弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1請求の趣旨
()被告が,原告らに対する公正取引委員会平成○年(判)第○号私的独占1
の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反事件について,平成15年6
月27日付けでした審決を取り消す。
()訴訟費用は被告の負担とする。2
2請求の趣旨に対する答弁
主文と同旨
第2事案の概要等
1原告ら2社は,平成9年12月までの間,我が国において,郵便物自動選
別取りそろえ押印機(以下「選別押印機」という,選別台付自動取りそ。)
ろえ押印機(以下「台付押印機」という,郵便物あて名自動読取区分機。)
(以下「あて名区分機」という,新型区分機,新型区分機用情報入力装。)
置(以下「情報入力装置」という,バーコード区分機(A型及びB型)。)
及び区分機用連結部(以下「連結部」という。以下,これらをまとめて「区
分機類」という)のほとんどすべてを製造販売していた(以下,あて名区。
分機,新型区分機及びバーコード区分機をまとめて「区分機」という。。)
2()被告公正取引委員会は「原告ら2社は,郵政省が平成7年4月1日か1,
ら平成9年12月10日までの間に一般競争入札の方法によって相手方を
選定する方法により発注した区分機類について,おおむね半分ずつを安定
的に受注するため「入札執行前に郵政省の調達事務担当官等から情報の,
提示を受けた者を当該情報の提示を受けた物件についての受注予定者と
し,受注予定者のみが当該物件の入札に参加し受注予定者以外の者は当該
物件の入札には参加しないことにより受注予定者が受注することができる
ようにする」旨の意思の連絡の下に,受注予定者を決定し,受注予定者。
のみが入札に参加して受注することができるようにし,これによって,公
共の利益に反して,区分機類の取引分野における競争を実質的に制限して
いた」として,これが私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律。
(。「」「」平成17年法律第35号による改正前のもの以下独禁法又は法
という)2条6項の「不当な取引制限」に該当し,同法3条に違反する。
として(以下,この違反行為を「本件違反行為」という,平成10年。)
,()。12月4日審判開始決定をした公正取引委員会平成○年(判)第○号
()原告ら2社は,上記審判事件において「郵政省が一般競争入札の方法2,
により発注した区分機類については,一般競争入札の形式が採られていた
とはいえ,郵政省が事前に受注者を決めて内示し,原告ら2社はその内示
に従って受注していたにすぎず,原告ら2社の間には,競争関係は存在せ
ず,受注調整と目されるような意思の連絡もなかったから,本件違反行為
は成立しない」と主張した。。
()公正取引委員会から指定された審判官(法51条の2)は,審理を行3
い,平成15年3月19日付けの審決案(以下「本件審決案」という)。
を作成した(当時施行の公正取引委員会の審査及び審判に関する規則82
条,83条。)
本件審決案が認定した事実の要旨は,別紙のとおりである。
()本件審決案に対して原告ら2社が異議を述べたため,公正取引委員会4
は,口頭審理を行い,本件審決案を調査して,平成15年6月27日,次
のとおり審決した(以下「本件審決」という。以下には,本件審決の主文
をそのまま記載し,理由はほぼ全文を記載する。。)
【主文】
1被審人株式会社P1及び同P2株式会社は,遅くとも平成7年7月
3日以降,郵政省が国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定め
る政令(昭和55年政令第300号)の規定が適用される一般競争入
札の方法により発注する郵便物自動選別取りそろえ押印機,選別台付
自動取りそろえ押印機,郵便物あて名自動読取区分機,新型区分機,
新型区分機用情報入力装置,バーコード区分機及び区分機用連結部に
ついて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしてい
た行為を取りやめていることを確認しなければならない。
2被審人株式会社P1及び同P2株式会社は,前項に基づいて採った
措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
【理由】
1公正取引委員会の認定した事実,証拠,判断及び法令の適用は,本
,。件審決案の理由の第1ないし第5と同一であるからこれを引用する
2被審人2社は「郵政省が発注した区分機類については,一般競争,
入札の形式が採られていたとはいえ,郵政省が事前に受注者を特定す
る「内示」によって,入札実施前に受注者が特定されている実態にあ
ったので,実質的に随意契約に準じ各社が受注することを余儀なくさ
,,,れていたのであるから被審人2社間には競争関係は存在せずまた
競争関係が存在しなかった以上,被審人2社が入札談合に係る意思の
連絡をする必要はなく,現に被審人2社間には受注調整と目されるよ
うな意思の連絡はなかったから,本件違反行為はなかった」旨を主。
張し,本件審決案は誤った判断をしているものであるとする。
3そこで,本件審決案を調査するに,本件審決案が認定しているよう
に,本件の一般競争入札に係る区分機類については,競争関係を認め
ることができ,被審人2社間においては,郵政省の調達事務担当官等
(以下「担当官等」ともいう)から情報の提示のあった者のみが当。
該物件の入札に参加し受注できるようにする旨の意思の連絡すなわち
本件共通の認識が形成されており,被審人2社は,この共通の認識に
基づいて受注予定者を決定し,区分機類を受注していたものと認めら
れる。
そもそも,本件の郵政省発注に係る区分機類は,被審人2社の複占
市場であったところ,平成6年度まで指名競争入札の方法により発注
されていたが,被審人2社は,かねてから,入札執行前に,担当官等
から同省の購入計画に係る各社に分けられた区分機類の機種別台数,
配備先郵便局等に関する情報の提示をそれぞれ受けることによって,
情報の提示を受けた者のみが入札に参加し,情報の提示を受けなかっ
た者は入札を辞退し,これによって,同省の総発注額のおおむね半分
ずつの区分機類を安定的に受注していた。そうしたところ,平成6年
に担当官等から,次年度すなわち平成7年度は区分機類を一般競争入
札の方法により発注する見通しである旨の説明を受け,その後,被審
人2社の担当者は,いずれも,担当官等に対し,一般競争入札の導入
,,に反対し一般競争入札による発注とはその趣旨において相容れない
情報提示,早期実質発注等を引き続き行うようそれぞれ要請した。そ
して,平成7年度から区分機類の発注については一般競争入札が導入
されたが,担当官等は,前記経緯等から,被審人2社に対し,これま
でと同様に,区分機類を複数物件に分けて発注し,入札執行前に情報
の提示を行うこととした。こうして,被審人2社は,一般競争入札が
実施された後も,担当官等から情報の提示を受けた者のみが入札に参
加する方法によって,平成7年度ないし平成9年度において郵政省が
一般競争入札の方法により発注した総発注額のおおむね半分ずつの区
分機類を受注していたものである。
このような事実関係に照らせば,被審人2社が,担当官等からの情
報の提示を前提に,共同して,郵政省が一般競争入札の方法により発
注する区分機類について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注で
きるようにすることにより,公共の利益に反して,同省が一般競争入
札の方法により発注する区分機類の取引分野における競争を実質的に
制限していたと認めることができる。
4よって,被審人2社に対し,独禁法54条2項及び規則87条1項
の規定により,主文のとおり審決する。
3()原告らは,平成15年7月,本件審決の取消しを求める訴えを東京高1
(),,等裁判所に提起し東京高等裁判所平成○年(行ケ)第○号同裁判所は
平成16年4月23日,本件審決を取り消す旨の判決をした。原告らの主
張の項目と判決理由の要旨は次のとおりである。
【主張の項目】
1独禁法57条違反
2独禁法54条2項違反
3競争関係の存在に関する実質的証拠の欠缺
4意思の連絡の存在に関する実質的証拠の欠缺
5憲法14条1項違反
【判決理由の要旨】
本件審決書において独禁法54条2項所定の「特に必要があると認
めるとき」の要件に関し同法57条1項の規定の要求する記載がされ
ているかどうかについて検討するに,同法54条2項にいう「特に必
要があると認めるとき」とは,審決の時点では既に違反行為がなくな
っているが,当該違反行為が将来繰り返されるおそれがある場合や,
当該違反行為の結果が残存しており競争秩序の回復が不十分である場
合などをいうものと解されるところ,本件審決書は,法令の適用とし
て排除措置の根拠規定である上記規定を記載するのみで,その適用の
基礎となった事実,すなわち「特に必要があると認めるとき」の要件
の認定判断については,何ら明示的に記載するところがない。
もっとも,審決書の記載全体から判断して独禁法54条2項の適用
の基礎となった事実を当然に知り得るような場合には,同法57条1
項の規定が要求する審決書の記載要件を具備しているものということ
ができるのであるが,本件違反行為は,担当官等からの情報の提示を
前提とするものであり,それがなければ成立し得ないものであるとこ
ろ,本件審決書においては,担当官等は情報の提示を行わなくなった
と認定されているのであるから,なお情報の提示が行われるおそれが
あるというのであればともかく,そうでない以上,本件違反行為と同
様の行為が将来繰り返されるおそれはないといわざるを得ない。そし
て,担当官等から本件違反行為におけるような情報の提示が今後も行
われるおそれがあることについては,何ら認定されていない。また,
本件審決書においては,平成10年2月27日の入札からP3が新規
参入し競争環境が相当変化したことなどが認定されているのであっ
て,公正取引委員会の認定事実から本件違反行為の結果が残存し競争
秩序の回復が十分でないという点が当然に認められるということはで
きない。
さらに,本件審決書において認定されている事実関係があるとして
も,今後担当官等からの情報の提示が行われなくなった場合に,なお
原告ら2社が区分機類の一般競争入札について受注調整を行うおそれ
が存在するものとは認め難いといわなければならない。
そうすると,本件審決書の記載から独禁法54条2項の適用の基礎
となった事実を当然に知り得るものということはできないのみなら
ず,公正取引委員会の認定事実から同項所定の「特に必要があると認
めるとき」の要件を認めることもできないといわざるを得ないから,
本件審決は,同法57条1項及び同法54条2項の規定に違反する。
()公正取引委員会は,最高裁判所に上告し(最高裁判所平成○年(行ヒ)2
第○号,最高裁判所は,平成19年4月19日,原判決を破棄し,本件)
を東京高等裁判所に差し戻す旨の判決をした。その理由の要旨は次のとお
りである。
【理由の要旨】
。,1東京高等裁判所の上記判断は是認することができないその理由は
次のとおりである。
独禁法57条1項は,審決書には,公正取引委員会の認定した事実
及びこれに対する法令の適用を示さなければならない旨を定めてい
る。本件審決は,同法3条の不当な取引制限の禁止の規定に違反する
行為が既になくなっているものの,特に必要があると認めて,同法5
4条2項の規定によりされたものであるから,本件審決書には,同項
所定の「特に必要があると認めるとき」の要件に該当する旨の判断の
基礎となった公正取引委員会の認定事実を示さなければならないとこ
ろ,それが明確に特定しては示されていない。
しかし,本件違反行為は,原告ら2社において,共同して,受注予
定者を決定し,受注予定者が受注することができるようにしていた行
為であって,担当官等からの情報の提示は受注予定者を決定するため
の手段にすぎない。担当官等からの情報の提示がなくとも,原告ら2
社において,他の手段をもって,共同して,受注予定者を決定し,受
注予定者が受注することができるようにすることにより,郵政省が一
般競争入札の方法により発注する区分機類の取引分野における競争を
実質的に制限することが可能であることは明らかである。そして,こ
のような見地から本件審決書の記載を全体としてみれば,公正取引委
員会は,①原告ら2社が,担当官等からの情報の提示を主体的に受
け入れ,区分機類が指名競争入札の方法により発注されていた当時か
ら本件違反行為と同様の行為を長年にわたり恒常的に行ってきたこ
と,②原告ら2社は,一般競争入札の導入に反対し,情報の提示の
継続を要請したこと,③原告ら2社は平成9年12月10日以降本
件違反行為を取りやめているが,これは原告ら2社の自発的な意思に
基づくものではなく,公正取引委員会が本件について審査を開始し担
当官等が情報の提示を行わなくなったという外部的な要因によるもの
にすぎないこと,④区分機類の市場は原告ら2社とP3との3社に
よる寡占状態にあり,一般的にみて違反行為を行いやすい状況にある
こと,⑤原告ら2社は,審判手続において,受注調整はなかったと
して違反行為の成立を争っていること,という認定事実を基礎として
「特に必要があると認めるとき」の要件に該当する旨を判断したもの
であることを知り得るのであって,本件審決書には,独禁法54条2
項所定の「特に必要があると認めるとき」の要件に該当する旨の判断
の基礎となった公正取引委員会の認定事実が示されているということ
ができるのである。本件審決書には,担当官等が情報の提示を行わな
くなったこと及び平成10年2月27日の入札からP3が新規参入し
競争環境が相当変化したことという公正取引委員会の認定事実が示さ
れているが,これらの事実が示されているからといって「特に必要,
があると認めるとき」の要件に該当する旨の判断の基礎となった公正
取引委員会の認定事実が示されているということの妨げとなるもので
はない。
また「特に必要があると認めるとき」の要件に該当するか否かの,
判断については,我が国における独禁法の運用機関として競争政策に
ついて専門的な知見を有する公正取引委員会の専門的な裁量が認めら
れるものというべきであるが,上記説示したところによれば「特に,
必要があると認めるとき」の要件に該当する旨の公正取引委員会の判
断について,合理性を欠くものであるということはできず,公正取引
委員会の裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものということは
できない。
そうすると,本件審決は,独禁法57条1項の規定に違反するもの
でないし,同法54条2項の規定に違反するものでもないというべき
である。
2以上によれば,本件審決は独禁法57条1項及び同法54条2項の
規定に違反するものであるとした原審の判断には,判決に影響を及ぼ
すことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,その余の点
について判断するまでもなく,原判決は破棄を免れない。そして,本
件違反行為等の本件審決の基礎となった事実を立証する実質的な証拠
の有無の点について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻
すこととする。
4独禁法の規定
()2条4項1
この法律において「競争」とは,二以上の事業者がその通常の事業活動
の範囲内において,かつ,当該事業活動の施設又は態様に重要な変更を加
えることなく次に掲げる行為をし,又はすることができる状態をいう。
一同一の需要者に同種又は類似の商品又は役務を供給すること
二同一の供給者から同種又は類似の商品又は役務の供給を受けること
()2条6項2
この法律において「不当な取引制限」とは,事業者が,契約,協定その
他何らの名義をもってするかを問わず,他の事業者と共同して対価を決定
し,維持し,若しくは引き上げ,又は数量,技術,製品,設備若しくは取
引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し,又は遂行すること
により,公共の利益に反して,一定の取引分野における競争を実質的に制
限することをいう。
()3条3
事業者は,私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。
5原告らの主張(要旨)
()独禁法2条6項・3条の解釈適用の誤り,事実認定の違法性1
ア本件審決案は「郵政省が一般競争入札の方法により執行した平成7,
年度ないし平成9年度における区分機類の入札について,情報の提示す
なわち郵政省内示を受けていなかった原告も,郵政省内示を受けていな
かった入札対象物件について,入札条件として設定された期間内に当該
区分機類を製造し得る可能性があり,また,他社製の選別押印機等と自
社製のあて名区分機との接続も可能であり,したがって,競争すること
ができる可能性があった」旨の判断をした。。
イしかし,郵政省が一般競争入札の方法により執行した平成7年度ない
し平成9年度における区分機類の各入札当時,郵政省から郵政省内示を
受けていなかった原告は,入札対象物件のうち郵政省内示を受けていな
い物件については,入札日から納入期限までが極めて短期間と設定され
ていたこと,既設他社製選別押印機等との接続を義務づけられていたこ
と,等の入札条件のもとにおいては,当初から入札に参加して落札する
ことができない状態すなわち当初から他方の原告との競争から排除され
て他方の原告とは競争することができない状況(以下「競争不能状況」
という)にあった。。
ウ平成7年度ないし平成9年度の各入札において,郵政省内示を受けて
いなかった原告が入札対象物件のうち郵政省内示を受けていない物件に
ついて競争不能状況にあったことは,郵政省が郵便事業合理化のための
郵便処理機械化を確実に実現するために採った戦略によって形成された
ものであり,この事実は,以下の事情に照らして極めて明らかである。
(ア)郵政省は,平成4年度から,増加する郵便物の処理の機械化の範
囲を拡大するため「新郵便処理システム,すなわち,住所の細部,」
までを7桁の数字・郵便番号で表し,その数字と合わせて郵便物に書
かれた丁目番地等を機械で読み取り,バーコードに変換して印字する
ことによって郵便物を配達道順に並べる作業までを機械化するという
システムの導入を計画し,原告ら2社を含む8社に参加を求めて調査
,,研究を重ね技術開発可能と認められた原告ら2社を含む3社に対し
平成6年度には実験装置の設計・製作の委託,平成7年度には,前年
度の委託研究において成果を示した原告ら2社に対し実験機の開発を
委託した。
そして,平成7年8月に,郵政審議会が平成10年2月2日までに
新郵便処理システムを導入し,人員及び経費を大幅に削減することを
要求したため,郵政省は,この要求を実現する必要に迫られ,平成8
年度には新郵便システムに対応する機能を備えた新型区分機類を試行
調達したが,さらに,平成9年度には,可能な限り多数の新型区分機
類を調達し,かつ,旧型区分機類を新郵便処理システムに対応できる
ように改造することにより(新型区分機と改造の合計は336台の多
数に及んだ,平成10年2月2日の新郵便処理システムへの移行。)
を支障なく行うことが必要であったため,新型区分機類の開発に成功
した原告ら2社から新型区分機類の生産能力及び旧型区分機類の改造
能力等の事情を聴取するとともに,全国に点在する郵便局のどこにど
のメーカーの新型区分機を配備するか,その時期をいつにするか,旧
型の区分機の改造(改造は当該区分機のメーカーとの随意契約とな
る)をいつ行い,それをどの郵便局に移設するかなどにつき,詳細。
かつ綿密な配備計画を立てて郵務局長の決裁まで経て,この配備計画
を上記の時期までに確実に実施に移すことが必要不可欠であった。
(イ)郵政省は,上記のような郵便処理機械化という大事業を計画的か
つ確実に実行するために,平成7年度ないし平成9年度において調達
する区分機類について,入札日よりはるか前の時点において,配備計
画を立てていた。
郵政省の区分機類の担当者は,配備計画の作成において,配備先の
特定の郵便局に設置する新型区分機の納入者を原告P1とするか原告
P2とするかを定めるに当たっては,性能のほか,当該郵便局におけ
る作業動線,従前からの使用機種・製造メーカー,設置場所,等をも
考慮して行い,また,配備計画を決定するについても,郵政省が,原
告ら2社から各別にその各工場の生産能力及び改造能力を確認するな
どしたものである。
平成9年度における区分機の調達は,その数が336台と極めて多
数であり,しかも新型区分機及び新型機能を付加する改造区分機であ
ったことから,平成9年度の配備計画は,各原告関係ごとにそれぞれ
取りまとめられた。
(ウ)郵政省が平成7年度ないし平成9年度の区分機類の調達について
郵便処理の機械化・新郵便処理システムの導入を確実に行うために採
った戦略の第1は,区分機類について,原告ら2社を含む区分機類の
メーカーのすべてが単に入札日に入札に参加しただけでは到底履行し
得ない条件を設定し,事前に内示を受けている区分機類のメーカーで
なければ入札参加・契約締結をすることが不可能なものとすることで
あった。換言すれば,郵政省の採った入札の方法・やり方は,区分機
類のメーカーに入札に参加する表門を完全に閉ざし,区分機類製造業
者間の競争を不可能な状態とするものであった。
すなわち,平成7年当時,区分機類の開発に成功したのは原告ら2
社のみであったが,その当時においては,各社別異の技術開発の途上
にあった。そして,原告ら2社のいずれにおいても区分機類は受注生
産であり,もし入札日において落札し,契約締結後に初めて製造を開
