弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
     昭和二十四年一月二十三日に行われた衆議院議員選挙において、新潟県
第二区中同県中蒲原郡a村における選挙を無効とする。
     訴訟費用は被告の負担とする。
         事    実
 原告訴訟代理人は、主文と同趣旨の判決を求める旨申立てその請求の原因とし
て、
 原告は、昭和二十四年一月二十三日に行われた衆議院議員総選挙において、新潟
県第二区から立候補し、選挙の結果次点者と決定せられたものであるが、右選挙区
中、同県中蒲原郡a村における選挙(以下本件選挙之称する)は、左の事由によつ
て無効である。
 即ち、
 第一、 本件選挙においては投票管理者及び開票管理者は、衆議院議員選挙法
(以下単に法と称する)第二十条又は第四十四条に従つて、a村選挙管理委員会
(以下単に委員会と称する)によつて選任せられたものではなく、また投票立会人
も法第二十四条第一項に従つて同委員会によつて選任せられたものでもなければ、
同条第二項に従つて投票管理者によつて選任せられたものでもない。更にまた開票
立会人中Aのみは、法第四十七条第一項に従つて議員候補者たる原告によつて届出
られたものであるが、その他のB、C、Dの三名は、議員候補者によつて届出られ
たものでもなく同条第十項に従つて開票管理者によつて選任せられたものでもな
い。これらの投票管理者、開票管理者、投票立会人及び開票立会人(但し開票立会
人中Aを除く)は、いずれもなんら権限のないa村長E又は同村役場吏員から任意
に依頼せられた法律上資格のないものでおり、本件選挙は選挙の手続に必要た機関
を欠き、かようか無資格者によつて事実上投票手続及び開票手続が行われたに過ぎ
ない無効のものである。
 第二、 委員会は選挙事務の管理執行についてその職責を尽さなかつたため、次
のような選挙の規定に違反する事実を生じた。
 即ち、
 (一)、 委員会が上述の通り選挙の手続に必要な機関である投票管理者、開票
管理者、投票立会人を選任しなかつたために、投票手続及び開票手続が無資格者に
よつて為された違法を生じたばかりでなく、
 (二)、 右委員会が投票用紙及び同封筒の適当な管理を行わなかつたために、
投票期日前に投票用紙約百三十枚、同封筒約四十枚が村長の指示によつて同村役場
書記であり、当時右委員会の事務員であつたH1の手を経て、多数の選挙人に不法
に配付せられ、その結果、虚偽の不在投票及び二重投票が相当数あらわれて開票事
務の著しい混乱を招いた。
 (三)、 また右配布が村長の指示によらないで、右委員会によつて為されたと
しても、(イ)普通投票のために為されたものとすれば、その交付の方法は法第二
十五条第一項、衆議院議員選挙法施行令(以下単に令と称する)第十六条の投票管
理者は選挙の当日投票所において投票立会人の面前において選挙人を選挙人名簿に
対照した後これに投票用紙を交付すべき旨の規定に違反して為されたものであり、
(ロ)また若し法第三十三条の規定による投票即ち、所謂不在投票のために為され
たものとすれば、令第二十六条乃至第二十八条所定の手続によつて、委員会委員長
が交付し又は発送したものでない違法があるばかりでなく、その投票用紙による投
票については令第二十九条以下の規定による管理が為されなかつた違法がある。
 以上いずれの点から見ても、本件選挙は自由公正に行われたものではなく明かに
選挙の規定に違反する無効のものである。
 第三、 なお令第三十二条によれば、投票管理者が不在投票の送致を受けたとき
は、送致に用いられた封筒を開披し、投票はそのままとれを保管し、令第三十四条
の手続を経て投票函閉鎖前にその保管する投票を投函すべきであるにかかわらず、
本件選挙においては投票管理の事務を執つた者が不在投票を投票用封筒に在中のま
ま放置して右手続を経て投函するととなく、また開票事務を執つた者が先ず投票函
を開いて在中の投票を点検し、しかる後右不在投票を投票用封筒から取り出して点
検したため、不在投票者の何人が議員候補者の何人に投票したかが明かとなり、選
挙の秘密が害せられる結果を生じたのであつて、この点においても本件選挙は選挙
の規定に遠反した無効のものである。
 第四、 また法第二十三条によれば投票所は午前七時に開き、午後六時に開ぢる
