弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
原判決中別紙当事者目録(却下分)記載の被控訴人らに関する部分を取消し、右被
控訴人らの訴を却下する。
その余の被控訴人らに対する本件控訴を棄却する。
訴訟費用は第一、二審とも、第二項記載の被控訴人らと控訴人との間では全部控訴
人の負担とし、第一項記載の被控訴人らと控訴人との間では、控訴人について生じ
た分の一〇分の九を控訴人、その余を右被控訴人らの各負担とする。
○ 事実
控訴人(原審被告)は「原判決を取消す。被控訴人らの請求を棄却する。訴訟費用
は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人Aほか九
二七名(原審原告ら)は控訴棄却の判決を求めた。被控訴人Bほか七八名(原審原
告ら)は、いずれも当審口頭弁論期日に出頭しない。
当事者双方の事実上法律上の主張は、控訴人が別紙「控訴人の主張」のとおり陳述
し、被控訴人らが後記のとおり陳述したほか、原判決事実摘示と同一であるから、
その記載を引用する。
被控訴人Aほか九二七名は、右控訴人の主張はいずれも理由がないと述べた。
双方の書証の提出および認否は、原判法事実第三の記載と同一であるからこれを引
用する。
○ 理由
当裁判所も原判決と同じく、被控訴人らの本訴請求は正当であると判断する。その
理由は以下のように補足するほか、原判決の理由と同じであるから、その記載を引
用する。
控訴人の別紙第二の主張は、控訴人が被控訴人らの審査請求を却下した理由は右請
求が請求の要件を欠いているためであり、具体的にいえば、審査請求の内容に、控
訴人が審査権限を有する建築基準法に関する事項が全くないためであるというので
ある。
しかし、乙第一号証を検するに、審査請求の理由6の項には、本件確認処分につい
ては、対象建物に収容される原子炉の安全性との関係からみて、建物の構造、設備
に保安上衛生上違法の点がある旨の記載が見られるから、それが建築基準法第六条
第一項の定める建築主事の審査事項に当ることは明瞭であり、右の記載をもつて被
控訴人らが原子炉あるいは原子炉施設自体の安全性のみの審査を求めていると判断
するのは正当でない。控訴人の主張は採用できない。
次に控訴人の別紙第三の主張は、被控訴人らは本件確認処分により直接に権利また
は利益を侵害されていないから、不服申立の利益がないというのである。
しかし本件確認処分があれば、その効果として建築の施工が適法となるわけである
から、三菱原子力工業株式会社が建物を完成して操業を開始する段取りとなること
は明らかであるが、その操業が開始された場合、被控訴人らが危惧する災害が発生
する蓋然性についてはともかく、萬一災害が発生したならば、附近住民の損害が僅
少ですまない場合のあることは常識に属する。したがつて、被控訴人らが附近住民
である限り、確認処分によつて間接的な権利または利益の侵害をうけるといつてよ
いから、審査請求をする法律上の利益を有すると解すべきであつて、控訴人の主張
は採用しがたい。
控訴人の別紙第四の主張は、確認処分は建築基準法による具体的技術的規定に則つ
てされるものであつて、同法による規制に当らないものすなわち核原料物質、核燃
料物質及び原子炉の規制に関する法律による規制に適合するか否かは、確認事項の
ほかであるし、建築主事の能力の限界外でもあるというのである。
しかし控訴人のいうところは、被控訴人らの審査請求を却下する理由の補足にはな
らない。けだしさきに判断したように、被控訴人らの審査請求は、請求書の文面か
らみて、建築基準法所定の審査事項に関する審査請求でもあることがわかるのであ
つて、控訴人の主張するような、同法以外の規制についてのみの審査請求とはいえ
ないから、右請求書受理の段階で要件の欠缺が明瞭と断定できる請求ではない。そ
して、かりに被控訴人らの請求の理由が控訴人の主張する内容に帰着するため、審
査請求が失当ということになるとしても(当裁判所は現段階で右請求の当否を判断
しているのではない。)、その結論を導くまでには、原判決が判示するように、口
頭審査を経由することが法の要請であり、審査請求書受理のみの段階で、理由のな
いことひいては要件のないことを確定すべきものではない。よつて、控訴人の主張
は採用しがたい。
しかし、職権をもつて別紙当事者目録(却下分)記載の被控訴人らの請求について
