弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主          文
 1 原告の請求をいずれも棄却する。
 2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告が平成14年6月25日付けでした原告の平成12年10月1日から平成13
年9月30日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正処分(ただし,確定
申告に係る消費税49万6800円及び地方消費税12万4200円を超える部
分)並びに過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。
第2 事案の概要
本件は,消費税課税事業者である原告が,平成12年10月1日から平成13年9
月30日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)における消費税及び地
方消費税(以下,両者を「消費税等」という。)について,いったんは消費税簡易
課税制度(以下「簡易課税制度」ともいう。)の選択届出をしたものの,実額によ
る仕入税額の控除(以下「本則課税による控除」という。)の方式によるのが有利
であるとして,これによる控除を行って消費税等の確定申告をしたのに対し,被告
が簡易課税制度を適用して前掲の更正処分等をした(なお,地方消費税について
も,国が,消費税の賦課徴収の例により,消費税の賦課徴収と併せて行うものとさ
れている(地方税法附則9条の4第1項)。)ことから,その取消しを求めた抗告
訴訟である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実)
(1) 原告は,建築物の清掃,設備機器のメンテナンス,建築物のリフォーム等を業
とする有限会社である。
(2) 原告は,平成12年5月25日,本件課税期間を適用開始期間として「消費税
課税事業者届出書」(以下「課税事業者届出書」という。乙2)及び「消費税簡易
課税制度選択届出書」(以下「本件届出書」といい,その届出を「本件届出」とい
う。甲1,乙1)を被告に提出した。
なお,本件届出書の事業内容等欄のうち,事業内容欄には「建築物の清掃及び各種
設備機器の点検,保守」の記載があるが,事業区分欄は空欄であった。
(3) 原告は,平成13年11月12日,被告に対し,別表のとおり,本則課税によ
る控除を行って,本件課税期間に係る納付すべき消費税額49万6800円,同地
方消費税額12万4200円とする確定申告をした(甲2,3)。
(4)原告は,平成14年5月17日,被告に対し,適用開始期間を平成14年10
月1日から平成15年9月30日とする消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提
出した(乙3)。
(5) 被告は,平成14年6月25日,原告に対し,本件課税期間に係る消費税等に
ついて,別表のとおり,簡易課税制度を適用して,更正処分(以下「本件更正処
分」という。)及び過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」とい
い,本件更正処分と併せて「本件処分」という。)をした(甲5)。
(6) 本件処分について,原告のした異議申立て及び審査請求,被告のした異議決定
並びに国税不服審判所長のした審査裁決の経緯及び内容は,別表のとおりである
(甲6ないし8,10)。
2 本件における争点
本件処分の適否(本件届出の効力の有無)
3 争点に関する当事者の主張の要旨
(被告)
 本件届出は有効であり,これを前提とする本件処分は適法である。
(1) 消費税における納付すべき税額は,まず課税標準額を算出し,それに税率を乗
じて計算した税額から仕入税額控除を始めとする各種の控除を行った後の金額であ
る。
すなわち,課税期間中の課税資産の譲渡等の対価の額の合計額をもって課税標準額
とし(消費税法(以下「法」という。)45条1項1号),税込経理の場合は,こ
れに4パーセントの税率を乗じた金額をもって,税抜経理の場合は,消費税相当額
の合計額をもって,その課税期間の売上税額としている。そして,売上税額から,
仕入れに含まれていた税額(仕入税額)を控除する方式として,法は,実額による
控除を原則としつつも(30条),実際の課税仕入れに係る消費税額を計算するこ
となく,事業者の営む事業の種類の区分に応じたみなし仕入率により計算した金額
を課税仕入れに係る消費税額とみなして控除する,いわゆる簡易課税制度も認め,
その適用を受けようとする事業者は,「この項の規定の適用を受ける旨を記載した
届出書」を提出すれ
ば足りる旨規定している(37条1項)。
このように,本則課税による控除と簡易課税制度のいずれを適用するかは,当該事