とととなつており、法第三十二条によれば、投票所を閉ずべき時刻に至つたとき
は、投票管理者はその旨を告げて投票所の入口を鎖し、投票所に在る選挙人の投票
が結了するのを待つて投票函を閉鎖すべきものと規定せられているにかかわらず、
本件選挙においては定刻より二、三十分遅れて投票所が開かれ、且つ投票函を閉鎖
すべき時刻に至つても、右法定の手続が採られなかつた違法がある。
 第五、 法第二十二条によれば、投票管理者は選挙期日より少くとも五日前に投
票所を告示すべきであるにかかわらず、本件選挙においてはかような告示が為され
なかつた違法がある。
 第六、 法第五十四条によれば、開票管理者は開票録を作り、開票立会人と共に
これに署名すべきであるにかかわらず、本件選挙においては開票録原本の存在が不
明であり、また開票立会人Aは開票録に虚偽の記載があることを理由として署名を
拒絶した事実があつて、本件選挙は右規定に違反する違法がある。
 以上第一乃至第六の如く、本件選挙は法第八十二条に所謂選挙の規定に違反する
ものであるが、新潟県第二区における最下位当選者であるFの得票数は二万九千二
百二十二票であり、原告の得票数は二万八千七百三十九票であつて、その差は四百
八十三票であり、a村における有権者数は二千五百二十八人であり、そのうち本件
選挙で投票した者は千六百二十五人であるから、前示違反は同条に所謂選挙の結果
に異動を及ぼす虞れがある場合に該当する。よつて本件選挙を無効とする判決を求
めるために本訴に及んだと述べ、
 被告訴訟代理人は、原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とするとの判
決を求め、答弁として、
 原告主張の請求原因事実中、原告が昭和二十四年一月二十三日に行われた衆議院
議員総選挙において、新潟県第二区から立候補し、選挙の結果次点者と決定せられ
たこと及び右選挙における最下位の当選者たるFと原告との各得票数、その差異、
a村における当時の有権者数並びに投票数はいずれもこれを認める。しかし、
 第一、 本件選挙における投票管理者及び開票管理者はいずれもGであるが、同
人は昭和二十四年一月八日に開催せられたa村選挙管理委員会によつて適法に選任
せられたものであり、投票立合人たるB、C、Dもまた右委員会によつて選任せら
れたものである。
 また開票立会人中Aは原告主張の通り議員候補者たる原告の届出によつて就任し
たものであり、B、C、Dの三名は、いずれも右委員会によつて選任せられたこと
となつているが、この三人が開票立会人たることについて開票管理者たるGは異議
を唱えず、そのまま開票に立会わせたのであるから、同人がこれを選任したも同様
である。従つて本件選挙においては、適法に選任せられた投票管理者、開票管理
者、投票立会人及び開票立会人によつて投票手続及び開票手続が行われたのであつ
て、これ等の必要機関を欠いたことはなく、また無資格者によつて如上の手続が執
行せられたものでもない。
 第二、 右選挙管理委員会が選挙事務の管理執行について、その職責を尽さなか
つたと云う事実はない。即ち、
 (一)、 本件選挙における投票管理者、開票管理者、投票立会人及び開票立会
人はいずれも上述の通り適法に選任せられたものである。
 (二)、 投票用紙約百三十枚、同封筒約四十枚がa村長の指示によつて同役場
書記であり、当時右委員会の事務員であつたH1の手を経て多数の選挙人に不法に
配布せられた事実はない。
 (三)、 選挙当日投票所で投票した選挙人については、法定の手続によつて一
々選挙人名簿と対照して投票用紙を交付したのであつて、この分については手続上
なんらの瑕疵がない。尤も投票用紙が一枚多く交付せられたことは選挙当日午前中
に判明したが、そのまま投票を続け開票に当り、二枚の投票が密着して折疊まれ、
そのうち一枚が白票のままであることが発見せられたので、交付の際二枚を一枚の
投票用紙と思い違えて交付したものであり、一枚が白票であつたため得票数にはた
んらの影響がない。不在投票については、成規の証明書によるものを取交ぜ百二十
三枚の投票用紙を交付したが、投票用封筒は、地方事務所から配布を受けたものが
四十枚に過ぎなかつたので、その不足分八十三枚は普通の私物を交付した。しかし