考えるに、右被控訴人らの提出した訴訟委任状または当裁判所裁判所書記官が右被
控訴人ら宛に送達した書類の送達報告書の各記載によれば、右被控訴人らはいずれ
も従来の住所を変更し、当審口頭弁論終結の日において、本件確認処分の対象建物
の附近に居住していないことが認められる。したがつて右被控訴人らは、本件審査
請求却下の裁決の取消を求める法律上の利益を失なつたと解すべきであるから、そ
の訴はこれを却下するほかはない。
よつて、右被控訴人らに関する原判決を取消して右被控訴人らの訴を却下し、その
余の被控訴人らに関する原判決は相当であるから、この部分についての控訴を棄却
し、訴訟費用の負担について民事訴訟法九六条、八九条、九二条、九三条を各適用
し、主文のように判決する。
(裁判官 近藤完爾 田嶋重徳 吉江清景)
(別紙)
控訴人の主張
第一、原判決が被控訴人らの請求を認容した理由を要約すると、次のとおりにな
る。
一、審査請求が不適法な場合には、受理の前後を問わず基準法九四条三項の手続を
せず、却下の裁決をしても違法でない。
二、審査請求が不適法とされるのは、審査請求の理由の有無の判断に必要な要件を
欠いている場合で、不適法か否かの判断もかかる要件の存否に限られ、理由の有無
の判断にまで及ばない。
三、しかし基準法九四条三項が公開による口頭審査の制度を設けた趣旨は、その審
査裁決の適正並びに当事者の権利、利益の保護を期するものである以上、恰も民訴
の必要的口頭弁論にも比すべく、審査請求をなす者は、口頭審査に当つては、新た
な理由を陳述することもでき、理由の追加、変更もでき、又これに相対して審査庁
には、審査請求の理由について釈明する等の義務が存するものと解され、たとえ審
査請求の理由とするところが、審査請求書の記載内容だけでは理由がないとみられ
る場合であつても、審査庁は、すべからく右の手続をなした上で審査請求人をして
新たな主張をさせ、理由の追加、変更をする場合には、追加、変更をさせ、不明な
ところは釈明するなどして審査請求の申立するところを明らかにし、必要があれば
事実についても取調べをなし、その結果理由なしとの結論に達すれば、その旨裁決
をなすべきで、従つて理由の有無に当つては基準法九四条三項の手続をなすことが
不可欠である。
四、ところで被告の主張するところは、審査請求書の申立理由として記載されてい
る内容が、基準法所定の事項に関連性を有しない事項をもつてその理由とし、これ
が一見して明白に理由がない場合に当るというものであるが、乙一号証から明らか
に認められるように原告らの審査請求の主たる理由は、本件確認にかかる建築物が
原子炉を含む原子力施設として基準法の規則に服すべきであるということであり、
(基準法に関連性を有しないとは云えないものであるから)、基準法上理由がある
かないかということは、基準法九四条三項の手続を経て始めていいうることであ
る。
五、よつて被告が原告らの審査請求を基準法九四条三項の手続を経ないで却下した
ことは違法である。
第二、しかし原審判決は、次の二点で誤つている。
一、原判決は折角審査請求において審査されるのは、「理由の有無の判断に必要な
要件」及び「理由の有無」と分析しながら、公開による口頭審査制度の趣旨から、
口頭審査に当つて新たな理由も陳述でき、追加変更もまた審査庁は釈明することも
できるから審査請求書の記載内容からだけでは理由がないとみられる場合でもなお
公開による口頭審査手続をなすことが不可欠だとしている。原判決はこの手続を要
するのは、理由の有無の審理に当つてとは言つているものの、これでは審査庁は審
査請求を受けた場合は要件の審理であると否とにかかわらず常にこの手続をしなけ
ればならず、この手続をしない場合は全くないということに帰着し矛盾している。
この厳格な手続を要するのは、原判決のいうとおり「理由の有無」に限られるのが
当然で、「要件」審査にはこの手続を要しないというべきで、控訴人はこの限りで
は原判決を支持するものである。
しかし、原判決が、このように矛盾した判断をしたのは、基準法九四条三項の決意
を誤り且つ必要以上に強調したことと、控訴人が、被控訴人らの申立理由に対し、
基準法と関連性を有しない事項をもつて申立理由としているから「理由がない」と
主張している字句に引ずられこれを理由の判断と錯覚したことによるものと思われ
る。
(一) そこで、基準法九四条三項の公開による口頭審査の制度は、要件裁決にも