始するとすれば,その開始から納入完了(機械調整及び職員訓練まで
を含む)までに約6か月間を要するものであった。このような現実。
の状況に対応し,配備計画を確実に実施するために,入札前に郵政省
内示が行われたのである。
これに加え,原告ら2社はそれぞれ各別の設計思想の下に自動読取
区分機類を開発したため,他社製の既設選別押印機等との接続は不可
能であり,また,予備部品の添付についても,予備部品はそれぞれ独
自に定めていたため互換性のないものであり,仕様書に記載されてい
る他社製区分機類の予備部品は,相互にその内容を理解することすら
できないものであったから,他社の機種を受注する場合には,契約の
履行自体が不可能となるものであった。
郵政省は,このような事情,すなわち,内示を与えた原告以外の入
札参加はあり得ないことを十分に知りながら,あえて,入札の方法・
やり方を上記のように定めて入札を執行したため,原告ら2社はもと
より原告ら2社よりも開発が遅れていた他社のいずれにおいても入札
参加が制約される状況にあった。
しかも,仕様書において,既設選別押印機等との接続が条件とされ
ていたため(例えば,査60号証の11の仕様書には「区分機用連,
結部により㈱P1製郵便物自動選別取りそろえ押印機又は選別台付取
()。」りそろえ押印機右流れ型と連結できる機能を有するものとする
とされている,既設のメーカー以外は入札に参加することが不可。)
能であったのであり,添付すべき予備部品のリストも特定の原告のも
のに限定されていたので(例えば,査61号証の13の仕様書には予
備部品が原告P2の社内購入仕様書番号によって特定されている,。)
「一般競争入札」といいながらも,全事業者が自由に入札に参加する
ことは不可能であったのである。
上記のように,郵政省の平成7年度ないし平成9年度の区分機類に
ついての一般競争入札による入札の方法・やり方は,区分機類のメー
カーのいずれもが参加して落札・契約締結することを不可能とするも
の,換言すれば,入札による競争不能状況を形成するものであった。
(エ)郵政省の採った戦略の第2は,平成7年度ないし平成9年度にお
いて入札対象物件とされた区分機類について,特定の郵便局に配備す
ると計画した特定の区分機類のメーカーである原告P1又は原告P2
に対し,当該区分機類の製造,納入等に約6か月を要することを考慮
して,官報公示より前であって当該年度の最初の搬入日の約6か月前
に,特定の区分機類の実質的発注を書面をもって行い,この方法によ
って,郵政省内示を受けた原告に対しては,入札参加・契約締結を可
能とする措置をとったことである。郵政省内示を受けない原告にとっ
ては,入札参加・契約締結は全く不可能な状態とされていた。
(オ)郵政省の採った上記のような戦略第1と戦略第2とは,制度的・
法律的には関連がないものである。したがって,郵政省は,戦略第2
の内示をしたとしても,当該内示をした区分機類につき,官報公示の
入札日からその製造・納入までに要する約6か月の期間を置き,添付
すべき予備部品はリストによって特定せず又は別発注の方法をとり,
さらに,既設機との接続を条件としないなどして,区分機類のすべて
のメーカーが入札に参加し契約を締結することができるようにするこ
とも,入札制度の執行者として法律上可能であり,実際上も可能であ
ったのである。現に,本件後においては,郵政省の入札の方法・やり
方が正当なものに変わっている(このこと自体は,本件審決案の認め
るところである。。)
戦略第1と戦略第2とを連結させたことは,ひとえに郵政省が入札
の執行者としてその権限の下に行ったことであって,私人である原告
ら2社はこれに何ら関与していない。郵政省が戦略第1と戦略第2と
を連結させたのは,もっぱら郵政省がその配備計画を確実に実施する
必要があったからである。
,,(カ)以上のとおり平成7年度ないし平成9年度の各入札においては
郵政省内示を受けなかった原告が入札対象物件のうち内示を受けなか
った物件については落札・契約締結をすることを不可能とする状況す
なわち競争不能状況が郵政省の戦略によって形成されていたのであ
る。
エしかるに,本件審決案は「被審人2社における区分機類の製造に要,
する期間は,郵政省の平成7年度ないし平成9年度の入札当時,部品の
手配から製品の完成まで,通常約6か月とされている。ただし,これは
製品の数量,種類及び在庫部品の状況等にもより,例えば,部品の調達
が済んでいれば2か月ほどで生産をすることが可能であるとされている
など,その製造に要する期間は固定的なものではない「選別押印機。」,
及び台付押印機をあて名区分機及び新型区分機等と接続する場合に,あ
る社のものを他の社のものと接続することは,接続に関する技術情報が
開示されていれば可能であるとされており」としており(頁「部,),4
品の調達が済んでいれば」とか「接続に関する技術情報が開示されてい
れば」とかなどと仮定的事実を認定して「2か月ほどで生産をするこ,
とが可能である「接続が)可能である」としているのであるが,こ」,(
の仮定的事実の認定は証拠に基づかないものであって極めて不当であ
り,その仮定的事実を前提とした結論もまた極めて不当である。
オ郵政省の区分機類の調達過程の実態に関する事実を具体的かつ綿密に
証拠をもって認定するときは,郵政省の設定した入札条件の下において
は,郵政省内示を受けなかった原告は,当該入札に係る物件のうち郵政
省内示を受けなかった物件についてはまったく落札・契約締結をするこ
,,とが不可能な状況にあったことは容易に認定し得るのに本件審決案は
あえて,郵政省の区分機類の調達過程の実態に関する事実について具体
的かつ綿密な認定をせず,極めて概括的な認定をするにとどめて,郵政
省内示を受けなかった原告が当該入札に係る物件のうち郵政省内示を受
けなかった物件についても落札・契約締結をすることが可能であり競争
可能状況にあったとしているのである。例えば,本件審決案は,平成9
年度においては新型区分機が中心で従来より発注台数が多かったとする
が,その台数の具体的な数までは認定せず,また,玉突き移設の問題が
あったとするが,それがどのような問題であったか等についても認定せ
ず,さらに,31物件のグループ分けの基本は各原告ごとに分別された
郵政省内示にあり,各原告ごとの郵政省内示分がさらに機種別,流れ型
別,口数別にグループ分けされていたものであるのに,一番重要な,各
原告宛ての郵政省内示分別に分けて物件がまとめられていることをあえ
て認定していないのである。
()「意思の連絡」の不存在2
ア本件審決案は,遅くとも平成7年度の入札日である平成7年7月3日
までには「郵政省の調達事務担当官等から情報の提示のあった者のみが
当該物件の入札に参加し,情報の提示のなかった者は当該物件の入札に
参加しないことにより,郵政省の調達事務担当官等から情報の提示のあ
った者が受注できるようにする」旨の意思の連絡すなわち本件共通の。
認識が形成されていたとし,原告ら2社は,本件共通の認識=意思の連
絡の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにし,区
分機類の競争を実質的に制限した,とした。
イしかしながら,まず,本件審決案が意思の連絡についての判断基準と
したP4事件の判決(東京高裁平成7年9月25日判決)については,
同事件と本件とでは事案の内容が重要な点において異なっているから(
本件は,買主が郵政省のみであり,しかも,その独占的買主である郵政
省が購入,入札等の過程を支配していた事案であり,また,郵政省から
情報の提示を受けなかったために情報の提示を受けなかった原告が他の
原告との意思の連絡なくして当該物件の入札に参加しなかったという可
能性があり得る事案である,P4事件の判決を本件において判断基。)
準とすることはできないものである。
さらに,本件審決案は,不当にも,郵政省内示の持つ意味を軽視し,
郵政省内示と原告ら2社の意思の連絡とを不可分一体のものとして取り
扱い,郵政省内示を受けなかった原告が当該物件の入札に参加しなかっ
たという事態は郵政省内示を受けなかったという事実のみによって生じ
たにもかかわらず,原告ら2社の意思の連絡なしには生じない事態であ
ったとして巧妙なすり替えを行っているのである。本件審決案は,独禁
法2条6項・3条の解釈適用を誤っている。
ウ本件審決案は,合法的な一方的行為ないし独立的行為と違法な相互的
合意とを混同した違法がある。
事業者は,競争の自由が保障されているのみではなく,競争しない自
由も保障されている。競争を義務としてそれを命じた法は存在しないの
である。カルテルは,基本的に,カルテルがなかったら得られない経済
的利得を相互に保障する合意であって,それゆえに違法とされるもので
あるが,本件においては,原告ら2社のうちのいずれか1社が特定の区
分機類について郵政省内示を受けた場合には,郵政省内示を受けなかっ
た他の原告は,入札に参加することが不可能であったことから,その原
告は他の原告との意思の連絡なくして自律的な経営判断のもとに入札不
参加を決定していたのである。意思の連絡などはなく,その必要も全く
なかったのである。
()実質的証拠の法理の観点からの違法性3
ア本件審決案は,原告ら2社の間に意思の連絡があったことを直接に立
証する証拠がないことから,多数の間接事実を認定し,これによって意
思の連絡があったものとしているが,認定された間接事実の中には前記
のとおり仮定的事実や概括的認定事実が含まれていることのほかに,そ
の間接事実の取出し自体が恣意的なものがあり,また,取り出した間接
事実の持つ意味についても過大に評価している(意思の連絡があったこ
との認定の妨げとなる事実はことさらに無視ないしはその事実の持つ意
味を著しく過小に評価している。。)
例えば,本件審決案は,郵政省が独占的買主であることを認めたが,
この事実は原告ら2社の間における「意思の連絡を難しくすることとは
ならない」と評価したにとどまり,郵政省が独占的買主として市場支配
力を行使し,平成7年度ないし平成9年度の区分機類の一般競争入札に
おいて採った入札の執行者としては到底許されない一連の行為について
,,。はその事実自体は認定しながらも何ら合理的な説明を示していない
また,本件審決案は,平成9年1月30日に入札が行われた新型試行機
については,入札前である平成8年12月12日ころに郵政省が既に内
示どおり「配備済み」であるとして機械番号まで付して原告ら2社に通
知していた事実があり,この事実からすれば,郵政省は内示により入札
前に受注予定者が特定されているとの認識を有していたにもかかわら
ず,上記の通知に川越西局に配備する区分機類の製造業者としてP3・
P5の名称が記載されていることをもって郵政省が上記の認識を持って
いたということはできないとしたが,川越西局のP3・P5の区分機は
平成6年から随意契約にて継続していた実験機であるから,明白な事実
誤認であり,理由不備の違法もある。さらに,本件審決案は,原告ら2
社が「自社に情報の提示があった物件についてのみ入札に参加し,自社
に情報の提示がなかった物件については入札に参加しない」という行動
(以下「原告らの併行行為」という)を採ったとし,この原告らの併。
行行為につき「競争することが可能な物件が相当数ある中で,すべて,
について整然と前記行動を採ったことは不自然であり,また,このよう
な行動は他の者が同様の行動を採ることを予期してこれと歩調を合わせ
ることによってのみ達成が可能なものである」としているが,原告らの
併行行為と見られる事態が生じたのは,郵政省内示によってでありかつ
これのみによって生じた事態であるにもかかわらず,これについて全く
考慮することなく,原告らの併行行為をもって意思の連絡を推認する間
接事実としているのは,一方的・専断的な判断というべきである。
イ平成7年度ないし平成9年度の区分機類の調達の実態については具体
的事実を綿密かつ詳細に認定することが必要であるのに,本件審決案は
極めて概括的な事実しか認定していない。具体的事実をみれば,平成8
年度の原告P1の日本橋郵便局の例,同年度の原告P2の橋本郵便局の
例のように,いずれも入札日前から郵政省内示により製造が開始され,
配備先郵便局との打合せ等を了して,入札,契約後短期間での納入,教
育,等を完了していることが容易に認定できるのである。
ウ本件審決案は,原告らが主張した「予備部品は,各社各様のもので互
換性はないうえ,その予備部品リストによっては,詳細情報が不明であ
るから,他の原告はこれを製造できない」との主張に対して判断を示。
していない。仕様書に予備部品リストが添付されていたことは,郵政省
内示を受けなかった原告が入札対象物件のうち内示を受けなかった物件
については落札・契約締結をすることが不可能であったことを推認させ
る重要な間接事実であり,この間接事実を全く無視した本件審決案は一
方的・専断的なものというべきである。
エさらに,本件審決案は,他社製の既設機とあて名区分機との接続につ
いて「当該既設選別押印機等との接続に関する技術情報が開示される,
必要があるが,当時は,この技術情報は開示されていなかった」と認定
しながら,前記のとおり「接続に関する技術情報が開示されれば技術的
に可能であり」と仮定的事実を認定した上「郵政省に技術情報の開示,
を求められた事業者への過分な負担を強いるものではない」とするが,
この点についても詳細な証拠評価を誤っている。すなわち,原告ら2社
の有する技術情報は重要な知的財産であって,企業秘密であり,その技
術情報の開示は容易にはなされず,現に本件当時もなされていなかった
のである。本件後,P3が参入した際には,P3が相当な経済的負担を
することを条件に開示されたのであるが,P3も結局は既設機との接続
を行うことができず,既設機のメーカーである原告P2がこれに対処し
たのであった。
()独禁法2条6項の「公共の利益に反して」の解釈適用の誤り4
ア独禁法2条6項は「公共の利益に反して」一定の取引分野における,
競争を実質的に制限することを要求している。最高裁昭和59年2月2
4日第二小法廷判決(刑集38巻4号1287頁)は「独禁法の立法,
の趣旨・目的及びその改正の経過などに照らすと,同法2条6項にいう
「公共の利益に反して」とは,原則として同法の直接の保護法益である
自由経済秩序に反することを指すが,現に行われた行為が形式的に右に
該当する場合であっても,右法益と当該行為によって守られる利益とを
比較衡量して「一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民,
」()主的で健全な発展を促進するという同法の究極の目的同法1条参照
に実質的に反しないと認められる例外的な場合を右規定にいう「不当な
取引制限」行為から除外する趣旨と解すべきであ」るとしているのであ
る(最高裁平成12年9月25日第二小法廷決定(刑集54巻7号68
9頁)も同趣旨の判示をしている。。)
本件は,独占的買主(発注者)である郵政省が,その郵便処理機械化
による効率性の向上,経費の削減等を目的とする郵便事業の大改革及び
これによる消費者利益の確保という国家的プロジェクトを確実に実現す
るために,郵便処理機械化のための区分機類の製造販売業者(売主・受
注者)側の立場にある原告ら2社のそれぞれに協力を求めた事案であっ
て,これまで独禁法上問題とされることのなかった特殊な類型の事案で
あるから,このような見地からしても,本件の実態は,直ちに違法と評
価すべきものではなく,独禁法1条の究極の目的に実質的に反しないか
どうかを考慮して判断すべきものである。
本件における郵政省の区分機類の原告ら2社からの調達は,次のよう
な消費者利益を確保するための国家的プロジェクトを実現するために行
われたものである。すなわち,①郵政省は,平成4年度から,それま
での3桁ないし5桁の郵便番号から7桁の郵便番号制度と道順組立の機
械化(新郵便処理システム)の実現を図るべく,平成6年度に原告ら2
社を含む3社に対し,機械(ハードウェア)及びソフトウェアの開発を
委託した。原告ら2社は,それぞれこの委託に応じて多額の費用を投じ
て開発を重ね,平成7年3月には,原告ら2社はそれぞれ独自の設計思
想に基づき,郵政省の求める読取率を達成した実験機を納入した。郵政
審議会は,平成7年8月「新郵便番号制を導入することについて」の,
答申をし,平成10年2月2日までに,町名等住所の漢字部分を7桁で
表す新郵便番号制度及び道順組立を中心とする新郵便処理システムを導
入・実施すべきことを求めた。郵政省は,上記答申に基づき,新郵便処
理システムを平成10年2月2日までに実施するために,全国の主要な
郵便局が新郵便処理システムに対応することができるよう,新型区分機
類の配備及び旧型区分機類の改造を統合的・組織的に行い,かつ,郵便
局職員の研修等をして,新郵便処理システムが同日までに有効に機能す
る体制を完了するための作業(新郵便処理システム配備作業)を遂行す
る必要があった。②郵政省は,平成10年2月2日までに新郵便処理
システム配備作業を行うことによって,郵便事業に従事する従業員の多
数を整理し,多額の経費節減を図り,増加する郵便物数に対処するとと
もに,郵便料金の据え置き(実質値下げ)を実現する等,郵便事業の「
消費者の利益を確保する」ことに努め,この区分機類の導入によって,
,,平成13年度末までの間に限っても約5700人の人員削減を実現し
上記の目的を達成するに至ったのである。郵政省と原告ら2社との各取
引は,いずれも独禁法の究極目的である「消費者の利益を確保する(」
1条)ことに大きく寄与したものであった。③そして,郵政省と原告
ら2社との区分機類についての各取引については,郵政省はもっぱら発
注機器納入の効率化,迅速化を所期し,あえて会計法違反を承知して進
めたものであり,原告ら2社はそれぞれ各自の自由な意思に基づいて郵
政省内示を受け入れたものであり,他の原告の意思とは全く関わりなく
独自に行ったのである。④したがって,郵政省と原告ら2社との間の
区分機類についての各取引は,各社独立したものであり,いずれも独禁
法違反に問われる筋合いではないところ,これらが併存したとしてもそ
の性質が変わるものではない。
イ本件審決案は「公共の利益に反して」と独禁法2条6項の文言をそ,
のまま記載するにとどまり,具体的事実に基づいてその根拠を明らかに
していない。しかしながら,独禁法2条6項は「不当な取引制限」の,
積極要件として「公共の利益に反して」と規定しているのであるから,
「公共の利益に反して」の要件に該当する事実を本件審決案に記載すべ
きものである。本件審決案は,理由不備の違法を有する。
なお,公正取引委員会は,民主的な統制に直接服していない独立行政
委員会であり,その行政行為に対する統制は司法審査のみであるから,
公正取引委員会の審決の事後審査をする裁判所は,厳格にこれを審査し
なければならないものである。
()憲法14条1項違反の主張5
被告公正取引委員会は,国に対して排除確保措置を命ずることなく,ま
た担当者等に対して刑事告発の措置をとることもなく,郵政省内示に従っ
て入札した原告らに対してのみ排除確保措置を命じる審決をしたものであ
るから,本件審決は,私人である原告らと国又は国家公務員である郵政省
職員とを社会的地位に基づいて不当に差別したものであり,本件審決は,
憲法14条1項の定める法の下における平等の原則に反する。
第3当裁判所の判断
1「実質的な証拠」の有無について
被告公正取引委員会の認定した事実は,本件審決案の理由の第2に記載さ
れた事実と同一であり,その要旨は,別紙に記載のとおりであるが,この事
実は,審判手続で取り調べられた証拠によって認定することができ,そのよ
,,うに認定したことについて合理性を欠くものとはいえないから当裁判所は
被告公正取引委員会の認定した上記の事実に拘束されるものであるとともに
(独禁法80条1項,本件審決の基礎となった事実を立証する実質的な証)
拠があるということもできるものである(同法82条1号。)
2独禁法2条6項・3条の解釈適用の誤り,事実認定の違法性について
()原告らは,次のとおり主張する。1
本件審決案は「郵政省が一般競争入札の方法により執行した平成7年,
度ないし平成9年度における区分機類の入札について,情報の提示すなわ
ち郵政省内示を受けていなかった原告も,郵政省内示を受けていなかった
入札対象物件について,入札条件として設定された期間内に当該区分機類
を製造し得る可能性があり,また,他社製の選別押印機等と自社製のあて
名区分機との接続も可能であり,したがって,競争することができる可能
性があった」旨の判断をしたが,この判断は誤っている。。
郵政省が一般競争入札の方法により執行した平成7年度ないし平成9年
度における区分機類の各入札当時,郵政省から郵政省内示を受けていなか
った原告は,入札対象物件のうち郵政省内示を受けていなかった物件につ
いては,入札日から納入期限までが極めて短期間と設定されていたこと,
既設他社製選別押印機等との接続を義務づけられていたこと,等の入札条
件のもとにおいては,当初から入札に参加して落札することができない状
態すなわち当初から他方の原告との競争から排除されて他方の原告とは競
争することができない状況(競争不能状況)にあった。
()入札日から納入期限まで期間について2
アこの点について,原告らは,上記()に加えて,さらに「納入期限ま1,
でに受注者が履行すべき事項として,①区分機類ハードの製造のほか,
②配備先郵便局の住所の読取等による郵便物の画像処理を可能とするソ
フトの作成,③区分機類の配備先郵便局への搬入・設置,④区分機類設
置後の作動確認や配備先郵便局の職員に対する操作教育,等が含まれて
いるのに,これらに要する期間を考慮しないで,入札条件として設定さ
れた期間内に当該区分機類を製造し得るとした本件審決案は不当であ
る」旨を主張する。。
,,()イ確かに平成7年度の区分機類については入札平成7年7月3日
