向よりも縦方向に長いもの
とするという技術的事項については説明されていないというべきである。
ウよって,本件技術的事項は,当業者によって,本願当初明細書等の全ての記
載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内にあるということはできず,
「空気噴射装置」についてなされた本件補正は,新たな技術的事項を導入しないも
のということはできない。
(4)原告の主張
ア原告は,本件補正は,空気噴射装置のうち,支持部材によって支持されてい
る上方部分と支持されていない下方部分とに着目した場合,支持部材によって支持
されていない下方部分が,支持部材によって支持されている上方部分よりも縦方向
に長いことから,「空気噴射装置」について,「正面上部に前記空気噴射口を設けた
縦長の筐体」としたものである旨主張する。
しかし,前記(2)のとおり,「空気噴射装置」について「縦長の筐体」を備えると
いう構成を付加することは,空気噴射口が正面上部となるようにみたときの縦方向
に着目した上で,筐体の形状,並びに,空気噴射口,電磁弁及び振動センサの設置
された支持部材の位置関係を特定するという技術的事項を追加するものであって,
単に,空気噴射装置のうち,支持部材によって支持されている上方部分と支持され
ていない下方部分の縦方向の長さを比較するというものにとどまるものではない。
したがって,原告の前記主張は採用できない。
イ原告は,本件補正において,「横長」の筐体とすべきところを,「縦長」の筐
体と誤記載をしてしまっただけであると主張するが,本件補正により追加された技
術的事項の認定は,客観的になされるべきものであるから,原告の上記主張は失当
である。
(5)小括
よって,新規事項の追加に当たるとして本件補正を却下した本件審決に誤りはな
いから,取消事由1は理由がない。
3取消事由2(独立特許要件に違反するとした判断の誤り)について
(1)前記2のとおり,新規事項の追加を理由として,本件補正は却下されるべ
きものであるが,原告は,本件補正が独立特許要件にも違反するとした本件審決の
判断も争うから,念のため,以下検討する。
(2)本件補正発明の認定の誤り
ア発明の要旨は,特段の事情のない限り,特許請求の範囲の記載に基づいて認
定すべきところ,本件審決は,本件補正発明を,前記第2の2(2)【請求項1】に
記載されたとおり認定している。
イ原告は,本件補正発明を,前記第3の2〔原告の主張〕(1)ウのとおり認定
すべきであると主張する。
しかし,本件補正発明は,その特許請求の範囲(請求項1)の記載から,空気噴
射装置は「縦」長の筐体を備え,空気噴射装置が支持部材で支持される位置は,筐
体の正面上部に設けられた空気噴射口の「背面側」であるとの構成を採用したこと
は明らかであって,空気噴射装置が「横」長の筐体を備え,空気噴射装置が支持部
材で支持される位置は,正面上部に設けられた空気噴射口の「背面側近傍の位置」
であるとの構成を採用したものと解することはできない。
また,原告は,本件補正発明について,「筐体は支持部材によって支持されてい
る部分と支持部材によって支持されていない部分とが存在」し,筐体の「支持部材
によって支持されている部分は」空気噴射口の背面側の位置にある旨認定すべきで
あると主張する。しかし,かかる空気噴射装置の筐体と振動センサの設置された支
持部材の位置関係に関する構成は,本件審決が認定した本件補正発明のうち,「前
記空気噴射装置は,正面上部に前記空気噴射口を設けた縦長の筐体…を備えるとと
もに,前記空気噴射口の背面側の位置において支持部材で支持されることによって
前記色彩選別機に固定され」るという構成と同じであるから,本件補正発明を,原
告の前記主張のとおり認定すべきものでもない。
したがって,原告の前記主張は採用できない。
ウよって,本件審決の本件補正発明の認定に誤りはない。
(3)引用発明1の認定の誤り
ア引用例1の記載内容
引用例1には,おおむね,以下のとおり記載がある(甲1。図8,9,16につ
いては,別紙2の引用例1図面目録を参照。)
(ア)発明の属する技術分野
【0001】本発明は,予定移送経路に沿って移送される粒状体群のうちの不良