本案裁決にも、およそ裁決をするには、この手続によらなければならないものかど
うかである。基準法九四条三項の条文には、「口頭審査を行わなければならない」
と命令的に定めていることから、口頭審査が絶対的のようにも読める。また基準法
には民事訴訟法二〇二条のような必要的口頭弁論についての例外規定が置れていな
い。
しかし、基準法九四条三項は、必ずしも口頭審査を行わない場合を否定する趣旨で
はなく、まず第一に、原則として口頭審査を行わなければならぬが、その際には、
公開でなければならないという公開性と第二に請求人、特定行政庁、建築主事、そ
の他の関係者の出頭を求めることを必要とすること、を特に注意的に定めた規定と
解しうる。もし、この規定を口頭審査の絶対必要性を定めたものと解すると、司法
手続である民事訴訟法と権衡を失する。
一般的に行政上の不服申立制度において、民訴に比して手続的保障を手厚くし、ま
た建築審査会の審査手続の場合だけを、他の行政の審査分野におけるそれよりも権
利保護を手厚くしなければならぬ合理的、必然的理由は極めて乏しい。
そこで民訴の規定をみると、民訴では口頭弁論を開くことを原則としているもの
の、二〇二条では、訴が不適法とみられ、補正を期待しえない時には、口頭弁論を
経ずに訴却下の判決をなしうることを定めている。このように本来的な、また最終
段階としての権利保障手続である裁判手続においてすら、口頭弁論を開かずに却下
判決をなしうるのであるから、建築行政が、特にこれよりも権利保障の面で強く要
請されるものがあることが証明されねばならないが、これは極めて困難である。
次に行政不服審査で口頭審査手続を採るべきか否かについては、一般原則として、
行政不服審査法二五条が原則的書面審理主義を採用したことから、基準法九四条三
項との関係が問題になる。一見するといわゆる一般法、特別法の関係にみえる。し
かしこの基準法のこの規定は、審査法制定以前の訴願法の下で定められたものであ
り、訴願法での厳格な書面主義による審理手続上の不備を是正し(「建築審査会の
裁決と口頭審査」高柳信一行政演習II三二頁以下)、行政庁の意思によつてのみ
でなく、当事者の意思にもとずいても、口頭審査をすべきことを示すための規定で
あつた、と解することもできるのである。その意味では、この規定は不服審査法二
五条と同旨を目的としたものである。従つて全ての場合に口頭審査を要件化してい
るものではない。更に原判決も指摘するごとく受理後一か月以内に裁決を下すこと
が要求されていることからも、不適法な訴までも口頭審査を要求するものではな
い。要するに、建築審査会での審査手続が民訴手続やその他の行政分野における審
査手続に比して、特別なものを必要とするほどの特殊性は認められないのである。
(「建築基準法九四条三項の法意」荒秀著「都市開発」一九七〇・七-一〇六
頁)。
(二) 控訴人が「被控訴人らの主張が理由がないことが一見して明白であり補正
の余地がない」と主張しているのは、原判決のいう「理由の有無の判断に必要な要
件」を欠いていることを指しているのである。
すなわち、控訴人は当初から「理由の無い」という中に要件が欠けている場合と、
要件は充足しているが理由がない場合の二つを莫然とながら意識し、控訴人が理由
がないと云つているのは、正にこの要件が欠けている不適法な場合を指しているの
である。従つて正確には被控訴人らの請求は不適法であるとして却下すべきもので
ある。
二、次に原審判決は「要件」と「理由の有無」を理論的に分析しながら、前述の如
く、実際には「理由がない」という言葉にとらわれるか或は、審査請求の理由を誤
解し(原判決が「他の法令の各規定と基準法の規定の対比をなし、更に法律解釈を
なした上ではじめて(その規則に服さないことが)なしうるので、かかる複雑な論
証過程を経てはじめてその結論が導き出されるものが一見して明白に理由がないと
云えるかどうか疑わしい」といつて、このようなことが理由の有無の判断と錯覚し
ている。)、「要件」と「理由の有無」を混同している。
しかし、「要件」と「理由の有無」(確認行為の対象は何か)は明確に区別しなけ
ればならない。
確認行為とは、建築物の計画が当該建築物の敷地、構造および建築設備に関する法
令等の定める「技術的に具体的な制限基準」に適合するか否かを確定する行為であ
つて、これら法令に右基準の存する場合に初めて適合の有無が生ずるので、この定