から納入期限までがかなり短期間であるものもあり(納入期限が平成7
年8月31日と定められたものが4物件,同年9月29日と定められた
ものが6物件,同年10月31日と定められたものが4物件,同年11
月30日と定められたものが4物件,平成8年度の区分機類につい。)
ても,入札(平成8年8月7日)から納入期限までがかなり短期間であ
るものもあり(納入期限が平成8年9月27日と定められたものが1物
件,同月30日と定められたものが8物件,同年10月31日と定めら
れたものが1物件,同年11月29日と定められたものが1物件,平成
9年3月19日と定められたものが2物件,同年6月30日と定められ
たものが5物件,平成9年度の区分機類についても,入札(平成9。)
年5月16日)から納入期限までが比較的短期間のものが多かったこと
(納入期限を,平成9年9月30日とするものが17物件,同年10月
31日とするものが1物件,同年11月28日とするものが4物件,平
成10年1月30日とするものが3物件,同年3月16日とするものが
6物件,が認められる。また,受注者が履行すべきものとして,区。)
分機類ハードの製造のほかに,配備先郵便局の住所の読取等による郵便
物の画像処理を可能とするソフトの作成,区分機類の配備先郵便局への
搬入・設置,区分機類設置後の作動確認,等が含まれていたことが認め
られる。
ウしかしながら,原告ら2社の区分機類の製造に要する期間が,平成7
年度ないし平成9年度の入札当時,部品の手配から製品の完成までに通
常約6か月を要するとされていたとしても,これは製品の数量や種類,
在庫部品の状況等にもよるものであり,例えば,部品の調達が済んでい
れば2か月ほどで生産をすることが可能であるとされていたのであっ
て,その製造に要する期間は必ずしも固定的なものではなかったのであ
る。そうとすれば,たとえ実際には部品の調達が済んでいなかったとし
ても,多種多様な事業を経営している極めて大規模な会社である原告ら
2社の資金力,設備・技術力及び組織力をもってすれば部品の調達を落
札後短期間のうちに完了することは可能であったと認められ,そうであ
れば,入札条件として設定された期間内に郵政省内示を受けていなかっ
た原告も郵政省内示を受けていなかった区分機類についてこれを製造し
得る可能性はあったものといえるから(現に,郵政省の調達事務担当官
も,情報の提示を受けていない原告が入札に参加することが不可能であ
ったとまでは認識していない(審判手続における参考人P6及び同P7
の供述,郵政省内示を受けていなかった原告においても通常の事業)。)
活動の範囲内においてかつ事業活動の施設又は態様に重要な変更を加え
ることなく納入期限内に区分機類を納入することができたものというべ
きであり,したがって「当初から入札に参加して落札することができ,
ない状態すなわち当初から他方の原告との競争から排除されて他方の原
告とは競争することができない状況(競争不能状況)にあった」とは。
いえないというべきである。原告ら2社は潜在的競争関係にあったもの
である。
エ原告らは,競争不能状況が郵便処理機械化を確実に実現するために郵
政省が採った戦略によって形成されていた旨を主張するが,そもそも競
争不能状況にはなかったのであるから,原告らの上記主張はその前提を
欠くものである。
オ原告らは「本件審決案が「被審人2社における区分機類の製造に,,
要する期間は,郵政省の平成7年度ないし平成9年度の入札当時,部品
の手配から製品の完成まで,通常約6か月とされている。ただし,これ
は製品の数量,種類及び在庫部品の状況等にもより,例えば,部品の調
達が済んでいれば2か月ほどで生産をすることが可能であるとされてい
るなど,その製造に要する期間は固定的なものではない」として,仮。
定的事実を認定し,それが現実に存在する具体的事実であるとして判断
しているが,極めて不当である」と批難する。。
しかし「部品の調達が済んでいれば2か月ほどで生産をすることが,
可能であるとされている」と認定すること自体は,何ら差し支えない。
ものであり,問題は,部品の調達が済んでいたこと又は部品の調達を済
ますことができたことを認定しないで2か月ほどで生産をすることが可
能であると認定することである。しかるところ,上記ウのとおり,本件
においては,原告ら2社の資金力,設備・技術力及び組織力をもってす
れば落札後短期間のうちに部品の調達を完了することが可能であったと
認められるのであるから,可能性の問題として,原告ら2社が落札後短
期間のうちに部品の調達を済ますことは可能であったといえるものであ
る。
カ原告らは,さらに「平成7年度ないし平成9年度の区分機類の各入,
札において,郵政省内示を受けていなかった原告が落札して各入札条件
の納入期限を遵守するためには,落札及び契約締結も行われていない時
点において,落札及び契約締結の可能性が乏しいにもかかわらず,1台
当たり億単位の価格の区分機類の極めて多数に及ぶ部品を内部調達及び
外部調達(社外の部品メーカーからの調達)することを要する体制すな
わちいわゆる見込生産体制をとることが必要であった「落札できな。」,
いときには,調達部品は不良在庫となり,投下した多大な資金は埋没費
用となることがほぼ確実であって,見込生産体制をとることは,営利企
業としては,到底実行不可能なものである「見込生産体制をとると。」,
いうことは,受注生産体制からの変更であり,重要な事業活動の変更で
ある」旨を主張する。。
しかし,上記のとおり,原告ら2社の資金力,設備・技術力及び組織
力をもってすれば落札後短期間のうちに部品の調達を完了することは可
能であったといえるのであるから,原告らの上記主張も採用することが
できない。
キ原告らは,さらに「本件審決案は,配備先郵便局の住所の読取等に,
よる郵便物の画像処理を可能とするソフトの作成,区分機類設置後の作
動確認や配備先郵便局の職員に対する操作教育,等に要する期間を考慮
していない不合理な判断をした違法がある」旨を主張する。。
しかし,本件審決案は「配備先郵便局との具体的な配備の打合せ」,
として,例えば平成8年度については「同年7月24日に,東京郵政,
局及び品川郵便局の担当官と被審人P1の担当者との間で,品川郵便局
において,区分機類の搬入据付についての打合せが行われており,そこ
では,設置場所のレイアウトや電源工事の確認をはじめ,搬入作業のた
めの車両構成,郵便局のエレベーターの容量の確認,また,搬入後の区
分指定面の検討や操作員の教育日程が話し合われた」と認定しており。
(頁,本件審決案は,上記のソフトの作成はもとより,区分機類設30)
置後の作動確認や配備先郵便局の職員に対する操作教育に要する期間等
をも考慮した上で,入札条件として設定された期間内に当該区分機類を
製造・納入し得ると判断したものと推知されるから,原告らの上記主張
も採用することができない。
()既設他社製選別押印機等との接続について3
アこの点について,原告らは,前記()に加えて,さらに「本件審決案1,
は,原告ら2社が他社製の既設機との接続を要するあて名区分機につい
ても潜在的な競争関係にあったと認定するに当たり,法2条4項柱書の
要件が存在したことについて審理判断していない」旨「平成7年度。,
,,及び平成8年度当時法2条4項柱書の要件が存在したというためには
接続に関する技術情報を取得することができたか,取得するために取得
費用を要したか,その額はどの程度か,取得できたとしても,当該技術
情報に基づく接続可能な機器の設計製造等には新たな負担を要するもの
であるからその程度,等を具体的に審理判断することを要する」旨,。
「むしろ,P3が平成10年6月以降の入札に参加し,接続に関する条
件を十分考慮することなく落札した結果,既設機との接続を履行するこ
とができず,既設メーカーである原告らの支援を得ざるを得なかったこ
とは,原告ら提出の証拠(審85等)上明白であり,原告ら2社におい
ても,本件後3年もの年月を要してようやく連結ユニット(甲2の1・
2)という別の新たな機械を開発することによって他社製選別押印機等
との接続が実現し得たのであるから,本件当時においては,原告ら2社
にとっても他社製の選別押印機等との接続を実現することは,技術的に
も経済的にも容易なことではなかったのである」旨を主張する。。
イ確かに,選別押印機及び台付押印機が既に配備されている郵便局にあ
て名区分機を配備する場合,平成7年度及び平成8年度の入札につき,
官報公示後に交付される仕様書に既設の選別押印機及び台付押印機と連
結することができる機能を有するものであることが記載されていたこと
が認められ(査60号証の11・12,63号証の12・13,64号
証の10・11中の各仕様書,また,仮に他社製の既設選別押印機及)
び台付押印機とあて名区分機とを接続しようとすれば,当該既設選別押
印機及び台付押印機との接続に関する技術情報が開示される必要がある
が,当時はこの技術情報は開示されていなかったことが認められる。
しかしながら,他社製の選別押印機及び台付押印機と自社製のあて名
区分機との接続は,接続に関する技術情報が開示されれば技術的に可能
であるとされている(査82ないし84,92。そして,P3は,平)
成10年4月9日付け文書で,郵政省に対し,原告P1製及び原告P2
製の選別押印機等との接続に関する技術情報の開示を求め,機械情報シ
,,,ステム課はこれに応じて同年5月8日付け文書で技術情報を開示し
P3は,その開示を受けて,技術的に接続が可能であることを確認し,
同年6月9日の区分機類の一般競争入札に参加したのであり,また,郵
政省が平成11年3月19日に一般競争入札の方法により発注した区分
機類について,原告P2は,原告P1製の選別押印機との接続を条件と
,,,,する新型区分機の入札に参加し落札・受注し納入しておりP3も
また,同入札において,原告P1製の選別押印機との接続を条件とする
新型区分機の入札に参加し,落札・受注したのである。原告P2第一官
庁営業部担当部長であったP8も「ただ,例えば,株式会社P1の郵便
物自動選別取りそろえ押印機と,当社の区分機を連結できないかという
と,技術的に不可能ではありません。株式会社P1の連結部の内容が分
かれば,時間はかかるでしょうが,これに対応することはできます。こ
の連結することについて,相手の情報を郵政省を通じて開示を求めるこ
とについては,特許などの障害はないと考えています」と述べている。
(査82。これらの事実からすると,平成7年度及び平成8年度の入)
札についても,原告ら2社が郵政省に情報の開示を求めれば接続に関す
る技術情報が開示されたものと認められ,そうとすれば,通常の事業活
動の範囲内においてかつ事業活動の施設又は態様に重要な変更を加える
ことなく他社製の既設選別押印機及び既設台付押印機に自社製のあて名
区分機を接続することが絶対的に不可能であったとまではいえず,した
がって「当初から入札に参加して落札することができない状態すなわ,
ち当初から他方の原告との競争から排除されて他方の原告とは競争する
ことができない状況(競争不能状況)にあった」とはいえないという。
べきである。原告ら2社は潜在的競争関係にあったものというべきであ
る。また,原告らは,前記のとおり「むしろ,P3が平成10年6月,
以降の入札に参加し,接続に関する条件を十分考慮することなく落札し
た結果,既設機との接続を履行することができず,既設メーカーである
原告らの支援を得ざるを得なかったことは,原告ら提出の証拠(審85
等)上明白であり,原告ら2社においても,本件後3年もの年月を要し
てようやく連結ユニット(甲2の1・2)という別の新たな機械を開発
することによって他社製選別押印機等との接続が実現し得たのであるか
ら,本件当時においては,原告ら2社にとっても他社製の選別押印機等
との接続を実現することは,技術的にも経済的にも容易なことではなか
ったのである」旨を主張するが(なお,原告らが当審において提出し。
た甲2号証の1・2は,被告公正取引委員会の認定した事実に関する証
拠としては提出されていない,P3が豊島郵便局及び静岡南郵便局。)
における既設機(ビデオコーディング装置)との接続について既設メー
カーである原告P2の支援を受けざるを得なかったとしても(査85,
参考人P9の供述,これをもって「他社製の既設選別押印機及び既設)
台付押印機に自社製のあて名区分機を接続することが絶対的に不可能で
あったとまではいえない」との上記の判断が左右されるものではないと
いうべきである(査90。)
なお,既設のあて名区分機の新型区分機対応への改良・移設に伴う既
設郵便局への新型区分機の納入は,既設郵便局へ納入した当該製造業者
しか行い得ないものではなく,原告ら2社のいずれもが納入することが
可能である(なお,既設のあて名区分機の新型区分機対応への改良は随
意契約に付されている(査57。)。)
ウ原告らは「本件審決案が「選別押印機及び台付押印機をあて名区,,
分機及び新型区分機等と接続する場合に,ある社のものを他の社のもの
と接続することは,接続に関する技術情報が開示されていれば可能であ
るとされており」として,仮定的事実を認定し,それが現実に存在す,
る具体的事実であるとして判断しているが,極めて不当である」と批。
難する。
しかし「接続に関する技術情報が開示されていれば可能であるとさ,
れている」と認定すること自体は,何ら差し支えないものであり,問。
題は,接続に関する技術情報が開示されていたこと又は開示され得たこ
とを認定しないで接続が可能であるとすることである。しかるところ,
上記イのとおり,本件においては,原告ら2社が郵政省に情報の開示を
求めれば接続に関する技術情報が開示されたものと認められるから,原
告らの上記主張も採用することができない。
()予備部品の添付について4
原告らは,さらに「原告ら2社において,互いに設計思想の異なる他,
社の区分機類の構造等を知り得ることは不可能であったから,他社の区分
機類の予備部品及びこれと代替性のある部品の製造は不可能であり,した
がって,それらの供給能力がなく,ひいては予備部品と結び付けられて発
注された区分機類についても供給が不可能であった」旨「原告P1と。,
原告P2の各区分機類は,設計思想が全く異なり,したがってまた構造も
異なり,企業秘密であるこれらの情報については,原告ら2社は互いに他
社の区分機類のそれを有しなかったため,他社の予備部品を製造すること
は技術的に不可能な状況にあった」旨を主張する。。
確かに,右流れ型のあて名区分機の仕様書には原告P1が作成した予備
部品リストが,左流れ型のあて名区分機の仕様書には原告P2が作成した
予備部品リストがそれぞれ添付されていたことが認められる(査60の1
,,,,,1・1261の13・1463の1264の10・1169の7
70の7。)
しかしながら,上記()のとおり原告ら2社が郵政省に情報の開示を求3
めれば接続に関する技術情報が開示されたものと認められることからすれ
ば,例えば,原告P2が右流れ型のあて名区分機の仕様書に添付された原
告P1の作成した予備部品リストの内容について郵政省にその開示や説明
を求めるなどすれば,郵政省による開示や説明がなされてそれを理解する
ことが可能であったと認められるから,そうとすれば,通常の事業活動の
範囲内においてかつ事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることな
く予備部品を製造することは可能であり,したがって,予備部品と結び付
けられて発注された区分機類についても供給が可能であったということが
できるものである。原告らの上記主張も採用することができない。
()まとめ5
以上によれば,平成7年度ないし平成9年度における区分機類の入札に
ついて,郵政省内示を受けていなかった原告も,郵政省内示を受けていな
い入札対象物件について,入札条件として設定された期間内に当該区分機
類を製造し得る可能性があり,また,他社製の選別押印機及び台付押印機
と自社製のあて名区分機とを接続し得る可能性もあり,したがって,郵政
省内示を受けていた原告と競争することができる可能性があったものとい
うべきであるから,同旨の本件審決に法令違反はないというべきである。
平成7年度ないし平成9年度における区分機類の入札について実際に原告
ら2社の間に競争(競札)が起こらなかったのは,郵政省内示と原告ら2
社の間の後記の意思の連絡とによるものであって,原告ら2社の間におい
て当初から競争することができなかったからではない。
()アなお,仮に,原告ら主張のとおり「郵政省から郵政省内示を受けて6,
いなかった原告は,入札対象物件のうち郵政省内示を受けていない物件
については,入札日から納入期限までが極めて短期間と設定されていた
こと,既設他社製選別押印機等との接続を義務づけられていたこと,等
の入札条件のもとにおいては,当初から入札に参加して落札することが
できない状態すなわち当初から他方の原告との競争から排除されて他方
の原告とは競争することができない状況(競争不能状況)にあった」。
としても,別紙に記載の事実,なかでも下記イの事実によれば,原告ら
2社は,指名競争入札当時から行われていた郵政省内示が一般競争入札
となった平成7年度以降も引き続いて行われることを希望し,平成7年
度以降は一般競争入札の方法をとるために郵政省内示は行わないとする
郵政省に対して引き続きこれを行うよう強く求めたものであって,原告
ら2社においても,郵政省内示が行われた場合には,平成6年度までの
指名競争入札当時の実際からして,当然に入札日から納入期限までが短
期間に設定され,既設他社製選別押印機等との接続に関する技術情報も
特には開示されず,予備部品の特定も原告ら2社のいずれかの予備部品
表の添付によってなされるものであることを容易に認識しそして予めこ
れを了承していたものといえるから,いわば競争不能状況は原告ら2社
,,がそれを認識認容して自ら招いた事態ということができそうとすれば
今になって郵政省内示及びそれを前提とする措置を批難して,郵政省内
示があったために他社と競争することができない競争不能状況が出来し
たものであると主張することは,禁反言の法理からしても,許されるも
のではないというべきである。この点からも,原告らの上記主張は採用
することができない。
イ(ア)郵政省は,区分機類を,昭和43年度から昭和61年度までは随
意契約により発注し,昭和62年度から平成6年度までは指名競争入
札の方法により発注していたが,平成7年度以降は一般競争入札の方
法により発注することとした。
(イ)昭和30年代の高度経済成長を背景とした郵便物取扱量の飛躍的
増大に対応して,昭和43年に郵便番号制度が施行された。このよう
な郵政省での機械化の要請に対応して,郵政省からの委託により,ま
ずP3が昭和36年に京都中央郵便局に鍵盤式書状区分機試作機を,
原告P2が昭和37年に東京中央郵便局に書状押印機等をそれぞれ納
入した。郵政省は,昭和40年から昭和41年にかけて,上記2社に
新規参入した原告P1を加えた3社に「郵便番号自動読取装置」の研
究を委託した。その結果,原告P1が昭和42年に,光学式文字読取
装置(OCR)による手書郵便番号の読取に成功し,昭和43年7月
の郵便番号制度の実施(3桁/5桁)に併せて東京中央郵便局に2台
の番号区分機を納入した。そして,昭和44年には,原告P2が手書
郵便番号の読取に成功して新宿郵便局に実用機を納入した。しかし,
P3はこの開発に成功せず,昭和44年,区分機類の市場から撤退し
た。
番号区分機の開発に当たり,原告P1は,右流れ型を採用し,その
後同社の区分機類は,基本的に右流れ型として開発されることになっ
た。他方,原告P2は,左流れ型の番号区分機を開発し,その後同社
の区分機類は,基本的に左流れ型として開発されることになった。
(ウ)原告ら2社は,指名競争入札当時,かねてから,入札執行前に,
郵政省の調達事務担当官等から同省の購入計画に係る各社ごとに分け
られた区分機類の機種別台数,配備先郵便局等に関する情報の提示を
それぞれ受けており,原告ら2社は,それぞれ,情報の提示を受けた
区分機類について,同省が自社に発注する意向を有していると認識し
ていた。
郵政省の指名競争入札の方法による区分機類の発注において,原告
ら2社のうち郵政省の調達事務担当官等から情報の提示を受けた者の
みが入札に参加し情報の提示を受けなかった者は入札を辞退するとい
う行為は相当以前から行われていた。
(エ)a平成6年度の郵政省の区分機類の購入計画については,郵政省
の調達事務担当官等は,原告ら2社に対し,次のとおり情報の提供
を行った。すなわち,
施設課システム企画室のP10室長及びP6係長は,平成6年2
月16日ころ,郵政省において,原告P2のP11部長及びP12
部長に対し,同省の平成6年度の購入計画に係る区分機類のうち,
あて名区分機(L1型)23台,新東京国際郵便局向けの国際郵便
物自動読取区分機1台,あて名区分機(L2型)8台,選別押印機
5台,台付押印機27台及び連結部19台の購入計画を口頭で説明
するとともに,区分機類の機種別口数別台数,配備先郵便局等が記
載された文書を配布することにより,情報の提示を行った。
,,,,またP10室長及びP6係長は同時期ころ郵政省において
原告P1のP13部長及びP14課長に対し,同省の平成6年度の
購入計画に係る区分機類の情報の提示を行った。
b原告ら2社は,この情報の提示を受けた後,それぞれ,施設課シ
ステム企画室の調達事務担当官に対し,情報の提示を受けた区分機
類の納入日,配備先郵便局等を記載した表(納入日程表)を何度も
提出するなどして,情報の提示を受けた区分機類の納入日程等の調
整を行った。
c郵政省は,平成6年6月16日,同年7月4日,同月25日及び
同年8月22日の計4回の指名競争入札を実施し,原告ら2社のみ
を指名したが,原告ら2社は,それぞれ,自社が情報の提示を受け