業者の選択に委ねられているが,後者を選択した場合には,上記のみなし仕入率に
より計算した「金額は,当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。」
とされているところ,原告は,平成12年5月25日,被告に対して本件届出書を
提出し,簡易課税制度を選択しているから,これを前提とする本件処分は,消費税
の性質に反するものではなく,適法である。
(2) 簡易課税制度は,実際の課税仕入れに係る消費税額を計算することなく,事業
者の営む事業の種類の区分に応じたみなし仕入率により計算した金額を課税仕入れ
に係る消費税額とみなして控除するものであるが,その課税期間中に事業者が実際
に営む事業の種類に応じてみなし仕入率が適用される。そのため,簡易課税制度選
択届出書に記載された事業の種類と課税期間における実際の事業の種類が一致しな
いこともあり得るのであって,仮に,届出書に記載された事業の種類とその課税期
間における実際の事業の種類が一致しない場合であっても,届出を無効と解するこ
とはできない。そうすると,本件届出書の事業区分欄に記載漏れがあったとして
も,本件届出の効力に影響を及ぼすものではない。
(3) また,上記のとおり,事業区分欄が空欄であることは,届出の効力に何ら影響
を与えないのであるから,本件届出書の提出を受けた被告が,このような不備につ
いて必ずしも事業者に対して補正を求めたり,書類不備の連絡をしなければならな
いものではない。
(4) 被告は,原告の平成10年10月6日から平成11年9月30日までの事業年
度の課税売上高が3000万円を超えており,本件課税期間以降の課税期間につい
て「消費税課税事業者届出書」の提出が必要になること及び簡易課税制度を選択す
る場合には「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要になることから,注意
喚起のため,平成12年3月ころ,原告に対し,①「ご存じですか消費税の届出
書!」と題するチラシ(以下「本件案内チラシ」という。甲4),②消費税課税事
業者届出書の用紙,③消費税簡易課税制度選択届出書の用紙,④消費税課税事業者
届出書及び消費税簡易課税制度選択届出書の記載例(乙4)を送付した。
本件案内チラシには,課税期間の課税売上高が3000万円を超える法人は消費税
課税事業者届出書を提出する必要がある旨並びに課税期間の課税売上高が2億円以
下の法人は簡易課税制度を選択できる旨及び簡易課税制度を選択する場合の手続に
ついて記載されているものの,本則課税による控除と簡易課税制度の概要や計算の
仕組みまで記載されているものではなく,まして簡易課税制度の選択を誘導するよ
うな記載はない。また,「お分かりにならない点や相談されたいことがありました
ら,税務署(法人課税部門)にお気軽にお尋ねください。」との記載があるから,
原告が簡易課税制度の仕組みが分からないのであれば,いつでも相談することは可
能であった。したがって,原告は,自らの判断と責任において簡易課税制度選択届
出書を作成・提出し
,簡易課税制度を選択したというべきであり,本件届出は有効である。
(原告)
 被告の主張は争う。
(1) 本件処分は,原告が預かっている消費税等を過大に認定したものであり,その
性質に反する違法なものである。
(2) 本件届出書は,最重要記載事項である事業区分欄が記載されないまま提出され
ているから,簡易課税制度選択届出としては無効である。
(3) また,被告が,事業区分欄が記載されていないことを速やかに原告に通知して
いれば,原告は被告に対してその意味を質問し,その結果,簡易課税制度の選択が
不利益であることが判明したはずであるから,このような連絡なくしてなされた本
件処分は違法である。
(4) 被告は,課税売上高2億円以下の法人事業者である原告に対し,本件案内チラ
シと消費税簡易課税制度選択届出書のみを送付したが,本件案内チラシは,簡易課
税を選択するよう誘導するものであるから,本件届出は無効である。
第3 当裁判所の判断
1まず,原告は,本件処分は原告の預かっている消費税等を過大に認定したも
のであり,その性質に反する違法なものであると主張するので,この点について判
断する。
(1) 消費税簡易課税選択制度の概要は,以下のとおりである。
ア 消費税については,まず,課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等
の対価の額の合計額(課税標準額)を計算する(法45条1項1号,28条1
項)。消費税の会計処理につき,いわゆる税込経理(課税資産の譲渡等につき税込
みで代金を領収する処理)をしている場合には,その合計額に105分の100を
乗じた金額が課税標準額であり,この課税標準額に4パーセントの税率を乗ずるこ