物を前記予定移送経路の幅方向での位置を特定して検出する不良物検出手段が設け
られ,前記不良物検出手段にて検出された不良物と正常物とを異なる経路に分離さ
せるためにエアを噴出する複数のエア噴出部を前記予定移送経路の幅方向に沿って
並べて備えるエア噴出手段が,前記不良物検出手段の検出情報に基づいて前記複数
のエア噴出部を選択的に噴出作動させるように構成された粒状体検査装置に関する。
(イ)従来の技術
【0002】…各ノズルからのエア噴出作動が正常か否かを検査するために,従
来では,エア噴出作動の良否を検出するための圧力センサー等の検出器をノズルの
噴出面の前面側において各ノズルの位置毎に移動させて,噴出駆動された各ノズル
からエアが噴出するか否かを上記検出器にて検出するようにしていた…。
(ウ)発明が解決しようとする課題
【0004】本発明は…,その目的は,上記従来技術の不具合を解消させるべく,
可動部を無くしながらも,極力少数の検出器によって各エア噴出部からのエア噴出
作動の良否を適切に検査することにある。
(エ)課題を解決するための手段
【0005】請求項1では,予定移送経路に沿って移送される粒状体群のうちで
その予定移送経路の幅方向での位置を特定して検出された不良物と正常物とを異な
る経路に分離させるために,エアを噴出する複数のエア噴出部を前記予定移送経路
の幅方向に沿って並べて備えるエア噴出手段が,上記不良物の位置情報に基づいて
前記複数のエア噴出部を選択的に噴出作動させるように構成され,前記複数のエア
噴出部の全てを噴出作動させない状態からそれら複数のエア噴出部のうちのいずれ
かを噴出作動させたときに前記エア噴出手段に現れる変化を検出するように,その
エア噴出手段に対応させて,かつ前記エア噴出部のいずれを噴出作動させたときに
も検出可能な部位に固定設置された噴出状況検出手段の検出情報に基づいて,複数
の各エア噴出部の異常が判別される。
【0006】従って,複数のエア噴出部を備えたエア噴出手段に対応させて固定
設置された噴出状況検出手段の検出情報に基づいて,各エア噴出部の異常が判別さ
れるので,…極力少数の検出器によって各エア噴出部からのエア噴出作動の良否を
適切に検査することができる。
(オ)発明の実施の形態
【0013】以下,本発明の粒状体検査装置の実施形態を,玄米や精米等の米粒
群からなる粒状体群を検査対象物として予定移送経路に沿って移送しながら,不良
物の検出及び除去を行う場合について図面に基づいて説明する。
【0022】上記検出位置Jから流下方向下流側に,…不良物に向けてエアを噴
出する複数のエア噴出部としての噴出ノズル6aが前記予定移送経路の幅方向に沿
って並置されている。
【0023】ここで,上記各噴出ノズル6aは,図8及び図9に示すように,各
噴出ノズル6aに対応させて各エアー供給口6bから供給されるエアを吹き出す偏
平状の吹き出し口を凹部状に形成した下側部分6Aと,各噴出ノズル6aを区分形
成するように,下側部分6Aに対して上側からシール接着される上側部分6Bとか
らなる共通の噴出ケーシング6にて形成されている。そして,各吹き出し口からの
エアによって予定移送経路の幅方向の全幅を吹き漏らし部分がなく,しかも,隣接
するノズル6aの各吹き出し範囲が重複しないように設定されている。
【0040】第2の形態では,図11に示すように,前記噴出ケーシング6に振
動センサーS2が設置されるとともに,…。つまり,噴出ノズル6aが正常に噴出
作動したときは,上記噴出ケーシング6が比較的大きい振幅で振動するのに対して,
ノズル6aが正常に噴出作動しない場合には,噴出ケーシング6の振動の振幅が小
さいので,例えば,所定の判定レベルを設けて不良の有無を検出することができる。

【0047】前述の噴出状況検出手段の第2形態では,振動センサーS2を噴出
ケーシング6に直接取り付けて(図11参照),その振動を検出するようにしたが,
これ以外に間接的に振動を検出する形態でもよい。例えば,図15及び図16に示
すように,前記収納部13Aの支持板部26に,噴出ケーシング6と振動センサー
S2が横並び状態で取り付けられ,噴出ケーシング6の振動が支持板部26に伝わ
