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平成14年12月18日宣告
平成14年(わ)第219号,同第279号,同第374号銃砲刀剣類所持等取締
法違反,建造物損壊,殺人未遂被告事件
            判        決
            主        文
   被告人Aを懲役8年に,同Bを懲役4年6か月に,同Cを懲役6年に,同
Dを懲役3年6か月に,同Eを懲役4年に処する。
   未決勾留日数中,被告人B,同C及び同Dに対しては200日を,同Eに
対しては210日を,それぞれその刑に算入する。
   被告人5名から,福岡地方検察庁小倉支部で保管中の黒色自動装てん式け
ん銃1丁(平成14年小倉領第545号符号1-1),打殻薬きょう4個
(同号符号1-2,同第743号符号1-1,1-3,1-6),実包2個
(同第545号符号1-4)及び弾丸1個(同第743号符号2)を没収す
る。
            理        由
(犯罪事実)
第1 被告人A,同B,同C,同D及び同Eは,いずれも指定暴力団F系の組員
であるところ,系列組織の組長を射殺した犯人が対立関係にあるG系暴力団
H組の関係者である旨聞き及び,報復のため同組事務所が入居する北九州市
a区b町c番d号所在のマンション「I」にけん銃で弾丸を撃ち込み,建物等
を損壊することを企て,氏名不詳者と共謀の上,
 1 法定の除外事由がないのに,平成12年4月8日午後2時40分ころ,上
記「I」前路上において,自動装てん式けん銃2丁(平成14年小倉領第5
45号符号1-1,同号符号2-1)をこれらに適合する実包12発(同号
符号1-2,1-4,同号符号2-2,2-3,同第743号符号1-1な
いし1-6,同号符号2はその一部。)と共に携帯し,
 2 法定の除外事由がないのに,平成12年4月8日午後2時40分ころ,J
ほか30名の区分所有に係る前記「I」(鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根10
階建)前路上において,被告人Cが,同建物1階スポーツ用品店「K」店舗
周辺に向けて,所携の前記自動装てん式けん銃で弾丸3発を発射させ,その
うち1発を上記J所有に係る同店舗のはめ殺し式ショーウィンドーガラス1
枚に命中させて貫通痕等を生じさせて破壊し(損害額約38万6000円相
当),さらに,被告人Aが,G系暴力団L組の組員M(当時52歳)が他の者
2名と共に同建物正面玄関から出てくるのを認め,とっさに,上記Mが死亡
するに至るかもしれないことを認識しながら,あえて,同人に向けて所携の
自動装てん式けん銃で弾丸3発を発射させ,それらを上記Mの左前腕部,右
腰部及び左下側胸部に命中させたが,同人に入院加療44日間を要する左下
側胸部銃創,右腰部銃創,膵損傷,肺損傷,脾損傷,胃損傷及び左前腕裂傷
の傷害を負わせたにとどまり,もって,不特定若しくは多数の者の用に供さ
れる場所においてけん銃を発射するとともに他人の建造物を損壊し,かつ,
被告人Aにおいては,Mを死亡させるに至らなかった。
第2 被告人Eは,法定の除外事由がないのに,平成14年3月11日午後1時
25分ころ,北九州市e区f町g番h号所在の福岡県N警察署において,回
転弾倉式けん銃1丁(平成14年小倉領第474号符号3)をこれに適合する
実包5発(同号符号6-1,6-2はその一部。)と共に携帯したが,同署
司法警察員に上記けん銃及び実包を提出して自首した。
(証拠)省略
(確定裁判)
1 被告人Aは,平成13年3月21日,山口地方裁判所で銃砲刀剣類所持等取
締法違反,火薬類取締法違反,詐欺,大麻取締法違反の罪により懲役8年に処
せられ,その裁判は同年5月10日に確定したものであって,この事実は前科
調書(乙12),判決謄本(乙14)及び被告人Aの警察官調書(乙1)によ
り認められる。
