弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人江口保夫、同溝呂木商太郎、同草川健、同鈴木諭の上告理由第一点及
び第二点について
 原判決は、(1) Dは、昭和四九年一月一四日午後九時ころその所有の本件自動
車に友人数名を乗せてスナツク「E」に行き、同所で右友人らと飲酒したのち翌一
五日午前零時ころ右の店を出た、(2) Dは、本件自動車により最寄りの駅である
a駅まで他の者を送つてから帰宅するつもりでいたところ、友人達を自分の下宿に
連れて行き飲み直すつもりになつていたFから自分に本件自動車をまかせ運転させ
て欲しいと求められて渋々これを承諾し、ここに車の使用をFに委ねることとし、
車の鍵を同人に渡してみずからは電車で帰宅するつもりでa駅まで行くため本件自
動車の後部座席の右端(運転席のFの後ろ)に便乗した、(3) Fの考えていた行
先は、ひとまずa駅に至り電車で帰宅する者を下車させたのち残りの友人と飲み直
すためにその下宿先にということであつたが、そのうち自己の運転操作の誤りによ
り本件自動車を左右に大きく蛇行させた挙句、右側ガードレールに車体の右側面を
激突させて横転させるという本件事故を起し、Dを死亡させた、(4) Dは、酒を
飲んだFに運転を許した過失がある、以上の事実を認定したうえ、右(1)ないし(
3)の事実からすると、事故当時の本件自動車の具体的運行において、Fは、運転
者であり、危険物たる自動車の運行により生ずべき危険を回避すべく期待され、ま
た、そのことが可能であるのにかかわらず事故を発生せしめた直接的立場にあつた
運行供用者であるのに対し、Dは、最寄りの駅につくまでの単なる同乗者であり、
運行供用者であるといつても具体的にはFを通じてのみ車による事故発生を防止す
るよう監視することができる立場にしかなかつたという点において、双方の運行支
配の程度態様を比較すると、Dは間接的潜在的抽象的に運行を支配しているにすぎ
ないのに対し、Fは直接的顕在的具体的に支配していたものというべきであるとし、
DはFに対しては自動車損害賠償保障法三条本文の他人であることを主張すること
が許されると判断して、Dの両親である被上告人らが上告会社に対し同法一六条に
基づいてした損害賠償の請求を認容している。
 しかしながら、原判決の認定するところによれば、本件事故当時Dは友人らの帰
宅のために本件自動車を提供していたというのであるから、その間にあつてFが友
人らの一部の者と下宿先に行き飲み直そうと考えていたとしても、それはDの本件
自動車の運行目的と矛盾するものではなく、Dは、Fとともに本件自動車の運行に
よる利益を享受し、これを支配していたものであつて、単に便乗していたものでは
ないと解するのが相当であり、また、Dがある程度F自身の判断で運行することを
も許したとしても、Dは事故の防止につき中心的な責任を負う所有者として同乗し
ていたのであつて、同人はいつでもFに対し運転の交替を命じ、あるいは、その運
転につき具体的に指示することができる立場にあつたのであるから、FがDの運行
支配に服さず同人の指示を守らなかつた等の特段の事情がある場合は格別、そうで
ない限り、本件自動車の具体的運行に対するDの支配の程度は、運転していたFの
それに比し優るとも劣らなかつたものというべきであつて、かかる運行支配を有す
るDはその運行支配に服すべき立場にあるFに対する関係において同法三条本文の
他人にあたるということはできないものといわなければならない。しかるに、原判
決は、前記の特段の事情があるか否かについて事実関係を確定しないまま、所有者
であるDの運行支配の程度態様を間接的潜在的抽象的なものであると判断し、Dが
同法三条本文の他人であると主張することができるとしたものであつて、ひつきよ
う、原判決の右判断には同法三条本文の他人の意義に関する解釈適用を誤り、その
結果審理を尽くさない違法があるものといわなければならない。そして、右の違法
が原判決に影響を及ぼすことは明らかであつて、この点に関する論旨は理由があり、
その余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、本
件についてはさらに審理を尽くさせるのが相当であるから、これを原審に差し戻す
こととする。
 よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判
決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    宮   崎   梧   一
            裁判官    木   下   忠   良
            裁判官    鹽   野   宜   慶
            裁判官    大   橋       進
            裁判官    牧       圭   次

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