り,その支持板部26の振動を振動センサーS2で検出するのである。…
イ本件審決の認定
本件審決は,引用発明1について,前記第2の3(2)アのとおり認定したもので
ある。
特に,本件審決は,空気噴射口(噴出ノズル6a),電磁弁(制御弁11)及び
振動センサの設置された支持部材(支持板部26)の位置関係について,「上部に
複数の噴出ノズル6aが形成された横長の噴出ケーシング6は,噴出ノズル6aと
は反対側の面で支持板部26に取り付けられ,制御弁11は,配管17を介して噴
出ケーシング6に接続され,支持板部26に,噴出ケーシング6と振動センサーS
2が横並び状態で取り付けられ,噴出ケーシング6の振動が支持板部26に伝わり,
その支持板部26の振動を振動センサーS2で検出するのであり,」と認定したも
のであるところ,引用例1の【図9】,【図16】,【0040】及び【0047】に
よれば,かかる本件審決の認定に誤りはない。
ウ原告の主張について
原告は,引用発明1は,引用例1の【図16】に開示されているとおり,噴射ケ
ーシング6の背面全面が支持板部26によって支持されていると認定すべきである
旨主張する。
しかし,上記イのとおり,本件審決は,引用発明1について,「横長の噴出ケー
シング6は,噴出ノズル6aとは反対側の面で支持板部26に取り付けられ」と,
噴出ケーシング6の「背面」が支持板部26に支持されていると認定している。
そして,本件審決は,「横長の噴出ケーシング6」,「支持板部26に,噴出ケー
シング6と振動センサーS2が横並び状態で取り付けられ」と認定するところ,横
長の噴出ケーシング6と振動センサーS2が,支持板部26に横並び状態にあると
いう構成は,支持板部26の縦方向(【図16】の上下方向)の範囲内に,噴出ケ
ーシング6と振動センサーS2の縦方向が収まっているという構成と同趣旨のもの
と解するのが自然である。したがって,本件審決は,噴出ケーシング6の「背面全
面」が支持板部26に支持されている旨認定したものというべきである。
このように,引用発明1において,噴射ケーシング6の背面全面が支持板部26
によって支持されるという構成が採用されていることは,本件審決において認定さ
れているから,原告の上記主張をもって,本件審決の引用発明1の認定が誤りであ
るということはできない。
エよって,本件審決の引用発明1の認定に誤りはない。
(4)本件補正発明と引用発明1との相違点の看過
ア原告は,本件補正発明と引用発明1は,空気噴射装置を縦方向に見た場合に,
「空気噴射装置には支持部材によって支持されている部分と支持部材によって支持
されていない部分とが存在し,さらに支持部材によって支持されている部分は空気
噴射口の背面近傍に位置する部分であるという構成」と「係る構成の支持部材に振
動センサを設置するという構成」において相違する旨主張するところ,原告のかか
る主張は,本件補正発明と引用発明1が,空気噴射装置の筐体と振動センサの設置
された支持部材の位置関係に関する構成において相違する旨の主張と解される。
したがって,原告は,空気噴射装置の筐体と振動センサの設置された支持部材の
位置関係について,本件補正発明は,空気噴射装置の筐体の正面上部に設けられた
空気噴射口の背面側,すなわち空気噴射装置の筐体の背面上部に振動センサの設置
された支持部材が存在するのに対し,引用発明1は,噴出ケーシング6の背面全面
に振動センサー6の設置された支持板部26が存在する点で相違し,本件審決は,
かかる相違点を看過したものであると主張する趣旨と解される。
イ本件審決の認定
(ア)前記第2の3(2)ウ(イ)のとおり,本件審決は,本件補正発明と引用発明
1の相違点2として,「筐体,電磁弁について:本件補正発明は,空気噴射装置は,
縦長の筐体と,前記筐体の背面に設けた電磁弁を備えるのに対し,引用発明1は,
噴出ケーシング6(筐体に相当)は横長であり,電磁弁駆動回路11Aにより駆動
される制御弁11(電磁弁に相当)は,配管17を介して噴出ケーシング6に接続
されており,噴出ケーシング6の背面に設けられていない点で相違する」と認定し
たものである。
(イ)本件審決は,相違点2について,本件補正発明は,「空気噴射装置は,縦