2 被告人Bは,平成13年11月20日,福岡地方裁判所小倉支部で詐欺,窃
盗罪により懲役2年,4年間執行猶予に処せられ,その裁判は平成13年12
月5日に確定したものであって,この事実は前科調書(乙24),判決謄本(乙
26)及び被告人Bの警察官調書(乙15)により認められる。
(法令の適用)
1 被告人Aについて
 罰条   
   第1の1の行為   包括して刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31
条の3第2項,1項,3条1項
   第1の2の行為   けん銃発射の点につき包括して刑法60条,銃砲刀
剣類所持等取締法31条,3条の13,建造物損
壊の点につき刑法60条,260条前段,殺人未
遂の点につき同法203条,199条
 科刑上一罪の処理   第1の2の罪のうちけん銃発射,建造物損壊及び殺人
未遂の各罪について刑法54条1項前段,10条
(以上を一罪として最も重い殺人未遂罪の刑で処
断)
 刑種の選択   第1の2の罪について有期懲役刑を選択
 併合罪の処理   刑法45条前段・後段,50条,47条本文,10条(犯情
の重い第1の2の罪の刑に法定の加重),14条
 没       収   刑法19条1項1号(第1の1のけん銃等携帯の罪に
つき),2項本文
2 被告人C及び同Dについて
 罰条   
   第1の1の行為   包括して刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31
条の3第2項,1項,3条1項
   第1の2の行為   けん銃発射の点につき包括して刑法60条,銃砲刀
剣類所持等取締法31条,3条の13,建造物損
壊の点につき刑法60条,260条前段
 科刑上一罪の処理   第1の2の罪のうちけん銃発射及び建造物損壊の各罪
について刑法54条1項前段,10条(以上を一罪
として重いけん銃発射の罪の刑で処断)
 刑種の選択   第1の2の罪について有期懲役刑を選択
 併合罪の処理   刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の重い第1の2
の罪の刑に法定の加重),14条
 未決勾留日数の算入   刑法21条
 没       収   刑法19条1項1号(第1の1のけん銃等携帯の罪に
つき),2項本文
3 被告人Bについて
  併合罪の処理について,「刑法45条前段・後段,50条,47条本文,1
0条(犯情の重い第1の2の罪の刑に法定の加重),14条」とするほかは,上
記2と同一の法令を適用し,同様に処理する。
4 被告人Eについて
  罰条につき,第2の行為に銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項,1
項,3条1項を適用し,この罪につき銃砲刀剣類所持等取締法31条の5,刑
法68条3号により法律上の減軽をするほかは,上記2と同一の法令を適用
し,同様の処理をする(ただし,併合罪の処理において,「犯情の重い第1の
2の罪の刑に」とある部分は「刑及び犯情の最も重い第1の2の罪の刑に」と
する。)
(量刑の理由)
 本件は,指定暴力団組員である被告人らが,共謀の上,対立抗争相手の指定暴
力団の組事務所が入居する建物にけん銃を発射する目的で,けん銃2丁及び適合
実包を所持し(第1の1),上記共謀に基づき建物に向けて弾丸3発を発射し,
更に被告人Aにおいて,上記建物から出てきた対立関係にある暴力団組員に対
し,未必の殺意をもって弾丸3発を発射したが,入院加療44日間を要する傷害
を負わせるにとどまり,死亡させるに至らず(第1の2),被告人Eにおいて,
上記各犯行に供されたけん銃とは異なる他のけん銃1丁及び適合実包を,上記犯
行に供した旨偽って警察に提出した(第2)という,銃砲刀剣類所持等取締法違
反,建造物損壊,殺人未遂の事案である。