めのない場合は適合の有無を確定することができないのである。
被控訴人らの請求の理由は、いずれもこの定めのない場合に該当するから、この意
味での理由の有無を問うことができないのである。
一方、一般に要件とは、(1)不服申立ての対象である処分または不作為が存在
し、それが他の法令によつて不服申立ての除外事項とされていないこと (2)不
服申立人が当事者能力と当事者適格を有すること (3)権限ある行政庁に不服を
申立てること (4)不服申立期間を遵守すること (5)法定の形式を具備した
不服申立書を提出することである。
そして本件で問題になるのは主として(3)であり、控訴人建築審査会が被控訴人
らが請求しているようなことを審査する権限があるか否かである。
この点については、控訴人が原審で主張しているように、原子力に関連して発生す
る危険性に対する監督規制権は、内閣総理大臣および原子力委員会を軸とした政府
に専属せしめられており、規制法には建築物自体は定められていないし、建築主事
にかかる高度な科学知識能力を必要とする事項につき、適切な判断を期待すること
は困難であるところから、やはり基準法は建物自体の安全、衛生を対象としている
だけであると考えるのが正当である。
そこで被控訴人らの請求理由の中に基準法に関連するものが僅かでもあるかとみれ
ば全く存在しない。
被控訴人らの請求理由を要約すると (1)三菱と住民との間に交わされた原子炉
設置に関する約束違反であること、(2)原子力施設の設置が立地条件の点で安全
でないこと (3)原子炉から放出される放射線が危険であること (4)三菱は
企業採算の点ばかり考えて、住民の利益を無視していること、である。
これらの点は、私法上の問題を除いては、原子力そのものの安全性、危険性に関す
るものであつて、原子炉施設とは別個の存在である建築物自体に関する主張でない
ことは明白である。
かかる場合に控訴人審査会としては、かかる不服申立てに対する審査権が自己に存
しないとして、却下することは正当といわなければならない(「建築基準法九四条
三項の決意」荒秀著「都市開発」一九七〇・七-一〇七頁)。
以上の如く、本件請求理由は、要件の有無に関するものであり、これについては補
正の余地もないものであり、控訴人がこれを不適法として却下したことは正当であ
る。
第三、本件審査請求は、審査請求人である被控訴人らに当事者適格が存在しないか
ら、不適法である。
すなわち行政処分に対する不服申立てをなしうるものは、「行政庁の処分に不服が
ある者」であるが、それは「違法又は不当な行政処分により直接に自己の権利また
は利益を侵害されたもの」である。
ところで被控訴人らは、本件確認処分によつては、何ら直接に権利又は利益を侵害
されていない。
何となれば建築確認の対象である建物自体によつて被控訴人らの住居の安全が侵害
されるというのではなく、原子炉施設の設置により、保安上危険かつ衛生上有害で
あるというものだからである。被控訴人らは、本件建物の具有する性質は一にかか
つて被収容施設である原子炉の性質、安全性、立地条件等々に密接に関連すると述
べ、中味が危険なものだからこれを収容する建物も危険であるとの論法をとつてい
る。
しかし、それは建築基準法上の建物そのものの危険性を理由としているのではな
く、核物質法上の問題を理由としているのであつて、建築確認の対象たる建物自体
によつて、住居の安全を害され、保健衛生上有害だというものではない。従つて被
控訴人らは、本件建築確認行為によつては、何ら直接権利ないし利益を侵害された
ということはできない。被控訴人らは、元来、原子炉設置の許可を争うべきで、規
制法七〇条においてその救済方法も存在するのである。
よつて被控訴人らは、本件建築確認の取消しを求める審査請求の利益を有しないか
ら、請求人としての当事者適格を有しないものである。従つて不適法な審査請求で
あり、基準法九四条三項の手続を経ず却下の裁決をしても何ら違法ではない。
第四、建築基準法第六条一項は、建築等の計画が「当該建築物の敷地、構造および
建築設備に関する法律並びにこれに基く命令及び条例の規定に適合」するか否かを
確認行為の対象としている。そして基準法上、敷地、建築物、建築設備に関する定
義が置かれ、更にこれに対して具体的技術的規定がある。そしてこの確認行為は基
準法第一条の立法理由からして、建築物の敷地、構造、設備について、安全、衛生