た区分機類の物件については入札に参加したが,自社が情報の提示
を受けなかった区分機類の物件については入札を辞退した。
d仕様書には区分機類の納入期限が記載されているが,前記納入日
程の調整により実際に郵便局に納入されるのは通常それより前であ
り,原告ら2社が受注してから納入するまでの期間が著しく短いも
のもあった。
(オ)a原告ら2社は,平成6年春ころから,施設課システム企画室の
調達事務担当官等から,外国事業社に入札参加の機会を広げる等の
ため,平成7年度以降は区分機類を一般競争入札の方法により発注
する方針であることを示されていた。
b平成6年4月15日,郵政省において,勉強会と称する会合が開
催され,施設課システム企画室のP10室長,P6係長,P15次
席ら,原告P1のP16部長,P17課長ら,原告P2のP12部
長,P9課長らが出席した。この会合の主たる目的は区分機類の性
能テストの結果説明等であったが,同会合の終わりころに,P6係
長から,平成7年度は区分機類を一般競争入札の方法により発注す
る見通しであること,指名競争入札における仕様書の「XX型と同
等」という記載は一般競争入札となった場合にはできないこと,等
の説明があった。これらについて,原告ら2社の出席者から特段の
発言はなかった。
c原告ら2社は,上記の平成6年4月15日の会合において施設課
システム企画室の調達事務担当官から読取率の目標値案の提案及び
新型区分機等の見込価格の提出を求められたことを受けて,同年4
月26日に打合せを行った。
原告P1のP13部長が作成した平成6年6月14日付け「LH
−BU事業戦略H6年度実行課題・戦略・施策」と題する電磁的
記録には,①平成6年度の区分機類の利益確保という課題につい
て,区分機類の受注価格の低下を抑制する施策として原告P2との
共同提議・根回しを行うこと,②平成7年度の区分機類の売上高
及び利益確保という課題について,区分機類の総発注額を確保する
ための施策として原告P2との共同提議・根回しを行うこと及びシ
ェアの拡大の施策として一般競争入札の回避の提案をすること,③
平成8年度以降の区分機類の利益率及びシェア確保という課題に
ついて,売上高の確保のための施策として原告P2及びP3との協
調,との記載がされていた。
d平成6年7月8日に機械情報システム課長にP7課長が就任し,
P18郵務局長はP7課長に価格の低廉化を図るよう指示した。
e平成6年9月2日,郵政省において,課長勉強会と称する会合が
開催され,機械情報システム課のP7課長,P6係長ら,原告P1
,,,,のP13部長P16部長ら原告P2のP11部長P12部長
P19部長らが出席した。
同会合において,一般競争入札について,郵政省側が,今の流れ
では一般競争入札にせざるを得ないと説明したところ,原告ら2社
側の出席者から,区分機類のような特殊機器がパソコンと同様に標
準機器として一般競争入札になじむのか非常に疑問があるとの発言
がなされた。これに対して,郵政省側は,流れが一般競争入札にな
っており,指名競争入札では随意契約とみられるので,一般競争入
,。札と指名競争入札とでは外部の受け止め方が全然違うと回答した
原告ら2社側から,一般競争入札にすると現在のように契約から納
入までの期間が1か月から3か月と短期に定められている物件の納
入に問題が生じ得るのではないかとの質問がなされたのに対し,郵
政省側は,一般競争入札の場合は契約から納入までに最低6か月は
必要であると考えると回答した。
f平成6年11月1日,郵政省は,原告P1に発注の意向を示した
書留郵便物自動読取区分機について,平成7年1月13日に一般競
争入札を行う旨の官報公示を行った。これは,郵便番号自動読取区
分機類について初めて一般競争入札に付されたものであり,原告P
1においては,平成7年度の区分機類の入札が一般競争入札になる
との認識を高めた。
g平成6年11月ころ,原告P1のP13部長は,機械情報システ
ム課のP6係長に対し,一般競争入札の導入の中止を要請したが,
P6係長は,それはできないと断った。
平成7年1月初旬ころ,原告P2のP12部長は,P6係長に対
し,情報の提示を継続するように要請した。P6係長は,P7課長
の判断が未だなされていないことから,この要請に対して回答しな
かった。
h平成7年1月上旬ころ,機械情報システム課のP6係長は,P7
課長に対し,平成7年度の区分機類の購入に関し,原告ら2社に情
報の提示を行うこととするか否かを尋ねたところ,P7課長は,配
備計画どおりに平成7年度の区分機類が納入されないと困るので生
産確認という意味で情報の提示を行う旨を回答し,情報の提示が継
続されることとされた。
原告P2のP20主任は,平成7年1月23日ころ,原告P1の
P21主任から,三者の打合せの前日である同月25日に原告ら2
社間で仕様書に関して打合せを行いたいとの提案を受け,同日,原
。,告ら2社の関係者が集まることとなった原告ら2社間の打合せは
同月25日午後2時ころから行われ,その結果,①翌日の郵政省
との打合せでは結論を出さないこと,②郵政省から送付された原
案に手書きで記入したものを郵政省に提出し,ワープロ打ちしたも
のも別途提出すること,③予備部品表,付属部品表及び図面は原
,。告ら2社のいずれかのものが添付されるようにすることとされた
平成7年1月26日,郵政省において,機械情報システム課のP
6係長及びP22次席,原告P1のP21主任,P17課長,P2
3主任及びP12主務並びに原告P2のP20主任,P9課長及び
P24課長が出席して打合せが開催された。その会合の冒頭に,P
6係長及びP22次席から,区分機類の発注に関する方針について
次のような説明がなされた。
①平成7年度は,区分機類の発注方法を一般競争入札とする
ので,これまで原告P1及び原告P2とで別々の仕様書にし
ていたのを,共通の仕様書として一本化する。
②仕様書はあて名区分機については,口数別,L1型・L2
型別に分ける。正流れ型・逆流れ型については仕様書を分け
ない。
③選別押印機,台付押印機及び連結部については,仕様書を
分けず,共通化する。
④仕様書における処理能力,寸法,消費電力等の数値につい
ては,原告ら2社の最大公約数,すなわち,劣る方の数値に
合わせる。
⑤上記のような仕様書の内容では,どの郵便局のどのタイプ
がいずれの原告に発注する意向が示されたのか不明であるの
で,内示は事前に実施する。
この説明に対して,原告ら2社側の出席者から特段の発言はなさ
れなかった。原告P1の出席者の中には内示を受けられると聞き安
心した者もいた。
郵政省は,平成7年1月31日ころ,あて名区分機の仕様書の内
容等について,一部方針を変更し,選別押印機及び台付押印機との
連結を特に摘記し,また,あて名区分機の正流れ型,逆流れ型をそ
れぞれ別の仕様書とすることとした。
(カ)a機械情報システム課のP7課長及びP6係長は,平成7年2月
ころ,原告P2のP11部長及びP12部長に対し,郵政省の平成
7年度の購入計画に係る区分機類のうち,あて名区分機(L1型)
300口1台,同250口3台,同200口14台,同150口2
台,あて名区分機(L2型)200口3台,同150口8台,選別
押印機8台,台付押印機10台及び連結部5台という購入計画を口
頭で説明するとともに,区分機類の機種別台数,あて名区分機にあ
っては速度別口数別台数,当該区分機類の配備先郵便局等が記載さ
れた文書を持ち帰り用に用意し,原告P2の出席者はそれを持ち帰
った。
また,P7課長及びP6係長は,平成7年2月ころ,原告P1の
P13部長及びP14課長に対し,郵政省の平成7年度の購入計画
に係る区分機類のうち,あて名区分機(L1型)250口6台,同
200口10台,同150口2台,あて名区分機(L2型)200
口15台,同150口1台,選別押印機10台,台付押印機11台
及び連結部12台という購入計画を口頭で説明するとともに,区分
機類の機種別台数,あて名区分機にあっては速度別口数別台数,当
該区分機類の配備先郵便局等が記載された文書を机上に持ち帰り用
に用意し,原告P1の出席者はそれを持ち帰った。
b原告ら2社は,それぞれ,自社の工場部門に情報の提示が行われ
た物件の製造を指示するとともに,機械情報システム課の調達事務
担当官とこれらの物件についてそれぞれ納入日程の調整を行った。
原告P2においては,機械情報システム課のP22次席と納入日
程について打合せを行い,同年4月ころ納入日程表を完成させた。
原告P1においても,P22次席と納入日程について打合せを行
い,同年5月ころ納入日程表を完成させた。
c平成7年度の区分機類の調達に係る官報公示は,平成7年5月2
日に行われた。
発注する区分機類は,あて名区分機,選別押印機,台付押印機又
は連結部の機種別,右流れ型又は左流れ型の流れ型別,あて名区分
,,,機にあっては150口200口250口又は300口の口数別
L1型又はL2型の速度別等により18物件にグループ分けされ,
一般競争入札の方法により,平成7年7月3日に入札に付されるこ
ととされた。
,,d平成7年度の区分機類の入札は平成7年7月3日に行われたが
原告ら2社は,基本的に,自社に情報の提示のあった物件のみ入札
に参加し,自社に情報の提示がなかった物件については入札に参加
しなかった。
e入札後,受注した物件の納入がなされたが,原告P1が受注した
落合郵便局の物件については,契約上の納入期限は平成7年8月3
1日とされていたが,同郵便局の開局が同年7月31日と予定され
ていたことから,納入が同月10日,引渡しが同月14日と,入札
後極めて短期間に行われた。
(キ)a機械情報システム課のP7課長及びP6係長は,平成8年2月
28日ころ,原告P2のP11部長及びP12部長に対し,郵政省
の平成8年度の購入計画に係る区分機類のうち,あて名区分機(L
1型)350口5台,同300口8台,同250口3台,選別押印
機3台,台付押印機4台及び連結部1台という購入計画を口頭で説
明するとともに,あて名区分機については原告P2が16台である
のに対し,原告P1は19台になっていると述べた。P6係長は,
区分機類の機種別台数,あて名区分機にあっては口数別台数,当該
区分機類の配備先郵便局等が記載された文書を持ち帰り用に用意
し,P11部長らがそれを持ち帰った。
また,P7課長及びP6係長は,そのころ,原告P1のP13部
,,長らに対し郵政省の平成8年度の購入計画に係る区分機類のうち
あて名区分機19台を含む購入計画を口頭で説明するとともに,区
分機類の機種別台数,あて名区分機にあっては口数別台数,当該区
分機類の配備先郵便局等が記載された文書を持ち帰り用に用意し,
P13部長らがそれを持ち帰った。
b原告ら2社は,それぞれ,前年度と同様な方法で,自社に情報の
提示が行われた物件について,機械情報システム課と納入日程の調
整を行った。
c平成8年度の区分機類の調達に係る官報公示は,平成8年5月3
0日に行われた。
発注する区分機類は,あて名区分機,選別押印機,台付押印機又
は連結部の機種別,右流れ型又は左流れ型の流れ型別,あて名区分
機にあっては200口,250口,300口又は350口の口数別
,,等により18物件にグループ分けされ一般競争入札の方法により
同年8月7日に入札に付されることとされた。
d平成8年度の区分機類の入札は,平成8年8月7日及び同月28
日に行われたが,原告ら2社は,自社に情報の提示のあった物件の
み入札に参加し,自社に情報の提示がなかった物件については入札
に参加しなかった。
e入札後,受注した物件の納入がなされたが,原告P2が受注した
橋本郵便局及び岐阜北郵便局の物件については,契約上の納入期限
は平成8年10月31日とされていたが,前記の納入日程の調整に
より,橋本郵便局の物件については納入が同年9月5日,岐阜北郵
便局の物件については納入が同月9日,と入札後極めて短期間に行
われた。また,原告P1が受注した高津郵便局及び品川郵便局の物
件については,契約上の期限が同月30日とされていたが,前記の
納入日程の調整により,高津郵便局の物件については納入が同年8
月25日,品川郵便局の物件については納入が同年9月1日,と入
札後極めて短期間に行われた。
(ク)a機械情報システム課のP25課長補佐は,平成8年10月ころ
までに,原告ら2社それぞれに対し,平成9年度の区分機類の配備
先郵便局,配備予定機種などの情報を提示し,それに基づき納入日
程表の案を作成して提出するよう依頼した。
b原告ら2社は,この依頼を受け,原告P1にあってはP21主任
が,原告P2にあってはP9課長及びP26課長が,機械情報シス
テム課のP25課長補佐に対し,納入日程表の案を提出し,P25
課長補佐からの再検討の依頼を踏まえて修正を何回か繰り返した
後,平成9年3月ないし4月ころ納入日程が確定した。平成9年度
は発注される予定の区分機類の台数が非常に多く,また,玉突き移
設の問題もあったため,納入日程表の修正回数はこれまでよりもは
るかに多かった。
c平成9年度の区分機類の調達に係る官報公示は,平成9年3月1
9日に行われた。
発注する区分機類は,新型区分機,バーコード区分機(A型,)
バーコード区分機(B型,選別押印機,台付押印機,連結部又は)
情報入力装置の機種別,このうち新型区分機,バーコード区分機(
A型,バーコード区分機(B型,選別押印機及び台付押印機に))
あっては右流れ型又は左流れ型の流れ型別,新型区分機,バーコー
ド区分機(A型)及びバーコード区分機(B型)にあっては200
口,250口,300口又は350口の口数別等により31物件に
グループ分けされ,一般競争入札の方法により,同年5月16日に
入札に付されることとされた。同入札では,原告P1に情報の提示
があったと認められる物件のうち左流れ型のもの及び原告P2に情
報の提示があったと認められる物件のうち右流れ型のものは別個に
グループ分けされていた。
d平成9年度の区分機類の入札は,平成9年5月16日に行われた
が,原告ら2社は,自社に情報の提示のあった物件のみ入札に参加
し,自社に情報の提示がなかった物件については入札に参加しなか
った。
e入札後,受注した物件の納入がなされたが,原告ら2社が受注し
た物件について,前記の納入日程の調整により納入が入札後短期間
に行われたものが相当数あった。
ウ上記イの事実を考慮すると,前記アのとおり,今になって郵政省内示
及びそれを前提とする措置を批難して,郵政省内示があったために他社
と競争することができない競争不能状況が出現したものと主張すること
は,許されないものというべきである。
3「意思の連絡」の不存在について
()原告らは,次のとおり主張する。1
本件審決案は,遅くとも平成7年度の入札日である平成7年7月3日ま
でには「郵政省の調達事務担当官等から情報の提示のあった者のみが当該
物件の入札に参加し,情報の提示のなかった者は当該物件の入札に参加し
ないことにより,郵政省の調達事務担当官等から情報の提示のあった者が
受注できるようにする」旨の意思の連絡すなわち本件共通の認識が形成。
されていたとし,原告ら2社は,本件共通の認識=意思の連絡の下に,受
注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにし,区分機類の競争を
実質的に制限した,としたが,この判断は誤っている。
()アしかしながら,別紙に記載の事実特に下記イの事実を考慮すると,2
原告ら2社の間には遅くとも平成7年度の入札日である平成7年7月3
日までにそれまでの指名競争入札当時と同様に「郵政省の調達事務担当
官等から情報の提示のあった者のみが当該物件の入札に参加し,情報の
提示のなかった者は当該物件の入札に参加しないことにより,郵政省の
。」調達事務担当官等から情報の提示のあった者が受注できるようにする
旨の少なくとも黙示的な意思の連絡があったものと認めることができる
から,同旨の本件審決に法令違反はないというべきである。
イ(ア)郵政省の発注する区分機類は,原告ら2社の複占市場であり,製
品の開発には高度な技術と相当な期間の研究・実験が必要であるため
参入障壁が高く,直ちに他の者が参入する見込みはなかった。
(イ)原告ら2社は,区分機の読取性能が比較されて区分機類の発注見
込台数に差が付けられるという認識を持っており,技術開発競争を継
続してきていた。
,,,,(ウ)a原告ら2社は指名競争入札当時かねてから入札執行前に
郵政省の調達事務担当官等から同省の購入計画に係る各社ごとに分
けられた区分機類の機種別台数,配備先郵便局等に関する情報の提
示をそれぞれ受けており,原告ら2社は,情報の提示を受けた区分
機類については同省が自社に発注する意向を有しているものと認識
していた。
b郵政省の指名競争入札の方法による区分機類の入札において,原
告ら2社のうち郵政省の調達事務担当官等から情報の提示を受けた
者のみが入札に参加し情報の提示を受けなかった者は入札を辞退す
るという行為は相当以前から行われていた。
c郵政省が指名競争入札の方法により発注した昭和62年度から平
成6年度までの区分機類について,原告ら2社はそれぞれ同省の総
発注額のおおむね半分ずつを受注していた。
d郵政省における平成6年ころから平成9年ころまでの区分機類の
配備状況をみると,北海道郵政局,信越郵政局,北陸郵政局,九州
郵政局及び沖縄郵政管理事務所管内の郵便局には原告P1のものの
みが配備され,東北郵政局及び四国郵政局管内の郵便局には原告P
2のもののみが配備されていたが,原告ら2社は,自らの区分機類
が配備されていない郵政局管内においては,原則として営業活動を
行っていなかった。
(エ)a平成6年4月15日,郵政省において,勉強会と称する会合が
開催され,原告P1のP16部長ら,原告P2のP12部長らが出
席したが,この会合の終わりころに,郵政省のP6係長から,平成
7年度は区分機類を一般競争入札の方法により発注する見通しであ
ること等の説明があった。
b原告ら2社は,上記の平成6年4月15日の会合において施設課
システム企画室の調達事務担当官から読取率の目標値案の提案及び
新型区分機等の見込価格の提出を求められたことを受けて,同年4
月26日に打合せを行った。
原告P1のP13部長が作成した平成6年6月14日付け「LH
−BU事業戦略H6年度実行課題・戦略・施策」と題する電磁的
記録には,①平成6年度の区分機類の利益確保という課題につい
て,区分機類の受注価格の低下を抑制する施策として原告P2との
共同提議・根回しを行うこと,②平成7年度の区分機類の売上高
及び利益確保という課題について,区分機類の総発注額を確保する
ための施策として原告P2との共同提議・根回しを行うこと及びシ
ェアの拡大の施策として一般競争入札の回避の提案をすること,③
平成8年度以降の区分機類の利益率及びシェア確保という課題に
ついて,売上高の確保のための施策として原告P2及びP3との協
調,との記載がされていた。
c平成6年9月2日,郵政省において,課長勉強会と称する会合が
開催され,原告P1のP13部長ら,原告P2のP11部長らが出
席したが,同会合において,一般競争入札について,郵政省側が,
今の流れでは一般競争入札にせざるを得ないと説明したところ,原
告ら2社側の出席者から,区分機類のような特殊機器がパソコンと
同様に標準機器として一般競争入札になじむのか非常に疑問がある
との発言がなされ,また,一般競争入札にすると現在のように契約
から納入までの期間が1か月から3か月と短期に定められている物
件の納入に問題が生じ得るのではないかとの質問がなされ,これに
対して,郵政省側は,一般競争入札の場合は契約から納入までに最
低6か月は必要であると考えると回答した。
d平成6年11月ころ,原告P1のP13部長は,機械情報システ
ム課のP6係長に対し,一般競争入札の導入の中止を要請し,平成
7年1月初旬ころ,原告P2のP12部長は,P6係長に対して,
情報の提示を継続するよう要請した。
e原告P2のP20主任は,平成7年1月23日ころ,原告P1の
P21主任から,三者の打合せの前日である同月25日に原告ら2
社間で仕様書に関して打合せを行いたいとの提案を受け,同日,原
。,告ら2社の関係者が集まることとなった原告ら2社間の打合せは
同月25日午後2時ころから行われ,その結果,①翌日の郵政省
との打合せでは結論を出さないこと,②郵政省から送付された原
案に手書きで記入したものを郵政省に提出し,ワープロ打ちしたも
のも別途提出すること,③予備部品表,付属部品表及び図面は原
,。告ら2社のいずれかのものが添付されるようにすることとされた
f平成7年1月26日,郵政省において,原告ら2社が出席した打
合せが開催され,その冒頭に,郵政省のP6係長及びP22次席か
ら区分機類の発注に関する方針についての説明があり,平成7年度
は,区分機類の発注方法を一般競争入札とするので,これまで原告
P1及び原告P2とで別々の仕様書にしていたのを共通の仕様書と
,,,,して一本化すること仕様書はあて名区分機については口数別
L1型・L2型別に分け,正流れ型・逆流れ型については仕様書を
分けないこと,上記のような仕様書の内容ではどの郵便局のどのタ
イプがいずれの原告に発注する意向が示されたのか不明であるので
内示は事前に実施すること,等の説明がなされた。この説明に対し
て,原告ら2社側の出席者からは特段の発言がなされなかったが,
原告P1の出席者の中には内示を受けられると聞いて安心した者も
いた。
(オ)aそして,平成7年度の区分機類の一般競争入札については,平
成7年2月ころに原告ら2社に対してそれぞれ情報の提示がなさ
れ,原告ら2社はそれぞれ自社に情報の提示があった物件について
のみ郵政省との間で納入日程調整を行い,そして,原告ら2社は,
基本的に,自社に情報の提示のあった物件についてのみ入札に参加
し,自社に情報の提示がなかった物件については入札に参加しなか
った。落札金額を予定価格で除した落札率はすべての物件について
999%を超えていた。.