長の筐体と,前記筐体の背面に設けた電磁弁を備える」と認定するところ,これは,
「前記筐体の背面に設けた電磁弁」として,空気噴射装置の筐体と電磁弁の位置関
係に着目したものである。
そして,本件補正発明は,「空気噴射装置は,正面上部に前記空気噴射口を設け
た縦長の筐体と,前記筐体の背面に設けた電磁弁を備えるとともに,前記空気噴射
口の背面側の位置において支持部材で支持され」,かつ,振動センサは支持部材に
設置されるという構成のものであるから,空気噴射装置の筐体と電磁弁の位置関係
への着目は,空気噴射装置の筐体と振動センサの設置された支持部材の位置関係へ
の着目も含むものであり,また,空気噴射装置の筐体と電磁弁の位置関係は,空気
噴射装置の筐体と振動センサの設置された支持部材の位置関係に必然的に影響を及
ぼすものである。
そうすると,本件審決が,相違点2の認定に当たり,本件補正発明を「空気噴射
装置は,縦長の筐体と,前記筐体の背面に設けた電磁弁を備える」と認定したこと
は,空気噴射装置の筐体と振動センサの設置された支持部材の位置関係について,
本件補正発明は,空気噴射装置の筐体の背面上部に振動センサの設置された支持部
材が存在する旨認定したものと解することができる。
(ウ)一方,本件審決は,相違点2について,引用発明1は,「噴出ケーシング
6(筐体に相当)は横長であり,電磁弁駆動回路11Aにより駆動される制御弁1
1(電磁弁に相当)は,配管17を介して噴出ケーシング6に接続されており,噴
出ケーシング6の背面に設けられていない」と認定するところ,これも,「制御弁
11は,…噴出ケーシング6の背面に設けられていない」として,噴出ケーシング
6と制御弁11の位置関係に着目したものである。
そして,前記(3)イ,ウのとおり,引用発明1は,「横長の噴出ケーシング6は,
噴出ノズル6aとは反対側の面で支持板部26に取り付けられ,制御弁11は,配
管17を介して噴出ケーシング6に接続され,支持板部26に,噴出ケーシング6
と振動センサーS2が横並び状態で取り付けられ」るという構成のものであって,
かかる構成は「噴出ケーシング6の背面全面が支持板部26によって支持され」る
という構成を含むものであるから,噴出ケーシング6と制御弁11の位置関係への
着目は,噴出ケーシング6と振動センサーS2の設置された支持板部26の位置関
係への着目も含むものであり,また,噴出ケーシング6と制御弁11の位置関係は,
噴出ケーシング6と振動センサーS2の設置された支持板部26の位置関係に必然
的に影響を及ぼすものである。
そうすると,本件審決が,相違点2の認定に当たり,引用発明1を「噴出ケーシ
ング6(筐体に相当)は横長であり,電磁弁駆動回路11Aにより駆動される制御
弁11(電磁弁に相当)は,配管17を介して噴出ケーシング6に接続されており,
噴出ケーシング6の背面に設けられていない」と認定したことは,噴出ケーシング
6(空気噴射装置の筐体)と振動センサー6(振動センサ)の設置された支持板部
26(支持部材)の位置関係について,引用発明1は,噴出ケーシング6の背面全
面に振動センサー6の設置された支持板部26が存在する旨認定したものと解する
ことができる。
ウ原告主張の相違点と相違点2の異同
以上によれば,空気噴射装置の筐体,電磁弁及び振動センサの設置された支持部
材の位置関係に関する本件補正発明と引用発明1との相違について,原告は,空気
噴射装置の筐体と振動センサの設置された支持部材の位置関係から相違点がある旨
主張し,本件審決は,空気噴射装置の筐体と電磁弁の位置関係から相違点2がある
旨認定したものということができ,原告の主張する相違点は,本件審決が認定した
相違点2と実質的に同じものということができる。
エよって,本件審決に,本件補正発明と引用発明1との相違点の看過はない。
(5)看過した相違点に係る容易想到性判断の誤り
ア原告は,引用発明1において,本件審決が看過した相違点に係る本件補正発
明の構成を備えるようにすることは,当業者が容易に想到することができたものと
いうことはできないと主張するところ,前記(4)のとおり,原告が主張する相違点
は,相違点2と実質的に同じものである。
したがって,引用発明1において,相違点2に係る本件補正発明の構成を備える
