弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人酒見哲郎の上告理由第一点について。
 記録によれば、本訴は、被上告人が「互」D共同企業体との間に締結した請負契
約を解除したことによつて同企業体の蒙つた損害の賠償を、上告人が原告として訴
求するものであるところ、原審は、上告人が本訴につき当事者適格を有しないこと
を理由に、次のように説示して、本件訴を不適法として却下した。
 すなわち、「互」D共同企業体は、和歌山県知事の発注にかかる七、一八水害復
旧建設工事の請負及びこれに付帯する事業を共同で営むことを目的とし、上告人ほ
か四名の構成員によつて組織された民法上の組合であり、その規約上、代表者たる
上告人は、建設工事の施行に関し企業体を代表して発注者及び監督官庁等第三者と
折渉する権限ならびに自己の名義をもつて請負代金の請求、受領及び企業体に属す
る財産を管理する権限を有するものと定められているものである。しかるところ、
右企業体は民法上の組合であるから、訴訟の目的たる右損害賠償請求権は組合員で
ある企業体の各構成員に本来帰属するものであるが、上告人は、前示組合規約によ
つて、組合代表者として、自己の名で前記の請負代金の請求、受領、組合財産の管
理等の対外的業務を執行する権限を与えられているのであるから、上告人は、自己
の名で右損害賠償請求権を行使し、必要とあれば、自己の名で訴訟上これを行使す
る権限、すなわち訴訟追行権をも与えられたものというべきである。したがつて、
本件は、組合員たる企業体の各構成員が上告人に任意に訴訟追行権を与えたいわゆ
る任意的訴訟信託の関係にあるが、訴訟追行権は訴訟法上の権能であり、民訴法四
七条のような法的規制によらない任意の訴訟信託は許されないものと解すべきであ
り、上告人が実体上前記の権限を与えられたからといつて、これが訴訟追行権を認
めることはできず、上告人は、本訴につき当事者適格を有しないというのである。
 ところで、訴訟における当事者適格は、特定の訴訟物について、何人をしてその
名において訴訟を追行させ、また何人に対し本案の判決をすることが必要かつ有意
義であるかの観点から決せられるべきものである。したがつて、これを財産権上の
請求における原告についていうならば、訴訟物である権利または法律関係について
管理処分権を有する権利主体が当事者適格を有するのを原則とするのである。しか
し、それに限られるものでないのはもとよりであつて、たとえば、第三者であつて
も、直接法律の定めるところにより一定の権利または法律関係につき当事者適格を
有することがあるほか、本来の権利主体からその意思に基づいて訴訟追行権を授与
されることにより当事者適格が認められる場合もありうるのである。
 そして、このようないわゆる任意的訴訟信託については、民訴法上は、同法四七
条が一定の要件と形式のもとに選定当事者の制度を設けこれを許容しているのであ
るから、通常はこの手続によるべきものではあるが、同条は、任意的な訴訟信託が
許容される原則的な場合を示すにとどまり、同条の手続による以外には、任意的訴
訟信託は許されないと解すべきではない。すなわち、任意的訴訟信託は、民訴法が
訴訟代理人を原則として弁護士に限り、また、信託法一一条が訴訟行為を為さしめ
ることを主たる目的とする信託を禁止している趣旨に照らし、一般に無制限にこれ
を許容することはできないが、当該訴訟信託がこのような制限を回避、潜脱するお
それがなく、かつ、これを認める合理的必要がある場合には許容するに妨げないと
解すべきである。
 そして、民法上の組合において、組合規約に基づいて、業務執行組合員に自己の
名で組合財産を管理し、組合財産に関する訴訟を追行する権限が授与されている場
合には、単に訴訟追行権のみが授与されたものではなく、実体上の管理権、対外的
業務執行権とともに訴訟追行権が授与されているのであるから、業務執行組合員に
対する組合員のこのような任意的訴訟信託は、弁護士代理の原則を回避し、または
信託法一一条の制限を潜脱するものとはいえず、特段の事情のないかぎり、合理的
必要を欠くものとはいえないのであつて、民訴法四七条による選定手続によらなく
ても、これを許容して妨げないと解すべきである。したがつて、当裁判所の判例(
昭和三四年(オ)第五七七号・同三七年七月一三日言渡第二小法廷判決・民集一六
巻八号一五一六頁)は、右と見解を異にする限度においてこれを変更すべきもので
ある。
 そして、本件の前示事実関係は記録によりこれを肯認しうるところ、その事実関
係によれば、民法上の組合たる前記企業体において、組合規約に基づいて、自己の
名で組合財産を管理し、対外的業務を執行する権限を与えられた業務執行組合員た
る上告人は、組合財産に関する訴訟につき組合員から任意的訴訟信託を受け、本訴
につき自己の名で訴訟を追行する当事者適格を有するものというべきである。しか
るに、これと異なる見解のもとに上告人が右の当事者適格を欠くことを理由に本件
訴を不適法として却下した原判決は、民訴法の解釈を誤るもので、この点に関する
論旨は理由がある。したがつて、その余の論旨について判断するまでもなく、原判
決は破棄を免れず、更に本件を審理させるためこれを原審に差し戻すこととする。
 よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 裁判官松田二郎は退官につき評議に関与しない。
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    石   田   和   外
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    松   本   正   雄
            裁判官    飯   村   義   美
            裁判官    村   上   朝   一
            裁判官    関   根   小   郷

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