b平成8年度の区分機類の一般競争入札については,平成8年2月
28日ころに原告ら2社に対してそれぞれ情報の提示がなされ,原
告ら2社はそれぞれ自社に情報の提示があった物件についてのみ郵
政省との間で納入日程調整を行い,そして,原告ら2社は,自社に
情報の提示があった物件についてのみ入札に参加し,自社に情報の
提示がなかった物件については入札に参加しなかった。落札率はす
べての物件について998%を超えていた。.
c平成9年度の区分機類(新型区分機が中心)の一般競争入札につ
いては,平成8年10月ころまでに原告ら2社に対してそれぞれ情
報の提示がなされ,原告ら2社はそれぞれ自社に情報の提示があっ
た物件についてのみ郵政省との間で納入日程調整を行い,そして,
原告ら2社は,自社に情報の提示のあった物件についてのみ入札に
参加し,自社に情報の提示がなかった物件については入札に参加し
。。なかった落札率はすべての物件について995%を超えていた.
d原告ら2社は,郵政省が平成7年4月1日から平成9年5月16
日までの間に一般競争入札の方法により発注した区分機類の物件7
1物件中の70物件を受注し,それぞれが同省の総発注額のおおむ
ね半分ずつを受注した。
(カ)a平成9年12月10日,公正取引委員会が原告ら2社に立入検
査を行ったところ,郵政省はその後情報の提示を行わなくなり,納
入日程の調整も入札後に行われるようになって,入札日から初回の
納入期限までの期間も短期間に設定されることがなくなった。
平成10年2月27日の区分機類の一般競争入札からP3が参入
し,P3が参加した物件は少なくとも2社の競争となった。
bP3は,当初右流れ型の区分機類に参入し,原告P1との競札と
なった。平成10年2月27日の入札では2物件が原告P1とP3
..との競札となったが,これらの物件の落札率は約965%と94
1%であり,それまでよりも下がった。平成10年6月9日の入札
からは原告P1が左流れ型の区分機類に本格的に参入し,原告P2
と競札するようになった。同日に原告P1とP3とが競札となった
13物件の落札率は,約771%から約995%までであり,原..
..告2社が競札になった10物件の落札率は約752%から約95
5%までであった。平成11年3月19日の入札からはP3が左流
れ型の区分機類にも参入し,原告P2が右流れ型の区分機類に本格
的に参入したことから,すべての物件について原告ら2社とP3の
3社あるいは原告ら2社の競札となったが,同日に3社が競札とな
,った11物件の落札率は約405%から約844%までに下がり..
原告ら2社が競札となった8物件の落札率は約655%から約9.
85%までであった。.
ウ上記イの事実(中でも(ウ)b,(エ)d,(オ)のa∼cの事実,そ)
して,原告ら2社はいずれも郵政省内示を積極的に受け入れておりも
とよりこれに異議を唱えたことはなかったことを考慮すると,原告ら
2社の間には遅くとも平成7年度の入札日である平成7年7月3日ま
でに従前の指名競争入札当時と同様に「郵政省の調達事務担当官等か
ら情報の提示のあった者のみが当該物件の入札に参加し,情報の提示
のなかった者は当該物件の入札に参加しないことにより,郵政省の調
。」達事務担当官等から情報の提示のあった者が受注できるようにする
旨の少なくとも黙示的な意思の連絡があったことは優に認められるも
のというべきであり,原告らの上記主張は採用することができないも
のというべきである。なお,本件を当庁に差し戻した前記上告審判決
も「本件違反行為は,被上告人らにおいて,共同して,受注予定者,
を決定し,受注予定者が受注することができるようにしていた行為で
あって,担当官等からの情報の提示は受注予定者を決定するための手
段にすぎない」と述べている。。
本件において,買手が郵政省一者のみである事実も,郵政省自身が
前記のように主導的に情報の提示や納入日程調整を行う反面において
製造業者が原告ら2社のみであることから郵政省も価格の決定やアフ
ターケアなどの点で原告ら2社に依存する関係にもあったことを考慮
すると,郵政省が必ずしも原告ら2社に対して強い優越的地位に立っ
ていたとまでは認められず,原告ら2社が郵政省に従属していて利益
追求についてその自由な意思決定ができない状況にあったとは認め難
いものというべきであるから,上記の判断を左右しないものというべ
きである。
なお,また,仮に郵政省がその内示を行うことによって原告ら2社
の間に実際の競争が生じることがないようにするとの意図を有してい
たとしても,そのような意図があるからといってただちに原告ら2社
の間に意思の連絡が不要となるとはいえず,むしろ,原告ら2社は,
郵政省内示がなされることを前提として,部分的にはそれに不満なと
ころがあるとしても原則としてそれに依拠しそれに従って「情報の提
示のあった者のみが当該物件の入札に参加し,情報の提示のなかった
者は当該物件の入札に参加しない」旨の暗黙の合意をなしていたも。
のと認められるのである。
()原告らは「P4事件と本件とでは事案の内容が重要な点において異な3,
っているから,P4事件の判決を本件において判断基準とすることはでき
ないものである」旨を主張するが,P4事件の判決で示された判断基準。
を一般的な基準として本件に適用すること自体は何ら差支えないものであ
るから,原告らの上記主張は採用することができない。
,「,,,()原告らは本件審決案は不当にも郵政省内示の持つ意味を軽視し4
郵政省内示と原告ら2社の意思の連絡とを不可分一体のものとして取り扱
い,郵政省内示を受けなかった原告が当該物件の入札に参加しなかったと
いう事態は郵政省内示を受けなかったという事実のみによって生じたにも
かかわらず,原告ら2社の意思の連絡なしには生じない事態であったとし
て巧妙なすり替えを行っている」旨「本件審決案は,合法的な一方的。,
。」,行為ないし独立的行為と違法な相互的合意とを混同した違法がある旨
「事業者は,競争の自由が保障されているのみではなく,競争しない自由
も保障されている。競争を義務としてそれを命じた法は存在しないのであ
る。カルテルは,基本的に,カルテルがなかったら得られない経済的利得
を相互に保障する合意であって,それゆえに違法とされるものであるが,
本件においては,原告ら2社のうちのいずれか1社が特定の区分機類につ
,,いて郵政省内示を受けた場合には郵政省内示を受けなかった他の原告は
入札に参加することが不可能であったことから,その原告は他の原告との
意思の連絡なくして自律的な経営判断のもとに入札不参加を決定していた
のである。意思の連絡などはなく,その必要も全くなかったのである」。
旨,を主張する。
しかし,入札に付されたすべての物件について実際に競札が生じておら
ず,原告ら2社においては,情報の提示を受けた者のみが情報の提示を受
けた物件の入札に参加し情報の提示を受けなかった者は情報の提示を受け
なかった物件については入札に参加しないという不自然に一致した行動を
とっていること,そもそも原告ら2社は区分機類を巡っては本来的に競争
は区分機類の読取性能関係にあるはずのものであり,実際にも原告ら2社
が比較されて発注見込台数に差が付けられるとの認識の下に技術開発競争を
こと,等の上記()イの事実に徴すると,郵政省継続してきた経緯がある2
内示を受けなかった原告が当該物件の入札に参加しなかったという事実を
郵政省内示を受けなかったという事実のみによって説明することすなわち
その事実のみによって生じたものであると認めることは困難というべきで
あり,郵政省内示に加えて,この郵政省内示の有無によって入札に参加す
るか否かを決めるという原告ら2社間の暗黙の意思の連絡にもよるものと
認めるのが相当であって,このような意思の連絡なくして原告ら2社がた
またま結果的に同じ行動をとったものとは考え難いものである。原告らの
上記主張も採用することができない。
4実質的証拠の法理の観点からの違法性について
()原告らは「本件審決案は,原告ら2社の間に意思の連絡があったこと1,
を直接に立証する証拠がないことから,多数の間接事実を認定し,これに
よって意思の連絡があったものとしているが,認定された間接事実の中に
は前記のとおり仮定的事実や概括的認定事実が含まれていることのほか
に,その間接事実の取出し自体が恣意的なものがあり,また,取り出した
間接事実の持つ意味についても過大に評価している(意思の連絡があった
ことの認定の妨げとなる事実はことさらに無視ないしはその事実の持つ意
味を著しく過小に評価している」旨を主張する。。)。
しかし,上記3でみたとおり,本件審決案が認定した別紙に記載の事実
によると,原告ら2社の間には遅くとも平成7年度の入札日である平成7
年7月3日までにそれまでの指名競争入札当時と同様に「郵政省の調達事
務担当官等から情報の提示のあった者のみが当該物件の入札に参加し,情
報の提示のなかった者は当該物件の入札に参加しないことにより,郵政省
。」の調達事務担当官等から情報の提示のあった者が受注できるようにする
旨の少なくとも黙示的な意思の連絡があったことは優に認められるから,
原告らの上記主張は採用することができない。
,「,,()原告らは本件審決案は郵政省が独占的買主であることを認めたが2
この事実は原告ら2社の間における「意思の連絡を難しくすることとはな
らない」と評価したにとどまり,郵政省が独占的買主として市場支配力を
行使し,平成7年度ないし平成9年度の区分機類の一般競争入札において
採った入札の執行者としては到底許されない一連の行為については,その
事実自体は認定しながらも,何ら合理的な説明を示していない」旨を主。
張する。
しかし,本件審決案(頁)は「他方,買手が一者のみである場合に87,
は,売手に対し拮抗力を有し,売手に譲歩を求め得るので,一般的には,
買手が分散している場合と比べて,売手間で意思の連絡をすることが難し
いと言われている。しかし,本件においては,前記()ア①のとおり区分2
機類の買手は郵政省(国)のみであるが,郵政省が前記()ア⑥のとおり2
情報の提示,納入日程の調整等を行うなど被審人2社と相互に依存する関
係にあるところ,これを勘案すると郵政省が買手独占として存在すること
は必ずしも売手間の意思の連絡を難しくすることとはならない。また,前
記()ア②のとおり区分機類が耐久財であり,技術革新が進行しており,2
,,,さらに売手による一定のサービスを要することも一般的には消費財で
技術的に成熟し,何らのサービスも要しない商品と比べて売手側の検討す
べき内容が多くなり,意思の連絡の内容が複雑化するため意思の連絡を困
難とすると言えるが,郵政省により被審人2社が長年にわたり技術競争を
促され,両社の製品,サービスが均質化,同等化してきていることがうか
がわれることからすれば,このような製品の特質は必ずしも意思の連絡を
難しくするように作用するものではないものと認められる」と述べてお。
り,これは郵政省が平成7年度ないし平成9年度の区分機類の一般競争入
札において採った一連の措置(情報の提示から納入日程の調整を経て納入
まで)との関係において述べているものと認められるから,原告らの上記
主張は採用することができない。
原告らは,本件審決案の上記見解は独占的買手と寡占的売手との力関係
についての無理解によるものであって不合理で誤っている旨を主張する
が,しかし,たとえ,郵政省が区分機類の唯一の買主であって他に買主が
生じる余地がなく,郵政省がそれに相応した市場支配力を有していて,原
告ら2社に対してそれなりに優越的地位にあったとしても,他方で,区分
機類の製造業者も原告ら2社のみであったのであって,郵政省も原告ら2
社が区分機類市場(区分機類事業)から撤退すると区分機類の購入配備計
画の遂行に支障をきたすこととなって困るのであり,郵政省としても原告
ら2社を市場から撤退させない範囲内において価格を下げさせあるいはア
フターケア等のサービスを行わせる必要があったのであり,必ずしも郵政
省が原告ら2社に対して強い優越的地位にあったとは認められず,その限
りでは郵政省も原告ら2社に依存する関係にあったということができるの
である。そして,原告ら2社の間においては,平成6年度ないし平成9年
度当時,その製造する区分機類の性能・品質には流れ型の点を除いて大差
はなく,アフターケア等のサービスにおいても大差のない状態にあったの
であって,原告ら2社は区分機類を巡っては本来的には競争関係にあった
はずのものであり,原告ら2社にとって他社が郵政省とことさらに結びつ
いて自社に内示される物件数が少なくなることは非常に困ることであり,
これを警戒し阻止すべき状況にあったのである。そうとすれば,指名競争
入札当時においておおむね平等に郵政省内示がなされてきたことを前提と
して,原告ら2社の間において「郵政省の調達事務担当官等から情報の提
示のあった者のみが当該物件の入札に参加し,情報の提示のなかった者は
当該物件の入札に参加しないことにより,郵政省の調達事務担当官等から
情報の提示のあった者が受注できるようにする」旨の意思の連絡がなさ。
れることは,むしろ自然のなりゆきであり,原告ら2社が互いにほぼ半分
ずつを安定的,継続的かつ確実に受注するためには必要な措置であったの
である。郵政省内示は,たとえその内容が原告ら2社にとって全く平等で
はなかったとしても,原告ら2社において受け入れるべき行動の準則とし
ての意味を持っていたのであり,原告ら2社の上記の意思の連絡は郵政省
内示があることを不可欠の前提としてこれに依拠してなされたものであ
る。郵政省が独占的買主であったことと原告ら2社の間で意思の連絡がな
されることとは必ずしも矛盾するものではないのである。
()原告らは「本件審決案は,平成9年1月30日に入札が行われた新型3,
試行機については,入札前である平成8年12月12日ころに郵政省が既
に内示どおり「配備済み」であるとして機械番号まで付して原告ら2社に
通知していた事実があり,この事実からすれば,郵政省は内示により入札
前に受注予定者が特定されているとの認識を有していたにもかかわらず,
上記の通知に川越西局に配備する区分機類の製造業者としてP3・P5の
名称が記載されていることをもって郵政省が上記の認識を持っていたとい
うことはできないとしたが,川越西局のP3・P5の区分機は平成6年か
ら随意契約にて継続していた実験機であるから,明白な事実誤認であり,
理由不備の違法もある」旨を主張する。。
確かに,平成8年12月12日付けの「新型区分機等の機械番号につい
て(再修正版」と題する書面(審18の2)がP27次席によって原告)
P2にファクシミリ送信されていることが認められる。しかし,P27の
審査官に対する供述を録取した調書(査96)によれば,平成9年1月3
0日に行われる予定の一般競争入札によって受注者が定まる平成8年度の
購入計画に係る新型区分機及びバーコード区分機の試行機8台までもが「
配備済み」であるとの認識のもとに上記の書面が作成されて送信されたも
のとは認め難く,P27次席は新型区分機及びバーコード区分機に付ける
機械番号をどのような体系にするかを検討する目的で製造業者の意見を聴
くために作成して送信したものと認められるから,上記のP27次席作成
の書面(審18の2)をもって郵政省が一般競争入札前の内示により受注
予定者が特定されていると認識していたものと認めることはできないもの
というべきである。原告らの上記主張も採用することができない。
()原告らは「本件審決案は,原告ら2社が「自社に情報の提示があった4,
物件についてのみ入札に参加し,自社に情報の提示がなかった物件につい
ては入札に参加しない」という行動(原告らの併行行為)を採ったとし,
この原告らの併行行為につき「競争することが可能な物件が相当数ある,
,,,中ですべてについて整然と前記行動を採ったことは不自然でありまた
このような行動は他の者が同様の行動を採ることを予期してこれと歩調を
合わせることによってのみ達成が可能なものである」としているが,併行
行為と見られる事態が生じたのは,郵政省内示によってでありかつこれの
みによって生じた事態であるにもかかわらず,これについて全く考慮する
ことなく,原告らの併行行為をもって意思の連絡を推認する間接事実とし
ているのは,一方的・専断的な判断というべきである」旨を主張する。。
しかし,前記のとおり,原告ら2社が「自社に情報の提示があった物件
についてのみ入札に参加し,自社に情報の提示がなかった物件については
入札に参加しない」という行動をとったのは,郵政省内示を前提として遅
くとも平成7年度の入札日である平成7年7月3日までに原告ら2社の間
でなされた黙示的な意思の連絡によるものと認められるから,原告らの上
記主張も採用することができない。
()原告らは「平成7年度ないし平成9年度の区分機類の調達の実態につ5,
いては具体的事実を綿密かつ詳細に認定することが必要であるのに,本件
審決案は極めて概括的な事実しか認定していない。具体的事実をみれば,
平成8年度の原告P1の日本橋郵便局の例,同年度の原告P2の橋本郵便
,,局の例のようにいずれも入札日前から郵政省内示により製造が開始され
,,,,配備先郵便局との打合せ等を了して入札契約後短期間での納入教育
等を完了していることが容易に認定できるのである」旨を主張するが,。
本件審決案は,別紙の記載からも知れるとおり,具体的事実を詳細に認定
して判断しているから,原告らの上記主張も採用することができない。な
お,上記の事実も,郵政省内示を受けていなかった原告も郵政省内示を受
けていた原告と競争することができる可能性があったとの前記結論を覆す
に足りない。
()原告らは「本件審決案は,原告らが主張した「予備部品は,各社各様6,
のもので互換性はないうえ,その予備部品リストによっては,詳細情報が
不明であるから,他の原告はこれを製造できない」との主張に対して判。
断を示していない。仕様書に予備部品リストが添付されていたことは,郵
政省内示を受けなかった原告が入札対象物件のうち内示を受けなかった物
件については落札・契約締結をすることが不可能であったことを推認させ
る重要な間接事実であり,この間接事実を全く無視した本件審決案は一方
的・専断的なものというべきである。」旨を主張する。
しかし,本件審決案(頁,頁,頁,頁)は,仕様書には右流25293235
れ型には原告P1が作成した予備部品リストが左流れ型には原告P2が作
成した予備部品リストが添付されていた旨を認定しているのであり,そし
て,入札日から納入期限までの期間の点及び既設他社製選別押印機等との
接続の点について判断していることからすると,原告らの上記主張はこれ
を採用しないものと黙示的に判断しているものと推知されるから,原告ら
の上記主張も採用することができない。
なお,仕様書に予備部品リストが添付されていたとしても,予備部品リ
ストの内容について郵政省にその開示や説明を求めるなどすれば,郵政省
による開示や説明がなされてそれを理解することは可能であったと認めら
れる(前記2()。4)
()原告らは「本件審決案は,他社製の既設機とあて名区分機との接続に7,
ついて「当該既設選別押印機等との接続に関する技術情報が開示される,
必要があるが,当時は,この技術情報は開示されていなかった」と認定し
ながら「接続に関する技術情報が開示されれば技術的に可能であり」と,
仮定的事実を認定した上「郵政省に技術情報の開示を求められた事業者,
への過分な負担を強いるものではない」とするが,この点についても詳細
な証拠評価を誤っている。すなわち,原告ら2社の有する技術情報は重要
な知的財産であって,企業秘密であり,その技術情報の開示は容易にはな
されず,現に本件当時もなされていなかったのである。本件後,P3が参
入した際には,P3が相当な経済的負担をすることを条件に開示されたの
であるが,P3も結局は既設機との接続を行うことができず,既設機のメ
ーカーである原告P2がこれに対処したのであった」旨を主張する。。
しかし,原告ら2社の有する技術情報が重要な知的財産であったとして
も,P3が平成10年4月9日付け文書で郵政省に対して原告P1製及び
原告P2製の選別押印機等との接続に関する技術情報の開示を求めたのに
対し,機械情報システム課はこれに応じて同年5月8日付け文書で技術情
報を開示したのであり,これによれば,原告ら2社が郵政省に情報の開示
を求めれば接続に関する技術情報が開示されたものと認められ,そうとす
れば,他社製の既設選別押印機及び既設台付押印機に自社製のあて名区分
機を接続することが絶対的に不可能であったとまではいえず,そして,た
とえ,P3が豊島郵便局及び静岡南郵便局における既設機(ビデオコーデ
ィング装置)との接続について既設メーカーである原告P2の支援を受け
ざるを得なかった事実があったとしても,これをもって「他社製の既設選
別押印機及び既設台付押印機に自社製のあて名区分機を接続することが絶
対的に不可能であったとまではいえない」との上記の判断が左右されるも
のでないことは,前記2()で判断したとおりである。原告らの上記主張3
も採用することができない。
5独禁法2条6項の「公共の利益に反して」の解釈適用の誤りについて
()ア原告らは「本件は,独占的買主(発注者)である郵政省が,その郵1,
便処理機械化による効率性の向上,経費の削減等を目的とする郵便事業
の大改革及びこれによる消費者利益の確保という国家的プロジェクトを
確実に実現するために,郵便処理機械化のための区分機類の製造販売業
者(売主・受注者)側の立場にある原告ら2社のそれぞれに協力を求め
た事案であって,これまで独禁法上問題とされることのなかった特殊な
類型の事案であるから,このような見地からしても,本件の実態は,直
ちに違法と評価すべきものではなく,独禁法1条の究極の目的に実質的
。」。に反しないかどうかを考慮して判断すべきものである旨を主張する
しかし,原告らの指摘する最高裁昭和59年2月24日第二小法廷判
決の基準に従い本件違反行為が独禁法2条6項にいう「公共の利益に反
して」との要件を満たすか否かを判断するとしても,本件審決案が認定
した別紙に記載の事実によれば,原告ら2社は郵政省の区分機類の発注
のおおむね半分ずつを安定的,継続的かつ確実に受注する目的を持って
本件違反行為を行っていたものと認められるから,原告ら2社の本件違
反行為が「公共の利益に反して」いることは明らかであり,原告らの上
記主張は採用することができない。現に,前記3()イのとおり,平成2
11年3月19日の入札からはすべての物件について原告ら2社とP3
.との3社あるいは原告ら2社の競札となったが同日の落札率は約40,
5%から約844%あるいは約655%から約985%までと大幅に...