右投票用紙百二十三枚のうち投票せられたものは百二票、投票されないものは二十
一枚であり、右百二票のうち投票用封筒として私物の封筒を使用した八十二票は全
部無効投票として不受理の決定がなされ、受理されたものは二十票にすぎない。仮
りに右二重投票及び不在投票が問題となるとしても、前者は一票、後者は百二十三
票、合計百二十四票に過ぎないのであり、しかも新潟県第二区における最下位の当
選者Fと次点者原告との得票数の差は四百八十三票でおるから、原告が右百二十四
票を全部獲得すべきものとしても、当選者には影響がなく、選挙の結果に異動を及
ぼすべきものではない。
 第三、 投票管理の事務を執つた者が不在投票を投函しなかつた事実は不知、仮
りに投票函閉鎖前に不在投票が投函せられなかつたとしても開票の事務を執つた者
が不在投票を投票用封筒から取出してそのまま一括して一般投票に混じて点検した
のであるから、選挙人の何人が候補者の誰に投票したかが解る筈がたく、選挙の秘
密投票制及び無記名投票制を蹂躙したことにはならない。
 第四、 本件選挙においては、午前七時に投票所を開き、午後六時にこれを閉ぢ
たのであつて、原告の主張するような違法はない。
 第五、 投票管理者Gは選挙の期日より五日以上前たる昭和二十四年一月八日
に、投票所を告示したのであるから、この点についても原告の主張するような違法
はない。
 第六、 本件選挙の開票録については同一内容のもの二通作成せられ、その一を
原本とし、他を副本としたのであり、検証の際には原本を発見することができなか
つたが、これは何処かに存在するものであり、副本は検証の際存在しており、これ
によつて開票の結果を知ることができるのであるから、原本の存在不明を理由に本
件選挙の無効を主張するのは失当である。
 以上の如く、本件選挙はなんら法第八十二条に所謂選挙の規定に違反するもので
なく、また当事者間に争のない最下位の当選者たるFと次点者たる原告との各得票
数の差及びa村における有権者の数等から見れば、なんら選挙の結果に異動を生ず
る虞がないことが明かであるから、本件選挙の無効を主張する本訴請求は理由がな
いと述べた。
 証拠として、原告訴訟代理人は証人H1、H2、H3、H4、G、H5、C、
D、B、A、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H1
4、H15、H16、H17、H18の各証言及び検証の結果を援用し乙第十三号
証の成立を認めてこれを援用し、乙第十一、第十二、第十四号各証の原本の存在並
びにその成立、その余の乙号各証の成立及び乙第十五号証が本件選挙の開票録原本
の写であることに不知と述べ、被告訴訟代理人は乙第一乃至第十五号証を(但し乙
第十一、第十二、第十四号証はいずれも写を以て)提出し、証人H1、H2、H
3、H4、G、H5、B、H10の各証言を援用し、乙第十五号証は現在三条検察
庁に押収中の本件選挙の開票録と題する書面の写であると述べた。
         理    由
 原告が昭和二十四年一月二十三日に行われた衆議院議員総選挙において、新潟県
第二区から立候補し、選挙の結果次点者と決定されたことは当事者間に争がない。
よつて右選挙区中、中蒲原郡a村における選挙の効力について按ずるに、
 第一、 原告は右a村における本件選挙においては、投票管理者及び開票管理者
はいずれも同村選挙管理委員会によつて選任せられたものでなく、なんら権限のな
い同村長E又は同村役場吏員によつて選任せられたものであると主張するが、かよ
うな事実を認めるに足りる証拠はとにもなく、却つて証人H1、H2、H3、H
4、G、H16、H18の各証言によれば、右投票管理者及び開票管理者はいずれ
もGであり、同人は昭和二十四年一月八日に開催せられたa村選挙管理委員会によ
つて選任せられたものであることを認定することができる。従つて右原告の主張は
採用できない。しかしながら、上記各証人及び証人C、D、B、Aの各証言を綜合
すれば、右委員会は前掲日時に一回だけ開催せられ、上記の通り投票管理者及び開
票管理者の選任をした以外はなんら市町村の選挙管理委員会として為すべき職務を
遂行せず、投票立会人の選任をはじめその職務の一切を挙げて村長、助役、役場書