とによって,その課税期間の売上税額が算出される(法29条)。また,税抜経理
(対価の額と消費税相当額とを区分して代金を領収する処理)をしている場合に
は,対価の額の合計額が課税標準額であり,消費税相当額の合計額がその課税期間
の売上税額である。
イ 次に,売上税額から,仕入れに含まれていた税額(仕入税額)の控除を行う
が,法は,仕入税額控除の方法として,本則課税による控除(実額による控除)を
原則としている。これは,課税期間における売上税額から,その期間中に国内にお
いて行った課税仕入れに係る消費税額の合計額(仕入税額)を控除するものである
(法30条1項)。
ウ これに対して,基準期間における課税売上高が2億円以下の事業者は,簡易課
税制度を選択することができる。これによれば,課税売上税額の一定割合(みなし
仕入率)を仕入税額とみなすことになり(法37条),仕入税額に関する複雑な会
計処理や計算を行うことなくして課税売上税額のみから税額を算出できることにな
る。そして,みなし仕入率は,第1種事業(卸売業)については90パーセント,
第2種事業(小売業)については80パーセント,第3種事業(農・林・漁業,鉱
業,建設業,製造業,電気・ガス・熱供給業,水道業)については70パーセン
ト,第4種事業(第1種,第2種,第3種及び第5種以外の事業)については60
パーセント,第5種(不動産業,運輸通信業,サービス業(飲食店業に該当するも
のを除く。))につい
ては50パーセントと定められている(法37条1項,同法施行令57条1項,5
項)。また,事業者が2以上の種類の事業を行っている場合の仕入れに係る消費税
額の計算は,原則として,それぞれの事業の区分ごとの売上げに係る消費税額に,
それぞれの事業に係るみなし仕入率を乗じて計算した金額の合計額が,各事業の消
費税額の合計額に占める割合(加重平均値)を用いて計算することとなる(法施行
令57条2項)。ただし,2つ以上の種類の事業を営む場合において,1つの事業
に係る課税売上高が全課税売上高の75パーセント以上である場合には,その事業
のみなし仕入率を全売上税額に適用することができ(同条3項1号),3種類以上
の事業を営んでいる場合において,2種類の事業の課税売上高の合計が全課税売上
高の75パーセント
以上である場合には,当該2事業のみなし仕入率のうち低い方を2種類以外の事業
に対しても適用することができる(同条3項2号)。なお,事業ごとに課税売上げ
の区分をしていない場合には,その区分していない部分の課税売上げについては,
みなし仕入率の最も低い事業の売上げとして取り扱うこととされている(同条4
項)。
エ 事業者は,その納税地を所轄する税務署長にその基準期間における課税売上高
が2億円以下である課税期間について,この項(法37条1項)の規定の適用を受
ける旨を記載した届出書を提出した場合には,当該届出書を提出した日の属する課
税期間の翌課税期間以後の課税期間については,簡易課税制度を選択することがで
き,課税売上税額の一定割合(みなし仕入税率)が仕入税額とみなされることにな
る(法37条1項)。
そして,法施行規則17条1項によれば,簡易課税制度選択届出書には,①届出者
の氏名又は名称及び納税地,②届出者の行う事業の内容及び法施行令57条5項1
号ないし5号に掲げる事業の種類,③法37条1項に規定する翌課税期間の初日の
年月日,④③の翌課税期間の基準期間における課税売上高,⑤その他参考となるべ
き事項を記載しなければならない。
また,消費税簡易課税制度選択届出書を提出した事業者は,法37条1項の規定の
適用を受けることをやめようとするとき又は事業を廃止したときは,その旨を記載
した届出書(消費税簡易課税制度選択不適用届出書)をその納税地を所轄する税務
署長に提出しなければならず(法37条2項),その提出があったときは,その提
出があった日の属する課税期間の末日の翌日以後は,法37条1項の規定による届
出は,その効力を失う(同条4項)。そのため,消費税簡易課税制度不適用届出書
は,消費税簡易課税制度の適用を受けることをやめようとする課税期間の初日の前
日までに提出しなければならないことになる。
     さらに,消費税簡易課税制度選択届出書を提出した事業者は,事業を廃
止した場合を除き,法37条1項に規定する翌課税期間の初日から2年を経過する
日の属する課税期間の初日以後でなければ,消費税簡易課税制度選択不適用届出書
を提出することができない(法37条3項)。
(2) 以上のとおり,消費税簡易課税制度は,中小事業者にとって煩雑である仕入税
額控除による計算を簡便にするものであって,合理性を有するものであり,消費税
簡易課税制度が選択された場合に,課税売上税額の一定割合(みなし仕入率)が仕
入税額とみなされることになるから,仮に実際の仕入税額がみなし仕入税額を超え