下がっているのである。
イ原告らは「本件における郵政省の区分機類の原告ら2社からの調達,
は,次のような消費者利益を確保するための国家的プロジェクトを実現
するために行われたものである」として,①郵政省は,郵政審議会の。
答申に基づき,新郵便処理システムを平成10年2月2日までに実施す
るため,全国の主要な郵便局が新郵便処理システムに対応することがで
きるよう,新型区分機類の配備及び旧型区分機類の改造を統合的・組織
的に行い,かつ,郵便局職員の研修等をして,新郵便処理システムが同
日までに有効に機能する体制を完了するための作業(新郵便処理システ
ム配備作業)を遂行する必要があったこと,②郵政省は,平成10年
2月2日までに新郵便処理システム配備作業を行うことによって,郵便
事業に従事する従業員の多数を整理し,多額の経費節減を図り,増加す
る郵便物数に対処するとともに,郵便料金の据え置き(実質値下げ)を
実現する等,郵便事業の「消費者の利益を確保する」ことに努め,この
区分機類の導入によって,平成13年度末までの間に限っても,約57
00人の人員削減を実現し,上記の目的を達成するに至ったこと,等を
主張する。
しかし,上記の点を考慮しても,なお,本件違反行為が「公共の利益
に反して」いないものということはできないものというべきであって,
原告らの上記主張も採用することができない。
()原告らは「本件審決案は「公共の利益に反して」と独禁法2条6項2,,
の文言をそのまま記載するにとどまり,具体的事実に基づいてその根拠を
明らかにしていない。しかしながら,独禁法2条6項は「不当な取引制,
限」の積極要件として「公共の利益に反して」と規定しているのであるか
ら「公共の利益に反して」の要件に該当する事実を本件審決案に記載す,
べきものである。本件審決案は,理由不備の違法を有する」旨を主張す。
る。
確かに,独禁法57条1項は,審決書には公正取引委員会の認定した事
実及びこれに対する法令の適用を示さなければならない旨を定めている
が,本件審決案には「公共の利益に反して」の要件に該当する旨の判断,
の基礎となった認定事実が明示的には記載されていない。
しかしながら,本件は,原告ら2社が「郵政省の調達事務担当官等か,
ら情報の提示のあった者のみが当該物件の入札に参加し,情報の提示のな
かった者は当該物件の入札に参加しないことにより,郵政省の調達事務担
当官等から情報の提示のあった者が受注できるようにする」旨の意思の。
連絡のもとに,この意思の連絡に基づいて,受注予定者を決定し,受注予
定者が受注できるようにしていたものであって,本件審決案はそのような
行為を「公共の利益に反して」いるものと評価していることは明らかであ
るから,原告らの上記主張も採用することができない。
6憲法14条1項違反について
原告らは,原告らに対してのみ排除確保措置を命じた被告公正取引委員会
の本件審決は憲法14条1項に違反する旨を主張するが,別紙に記載の事実
に徴すると,我が国における独禁法の運用機関として競争政策について専門
的な知見を有する被告公正取引委員会がその専門的な判断によって原告らに
対し排除確保措置を命じ(独禁法54条2項,郵政省に対しては再発防止)
措置を文書で要請するにとどめたことが,憲法14条1項に違反するものと
はいえないから,原告らの上記主張も採用することができない。
7まとめ
以上のとおりであり,原告らの主張はいずれも採用することができず,ま
た,本件審決書には独禁法54条2項所定の「特に必要があるとき」の要件
に該当する旨の判断の基礎となった公正取引委員会の認定事実が示されてい
るということができることは,本件を当庁に差し戻した前記上告審判決が理
由中で説示するところであるから,本件審決を取り消す事由は存しないもの
である。
なお,もとより,このことは,本件違反行為の発生について入札執行者で
ある郵政省に全く責任がないことを意味するものではないが(ただし,本件
は,入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害
すべき行為の処罰に関する法律(平成14年7月31日法律第101号)の
施行前の事件である,しかし,逆にそれによって原告ら2社の責任が免。)
除されるわけでもない。
第4結論
よって,原告らの本件請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり
判決する。
東京高等裁判所第3特別部
裁判長裁判官原田敏章
裁判官氣賀澤耕一
裁判官長久保守夫
裁判官石栗正子
裁判官小出邦夫
(別紙)本件審決案が認定した事実の要旨
1被審人2社の概要及び郵便番号自動読取区分機類等
()被審人2社の概要1
被審人2社は,それぞれ肩書地に本店を置き,郵便番号自動読取区分機
類の製造販売業を営む者である。
被審人2社の郵便番号自動読取区分機類に関する営業及び製造担当部署
については,平成9年6月現在,被審人P1にあっては,営業が機器事業
部特殊自動機器部,製造がP28工場特殊機器第一部であり,被審人P2
にあっては,営業が第一官庁営業部,製造が産業オートメーション事業部
である。また,被審人P2には,営業と製造との連絡窓口等として制御シ
ステム本部がある。
被審人P1の営業担当部署である機器事業部特殊自動機器部の者と製造
担当部署であるP28工場特殊機器第一部の者は,相互に連絡を取り合う
などして郵便番号自動読取区分機類の営業等を行っており,また,被審人
P2の営業担当部署である第一官庁営業部の者と製造担当部署である産業
オートメーション事業部の者とそれらの連絡窓口等である制御システム本
部の者は,相互に連絡を取り合うなどして郵便番号自動読取区分機類の営
業等を行っている(争いがない)。。
()郵便番号自動読取区分機類2
ア郵便番号自動読取区分機類は郵政省の競争参加資格者名簿の物品の種
類に掲げられた機械類であり,このうち,被審人2社は,我が国におい
て,郵便物自動選別取りそろえ押印機(以下「選別押印機」という,。)
選別台付自動取りそろえ押印機(以下「台付押印機」という,郵便。)
物あて名自動読取区分機(以下「あて名区分機」という,新型区分。)
機,新型区分機用情報入力装置(以下「情報入力装置」という,バ。)
ーコード区分機(A型及びB型)及び区分機用連結部(以下「連結部」
という。以下,これらを合わせて「区分機類」という)のほとんどす。
べてを製造販売している(争いがない)。。
イ情報入力装置を除く区分機類については,郵便物処理上の郵便物の搬
,,送方向が左から右に流れる右流れ型右から左に流れる左流れ型があり
郵政省の発注に係る平成7年度ないし平成9年度における区分機類の入
札についてみると,被審人P1が右流れ型の,被審人P2が左流れ型の
それぞれ大部分を製造販売している(略。あて名区分機,新型区分機)
及びバーコード区分機(以下これらを合わせて「区分機」という)に。
ついては,区分部の区分用区分箱数(以下「口数」という)が異なる。
ものが製造販売されている。また,あて名区分機については,郵便物を
区分処理する能力が相対的に高速であるL1型,低速であるL2型が製
造販売されている。
ウ被審人2社における区分機類の製造に要する期間は,郵政省の平成7
年度ないし平成9年度の入札当時,部品の手配から製品の完成まで,通
常約6か月とされている。ただし,これは製品の数量,種類及び在庫部
品の状況等にもより,例えば,部品の調達が済んでいれば2か月ほどで
生産をすることが可能であるとされているなど,その製造に要する期間
は固定的なものではない。
エ選別押印機及び台付押印機をあて名区分機及び新型区分機等と接続す
る場合に,ある社のものを他の社のものと接続することは,接続に関す
る技術情報が開示されていれば可能であるとされており,平成10年5
月ころ,郵政省が株式会社P3(以下「P3」という)の求めに応じ。
て接続に関する技術情報を開示し,その後は,他社製の選別押印機及び
台付押印機と自社製のあて名区分機,新型区分機等との接続が行われて
いる。
()郵政省の区分機類の調達方法等3
ア区分機類の担当部署
(略)
イ区分機類の発注方法等
(ア)郵政省は,区分機類(平成5年度発注分までは郵便番号自動読取
区分機(以下「番号区分機」という)を含む)を,昭和43年度。。
から昭和61年度までは随意契約により,昭和62年度から平成6年
度までは国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令(昭
和55年政令第300号。以下「特例政令」という)の規定が適用。
(「」。),される指名競争入札以下指名競争入札というの方法により
また,平成7年度以降は特例政令の規定が適用される一般競争入札(
以下「一般競争入札」という)の方法により発注している。。
(略)
(イ)(略)
(ウ)郵政省は,平成7年度以降,区分機類を,前記の会計法及び特例
政令の規定に基づき,一般競争入札の方法により発注しており,同省
の契約ガイダンスにおいて,入札の手続として,毎年12月ころに競
争参加資格の官報公示,翌年4月ころに調達予定物品の官報公示,仕
様書等作成のための資料等の提供招請(官報公示,仕様書案につい)
ての意見招請(官報公示,入札に付そうとするときは入札日の50)
日以上前に官報に公告する旨等を公表している。
郵政省は,一般競争入札の方法により発注する区分機類について,
あて名区分機,新型区分機,バーコード区分機(A型,バーコード)
区分機(B型,選別押印機,台付押印機,連結部及び情報入力装置)
の機種別,右流れ型・左流れ型の流れ型別(情報入力装置を除く)。
に分け,さらに,新型区分機,バーコード区分機(A型)及びバーコ
ード区分機(B型)にあっては口数別,あて名区分機にあっては区分
処理する速度別及び口数別を勘案して(速度別を勘案することについ
ては平成7年度のみであり,口数別を勘案することについては平成8
年度試行機を除く)グループに分け,それぞれのグループを1物件。
として発注している(争いがない)。。
(エ)(略)
()区分機類の開発・製造の経緯4
ア昭和30年代の高度経済成長を背景とした郵便物取扱量の飛躍的増大
に対応して(略,昭和43年には,郵便番号制度が施行された。こ,)
,,のような郵政省での機械化の要請に対応して郵政省からの委託により
まずP3が昭和36年に京都中央郵便局に鍵盤式書状区分機試作機を,
被審人P2が昭和37年に東京中央郵便局に書状押印機等をそれぞれ納
入した(略,郵政省は,昭和40年から昭和41年にかけて,上記。)
「」2社に新規参入した被審人P1を加えた3社に郵便番号自動読取装置
の研究を委託した。その結果,被審人P1が昭和42年に,光学式文字
読取装置(OCR)による手書郵便番号の読取に成功し,昭和43年7
月の郵便番号制度の実施(3桁/5桁)に併せて東京中央郵便局に2台
の番号区分機を納入した。そして,昭和44年には,被審人P2が手書
郵便番号の読取に成功して新宿郵便局に実用機を納入した。しかし,P
3はこの開発に成功せず,昭和44年,区分機類の市場から撤退した。
ところで,番号区分機の開発に当たり,被審人P1は(略,右流,)
れ型を採用し,その後同社の区分機類は,基本的に右流れ型として開発
されることになった。他方,被審人P2は(略)左流れ型の番号区分,
機を開発し,その後同社の区分機類は,基本的に左流れ型として開発さ
れることになった。
イその後の区分機の進歩は,次のとおりである。
①第一世代(番号区分機(昭和43年から平成元年まで)3桁又は)
5桁の郵便番号の読取結果に基づいて,郵便物が区分される。
②第二世代(あて名区分機(平成元年から平成8年ころまで)住所)
の町名,丁目の読取結果に基づいて,配達区域ごとに郵便物が区分さ
れる。
()(),③第三世代新型区分機平成9年以降7桁の郵便番号とともに
住所の町名,丁目,番,号,棟の読取結果に基づいて,配達順路に従
って郵便物を並べ替える。
(ア)第一世代の時代には,読取率の向上,選別押印機と番号区分機と
の連結などについて被審人2社の区分機類の技術に著しい進歩があっ
た。この当時における郵政省の区分機類は随意契約により発注されて
いたが,被審人2社は,区分機類の読取率及び年賀郵便物処理の性能
が比較評価されて,翌年度の発注台数が決定されるとの認識の下に技
術競争を繰り広げた。この時代に,ほぼ全国の主要郵便局に区分機類
が配備され,北海道,九州の各郵政局管内の郵便局は被審人P1の,
東北,四国の各郵政局管内の郵便局は被審人P2の区分機類が配備さ
れた。
(イ)(略。平成元年3月に,被審人2社はあて名読取機能を持つ区)
分機の開発に成功し,納入したが,その読取性能は低く,読取率は約
30%であった。この当時の区分機類の発注方法は,随意契約から指
名競争入札に変わっていたが,被審人2社は,区分機類の読取性能が
比較されて,発注見込台数に差が付けられるという認識を引き続き持
ち,技術開発競争が促進された。
,,「」(ウ)平成4年8月に郵政省は配達分野の情報機械化調査研究会
を設置し,郵便物の配達道順組立処理までの機械化(新郵便処理シス
テム)の検討に着手した。この研究会には,被審人2社,P3,P2
9株式会社,P30株式会社等合計8社が参加した。そして郵政省に
技術提案書を提出した者のうち,被審人2社及びP3のものが採用さ
れ,当該3社は平成7年3月に郵政省から「新郵便処理システムに関
する研究」を受託し,川越西郵便局に実験機を配備して,その開発
研究を行った。その結果,被審人2社の実験機は相当なレベルに達し
たと認められ,平成8年3月には,被審人P1は浦安郵便局に,被審
人P2は深川郵便局に実用実験機を納入し,平成9年度以降,被審人
2社は新型区分機を受注し,納入した。一方,P3は(略,平成,)
,,8年からは新型区分機を自主開発することとし平成9年11月ころ
実用レベルの読取率を有する新型区分機の製造に成功し,平成10年
2月27日の入札に参加した。
ウ被審人2社の製造する区分機類の性能・品質は,平成6年度ないし平
成9年度当時には,流れ型の点を除いては大差はなかった。また,その
開発の経緯から,平成6年度ないし平成9年度の郵政省の発注につき,
被審人P1は,主に右流れ型の区分機類を製造納入し,被審人P2は,
主に左流れ型の区分機類を製造納入してきたが,平成8年度の一般競争
入札おいては,被審人P1が左流れ型の区分機類2物件の入札に参加し
て落札・受注しており,平成9年度一般競争入札においては,被審人P
2が右流れ型の区分機類2物件の入札に参加して落札・受注し,被審人
P1が左流れ型の区分機類1物件の入札に参加して落札・受注した。
()被審人2社の区分機類の地域配置5
郵政省における平成6年ころから平成9年ころまでの区分機類の配備状
況をみると,北海道郵政局,信越郵政局,北陸郵政局,九州郵政局及び沖
縄郵政管理事務所管内の郵便局には被審人P1のもののみが配備され,東
北郵政局及び四国郵政局管内の郵便局には被審人P2のもののみが配備さ
れていた。そして,被審人2社は,自らの区分機類が配備されていない郵
政局管内においては,原則として営業活動は行っていなかった。それ以外
の関東郵政局,東京郵政局,東海郵政局,近畿郵政局及び中国郵政局管内
,,の郵便局には被審人2社が製造したものが配備されていたがこの場合に
一度ある郵便局に一方の被審人の区分機類が納入されると,その後はその
郵便局については原則として,当該被審人の区分機類が配備されてきてい
た(以下,略)。
2平成6年度の区分機類の発注状況
()情報の提示1
ア被審人2社は,指名競争入札当時,かねてから,入札執行前に,郵政
省の調達事務担当官等から同省の購入計画に係る各社ごとに分けられた
区分機類の機種別台数,配備先郵便局等に関する情報の提示をそれぞれ
受けており,被審人2社は,それぞれ,情報の提示を受けた区分機類に
ついて,同省が自社に発注する意向を有していると認識していた。この
情報の提示は,郵政省の調達事務担当官及び被審人2社の担当者の間で
は,一般に内示と呼ばれていた。
イ平成6年1月21日,郵政省において,打合せと称する会合が開催さ
れ,施設課システム企画室のP10室長,P17課長補佐,P6係長及
びP15次席,被審人P1のP13部長及びP14課長並びにP16部
長,被審人P2のP11部長,P31主任及びP12部長が出席した。
その会合で,P10室長は,①平成6年度の区分機類の購入価格を前
年度よりも10%引き下げることとしたい,②情報の提示は2月15
日ころまでに行う予定であるが,被審人2社が価格引下げに同意しなけ
れば情報の提示は行わない,③10%の引下げについては一律でも,
機種ごとに変わってもよいが,来週後半に回答してほしい旨を述べた。
その後,被審人2社の担当者間で,郵政省の要求の感触や対応方針等
について意見交換を行った。
被審人2社は,後日,この申出に同意することとした。
ウ平成6年度の郵政省の区分機類の購入計画については,郵政省の調達
事務担当官等は,被審人2社に対し,次のとおり情報の提供を行った。
施設課システム企画室のP6係長は,平成6年2月ころまでに,被審
人2社のそれぞれの配備予定台数等を示す平成6年度の区分機類の配備
計画を策定し,P10室長の了解を得た後,郵務局総務課長,同局次長
及び郵務局長の了解を得た(以下,略)。
施設課システム企画室のP10室長及びP6係長は,平成6年2月1
6日ころ,郵政省において,被審人P2のP11部長及びP12部長に
対し,同省の平成6年度の購入計画に係る区分機類のうち,あて名区分
機(L1型)23台,新東京国際郵便局向けの国際郵便物自動読取区分
機1台,あて名区分機(L2型)8台,選別押印機5台,台付押印機2
7台及び連結部19台の購入計画を口頭で説明するとともに,区分機類
の機種別口数別台数,配備先郵便局等が記載された文書を配布すること
により,情報の提示を行った(以下,略)。
また,P10室長及びP6係長は,同時期ころ,郵政省において,被
審人P1のP13部長及びP14課長に対し,同省の平成6年度の購入
計画に係る区分機類の情報の提示を行った。
()納入日程等の調整2
被審人2社は,この情報の提示を受けた後(略,それぞれ,施設課,)
システム企画室の調達事務担当官に対し,情報の提示を受けた区分機類の
納入日,配備先郵便局等を記載した表(以下「納入日程表」という)を。
何度も提出するなどして,情報の提示を受けた区分機類の納入日程等の調
整を行った。
()発注の状況3
郵政省は,平成6年度に指名競争入札の方法により発注した区分機類に
