弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴はこれを棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は末尾に添附してある弁護人三輪寿壯作成名義控訴趣意書と題す
る書面記載の通りである。これに対し当裁判所は左の如く判断する。
 論旨第一点について。
 刑事訴訟法第二百五十六条には起訴状には公訴事実を記載すべきこと。公訴事実
は訴因を明示してこれを記載すべきこと、訴因の明示にはできる限り日時、場所及
び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをなすべ<要旨>きことを規定してい
る。とれによると訴因とは罪となるべき具体的の事実換言すれば犯罪構成要件に該
当する具体的の事実をいうのであるか、その特定とは他の訴因と紛れること
のない程度に即ち同一性を認識させるに足る程度に日時、場所、方法、目的物件等
の記載によつて罪となるべき事実を特定すれば足るのであつて同一場所における同
一占有内の財物を奪取した強盗罪の目的物については、目的物の一、二を具体的に
説明しその他の目的物は単に数量丈けを記載しても右記載は日時、場所、被害者の
氏名等と相俟つて罪となるべき事実を他の訴因と区別しその同一性を認識させるに
十分である。本件起訴状の記載を見ると、
 「被告人両名は金員を強奪すべく共謀の上、昭和二十三年十二月七日頃の真夜北
蒲原郡a村大字bc番地A方に到り就寝中の右Aを縄にて縛り上げて暴行を加え、
同人及びその妻女に短刀を突き付け騒ぐと殺すぞ金を出せ等と告げて危害を加うべ
き気勢を示して脅迫し因つて同人等所有に係る現金五千円位及び中型トランク男物
二重トンビ等衣類雑品合計二十一点位を強取し」
 と記載されてあつて、所論目的物も衣類雑品であることが記載されてあつて、右
記載は他の日時、場所、被害者の氏名記載と相俟つて罪と為るべき事実を特定して
いるから所論目的物についても起訴の効力あるものといわねばならない。従つて原
判決がこの点について審判したのは正当で何等違法の点はない。本件起訴状は前記
の如く強盗の目的物を「現金五千円位及び中型トランク男物二重トンビ等衣類雑品
合計二十一点位」と記載されていたが原審は「現金四千五百円及び中型トランク男
物メルトン製二重トンビ等物品等二十三点」と認定していてその員数において二点
の相違あること所論の通りであるが、右原審認定事実は公訴に係る事実と同一性を
有し且つ原審がかように認定するについて訴因変更の手続をとらないでも被告人の
防禦権を侵害することがないと認めるから右二点についても起訴の効力の及ぶ範囲
でこれを逸脱したものでない。従つて原審の右措置には何等所論のような違法はな
い。(当裁判所昭和二十四年(を)新第四八〇号同年十一月十二第十二刑事部判決
参照)
 (裁判長判事 吉田常次郎 判事 保持道信 判事 鈴木勇)

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