記等の所謂村役場事務当場に一任する旨の決議をして散解したこと(乙第一号証の
証言と題する書面には、「選挙管理委員会事務当局に一任することに決定致しまし
た」とあるも右記載は信用し難い)従つて右選挙について、投票立会人として投票
事務に関与したB、C、Dの三名はいすれも右選挙管理委員会によつて選任せられ
たものではなく、また開票立会人として開票事務に関与した右三名及びAの四名
中、Aのみは議員候補者たる原告の届出によるものであるが、他の三名は議員候補
者の届出によるものでもなく、また開票管理者たるGによつて選任せられたもので
もなく、これら投票立会人及び開票立会人(但し開票立会人Aを除く)はすべて村
長、助役又は役場書記の委嘱によるものであつて、法定の手続によつて選任せられ
たものでないことを認定することができる。尤も本件の証拠資料によつては、投票
管理者であり開票管理者でおるGが投票事務又は開票事務を執行するに当つて、右
三名が投票立会人又は開票立会人としてその職務を執行するのに対し異議を述べた
形跡は認められないから、右三名は法第二十四条第二項又は法第四十七条第十項に
よつて適法に選任せられたことに帰するのではないかと云うととも考えられるが
(開票立会人に関する被告の右様の主張参照)、単に異議を述べなかつたと云うこ
とと選任行為とはその性質を全然異にするものであるから、Gが異議を述べた形跡
がないと云う一事によつて、なんら権限のない者によつて選任せられた前記三名が
投票立会人及び開票立会人としての資格を具有するに至るものと解することはでき
ない。また乙第二号証は昭和二十四年一月二十日附a村選挙管理委員会長名義を以
てDに宛てた投票及び開票立会人選任通知書であるが、右書面が投票日の前日たる
同月二十二日にH18からDに手交されたと云う証人Dの証言は信用しがたく、仮
りにかような事実があつたからと云つて前掲採用の各証言に対照すれば、前記認定
を覆えして、Dが右選挙管理委員会によつて投票立会人として選任せられたものと
認定するととはできないのみならず、開票立会人は選挙管理委員会又は委員長によ
つて選任せらるべきものではないから、かような通知書の受領によつてDが開票立
会人たる資格を取得する理由がないことは云うまでもない。而して市町村の選挙管
理委員会が都道府県の選挙管理委員会の指揮監督の下に衆議院議員の選挙に関する
事務を処理するものであり、選挙の民衆化を図り、その自由、公正を保持するため
に、従来普通の地方行政庁たる市町村長の管理するところであつた選挙に関する事
務を執行する為めに特に設けられた機関であつて、その職務権限も単に投票管理
者、開票管理者及び投票立会人の選任ばかりでなく、他にも重要な職務権限を有す
るととは法又は令を通覧すれば容易に了解せられるところであり、市町村の選挙管
理委員会がその職務権限を尺すか否かが、選挙が自由且つ公正に行われるか否かに
重要な関係を有するもの<要旨第一>であるときは云うまでもない。従つてa村選挙
管理委員会が投票管理者及び開票管理者の選任以外の職務権限の一切を
挙げて村役場事務当局(たとえそれが管理委員会事務当局であつても同様である)
に一任して顧みなかつたことはそれ自体選挙の規定に違反するものと云わなければ
ならない。また投票立会人及び開票立会人は選挙が自由且つ公正に行われるかどう
かを監視するための必要且つ重要な機関であり、さればとそ法はその選任方法等に
ついても詳細な規定を設けているのであるから、本件選挙において前記認定の通
り、なんな権限のない者によつて選任せられた者が投票立会人及び開票立会人とし
て投票及び開票事務に関与したことは、これまた明かに選挙の規定に違反するもの
と云わなければたらない。なお証人H9、H10、H11、H18、H5、C、
D、Bの証言によれば、投票開始の際、投票立会人に選任されていたBが遅参した
為め、約五分間、有権者たるH5が投票立会人として投票事務に関与したことが認
められるが、証人H18の証言によれば、右は役場書記のH18が臨機の処置とし
て投票管理者たるGの承認を得て依頼したものであり、結局法第二十四条第二項に
よつて投票管理者によつて選任せられたものと認められるから、H5が右のように
投票立会人として一時投票事務に関与したことは違法を以て目すべきではない。
 第二、 a村選挙管理委員会が昭和二十四年一月八日に一回だけ開催せられ、同