ようにすること,すなわち,引用発明1の「噴出ケーシング6(筐体に相当)は横
長であり,電磁弁駆動回路11Aにより駆動される制御弁11(電磁弁に相当)は,
配管17を介して噴出ケーシング6に接続されており,噴出ケーシング6の背面に
設けられていない」という構成を,「空気噴射装置は,縦長の筐体と,前記筐体の
背面に設けられた電磁弁を備える」という構成にすることを,当業者が容易に想到
することができたものといえるかについて,以下検討する。
なお,相違点2において,本件補正発明の空気噴射装置は,縦長の筐体を備える
のに対し,引用発明1の噴出ケーシング6は,横長である点で相違すると認定され
ているところ,「縦長」,「横長」という用語は,空気噴射装置の筐体(噴出ケーシ
ング6)の背面に電磁弁(制御弁11)が設けられているか否かという,空気噴射
装置の筐体と電磁弁の位置関係を示す概念として使用されているから,この相違は,
筐体と電磁弁の位置関係の相違に関する容易想到性の判断に含まれるものである。
イ筐体と電磁弁の位置関係についての周知技術
(ア)周知例1:特開平11-51845号公報(乙3)
a周知例1(平成11年2月26日公開)には,おおむね,以下の記載がある。
【0001】本発明は,穀類,豆類等の粒状体に混入する異物を検出したり,粒
状体の品質を判定して,選別するための粒状体選別装置に関する。
【0013】…この装置は,…前記受光検出手段4により受光した光量により不
良であると判定された穀粒又は異物にエアを吹き付けることにより移動経路6から
外すためのエジェクター手段9と…を主要構成部材として構成している。…
【0014】…前記エジェクター手段9は,エアを吹き出すエア吹き出し口を備
えたノズル9Aと,このノズル9Aにエアコンプレッサからのエアを供給する状態
と供給しない状態とに切り換えるバルブ9Bとを備えている。これらノズル9Aと
バルブ9Bのぞれぞれは,シュート2の移送経路に対応させるべく,シュート2と
同数を紙面方向に併設している。
b周知例1には,別紙3各文献図面目録周知例1【図2】のとおり,図面が添
付されているところ,同図面には,エジェクター手段9は,ノズル9Aの上半分の
背面側において断面直角三角形状の支持部材で支持されるとともに,ノズル9Aの
下半分が支持部材で支持されない部分となっており,かつ,このノズル9Aの下半
分の背面に複数のバルブ9Bが配置されている旨の記載がある。
(イ)周知例2:特開2000-354831号公報(乙4)
a周知例2(平成12年12月26日公開)には,おおむね,以下の記載があ
る。
【0001】本発明は,穀類,豆類,プラスチックペレット等の粒状体に混入す
る異物及び黒色粒を選別するための粒状体選別装置に関する。
【0011】…前記粒状体選別装置は,…前記受光検出手段4により受光した光
量により不良であると判定された穀粒又は異物にエアを吹き付けることにより移動
経路6から外すための除去手段としてのエジェクター手段9と…を主要構成部材と
して構成している。
【0012】前記エジェクター手段9は,エアを吹き出すエア吹き出し口9aを
備えた吹き出し部9Aと,この吹き出し部9Aにエアコンプレッサ等のエア供給装
置からのエアを供給する状態と供給しない状態とに切り換える電磁弁9Bとを備え
ている。これら吹き出し部9Aと電磁弁9Bのぞれぞれは,前記シュート2の移送
経路に対応させるために,シュート2と同数を紙面方向(左右方向)に併設してい
る。…
b周知例2には,別紙3各文献図面目録周知例2【図2】,【図6】のとおり,
各図面が添付されているところ,同各図面には,エジェクター手段9は,エア吹き
出し口9aが設けられた板材の上半分の前面側においてアーム部材13で支持され
るとともに,板材の下半分がアーム部材13で支持されない部分となっており,か
つ,この板材の下半分の背面に複数の電磁弁9Bが配置されている旨の記載がある。
(ウ)前記(ア)及び(イ)のとおり,周知例1及び周知例2には,粒状体選別装置
において,シュートに対応して横方向に併設される複数の空気噴射口を有する空気
噴射部を,上部において支持部材に支持させるとともに,上部から下方に延びる非