ついて,平成6年6月16日,同年7月4日,同月25日及び同年8月2
。,,,2日の計4回の入札を実施した同入札ではあて名区分機選別押印機
,,,台付押印機及び連結部の機種別またあて名区分機にあっては流れ型別
区分処理する速度別及び口数別を勘案してグループに分け,それぞれのグ
ループを1物件として発注し,いずれの物件についても,被審人2社のみ
を指名した。
例えば,平成6年7月25日に入札を,同年8月2日に開札を実施した
区分機類について,郵政省は,あて名区分機,選別押印機又は連結部の機
種別,あて名区分機にあっては流れ型別及び150口,200口又は25
0口の口数別により,同年6月3日に公示した官報及び官報において摘示
された入札説明書に添付された仕様書(以下,単に「仕様書」という)。
に,①P2㈱製○○又はこれと同等のもの,②㈱P1製○○又はこれと
同等のもの,③P2㈱製○○又はこれと同等のもの,④P2㈱製○○又
,,,はこれと同等のもの⑤㈱P1製○○又はこれと同等のものと記載し
6グループに分け,それぞれのグルーを1物件として発注し,全6物件に
ついて,同年7月25日ころまでに,被審人2社のみを指名した(争い。
がない)。
()入札の状況4
被審人2社は,それぞれ,入札の官報公示及び仕様書と情報の提示を受
けた区分機類とを照合した上で,自社が情報の提示を受けた区分機類の物
件については入札に参加し,自社が情報の提示を受けていない区分機類の
物件については入札を辞退した(争いがない)。。
なお,郵政省の指名競争入札の方法による区分機類の発注において,被
審人2社のうち郵政省の調達事務担当官等から情報の提示を受けた者のみ
が入札に参加し,情報の提示を受けなかった者は入札を辞退するという行
為は相当以前から行われていた。
()受注の状況5
ア被審人2社は,それぞれ,情報の提示を受けた区分機類の物件のすべ
てについて,情報の提示を受けた者のみが入札に参加し,落札するまで
入札を繰り返すことなどにより,郵政省が定める当該物件の予定価格に
ほぼ近い価格で受注していた。
例えば,郵政省が平成6年7月25日に入札を,同年8月2日に改札
を実施した区分機類について,被審人2社は,契約番号○第○号のあて
名区分機については,被審人P1のみが入札に参加し,入札を6回繰り
返し,3回目以降は18万円ずつ価格を引き下げることにより,予定価
格と同額の価格で落札・受注し,また,契約番号○第○号のあて名区分
,,,機については被審人P2のみが入札に参加し入札を12回繰り返し
3回目以降は1ないし2万円ずつ価格を引き下げることにより,予定価
格と同額の価格で落札・受注した。
イ郵政省が平成6年度に発注した区分機類164台のうち,被審人P1
が82台,被審人P2が82台を受注し,受注金額でみると,総発注額
159億5075万5000円のうち,被審人P1が79億3618万
5000円,被審人P2が80億1457万円となっており,被審人2
社は,それぞれ同省の総発注額のおおむね半分ずつを受注した(争い。
がない)。
,,なお郵政省が指名競争入札の方法により発注する区分機類について
昭和62年度から平成5年度までについてみると,この期間を平均すれ
ば,被審人2社は,それぞれ同省の総発注額のおおむね半分ずつを受注
してきたことになる(もっとも,平成2年度は,被審人P1が66%,
被審人P2が34%のシェアとなっているなど,年度ごとにばらつきは
みられる。。)
()契約から納入までの期間6
仕様書には区分機類の納入期限が記載されているが,前記納入日程の調
整により実際に郵便局に納入されるのは通常それより以前であり,被審人
が受注してから納入までの期間が著しく短いものもあった。
(略)
3一般競争入札の導入について
()郵政省の方針について1
郵政省は(略,その基本方針として,物品等の調達は,原則として,)
一般競争入札の方法により発注する方針にあったところ,被審人2社は,
平成6年春ころから,施設課システム企画室の調達事務担当官等から,外
国事業社に入札参加の機会を広げる等のため,平成7年度以降は区分機類
を一般競争入札の方法により発注する方針であることを示されてきた。
()平成6年4月15日の会合及びその社内周知2
,,,平成6年4月15日郵政省において勉強会と称する会合が開催され
施設課システム企画室のP10室長,P6係長,P15次席ら,被審人P
1のP16部長,P17課長ら,被審人P2のP12部長,P9課長らが
出席した。この会合の主たる目的は区分機類の性能テストの結果説明等で
あったが,同会合の終わりころに,P6係長から,平成7年度は区分機類
を一般競争入札の方法により発注する見通しであること,指名競争入札に
おける仕様書の「XX型と同等」という記載は一般競争入札となった場合
にはできないこと等の説明があった。これらについて,被審人2社の出席
者から特段の発言はされなかった。
(略)
()平成6年4月15日の会合から同年9月2日の会合までの状況3
ア被審人2社は,平成6年4月15日の会合において施設課システム企
画室の調達事務担当官から読取率の目標値案の提案及び新型区分機等の
見込価格の提出を求められたことを受けて,同年4月26日に,打合せ
を行った(以下,略)。
イ被審人P1のP13部長が作成した平成6年6月14日付け「LH−
BU事業戦略H6年度実行課題・戦略・施策」と題する電磁的記録に
は,①平成6年度の区分機類の利益確保という課題について,区分機
類の受注価格の低下を抑制する施策として被審人P2との共同提議・根
回しを行うこと,②平成7年度の区分機類の売上高及び利益確保とい
う課題について,区分機類の総発注額を確保するための施策として被審
人P2との共同提議・根回しを行うこと及びシェアの拡大の施策として
一般競争入札の回避の提案をすること,③平成8年度以降の区分機類
の利益率及びシェア確保という課題について,売上高の確保のための施
策として被審人P2及びP3との協調,との記載がされていた。
()平成6年9月2日の会合及びその社内周知4
,(),ア平成6年7月8日に機械情報システム課長にP7課長が就任し略
。(,P18郵務局長はP7課長に価格の低廉化を図るよう指示した以下
略)
イ平成6年9月2日,郵政省において,課長勉強会と称する会合が開催
され,機械情報システム課のP7課長,P6係長ら,被審人P1のP1
3部長,P16部長ら,被審人P2のP11部長,P12部長,P19
部長らが出席した。
同会合に提出を依頼された資料については,被審人P2は,価格低廉
化の方策について(以下,略。,)
同会合において,まず,P7課長から,次のような経緯の説明がなさ
れた(以下,略。。)
次に,価格低廉化について,被審人2社の出席者から,それぞれ提出
された資料の説明がなされた(以下,略。。)
一般競争入札については,郵政省側が,今の流れでは一般競争入札に
せざるを得ないと説明したところ,被審人2社側の出席者から,区分機
類のような特殊機器がパソコンと同様に標準機器として一般競争入札に
なじむのか非常に疑問があるとの発言がなされた。これに対して,郵政
省側は,流れが一般競争入札になっており,指名競争入札では随意契約
とみられるので,一般競争入札と指名競争入札とでは外部の受け止め方
が全然違うと回答した。被審人2社側から,一般競争入札にすると,現
在のように契約から納入までの期間が1か月から3か月と短期に定めら
れている物件の納入に問題が生じ得るのではないかとの質問がなされた
のに対し,郵政省側は,一般競争入札の場合は契約から納入までに最低
6か月は必要であると考えると回答した(以下,略)。
ウ(略)
()書留郵便物自動読取区分機の一般競争入札の方法による発注5
平成6年11月1日,郵政省は,被審人P1に発注の意向が示された書
留郵便物自動読取区分機について,平成7年1月13日に一般競争入札を
。,,行う旨の官報公示を行ったこれは郵便番号自動読取区分機類について
初めて一般競争入札に付されたものであり,被審人P1においては平成7
年度の区分機類の入札が一般競争入札になるとの認識を高めた。
()一般競争入札の回避及び情報の提示の継続の要請6
ア平成6年11月ころ,被審人P1のP13部長は,機械情報システム
課のP6係長に対し,一般競争入札の導入の中止を要請したが,P6係
長は,それはできないと断った。
,,,イ平成7年1月初旬ころ被審人P2のP12部長はP6係長に対し
情報の提示を継続するように要請した。P6係長は,P7課長の判断が
いまだなされていないところから,この要請に対して回答しなかった。
()一般競争入札のための仕様書の作成及び情報の提示の継続の伝達7
ア平成7年1月上旬ころ,機械情報システム課のP6係長は,P7課長
に対し,平成7年度の区分機類の購入に関し,被審人2社に情報の提示
を行うこととするか否かを尋ねたところ,P7課長から,配備計画どお
りに平成7年度の区分機類が納入されないと困るので生産確認という意
味で情報の提示を行う旨の回答があり,情報の提示を継続することが決
定された。
イ機械情報システム課の調達事務担当官は,平成7年度から区分機類の
発注方法を一般競争入札に変更するに当たり,それまで被審人2社につ
いて別々に機器仕様,性能定義等が規定されていた仕様書を共通の機器
仕様,性能定義等をもって規定する仕様書に変更する必要があると判断
した。このため,同課のP22次席は,それまでの仕様書を切り貼りし
て共通仕様書の原案を作成し,同課のP6係長の了承の下に,被審人P
2には平成7年1月17日ころ,被審人P1には同月19日ころにその
原案を送付するとともに,それぞれ,次のように依頼した。
①同月26日に被審人2社及び郵政省合同で仕様書について打合せ
を行うので,それまでに問題点を洗い出すこと
②(略)
ウ被審人P2のP20主任は,平成7年1月23日ころ,被審人P1の
P21主任から,三者の打合せの前日である同月25日に被審人2社間
で仕様書に関して打合せを行いたいとの提案を受け,同日,被審人2社
の関係者が集まることとなった(以下,略)。
被審人2社間の打合せは,同日午後2時ころ開催され(略)が出席,
した。この会合においては(略)との発言がされた。打合せの結果,,
①翌日の郵政省との打合せでは結論を出さないこと,②郵政省から送
付された原案に手書きで記入したものを郵政省に提出し,ワープロ打ち
したものも別途提出すること,③予備部品表,付属部品表及び図面は
被審人2社のいずれかのものが添付されるようにすることとされた。
エ平成7年1月26日,郵政省において,機械情報システム課のP6係
長及びP22次席,被審人P1のP21主任,P17課長,P23主任
及びP12主務並びに被審人P2のP20主任,P9課長及びP24課
長が出席して打合せが開催された。その会合の冒頭に,P6係長及びP
22次席から,区分機類の発注に関する方針について次のような説明が
なされた。
①平成7年度は,区分機類の発注方法を一般競争入札とするので,
これまで被審人P1及び被審人P2とで別々の仕様書にしていたの
を,共通の仕様書として一本化する。
②仕様書はあて名区分機については,口数別,L1型・L2型別に
分ける。正流れ型・逆流れ型については仕様書を分けない。
,,,③選別押印機台付押印機及び連結部については仕様書を分けず
共通化する。
④仕様書における処理能力,寸法,消費電力等の数値については,
被審人2社の最大公約数,すなわち,劣る方の数値に合わせる。
⑤上記のような仕様書の内容では,どの郵便局のどのタイプがいず
れの被審人に発注する意向が示されたのか不明であるので,内示は
事前に実施する。
この説明に対して,被審人2社側の出席者から特段の発言はされなか
った。被審人P1の出席者の中には内示を受けられると聞き安心した者
もいた。
その後,仕様書について1項目ずつ検討し,被審人2社と郵政省側と
で質疑応答が行われた(以下,略。。)
(略)
オ郵政省は,平成7年1月31日ころ,あて名区分機の仕様書の内容等
について,一部方針を変更し,選別押印機及び台付押印機との連結を特
に摘記し,また,あて名区分機の正流れ型,逆流れ型をそれぞれ別の仕
様書とすることとした。
4平成7年度及び平成8年度の区分機類の情報の提示,納入日程の調整及び
発注状況
()平成7年度1
ア情報の提示
平成6年10月ころ,機械情報システム課のP6係長は(略,区,)
分機類の平成7年度の配備計画を被審人2社別個に策定した(略。。)
この策定された配備計画について,平成7年1月ころ,P6係長は,P
,,7課長とともに郵務局長に事前に口頭で説明した後被審人各社ごとに
どの郵便局に何型を何台配備し,予算金額はいくらかなどを記載した決
裁を郵務局長まで上げ了承を得た。
P7課長及びP6係長は,平成7年2月ころ,被審人P2のP11部
長及びP12部長に対し,同省の平成7年度の購入計画に係る区分機類
のうち,あて名区分機(L1型)300口1台,同250口3台,同2
,,(),00口14台同150口2台あて名区分機L2型200口3台
同150口8台,選別押印機8台,台付押印機10台及び連結部5台と
いう購入計画を口頭で説明するとともに,区分機類の機種別台数,あて
名区分機にあっては速度別口数別台数,当該区分機類の配備先郵便局等
が記載された文書を持ち帰り用に机上に用意し,被審人P2の出席者は
それを持ち帰った。
また,P7課長及びP6係長は,平成7年2月ころ,被審人P1のP
13部長及びP14課長に対し,同省の平成7年度の購入計画に係る区
分機類のうち,あて名区分機(L1型)250口6台,同200口10
台,同150口2台,あて名区分機(L2型)200口15台,同15
0口1台,選別押印機10台,台付押印機11台及び連結部12台とい
う購入計画を口頭で説明するとともに,区分機類の機種別台数,あて名
区分機にあっては速度別口数別台数,当該区分機類の配備先郵便局等が
記載された文書を机上に持ち帰り用に用意し,被審人P1の出席者はそ
れを持ち帰った。
(略)
イ納入日程等の調整
機械情報システム課の調達事務担当官等から前記アの情報の提示が行
われると,被審人2社は,それぞれ,自社の工場部門に情報の提示が行
われた物件の製造を指示するとともに,同課の調達事務担当官とこれら
の物件についてそれぞれ納入日程の調整を行った。
被審人P2においては,情報の提示があった日から約1週間で生産管
理部が納入日程表の案を作成し,その後(略)が機械情報システム課,
のP22次席と納入日程について打合せを行い,同次席から修正を求め
られた物件については生産管理部と日程変更の可否を検討し,更にP2
,。2次席と数回すり合わせた上で同年4月ころ納入日程表を完成させた
被審人P1においては,P21主任及びその部下が,P22次席と納
入日程について打合せを行い,それぞれの郵便局の納入時期についての
要望を聞いた上で,納入日程表の案を作成し,数回すり合わせた後,同
年5月ころ納入日程表を完成させた。
(略)
ウ官報公示及び情報の提示との対比
平成7年度の区分機類の調達に係る官報公示は,平成7年5月2日に
行われた。
発注する区分機類はあて名区分機,選別押印機,台付押印機又は連結
部の機種別,右流れ型又は左流れ型の流れ型別,あて名区分機にあって
は150口,200口,250口又は300口の口数別,L1型又はL
2型の速度別等により18物件にグループ分けされ,一般競争入札の方
法により,平成7年7月3日に入札に付されることとされた。そこで定
められた区分機類の納入期限は,それぞれの郵便局の必要性に応じて様
々であるが,入札から納入期限までがかなり短期間であるものもあった
(納入期限が平成7年8月31日と定められたものが4物件,同年9月
29日と定められたものが6物件,同年10月31日と定められたもの
が4物件,同年11月30日と定められたものが4物件である)。
,()被審人P2は官報公示された物件と情報の提示が行われた物件略
とを対比して,同一であることを確認した。
エ仕様書の交付
郵政省における仕様書の被審人2社への交付方法自体は,指名競争入
札の方法により発注していた当時と変わりはなく,仕様書は,官報公示
の直後,被審人P1のP21主任,被審人P2のP20主任が,それぞ
れ契約課に取りに行った。P21主任は,被審人P1に情報の提示のあ
った物件に係る仕様書のみを持ち帰ったが,P20主任はすべての仕様
書を持ち帰った。仕様書には,原則として,右流れ型,左流れ型の別,
右流れ型の場合は被審人P1製の選別押印機又は台付押印機と,左流れ
型の場合は被審人P2製の選別押印機又は台付押印機とそれぞれ連結で
きる機能を有するものであることなどが記載され,右流れ型には被審人
P1が作成した予備部品リストが,左流れ型には被審人P2が作成した
予備部品リストが添付されていた。
オ価格に関する郵政省と被審人2社とのやり取り
被審人2社は,仕様書を受け取ってからそれほど遅くない時期に,そ
れぞれ,情報の提示を受けた物件について,下見積書を仕様書ごとに契
。,,約課のP32次席に提出したP32次席はこの下見積書に基づいて
物件ごとに,前年の例を参考にしながら予定価格策定の基礎となる予定
。,価格下調調書及び価格予定書を作成していたその査定の結果の価格が
予算額を超えていれば,P32次席は被審人2社の担当者を実際に納入
可能な価格を聞き出すために契約課に招致して,物件ごとに価格の提示
を求め,その提示された価格が依然として予算額よりも高い場合には「
どんなもんですかね」と尋ね返し,それが予算額よりも下になるまで。
やり取りを繰り返し,予算額を下回った段階で「そうですか」と言っ。
て,話を打ち切っていた。
カ配備先郵便局との具体的な配備の打合せ
被審人2社は,それぞれ自社に情報の提示のあった物件について,機
械情報システム課のP6係長の了承を得て,地方郵政局を経て配備先郵
便局と接触した。被審人2社は,それぞれ,4月ころに配備先郵便局で
実便の画像収集の作業を行い,その後,地方郵政局から要請されて電気
工事関係のレイアウトの確認などの搬入の打合せに出席して,具体的な
配備の打合せを行った。この打合せは,情報の提示があった者のみが呼
ばれ,打合せは,入札や契約の時期とは関連なくなされていた。
キ入札の状況
平成7年度の区分機類の入札は,平成7年7月3日に行われ,被審人
2社は,基本的に,自社に情報の提示のあった物件のみ入札に参加し,
自社に情報の提示がなかった物件については入札に参加しなかった。落
札金額を予定価格で除した落札率はすべての物件について999%を.