ているとしても,消費税等の性質に反するものといえないことは明らかである。
しかるところ,原告が簡易課税制度の選択を内容とする本件届出書を被告に提出し
たことは前記前提事実(2)のとおりであり(それが簡易課税制度の選択として有効で
あることは,後記のとおりである。),かつ本件課税期間においてはその届出の撤
回が許されないものであるから,これを前提とする本件処分が原告の預かり消費税
を過大に認定した違法なものであると認めることはできず,原告の前記主張は採用
できない。
2 次に,原告は,本件届出書の事業区分欄が記載されていない以上,簡易課税制
度選択届出としては無効である旨主張するところ,なるほど,法施行規則17条1
項2号は,届出者の行う事業の内容及び法施行令57条5項1号ないし5号に掲げ
る事業の種類を簡易課税制度選択届出書に記載しなければならない旨規定してい
る。
しかしながら,前記のとおり,法が,簡易課税制度を選択するか否かを当該事業者
に委ねたのは,中小事業者については,本則課税による控除を行うか,又はそのた
めに要する煩雑な会計処理の負担を回避してみなし仕入率に基づく簡易課税制度に
よって控除するかの選択を,実際に行われている事業内容について熟知している事
業者自身の判断に委ねるのが最も合理的と考えられたことによるものと解される。
また,事業の性質,内容によってみなし仕入率が異なるのは,それぞれの事業の実
態に対応した適正なみなし仕入率を定めることにより,各事業間における実質的な
不均衡を是正するとともに,実額による仕入税額に近似した金額を算出しようとす
る趣旨であると考えられる。そうすると,簡易課税制度において用いられるみなし
仕入率は,課税期間
中に実際に行われた事業の内容・割合に応じて定まるべきものであり,届出書に記
載された事業区分のとおりのみなし仕入率が適用されるとは限らないというべきで
ある。
したがって,簡易課税制度選択届出書は,その記載事項すべてが記入されていなけ
ればその効力を有しないと解することは合理的ではなく,どの事業者がいつから簡
易課税制度を選択するのかに関わる事項など,簡易課税制度選択の趣旨に照らして
必要不可欠と考えられる事項の記載が欠けている場合には,その届出は効力を生じ
ないが,それ以外の事項については,その記載を欠くからといって,直ちに届出の
効力を否定すべきものとはいえない。
本件で問題となっている事業区分については,上記のとおり,その記載によってみ
なし仕入率が定まる関係にはなく,あくまでも実際に行われた事業の内容が基準と
なるから,簡易課税制度選択の趣旨に照らして必要不可欠な事項とはいえないとい
うべきであり(事業区分の記載が要請されているのは,事業の種類に応じてみなし
仕入率が異なることから,簡易制度を選択することが有利であるか否かを事業者に
慎重に判断させようとする趣旨であると解される。),むしろ,このような事項の
不備を理由に届出が無効とされるのであれば,仕入税額に関する煩雑な会計処理を
回避して課税売上税額のみから簡単に税額を算出しようとして,簡易課税制度を選
択した事業者の利益を害する結果を招来しかねないというべきである。
したがって,本件届出書の事業区分の欄が空欄であっても,このことをもって,本
件届出の効力が生じないと解することは相当でなく,原告の前記主張は採用できな
い。
3 また,原告は,被告から事業区分欄が空欄である旨の連絡を速やかに受けれ
ば,原告は,その事業区分の意味を質問し,その結果,本件届出を撤回できたと考
えられるから,被告が上記の連絡をしなかったのは,違法である旨主張する。
しかしながら,前記のとおり,事業区分欄が空欄であることは,届出の効力に影響
を与えるものではないから,本件届出書の提出を受けた被告が,直ちにこれを精査
し,このような不備について,事業者に対して補正を求めたり,書類不備の連絡を
しなければならない義務を負担するとは到底解されない。したがって,被告が上記
連絡をしなかったことをもって,本件処分が違法になるとはいえない。
4 さらに,原告は,被告は,課税売上高2億円以下の法人事業者に対し,本件案
内チラシと消費税簡易課税制度選択届出書のみを送付して,簡易課税を選択しなけ
ればならないと誘導するものであって,違法な誘導によってなされた本件届出は無
効である旨主張する。
しかしながら,証拠(甲4,乙2,4)及び弁論の全趣旨によれば,平成10年1
0月6日から平成11年9月30日までの事業年度における原告の課税売上高は3
000万円を超えており,本件課税期間以降の課税期間について「消費税課税事業
者届出書」の提出が必要になること,簡易課税制度を選択する場合には「消費税簡
易課税制度選択届出書」の提出が必要になることから,被告は,注意喚起のため,
平成12年3月ころ,原告に対し,①本件案内チラシ,②消費税課税事業者届出書
の用紙,③消費税簡易課税制度選択届出書の用紙,④消費税課税事業者届出書及び
