弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人山田尚の上告理由第一点について。
 所得税法(昭和二二年法律第二七号で同二九年法律第五二号による改正前のもの)
は、通常の更正処分(いわゆる白色申告に対する更正)の通知書には総所得金額、
純損失金額等について法定の所得別にその内訳金額を附記すべきものとし(同法四
六条七項)、納税義務者のいかなる種類の所得について、いかに更正したかを明ら
かにさせることにしているが、青色申告に対する更正処分については、右の程度の
附記をもつて満足せず、その更正通知書に、前記の附記事項に代えて更正の理由を
附記しなければならないものとしている(同法四六条の二第二項)。このように白
色申告と青色申告とによつて取扱上の差異を認めているのは、同法が青色申告書提
出承認のあつた所得については、その計算を法定の帳簿書類に基づいて行なわせ、
その帳簿書類に基づく実額調査によらないで更正されることのないよう保障してい
る関係上(同法二六条の三、四六条の二第一項)、その更正にあたつては、特にそ
れが帳簿書類に基づいていること、あるいは帳簿書類の記載を否定できるほどの信
憑力のある資料によつたという処分の具体的根拠を明確にする必要があり、かつ、
それが妥当であるとしたからにほかならない(最高裁判所昭和三六年(オ)第八四
号同三八年五月三一日第二小法廷判決、民集一七巻四号六一七頁参照)。してみれ
ば、右理由の附記は、法定の帳簿書類の記載に基づいて計上されるところの青色申
告書提出承認のあつた所得について更正のあつた場合に限られるべきは当然であつ
て、青色申告に対する更正であつても、それ以外の部分に関する場合には、白色中
告に対する更正と同様に処理されれば足りるものと解するのが相当とする。従つて、
青色申告書提出承認のあつた事業所得の計算に関するものでない本件更正処分の通
知書には理由の附記を要しないものとした原判決の判断に、所論の違法は認めがた
い。
 論旨は、右原判決の判断に対し、それでは、処分庁において更正の内容を青色申
告書提出承認のあつた所得に関するものとみるか否かによつて、あるいは理由の附
記が必要となりあるいは不要となることになつて、法が青色申告に対し理由の附記
によつて濫更正の防止を保障した趣旨に副わないものと非難する。更正につき詳細
な理由が示されることが一般には望ましいことであるにしても、法が特に青色申告
に対する更正に理由の附記を規定したのは、その更正につき法定の帳簿書類に基づ
く実額調査を保障するため以上のものとは解しがたく、もしかりに青色申告書提出
承認のあつた所得に属するものをそれ以外の所得として法定の実額調査によらず理
由の附記もなく更正するようなことがあつたとすれば、その場合には、前叙のよう
に白色申告に対するのと同様の附記がなされるはずであり、納税義務者において、
その違法を主張してこれが是正を求めることもかたくないのにかんがみれば、その
ような違法な措置がたやすく行なわれうべきものとは認められない。結局、所論は、
法の要請を超えて理由の附記の必要を主張するものとして首肯しがたく、採用でき
ない。
 同第二点について。
 原判決の採用した被上告人の主張は、本件更正および審査決定には上告人の納付
済源泉徴収税額を過少に認定した誤りが存するにしても、他面、上告人には扶養控
除額を過大に計上した不実申告があり、この点を是正して計算すれば、源泉徴収税
額の訂正にかかわらず、審査決定による納付税額よりも一、六九八円多額となるの
で、審査決定によつて訂正された本件更正処分によつて上告人が負担する納税義務
は、正当な所得税額よりも過少であつて、上告人に違法に不利益を被らしめるもの
ではないから、前記源泉徴収税額の過誤をとらえて本件更正取消の事由とすること
はできないというにある。
 論旨は、これに対し、更正処分の取消訴訟において主張を許されるのは、当該更
正において確定された課税総所得金額をその数額において正当化する主張に限られ
るものとし、更正または審査決定において看過されていた扶養控除額の変更のごと
き課税総所得金額に影響すべき事実を新たに訴訟において主張することは、右の事
実を理由とする再更正を経たうえでなければ許されないものと主張する。しかし、
被上告人において、審査決定によつて訂正された本件更正処分によつて確定された
ところは上告人に対する当該年度の所得税の正当な納付義務内容を下回るものと主
張する趣旨は、その正当な所得税額を改めて確定しその具体的租税債務としての存
在を前提としているのではなく、正当な所得税額は本件更正の結果を超過するはず
であるから、本件更正処分は上告人に対し違法に納税義務を重課したことにはなら
ないというにすぎない。このために、上告人の扶養控除額の過大が主張され、その
事実が認められたとしても、それによつて直ちに本件更正処分によつて確定された
課税総所得金額ないし納税額に変更をきたすものでもなく、単に右更正処分がその
ままの内容で維持されるだけのことである。従つて、所論のように、かかる主張は
被上告人において再更正をしたうえでなければできないとする理由は存しない。し
かも、更正または審査決定では考慮されなかつた事実を、処分を正当とする理由と
して、訴訟の過程に至つて新たに主張することの可能であることも、原判示のとお
りである。してみれば、原判決が上告人の扶養控除額に関する不実申告の事実を認
め、被上告人の前叙の主張を採用したのは相当であつて、論旨は理由がない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    松   本   正   雄

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