 第1の1及び第1の2の犯行につき,被告人らは,その所属する暴力団組織の
系列組長が射殺されたことに対し報復することによって,自己の組織の面子を守
ろうなどと考えて犯行に及んだもので,暴力団組織特有の反社会的な動機であ
り,もとより何ら酌むべき点はない。犯行態様は,共謀の上,殺傷能力を有する
けん銃2丁を適合実包12発と共に所持し,白昼交通量の多い道路から,被告人
Cにおいて,多数が入居する建物に向けて弾丸3発を発射し,被告人Aにおいて
は,上記共謀とは別に自らの意思により,建物から出てきた対立関係にある暴力
団組員に対し弾丸3発を発射したという極めて危険かつ大胆で悪質なものであ
る。同被害者は,突然その身体に弾丸3発を受け,入院加療44日間に及ぶ重傷
を負い,著しい恐怖感や肉体的苦痛を被ったもので,命中部位によっては更に重
大な被害が生じていた可能性も高く,また,被告人Cの放った弾丸の一部は,人
の現在する店舗内に撃ち込まれ,そのショーウィンドーガラス等を損壊し,38
万円余りの損害を生じさせたもので,結果は危険かつ重大である。付近住民らに
も多大な恐怖感や不安感を与え,社会的影響は軽視できない。
 第2の犯行につき,被告人Eは,第1の1及び第1の2の犯行に関する所属暴
力団組織への捜査機関の追及をかわそうと考え,上記各犯行に使用されたもので
はないけん銃及び適合実包を携帯して警察に出頭した上,上記各犯行に使用され
た旨偽って提出し,共犯者の特定についても虚偽の供述をしたもので(したがっ
て,後述のとおり第1の1及び第1の2の犯行の自首は成立しない。),捜査を
誤らせる不当な動機に酌むべき点はなく,安易にけん銃及び適合実包を所持した
危険性も軽視できない。
 これらの情状によれば,被告人らの刑責は重いというべきである。殊に,共謀
の範囲を超えて殺人未遂の罪まで犯した被告人Aの刑責は,暴力団組織において
幹部の地位にあること,前記確定裁判の内容は,けん銃等の所持やけん銃の発射
という,本件と同種の犯行を含むことなどの点を併せると,他の被告人と比較し
ても重いということができ,建物に向けてけん銃を発射した実行犯被告人Cの刑
責も軽くない。また,被告人Bは,暴力団組織の幹部の地位にある上,前記確定
裁判が存することも無視できない。
 他方,第1の2の犯行中の建造物損壊の点について,被告人らは,損壊した店
舗の経営者に対し45万円の被害弁償をして同人との間に示談が成立しているこ
と,被告人らは本件各犯行について反省の情を示していること,被告人Aについ
ては,第1の2の犯行中の殺人未遂事件は確定殺意とは断定できず,未必の故意
にとどまり,また,被害者が幸いにして一命を取りとめたこと,被告人Eは,第
2の犯行につきけん銃等を提出して自首したこと,被告人E及び同Cは,警察署
に出頭し,第1の1及び第1の2の犯行について自らの関与を申告したものの,
共犯者及びその役割,使用されたけん銃等,犯行の重要部分について虚偽の申告
をしたもので,まずその点において上記各犯行についての自首は成立しないが,
それなりに反省悔悟を示すものといえなくはないこと,被告人Dは,暴力団を脱
退する旨述べていることなど,被告人らのためにそれぞれ酌むことのできる情状
もあるので,これらを総合考慮して,主文のとおり量刑した。
(求刑 被告人Aにつき懲役10年,被告人Bにつき懲役6年,被告人Cにつき
懲役8年,被告人Dにつき懲役5年,被告人Eにつき懲役5年,被告人5名に
つき自動装てん式けん銃1丁,打殻薬きょう4個,実包2個及び弾丸1個の没
収)
 平成14年12月18日
    福岡地方裁判所小倉支部第2刑事部
       裁判長裁判官   若  宮   利  信
          裁判官   大  泉   一  夫
               裁判官   坂  本   好  司           

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