支持部を備えたものとし,かつ,この非支持部の背面に複数の電磁弁を配置すると
いう構成が開示されている。そして,周知例1は,本件補正発明の出願日よりも1
0年以上前に,周知例2も8年以上前に公開されたものであることを考慮すれば,
この構成に係る技術的思想は,本件補正発明に係る出願の出願日には周知技術であ
ったと認められる(以下,この技術的思想を「本件周知技術」という。)。
ウ引用発明1への本件周知技術の適用
(ア)技術分野の関連性
前記(3)ア(ア),(5)イ(ア)a,(5)イ(イ)aのとおり,引用発明1及び本件周知
技術は,いずれも粒状体選別装置に関するものであって,技術分野は同一である。
(イ)作用機能の共通性
引用発明1及び本件周知技術は,いずれも,検出手段により不良であると判定さ
れた粒状体にエアを吹き付けることにより粒状体を落下経路から外すという選別処
理を,噴出ノズル単位で実行するものである(引用例1の【0005】,【002
2】,【0023】,周知例1の【0013】,【0014】,周知例2の【0011】,
【0012】)。
そして,上記の選別処理のために,引用発明1は,「上部に複数の噴出ノズル6
aが形成された横長の噴出ケーシング6」及びこの「噴出ケーシング6に配管17
を介して接続された制御弁11」を備えるという構成を採用し,本件周知技術も,
「シュートに対応して横方向に併設される複数の空気噴射口を有する空気噴射部」
及びこの空気噴射部の上部から下方に延びる非支持部の背面に配置された複数の電
磁弁を備えるという構成を採用しており,引用発明1と本件周知技術は,同様の選
別処理手段を有するものである。
さらに,引用発明1における選別処理手段の構成よりも,本件周知技術における
選別処理手段の構成の方が,電磁弁(制御弁11)が空気噴射部(噴出ケーシング
6)に直接配置されることから,簡素な構造であるということもできる。
(ウ)振動センサの有無
相違点2は,空気噴射装置の筐体,電磁弁及び振動センサの設置された支持部材
の位置関係という観点から,本件補正発明と引用発明1との相違に着目したもので
あって,両者の間には,空気噴射装置の筐体の振動が支持部材に伝わり,それを振
動センサが検知するという異常検査の機序そのものに相違はない。
したがって,本件周知技術において,支持部材に振動センサを設けるという技術
的思想が含まれていないことは,引用発明1に本件周知技術を適用するに当たって
の動機付けを左右するものにはならず,また,引用発明1に本件周知技術を適用す
るに当たり,振動センサS2が支持板部26に設置されるという引用発明1の構成
を変更するものにもならない。
(エ)以上のとおり,引用発明1と本件周知技術は,技術分野が同一であって,
同様の選別処理手段を有し,さらに,本件周知技術における選別処理手段の方が簡
素な構造であることからすれば,引用発明1に本件周知技術を適用する動機付けが
あるというべきである。
エしたがって,引用発明1において,相違点2に係る本件補正発明の構成を備
えるようにすることは,当業者が容易に想到することができたものであると認めら
れる。
オよって,本件審決の相違点に係る容易想到性の判断に誤りはない。
(6)顕著な効果
ア原告は,本件補正発明は,①数多くの空気噴射口のうち,噴射異常を起こし
ている空気噴射口を正確に特定することができるという技術的効果,②選別運転の
合間においても検査を行うことができるという技術的効果,③設置場所の振動環境
に左右されることなく正確に噴射異常を起こしている空気噴射口を特定することが
できるという技術的効果を有し,これらの効果は顕著なものであるから,本件審決
は,顕著な効果を看過していると主張する。
イ①の技術的効果
引用例1には,「本発明は,…極力少数の検出器によって各エア噴出部からのエ
ア噴出作動の良否を適切に検査することにある。」(【0004】),「…複数のエア噴
出部を備えたエア噴出手段に対応させて固定設置された噴出状況検出手段の検出情
報に基づいて,各エア噴出部の異常が判別されるので,…極力少数の検出器によっ
て各エア噴出部からのエア噴出作動の良否を適切に検査することができる。」(【0
006】)と記載されている。