上の見地から最低の技術的基準を対象としているのである。
そしてこれら技術的規定自体が、建築物の安全、衛生上の見地から定められている
のである。
従つて「枝術的に具体的な制限基準」に合致したものは、とりもなおさず、基準法
第一条の立法目的に合致しており、無意味な確認ではありえない。
そこで、確認行為の対象となるものは建築物(この場合は特殊建築物)自体の技術
的基準であるから、単なる私法上の権利関係に関する事項や、建築物自体の安全、
衛生という観点以外からの公的な規制(例えば営業許可の有無)は確認の対象外で
ある。更に基準法以外の法令が建築物の敷地、構造、設備につき規定を置いていて
も、それだけでは建築主事が判断しえないような抽象的基準しか定めていない場合
も確認の対象外である。これは元来確認制度が採用されたのは、基準法以前の市街
地建築物法の建築許可制度で認められていた行政庁の裁量の幅を狭め、あるいは排
除し、法令の適用を画一的、機械的に行なわしめることにあつたのであるから、そ
の判断の根拠となる基準は明確化されなければならないからである。更に、建築物
についての技術的判断であつても建築主事の能力の面から一定の限界が存する。
すなわち、現行の建築主事は、その資格検定に合格した者でなければならないが、
その検定は「建築主事として必要な建築行政に関する知識及び経験について行う」
ことになつている(基準法第五条)。その内容は同法施行令第四条で建築計画、建
築構造、建築材料、建築施行、基準法令と都市計画法、およびこれらの外の建築行
政に必要な知識と定められている。このような検定内容からは、高度な科学的知
識、能力を必要とする事項についての適切な判断を期待することは、困難である。
このことは、確認行為の最終的責任を負う特定行政庁についても同様である。
そこで、規制法の内容が、右の意味で建築主事の能力を超した事項のみで構成され
ているのか、あるいは建築主事が基準法上の観点からも判断しうる部分があるか検
討してみる。
原子力関係法の権限系統をみると、原子力の研究、開発、利用については、総理府
に置れる原子力委員会が企画、審議、決定を行ない(原子力基本法第四、第五
条)、その執行権は、既ね内閣総理大臣が有し、ただその執行にあたつては、原子
力委員会の意見を尊重しなければならないとしている(原子力委員会設置法第三
条)。また規制法をみると、制練、加工、再処理といつた事業の許可、ならびに原
子炉の設置、運転の許可、また国際規制物質の使用許可等、いずれも内閣総理大臣
の権限に属せしめられており、規制内容には建築物自体は定められていない。すな
わち、規制法第二四条一項四号で、原子炉の設置基準の一つに「原子炉設量の位
置、構造及び設備が核燃料物質-核燃料物質によつて汚染された物-又は原子炉に
よる災害の防止上支障がないこと」があげられているが、この原子炉施設とは、基
準法上の建築物ではなく、原子炉と一体となつた施設といえる。基準法上の建築物
および住民の安全に関連する規定としては、原子炉の設置、運転等に関する規則
(総理府令)の第一条の二第一項二号が許可申請書の記載事項として「リ、原子炉
格納施設の構造及び設備(イ)構造(ロ)設計圧力および設計温度並びにろうえい
率(ハ)その他の主要事項」を、また第二項六号は申請書の添付書類として「原子
炉施設を設置しようとする場所に関する気象、地盤、水理、地震、社会環境等に関
する説明書」を記している。
本件についていえば、住民に対する危険に関するものとしては「地震、社会環境」
として考慮の対象とされるわけだが、しかし、その判断は原子力委員会の意見を聞
き、内閣総理大臣が行なうことになつているわけである(規制法第二四条二項、第
二三条)。その他原子炉格納施設も、原子炉の安全という観点からの監督権が建築
主事にはないことは科学技術庁設置法第九条四項、六項からもうかがえるところで
ある。
以上の規定から総合して考えると、原子力に関連して発生する危険性に対する監督
権は、内閣総理大臣および原子力委員会を軸とした政府に存し、建築主事の確認は
基準法が本来の目的とした建築物自体の安全性を対象としているのみと解される
(荒秀「都市開発」一九七〇・六-六九頁)のである。
(別紙当事者目録 省略)

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