消費税簡易課税制度選択届出書の記載例を送付したこと,本件案内チラシには,
「課税期間(事業年度)に係る基準期間(前々事業年度)の課税売上高が2億円以
下の法人は,その課税
期間から簡易課税制度を選択することができます。その課税期間について,簡易課
税制度の適用を受けようとする場合には,課税期間の開始する日の前日までに,
『消費税簡易課税制度選択届出書』を提出してください。」と記載されているのみ
であって,簡易課税制度が事業者にとって有利であることを示唆するなど,その選
択を誘導するような記載は一切なく,かえって「お分かりにならない点や相談され
たいことがありましたら,税務署(法人課税部門)にお気軽にお尋ねください。」
との記載があること,以上の事実が認められ,これらによれば,本件案内チラシ
は,簡易課税制度を選択するか否かを事業者の主体的な判断に委ねていると認めら
れるから,簡易課税制度の選択を誘導するものである旨の原告の主張は到底採用で
きない。
5 以上のとおり,原告は,平成12年5月25日,本件課税期間を適用開始期間
として本件届出書を被告に提出しているところ,原告の本件課税期間に係る基準期
間の課税売上高は2億円以下であると認められる(甲1,乙1,2)から,本件課
税期間については,簡易課税制度が適用されることになる。そうすると,以下のと
おり,原告が納付すべき消費税の額は93万3400円であり,地方消費税の譲渡
割額は23万3300円となるところ,これらの金額は,本件更正処分と同額であ
るから,本件更正処分は適法というべきである。
(1) 消費税
   ア 課税標準額             4670万1000円(甲2)
   イ 課税標準に対する消費税額 186万8040円
   上記金額は,上記アの課税標準額に法29条に定める税率100分の4
を乗じた金額である。
   ウ 控除税額                93万4620円
     上記金額は,下記の(ア)及び(イ)の合計額である。
    (ア) 控除対象仕入税額
前記前提事実(1)及び弁論の全趣旨によれば,原告の事業は,第3種事業(みなし仕
入率70パーセント)である住宅の塗装工事業及び第5種事業(みなし仕入率50
パーセント)であるマンションや事務所の清掃業であるが,原告は,帳簿等により
課税資産の譲渡等についてこれらの事業の種類ごとの区分を行っていないため,み
なし仕入率の最も低い事業の売上げとして扱われることになる。したがって,控除
対象仕入税額は,上記イの消費税額に100分の50を乗じた93万4020円と
なる。
    (イ) 貸倒れに係る税額                600円(甲
2)
エ 納付すべき税額             93万3400円
     上記金額は,上記イの消費税額から上記ウの控除税額を減じた額(ただ
し,国税通則法119条1項の規定により100未満の端数を切り捨てた後のも
の)である。
  (2) 地方消費税
   ア 課税標準額               93万3400円
  上記金額は,上記(1)エの金額である(地方税法72条の82)。
   イ 納付譲渡割額              23万3300円
     上記金額は,上記アの金額に100分の25を乗じた金額(ただし,地
方税法附則9条の4第1項及び国税通則法119条1項の規定により100円未満
の端数を切り捨てた後のもの)である(地方税法72条の83)。
6上記のとおり,本件更正処分は適法であり,原告は,納付すべき税額を過少に
申告していたことになるところ,原告において,簡易課税制度の適用を前提とする
仕入税額控除を計算の基礎とせず過少に申告したことについて,国税通則法65条
4項に規定する正当な理由が存在したとは認められない。
したがって,本件更正処分によって納付すべきことになった消費税等の額は,原告
が納付すべき消費税等の額である116万6700円から確定申告額62万100
0円を控除した54万円であるところ(国税通則法118条3項の規定により1万
円未満の端数を切り捨てた後のもの。地方税法附則9条の9第1項,第3項),こ
れに100分の10を乗じて計算された金額5万4000円を過少申告加算税とし
た本件賦課決定処分は適法である。
7 以上の次第で,原告の本訴請求は,いずれも理由がないから棄却することと
し,訴訟費用の負担につき,行訴法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり
判決する。
名古屋地方裁判所民事第9部
  裁判長裁判官  加  藤  幸  雄
裁判官  舟  橋  恭  子
裁判官  平  山     馨
(別表添付省略)

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