弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人安野一三の上告理由について
 民訴法二〇〇条四号に定める「相互ノ保証アルコト」とは、当該判決をした外国
裁判所の属する国(以下「判決国」という。)において、我が国の裁判所がしたこ
れと同種類の判決が同条各号所定の条件と重要な点で異ならない条件のもとに効力
を有するものとされていることをいうものと解するのが相当である。けだし、外国
裁判所の判決(以下「外国判決」という。)の承認(外国判決が判決国以外の国に
おいて効力を有するものとされていることをいう。以下同じ。)について、判決国
が我が国と全く同一の条件を定めていることは条約の存する場合でもない限り期待
することが困難であるところ、渉外生活関係が著しく発展、拡大している今日の国
際社会においては、同一当事者間に矛盾する判決が出現するのを防止し、かつ、訴
訟経済及び権利の救済を図る必要が増大していることにかんがみると、同条四号の
規定は、判決国における外国判決の承認の条件が我が国における右条件と実質的に
同等であれば足りるとしたものと解するのが、右の要請を充たすゆえんであるから
である。のみならず、同号の規定を判決国が同条の規定と同等又はこれより寛大な
条件のもとに我が国の裁判所の判決を承認する場合をいうものと解するときは(大
審院昭和八年(オ)第二二九五号同年一二月五日判決・法律新聞三六七〇号一六頁)、
判決国が相互の保証を条件とし、しかも、その国の外国判決の承認の条件が我が国
の条件よりも寛大である場合には、その国にとつては我が国の条件がより厳しいも
のとなるから、我が国の裁判所の判決を承認しえないことに帰し、その結果、我が
国にとつても相互の保証を欠くという不合理な結果を招来しかねないからでもある。
以上の見解と異なる前記大審院判例は、変更されるべきである。なお、我が国と当
該判決国との間の相互の保証の有無についての判断にあたつても、同条三号の規定
は、外国裁判所の判決の内容のみならずその成立も我が国の「公ノ秩序又ハ善良ノ
風俗」に反しないことを要するとしたものと解するのが相当である。
 本件についてみると、記録によれば、アメリカ合衆国コロンビア特別行政区にお
いては、外国裁判所の金銭の支払を命じた判決は、原判示の条件のもとに承認され
ており、その条件は民訴法二〇〇条が外国裁判所の右と同種類の判決の承認の条件
として定めるところと重要な点において異ならないと認められるから、アメリカ合
衆国コロンビア特別行政区地方裁判所の原判示判決につき、同条四号所定の「相互
ノ保証」の条件が充足されているものというべきである。したがつて、これと同旨
の原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。
論旨は、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    横   井   大   三
            裁判官    木 戸 口   久   治
            裁判官    安   岡   滿   彦

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