したがって,噴射異常を起こしている空気噴射口を正確に特定することができる
という①の技術的効果は,引用発明1が奏する効果と同じ,又は,少なくとも引用
発明1が奏する効果と比較して顕著なものということはできないから,①の技術的
効果は,本件補正発明に顕著なものということはできない。
ウ②の技術的効果
選別運転の合間においても検査を行うことができるという②の技術的効果は,判
別センサの各素子を遮蔽する遮蔽材を弁制御手段として用いて,異常検査を行うこ
とができれば奏することができるものである(本件補正明細書の【0070】,【0
071】)。
そして,引用発明1の「検査対象のノズル6aの制御弁11をオン」させる手段
として,引用発明2の粒状物色彩選別機のエジェクタ検査における,電磁弁V1,
V2,V3…を作動させるための検査バー44を用いた手段を採用すること,すな
わち,引用発明1において,相違点3に係る本件補正発明の構成を備えることにつ
いて,原告は,その容易想到性の判断を争っておらず,また,引用発明1のとおり
支持板部26に振動センサS2を取り付けたままで,弁制御手段として,引用発明
2の検査バー44を用いる手段を採用することに阻害要因も見当たらない。
したがって,引用発明1に引用発明2を適用することにより,判別センサの各素
子を遮蔽する遮蔽材を弁制御手段として用いて,異常検査を行えるのであるから,
選別運転の合間においても検査を行うことができるという②の技術的効果は,本件
補正発明に顕著なものということはできない。
エ③の技術的効果
引用発明1は,「異常判別手段101は,噴出ノズル6aが正常に噴出作動した
ときは,上記噴出ケーシング6が比較的大きい振幅で振動するのに対して,ノズル
6aが正常に噴出作動しない場合には,噴出ケーシング6の振動の振幅が小さいの
で,所定の判定レベルを設けて不良の有無を検出することができ,検査対象のノズ
ル6aの制御弁11をオンして,それぞれに対する振動センサーS2の出力を調べ,
振動センサーS2の出力信号の振幅が判定レベルを越えていれば,正常であると判
別する」ものであり,引用発明1も,設置場所の振動環境に比較的左右されにくい
ものということができる。
また,異常噴射口の検知精度に関して,本件補正発明と引用発明1とを比較する
試験結果(甲6の3頁以下の試験結果報告書)はあるものの,この試験において,
引用発明1に相当するとして作製された疑似検査装置の形態(図4)は,明らかに
引用例1に記載された粒状体検査装置の実施形態(引用例1の【図16】)とは異
なるから,この試験結果は,③の技術的効果を裏付けるものにはならない。
したがって,設置場所の振動環境に左右されることなく正確に噴射異常を起こし
ている空気噴射口を特定することができるという③の技術的効果は,引用発明1が
奏する効果と同じ,又は,少なくとも引用発明1が奏する効果と比較して顕著なも
のということはできないから,③の技術的効果は,本件補正発明に顕著なものとい
うことはできない。
オよって,本件審決に,顕著な効果の看過はない。
(7)小括
以上によれば,本件補正発明は,引用発明1に基づいて容易に想到することがで
きたものであるから,独立特許要件に違反するとして本件補正を却下した本件審決
に誤りはない。よって,取消事由2は理由がない。
4結論
以上のとおり,本件補正を却下した本件審決に誤りはない。そして,本件審決は,
本願発明は,特許法29条1項3号又は同条2項の規定により,特許を受けること
ができないと判断するところ,原告は,かかる判断に対する取消事由を主張しない。
したがって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決
する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官髙部眞規子
裁判官柵木澄子
裁判官片瀬亮
別紙1
本件補正明細書図面目録
【図1】【図2】
【図3】
別紙2
引用例1図面目録
【図8】【図9】
【図16】
別紙3
各文献図面目録
周知例1
周知例2

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