超えていた。
ク納入の状況
入札後,受注した物件の納入がなされたが,被審人P1が受注した落
合郵便局の物件については,契約上の納入期限は平成7年8月31日と
されていたが,同郵便局の開局が同年7月31日と予定されていたこと
から,納入が同月10日,引渡しが同月14日と,入札後極めて短期間
に行われた。
()平成8年度2
ア地方郵政局における被審人2社の情報収集
被審人2社は,平成7年9月ころから,地方郵政局と接触して,翌年
度に配備される予定の区分機類の情報収集を行っていた。まず,同月こ
ろ,被審人2社は機械情報システム課のP33係長が作成した「新郵便
処理システム対応機械の開発・配備について」と題する資料を関東郵政
局及びP33係長から入手した。同資料は,P33係長が,平成9年度
の新郵便処理システムの導入の一環として,既配備あて名区分機を改造
して新型区分機と同様の機能を持たせるための改造計画を立てるに当た
り,平成8年度に配備されるあて名区分機を含めて考慮する必要があっ
たので,これまでの配備機に加えて平成8年度配備候補郵便局の配備機
についても検討したものである。そこでは,P33係長は,被審人2社
のあて名区分機が22台ずつ配備されると仮定して,配備候補郵便局ご
とに,既に配備されているあて名区分機の製造業者及び周辺の郵便局に
配備されているあて名区分機の製造業者を勘案して,被審人P2のイニ
シャルである○又は被審人P1のイニシャルである○を記載した。次い
で,被審人2社は,同年10月ころ,関東郵政局郵務部施設課のP34
係長が作成した「新郵便処理システム導入に伴う区分機の配備計画概要
(案」と題する資料を関東郵政局から入手した。同資料は,P34係)
長が,P33係長から示された配備計画に基づき,各郵便局への配備が
可能かどうかをレイアウトを基に検討し,本省に上申するために作成し
たものである。P34係長は,それぞれの郵便局について,被審人P2
のイニシャルである○又は被審人P1のイニシャルである○を記載し
た。さらに,平成8年1月ころ,被審人2社は,東京郵政局郵務部施設
課が作成した「平成8年度区分機配備計画調書」と題する資料を東京郵
政局から入手した。ここでも,平成8年度に区分機類の配備が予定され
るそれぞれの郵便局ごとに被審人P2のイニシャルである○又は被審人
P1のイニシャルである○が記載されていた。試行機についてはP3の
イニシャルである○も記載されていた。
イ情報の提示
P6係長は,平成7年度調達分と同様な方法で,平成8年度の区分機
類の配備計画を策定し,郵務局長まで了承を得た
平成8年2月8日ころ,P6係長は,被審人P1のP14課長,P1
7課長及びP21主任に,平成7年に行った誤区分調査,読取率調査の
データを提示し,被審人P1の方が劣っているとして,同社の見解を質
した(以下,略。。)
機械情報システム課のP7課長及びP6係長は,平成8年2月28日
ころ,被審人P2のP11部長及びP12部長に対し,郵政省の平成8
年度の購入計画に係る区分機類のうち,あて名区分機(L1型)350
口5台,同300口8台,同250口3台,選別押印機3台,台付押印
機4台及び連結部1台という購入計画を口頭で説明するとともに,あて
名区分機については被審人P2が16台であるのに対し,被審人P1は
19台になっていると述べた。これに対し,P11部長らは全体的な性
能が被審人P2の方が優っているにもかかわらず情報の提示がなされた
数量が少ないことに不満を述べたが,P7課長らは「既設の選別押印,
機及び台付押印機との関係でそうなった「不満があれば上司のとこ。」
ろに説明に出向く「天の声で決まった。事務レベルではどうにもで。」
きない」などと補足説明した。なお,P6係長は,区分機類の機種別。
台数,あて名区分機にあっては口数別台数,当該区分機類の配備先郵便
局等が記載された文書を持ち帰り用に机上に用意し,P11部長らがそ
れを持ち帰った。
また,P7課長及びP6係長は,同時期ころ,被審人P1のP13部
長らに対し,郵政省の平成8年度の購入計画に係る区分機類のうち,あ
て名区分機19台を含む購入計画を口頭で説明するとともに,区分機類
の機種別台数,あて名区分機にあっては口数別台数,当該区分機類の配
備先郵便局等が記載された文書を持ち帰り用に机上に用意し,P13部
長らがそれを持ち帰った。
これらの会合の際,P6係長は「これは,内示ではありませんよ」,。
と付言した。
ウ納入日程等の調整
被審人2社は,それぞれ,前年度調達分と同様な方法で,自社に情報
の提示が行われた物件について,機械情報システム課と納入日程の調整
を行った。
エ官報公示及び情報の提示との対比
平成8年度の区分機類の調達に係る官報公示は,平成8年5月30日
に行われた。発注する区分機類はあて名区分機,選別押印機,台付押印
機又は連結部の機種別,右流れ型又は左流れ型の流れ型別,あて名区分
機にあっては200口,250口,300口又は350口の口数別等に
より18物件にグループ分けされ,一般競争入札の方法により,同年8
月7日に入札に付されることとされた(略。そこで定められた区分。)
機類の納入期限は,それぞれの郵便局の必要性に応じて様々であるが,
入札から納入期限までがかなり短期間であるものもあった(納入期限が
平成8年9月27日と定められたものが1物件,同月30日と定められ
たものが8物件,同年10月31日と定められたものが1物件,同年1
1月29日と定められたものが1物件,平成9年3月19日と定められ
たものが2物件,同年6月30日と定められたものが5物件である。。)
(以下,略)
被審人P2のP26課長は,官報公示された物件と情報の提示がなさ
れた物件とを対比して,連結部が一件(宇品郵便局)漏れていることを
発見し,郵政省に通知したところ,郵政省の担当官も漏れていたことを
認め,同物件については平成8年6月末ころに改めて官報公示するとの
回答を得た。同物件の官報公示は,同年6月24日になされ,一般競争
入札の方法により同年8月28日に入札に付されることとなった。
オ仕様書の交付
,,,仕様書は平成7年度調達分と同様の方法で被審人2社の担当者が
。,,それぞれ契約課に取りに行ったあて名区分機の仕様書には右流れ型
左流れ型の別,右流れ型の場合は被審人P1製の選別押印機又は台付押
印機と,左流れ型の場合は被審人P2製の選別押印機又は台付押印機と
それぞれ連結できる機能を有するものであることなどが記載され,右流
れ型には被審人P1が作成した予備部品リストが,左流れ型には被審人
P2が作成した予備部品リストが添付されていた。
なお,渋谷郵便局用のあて名区分機は左流れ型であるが,その仕様書
には被審人P1製の選別押印機又は台付押印機と連結できる機能を有す
るものであることが記載され,被審人P1が作成した予備部品リストが
添付されていた。
カ価格に関する郵政省と被審人2社とのやり取り
被審人2社は,それぞれ,情報の提示を受けた物件について,下見積
書を仕様書ごとに契約課のP32次席に提出し,P32次席は,前年度
調達分と同様の方法で,予定価格下調調書及び価格予定書を作成し,被
審人2社の担当者を実際に納入可能な価格を聞き出すために契約課に招
致して,それが予算額よりも下になるまでやり取りを繰り返した。
キ配備先郵便局との具体的な配備の打合せ
被審人2社は,それぞれ自社に情報の提示のあった物件について,P
6係長の了承を得て,地方郵政局を経て配備先郵便局と接触した。被審
人2社は,それぞれ,平成8年4月ころに配備先郵便局で実便の画像収
集の作業を行い,その後,地方郵政局及び配備先郵便局との間で電気工
事関係,レイアウトの確認,区分指定面の検討,搬入時及び搬入後のス
ケジュール調整などの搬入に関する具体的な打合せを行った。この打合
せには,情報の提示があった者のみが地方郵政局から呼ばれている。打
合せは,入札や契約の時期とは関連なくなされており,入札前に行われ
ているものもあった。このような事例として,東京郵政局管内の品川郵
便局の例があり,同年7月24日に,東京郵政局及び品川郵便局の担当
官と被審人P1の担当者との間で,品川郵便局において,区分機類の搬
入据付についての打合せが行われており,そこでは,設置場所のレイア
ウトや電源工事の確認をはじめ,搬入作業のための車両構成,郵便局の
エレベーターの容量の確認,また,搬入後の区分指定面の検討や操作員
の教育日程が話し合われた。
ク入札の状況
平成8年度の区分機類の入札は,平成8年8月7日及び同月28日に
行われ,被審人2社は,自社に情報の提示のあった物件のみ入札に参加
,。し自社に情報の提示がなかった物件については入札に参加しなかった
落札率は,すべての物件について998%を超えていた。.
ケ納入の状況
入札後,受注した物件の納入がなされたが,被審人P2が受注した橋
本郵便局及び岐阜北郵便局の物件については,契約上の納入期限は平成
8年10月31日とされていたが,前記の納入日程の調整により橋本郵
便局の物件については納入が同年9月5日,岐阜北郵便局の物件につい
ては納入が同月9日と入札後極めて短期間に行われた。また,被審人P
1が受注した高津郵便局及び品川郵便局の物件については,契約上の期
限が同月30日とされていたが,前記の納入日程の調整により高津郵便
局の物件については納入が同年8月25日,品川郵便局については納入
が同年9月1日と入札後極めて短期間に行われた。
()平成8年度の試行機3
ア情報の提示
機械情報システム課の調達事務担当官は,平成8年7月ころ,被審人
2社それぞれに対し,郵政省の平成8年度の購入計画に係る新型区分機
及びバーコード区分機の試行機の8台について情報の提示を行った。
イ納入日程等の調整
被審人2社は,この情報の提示を受けた後,それぞれ,機械情報シス
テム課の調達事務担当官に対し,納入日程表の案を提出するなどして,
平成8年12月ころまでに,情報の提示を受けた区分機類の納入日程等
の調整を行った。
なお,平成8年12月12日ころ,機械情報システム課のP27次席
は,被審人P2のP9課長に「新型区分機等の機械番号について(再修
正版」をファクシミリ送信したが,その中で,平成8年度発注予定の)
試行機についての製造業者の欄に,被審人2社の個別の会社名(P1,
P2)を記載していた。
ウ官報公示及び仕様書
平成8年度の試行機の調達に係る官報公示は,平成8年11月26日
に行われた。発注する区分機類は新型区分機又はバーコード区分機の機
種別,右流れ型又は左流れ型の流れ型別により4物件にグループ分けさ
れ,一般競争入札の方法により,平成9年1月30日に入札に付される
こととされた。これら4物件の納入期限はいずれも同年3月21日とさ
れていた。
仕様書には,右流れ型(供給部が区分部の左側に設置されたもの,)
左流れ型(供給部が区分部の右側に設置されたもの)の別,右流れ型の
場合は右流れ型の選別押印機又は台付押印機と,左流れ型の場合は左流
れ型の選別押印機又は台付押印機とそれぞれ連結できる機能を有するも
のであることなどが記載され,右流れ型には被審人P1が作成した予備
部品リストが,左流れ型には被審人P2が作成した予備部品リストが添
付されていた。
エ地方郵政局及び配備先郵便局との具体的な配備の打合せ
東京郵政局郵務部郵便システム課のP35係長は,平成8年10月か
ら11月にかけて機械情報システム課から配備候補郵便局の受入れ可能
性について確認があったのを受けて,配備候補郵便局にこれを確認する
業務を行った。P35係長は,被審人P1製の区分機類が既に配備され
ている郵便局には被審人P1製の,被審人P2製の区分機類が配備され
ている郵便局には被審人P2製の区分機類が配備されるという前提で納
入に向けての作業を行い,配備先郵便局の便宜のために機種番号(型式
番号)を伝え,伝えられた郵便局もそれを前提に作業を進めた。
被審人2社は,それぞれ,平成8年12月ころから,配備先郵便局と
の間で入力のための訓練,電気工事関係,レイアウトの確認,搬入時及
び搬入後のスケジュール調整などの搬入に関する具体的な打合せを行っ
。,。,たこの打合せには情報の提示があった者のみが呼ばれた打合せは
入札や契約の時期とは関連なくなされており,入札前に行われているも
のもあった。
オ入札の状況
平成8年度の試行機の入札は,平成9年1月30日に行われ,被審人
2社は,自社に情報の提示のあった物件のみ入札に参加し,自社に情報
の提示がなかった物件については入札に参加しなかった。落札率はすべ
ての物件について999%を超えていた。.
カ納入の状況
入札後,受注した物件の納入がなされたが,被審人P1が受注した東
京中央郵便局の新型区分機及び玉川郵便局の新型区分機については,前
記の納入日程の調整により納入が平成9年2月16日と,入札後極めて
短期間に行われた。
5平成9年度の情報の提示,納入日程の調整及び発注状況
()郵政省が平成9年度に発注する区分機類は,平成10年2月に実施す1
る郵便番号7桁化に対応した新型区分機が中心で,発注台数が従来より多
く,また,既設のあて名区分機を新型区分機並みの性能に改造して他の郵
便局移設する(玉突き移設)必要があった。
()情報の提示及びその後の状況2
ア情報の提示
機械情報システム課は,平成8年6月ころから平成9年度の区分機類
の具体的な配備計画を検討し,同年8月ころには配備計画をほぼ詰め終
。,,,わったそして同課のP25課長補佐は平成8年10月ころまでに
被審人2社それぞれに対し,配備先郵便局,配備予定機種などの情報を
,。提示しそれに基づき納入日程表の案を作成して提出するよう依頼した
イ納入日程等の調整
被審人2社は,この依頼を受けた後,被審人P1にあってはP21主
任が,被審人P2にあってはP9課長及びP26課長が,機械情報シス
テム課のP25補佐に対し,納入日程表の案を提出し,P25補佐から
の再検討の依頼を踏まえて修正を何回か繰り返した後,平成9年3月な
いし4月ころ納入日程が確定した。平成9年度は発注される予定の区分
機類の台数が非常に多く,また,玉突き移設の問題もあったため,納入
日程表の修正回数は,これまでよりもはるかに多かった。
ウ見積書の提出及び機械情報システム課との価格交渉
新型区分機は新しい機種であったので,機械情報システム課は大蔵省
への概算要求を行う少し前の平成8年7月ころ,被審人P1に,見積書
の提出を求めた。被審人P1は,同年7月4日ころ,新型区分機300
口2億6500万円などと記載した概算見積書を提出した。同年秋ころ
になり,同課からもっと安くするようにとの要請を受け,何回か価格に
ついてやり取りがあった後,同年11月5日ころ,被審人P1は,新型
区分機300口2億4570万円などと記載した見積りを提出した。こ
れについても,同課の担当官から,情報入力装置()の一部に関しVCS
て「P2より高い。少し安くしろ」との要請があり,再度見積書を提。
出するなどした。
機械情報システム課は,平成8年12月の大蔵省の内示を受け,平成
9年度調達分の実行予算を組むに際し,被審人P2に新型区分機等の機
,,。,種別口数別の価格を記載して提出するように求めた被審人P2は
同課にその価格を記載した表を提出したが,すぐには受理されず,価格
について何回かのやり取りの後,平成9年1月に提出した価格で受理さ
れた。
エ官報公示及び情報の提示との対比
平成9年度の区分機類の調達に係る官報公示は,平成9年3月19日
。,(),に行われた発注する区分機類は新型区分機バーコード区分機A型
バーコード区分機(B型,選別押印機,台付押印機,連結部又は情報)
入力装置の機種別,このうち新型区分機,バーコード区分機(A型,)
バーコード区分機(B型,選別押印機及び台付押印機にあっては右流)
れ型又は左流れ型の流れ型別,新型区分機,バーコード区分機(A型)
及びバーコード区分機(B型)にあっては200口,250口,300
口又は350口の口数別等により分類され,これにより31物件にグル
ープ分けされ,一般競争入札の方法により,同年5月16日に入札に付
されることとされた。同入札では,被審人P1に情報の提示があったと
認められる物件のうち左流れ型のもの及び被審人P2に情報の提示があ
ったと認められる物件のうち右流れ型のものは別個にグループ分けされ
ていた。同入札で定められた納入期限は,比較的短期間のものが多かっ
た(納入期限を,平成9年9月30日とするものが17物件,同年10
月31日とするものが1物件,同年11月28日とするものが4物件,
平成10年1月30日とするものが3物件,同年3月16日とするもの
が6物件である。。)
被審人P2の担当者は,官報公示された物件と情報の提示が行われた
物件とを対比して,同一であることを確認した。
オ仕様書の交付
平成9年度は発注台数が多かったことから,仕様書は,官報公示を待
たずに平成9年2月ころから,契約室の担当官であるP32次席から被
審人2社の担当者に交付され,被審人2社は,それぞれ自社が情報の提
示受けた物件について準備のできたものから順次,下見積書をP32次
席に提出していった。
仕様書には,右流れ型,左流れ型の別が記載され,右流れ型には被審
人P1が作成した予備部品リストが,左流れ型には被審人P2が作成し
た予備部品リストが添付されていた。
カ価格に関する郵政省と被審人2社とのやり取り
P32次席は,被審人2社の提出に係る前記下見積書に基づき,前年
度調達分と同様の方法で,予定価格下調調書及び価格予定書を作成し,
被審人2社の担当者を契約室に招致して,実際に納入可能な金額を確認
するための手続を行った。
キ地方郵政局及び配備先郵便局との具体的な配備の打合せ
被審人2社の担当者は,それぞれ自社に情報の提示のあった物件につ
いて,P6係長の了承を得て,前年度と同様の方法で,前年度調達分よ
りも幾分早い日程の下に,地方郵政局及び配備先郵便局との間で電気工
事関係,レイアウトの確認,区分指定面の検討,搬入時及び搬入後のス
ケジュール調整などの搬入に関する具体的な打合せを行った。この打合
せには,情報の提示があった者のみが地方郵政局から呼ばれていた。打
合せの時期は,入札や契約の時期とは関連がなく,入札前に行われてい
るものもあった。
(略)
ク新型区分機等の搬入予定日等調書の作成
平成9年4月22日ころ,機械情報システム課のP25補佐から,被
,,,,,,審人2社に対しそれぞれ郵政局管内郵便局名郵便番号機械名
機械搬入予定日,稼働開始可能予定日,製造業者による訓練日程,製造
業者の常駐期間を一覧にした「新型区分機等の搬入予定日等調書」を作
成するように依頼があり,被審人P1は同月26日にP17課長が,被
審人P2は5月9日にP26課長が作成提出した。
ケ地方郵政局による入札前の配備先郵便局への機種通達等
九州郵政局は平成9年5月8日ころ,博多郵便局に対し,配備される
新型区分機は被審人P1製のものと示し,信越郵政局は,同年4月18
日ころ,新潟中央郵便局に対し,配備される新型区分機は被審人P1製
のものと事実上示していた。
(略)
コ入札の状況
平成9年度の区分機類の入札は,平成9年5月16日に行われ,被審
人2社は,自社に情報の提示のあった物件のみ入札に参加し,自社に情
報の提示がなかった物件については入札に参加しなかった。落札率は,
すべての物件について995%を超えていた。.
(略)
サ納入の状況
入札後,受注した物件の納入がなされたが,被審人2社が受注した物
件について,前記の納入日程の調整により納入が入札後短期間に行われ
たものが相当数あった。
シ入札後の価格連絡
平成9年7月30日ころ,被審人P2のP36主任は,被審人P1の
P21主任に対し,平成9年度の新型区分機(略,バーコード区分機)
(A型(略,バーコード区分機(B型(略)のそれぞれの契約単価)))
(税抜き)をファクシミリ送信した。
6平成7年度から平成9年度までの受注状況
被審人2社は,郵政省が平成7年4月1日から平成9年5月16日までの
間に,一般競争入札の方法により発注した区分機類の物件71物件中の70
物件を受注し,それぞれが同省の総発注額のおおむね半分ずつを受注した。
7公正取引委員会の立入検査及びP3の参入後の状況
()平成9年12月10日,公正取引委員会が被審人2社に立入検査を行1
い,その後は機械情報システム課の調達事務担当官等は情報の提示を行わ
なくなり,納入日程の調整は入札後に行われるようになり,契約室が価格
のやり取りをすることもなくなり,官報公示において入札日から初回の納
入期限までの期間を短期間に設定することもなくなった(平成9年12月
24日官報公示に係る全22物件は,入開札日を平成10年2月27日と
し,納入期限を同年8月31日として,入開札日から納入日までに6か月
の期間が設けられている。また,同年3月30日官報公示に係る全50物
件は,入開札日を同年6月9日とし,納入期限は同年9月30日とするも
の22物件,同年10月30日とするもの10物件,同年11月30日と
するもの9物件であり,その余はそれよりも長期の納入期限が定められて
いる。被審人2社も郵政省との接触を控えるようになった。また,平。)
成10年2月27日の区分機類の入札からP3が参入し,P3が参加した
物件は少なくとも2社の競争となった。これらのことから,競争環境が相
当変化した。
,。P3は当初右流れ型の区分機類に参入し被審人P1との競札となった
平成10年2月27日の入札では2物件が被審人P1,P3の競札となっ
たが,これらの物件の落札率は約965%,941%と,これまでより..
も下がった。平成10年6月9日の入札からは被審人P1が左流れ型の区
分機類に本格的に参入し,被審人P2と競札するようになった。同日に,
被審人P1,P3が競札になった13物件の落札率は約771%から約.
..995%までに,被審人2社が競札になった10物件の落札率は約75
2%から約955%までにと更に下がった。平成11年3月19日の入.
札からはP3が左流れ型の区分機類に参入し,被審人P2が右流れ型の区
分機類に本格的に参入したことから,すべての物件について被審人2社及
びP3の3社あるいは被審人2社の競札となった。同日に3社が競札とな
った11物件の落札率は約405%から約844%までに,被審人2社..
が競札となった8物件の落札率は約655%から約985%までにと一..
層下落した(以下,略)。
()P3が,平成10年4月9日付け文書で,郵政省に対し,被審人P12
製及び被審人P2製の選別押印機等との接続に関する技術情報の開示を求
めたところ,機械情報システム課はこれに応じて,同年5月8日付け文書
で技術情報を開示し,P3は,その開示を受けて技術的に接続が可能であ
ることを確認して,同年6月9日の区分機類の一般競争入札に参加した。
また,郵政省が平成11年3月19日に一般競争入札の方法により発注
した区分機類について,被審人P2は,被審人P1製の選別押印機との接
,,。続を条件とする新型区分機の入札に参加し落札・受注し納入している
また,P3も,同入札において,被審人P1製の選別押印機との接続を条
件とする新型区分機の物件の入札に参加し,落札・受注した。
(以上)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