日投票管理者及び開票管理者を選任したのみで、投票立会人の選任その他一切の職
務権限を挙げて村役場事務当局に一任し、なんら市町村管理委員会としての職責を
尽さなつたことは上記認定の通りであり、これがため、
 (一)、 投票立会人及び開票立会人の選任が無権限者によつて為された違反を
生じたことは上記認定の通りであるが、
 (二)、 証人H14、H1、H17、H16の各証言によれば本件選挙に使用
せられた法第三十三条の規定による投票(以下単に不在投票と称する)の用紙及び
その投票封筒の大部分は令第二十六条以下の規定に従つて管理委員会の委員長に対
してその交付が請求せられ法定の手続を経て委員長から交付せられたものではな
く、委員会から選挙に関する事務を一任せられたa村村長の指示に従つて、同村役
場窓口において、H1等同村役場吏員の手によつて、その交付を請求し来る者に随
時交付せられ、かようにして交付せられた不在投票用紙及び投票用封筒は約百人分
に達し、またその投票用封筒も所轄地方事務所からの送付が少なかつた為め、約四
十枚は衆議院議員選挙法施行規則の定める成規の封筒であるが、それ以外は同役場
で使用していた普通の封筒であつたことを認定することができ、また証人H13の
証言によれば、同人はH19外七人の有権者の為めに右窓口より投票用紙の交付を
受け、右各有権者の自宅を訪問して議員候補者の氏名(右八名中少くとも六名につ
いては当該有権者以外の者の指示に従つて)を投票用紙に代書し、委員会宛に郵送
した事実を認めることができ、また証人H15及び同H2の証言によれば、右村役
場勤務のIが同役場吏員のH1の依頼によつて差出人不明の不在投票の為めに、当
時旅行不在中の同人の妹H15の名義を貸与使用せしめた事実を認めることができ
る。尤も本件選挙における不在投票の総数が百二票であつたことは原告の明かに争
わないところであり、証人H13、H2の証言によれば、右百二票のうち前示H1
9外七名の名義の投票、及び成規の投票用封筒を使用せず又は法定の証明書を使用
しない投票等八十二票は投票管理者においてすべてとれを無効とし、有効投票と決
定されたものは二十票にすぎなかつた事実を認定することができるから、後記認定
の最下位当選者Fと原告との得票数の差に対比して、上記不在投票に関する違法そ
のものは本件選挙の結果を左右するものでなかつたことを認定することができる。
 (三)、 原告は本件選挙においては、投票所における投票用紙の交付が法第二
十五条第一項、令第十六条の規定に違反してなされた旨主張するが、かような事実
を認定するに足りる証拠はなにもない。
 尤も証人A、H2の証言によれば、右投票所における投票用紙交付の際、投票所
入場者数に比して一枚多くの投票用紙が交付せられた事実を認定することができる
が、右証言によれば、右は密着した二枚の投票用紙を一枚と思い誤り一人の有権者
に交付したものであり開票の際右二枚の投票用紙は密着したまま折畳まれ、うち一
枚は白票のままであつたことが発見された事実を認定することができるから、右投
票用紙交付の違法はなんら本件選挙の得票数に影響がなかつたものと云うことがで
きる。
 第三、 証人C、D、A、H6、H16の各証言によれば、本件選挙において、
投票管理者Gは不在投票中二十票を有効投票としてその受理を決定したが、令第三
十四条第二、三項の規定<要旨第二>に従つて右決定後直ちにその投票用封筒を開披
して投票を投函せず、これを投票用封筒在中のまま投票監視官の机上に
抛置して投票函を閉鎖した事実及び開票の途中において右事実が発見せられたが、
開票管理者等は投票用封筒を開披してこれを点検した事実を認定することができ
る。証人Bの証言中右認定に反する部分は採用しない。而して令第三十条第一項に
よれば、投票用封筒の表面には不在投票者の氏名を記載することとなつているか
ら、かような方法によつて不在投票の開票点検を行うときは、反証ない限り選挙人
の何人が議員候補者の何人に投票したかが少くとも開票事務に関与する者に了知せ
られる虞が多分にあるものと云うことができる。
 従つて本件選挙においても、右不在投票二十票に関しては投票の秘密保持に欠け
る違法があつたものと云うことができる。
 第四、 法第二十三条によれば、投票所は午前七時に開き、午後六時に閉じるこ
とと定められているが、証人H9、H10、H11の証言を綜合すれば、本件選挙
において投票所は右定刻より約二十分遅れて開かれた事実を認定することができ
る。右認定に反する証人H1、G、C、D、B、H18の各証言は措信しない。し
かし右開所遅延のため投票を断念して帰宅した者があつたような事実を認めること
ができる証拠はなにもないから右開所遅延は本件選挙の結果に影響を及ぼさなかつ
たものと云うことができる。また右投票所は定刻に至つても閉ぢられず、投票函閉
鎖等の手続が採られなかりたという原告主張の事実はこれを認定するに足りる証拠
はなにもない。
 第五、 証人H2、G、H18の各証言を綜合すれば、本件選挙においては法第
二十二条に従つて選挙期日たる昭和二十四年一月二十三日より五日以上前である同
月八日に投票所の告示が為されたことを認めることができ、これを覆すに足りる証
拠はなにもないから、かような告示がなされなかつたと云う原告の主張は採用でき
ない。
 第六、 法第五十四条によれば、開票管理者は開票録を作り、開票に関する顛末
を記載し、開票立会人と共にこれに署名し、議員の任期間市町村の選挙管理委員会
においてこれを保存しなければならないこととなつているが、本件選挙において開
票録が作成せられた事実及び開票立会人中Aがその記載が真実に反することを理由
としてこれに署名することを拒んだ事実は証人G、H1、D、A、H18の各証言
によつて認められるが、右各証人及び証人H8、H17の各証言、乙第十二号証、
同第十五号証及び検証の結果によつても、乙第十二号証又は同第十五号証が右開票
録の原本の写であること、その原本の所在<要旨第三>従つてその記載内容を認定す
ることができない。しかし開票録は開票に関する手続及び開票の結果等を記載す 要旨第三>る記録であつて、一種の証明文書に外ならないから、本件選挙における開
票録の原本の存在及びその記載内容が不明であつても、との一事によつて本件選挙
の効力が左右せられるものではない。
 被告が援用した各証人の証言中及び乙第三乃至第五号証、第八乃至第十一号証の
記載中以上の認定に反する部分はいずれも信用しない。
 要するにa村における本件選挙においては、同村の選挙管理委員会が投票管理者
及び開票管理者を選任したのみで投票立会人の選任をはじめ市町村の選挙管理委員
会として為すべき一切の職務権限を挙げて村役場事務当局に一任して顧みなかつた
事実及び投票立会人及びAを除く開票立会人がいずれも無権限者によつて選任せら
れた無資格者であり、これらの無資格者がそれぞれ立会人として投票事務及び開票
事務に関与した事実はいずれも前掲第一で認定した通りであり、これらの事実がそ
れぞれ法第八十二条で云う選挙の規定に違反する事由に該当するととは同項で説示
した通りであるのみならず、これらの事実に前掲第二、第三、第四、第六で判示し
た違法乃至不始末の事実を合せ考えれば、a村における本件選挙は選挙の自由、公
正、厳粛を旨とする法の精神を無視して行われたものであり、殆ど選挙の体を具え
たいものであることを窺うことができ、かような綜合的観点からしてもまた本件選
挙は法第八十二条で云う選挙の規定に違反するものと云うことができる。
 而して新潟県第二区における最下位当選者たるFの得票数は二万九千二百二十二
票であり、次点者たる原告の得票数は二万八千七百三十九票であつてその差は四百
八十三票であり、a村における有権者数は二千五百二十八人であり、そのうち本件
選挙で投票したものは千六百二十五人であるから、本件選挙を無効とし改めて適法
なる手続によつて選挙をしなおすにおいては、選挙の結果に異動を及ぼす虞がある
ものと云うことができる。よつて本件選挙を無効とする。
 以上の次第で、本訴請求は理由があるから、民事訴訟法第八十九条を適用して主
文の通り判決する。
 (裁判長判事 大野璋五 判事 柳川昌勝 判事 濱田宗四郎)

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職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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