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平成23年2月17日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成22年(ネ)第2247号不正競争行為差止等請求控訴事件
(原審・大阪地方裁判所平成21年(ワ)第2948号)
(口頭弁論終結日平成22年10月13日)
判決
控訴人(原告)特定非営利活動法人日本拳法会
(以下「控訴人日本拳法会」という。)
控訴人(原告)一般財団法人日本拳法全国連盟
(以下「控訴人全国連盟」という。)
上記2名訴訟代理人弁護士本渡諒一
仲元紹
黒田厚志
郷原さや香
被控訴人(被告)A
(以下「被控訴人A」という。)
被控訴人(被告)公益財団法人全日本拳法連盟
(以下「被控訴人連盟」という。)
上記2名訴訟代理人弁護士坂口孝治
森山善基
主文
1本件控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人Aは,拳法の教授,普及,競技大会の開催及び段級位允許その他こ
れに関連する一切の事業活動において,「日本拳法」の名称を使用してはなら
ない。
3被控訴人連盟は,法人名として全日本拳法連盟という名称を使用してはなら
ない。
4被控訴人連盟は,福岡法務局平成21年2月4日付けをもってなされた設立
登記につき,平成21年10月16日付けで名称変更登記された「公益財団法
人全日本拳法連盟」の名称の抹消登記手続をせよ。
5被控訴人連盟は,拳法の教授,普及,競技大会の開催及び段級位允許その他
これに関連する一切の事業活動において,「日本拳法」の名称を使用してはな
らない。
6被控訴人Aは,控訴人全国連盟に対し,36万円及びこれに対する平成21
年3月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7被控訴人らは,「日本拳法」の文字を使用した允許状用紙,パンフレットそ
の他の文書及び印刷物を廃棄せよ。
8被控訴人Aは,原判決別紙記載の通知文を,同被控訴人が「日本拳法」の名
称を使用して段級位を允許した者全員に対し送付せよ。
9訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
第2事案の概要
控訴人らは日本拳法の普及活動等を行う法人である(控訴人全国連盟は権利能
力なき社団であったが,本件訴訟係属中に法人格を取得した。)。被控訴人連盟
は,日本拳法の大会の開催等を行う公益財団法人であり(本件係属中に組織変更
により名称を現在のものに変更した。),被控訴人Aはその代表理事である。
控訴人らは,「日本拳法」の名称は控訴人らを含むグループないし控訴人らの
営業表示として,「日本拳法会」の名称は控訴人日本拳法会の営業表示として,
「日本拳法全国連盟」の名称は控訴人全国連盟の営業表示として,それぞれ周知
性があるから,被控訴人らが「日本拳法」の名称を使用して拳法の普及活動等を
すること及び被控訴人連盟が「全日本拳法連盟」の名称を使用することは不正競
争行為(不正競争防止法2条1項1号)に該当すると主張して,被控訴人らに対
し,拳法の普及活動等において「日本拳法」の名称を使用することの差止め及び
「日本拳法」の文字を使用した允許状用紙等の廃棄を求め(同法3条),被控訴
人連盟に対し,「全日本拳法連盟」の名称の使用の差止め及び同名称の登記の抹
消登記手続を求め(同条),被控訴人Aに対し,信用回復の措置として原判決別
紙記載の通知文の送付を求めた(同法14条)。また,控訴人全国連盟は,被控
訴人Aが「日本拳法」の名称を使用して允許したことが不法行為に当たると主張
して,同被控訴人に対し,損害賠償として36万円及びこれに対する遅延損害金
の支払を求めた(同法4条)。
原審は,控訴人らの請求をいずれも棄却した。
前提事実は原判決「事実及び理由」第2の1のとおりであるが,4頁4行目末
尾に「被控訴人Aは,平成20年9月以降,「日本拳法九州連盟」と記載された
允許状を発行している(甲10)。」を加える。
争点及び当事者の主張は,当審における主張を含め,以下のとおりである。
1争点⑴(「日本拳法」は控訴人らグループの営業表示として周知か)
(控訴人らの主張)
⑴日本拳法の創始者であるBは,日本拳法を指導・普及するために昭和7年
に大日本拳法会を設立し,同会は昭和22年に日本拳法会と改称し,平成1
6年に法人化して控訴人日本拳法会となった(以下,「控訴人日本拳法会」
というときは,大日本拳法会及び法人化前の日本拳法会を含むものとす
る。)。控訴人日本拳法会は日本拳法の普及・指導に努め,「日本拳法」と
いう武道の名称は,全国の大学の日本拳法部が参加した第1回全日本学生選
手権大会と第1回関西学生拳法選手権大会が開催された昭和31年の前年
(昭和30年)には武道愛好家の間で周知性を獲得した。
⑵今日までの控訴人らの活動状況は次のとおりである。
ア控訴人日本拳法会は,昭和7年から日本拳法の指導団体・競技主催団体
としてその普及に努め,全日本学生日本拳法選手権大会,全関西学生日本
拳法選手権大会,全国高校日本拳法選手権大会及び全関西高校日本拳法選
手権大会を主催し,大学生や高校生を連合する組織体として学生連盟や高
等学校連盟を組織してこれらの連盟が主催する大会を後援し,全日本の日
本拳法個人選手権大会を主催してきた。Bが昭和29年まで会長を務め,
その後はC,D,E(現会長)が順次会長を務めてきた。
イ控訴人全国連盟は,控訴人日本拳法会,日本拳法中部日本本部(以下
「中部本部」という。)及び日本拳法連盟との統一組織として,平成2年
に,Bの遺志に沿って設立された団体である。
控訴人全国連盟は,日本拳法の允許権者である控訴人日本拳法会から允
許状発行の委嘱を受けて,控訴人日本拳法会,中部本部並びに日本拳法連
盟のいずれかに属する修行者に允許状を発行して,日本拳法の指導,支援
の統一事業(日本拳法協会を除く。)を行い,また,平成13年から全・
日本拳法個人選手権大会(昭和36年から平成12年まで控訴人日本拳法
会が主催)を主催し,傘下連盟主催の大会を後援している。
ウ控訴人らの傘下組織数は以下のとおりであり,所属人数は約2万500
0人にのぼる。各連盟は,控訴人らの指示に基づいて日本拳法の競技大会
を開催しており,その数は控訴人ら主催のものを合わせて73回である
(平成21年度)。
社会人連盟所属97団体
学生連盟所属66大学
高等学校連盟所属37校
少年連盟所属76団体
実業団連盟所属25団体
各都道府県連盟所属268団体
⑶Bの高弟であったF(以下「F」という。)は,昭和30年,Bの許諾を
受けて日本拳法協会(以下「協会」という。)を設立した。協会は控訴人全
国連盟の傘下組織ではないが,Bを頂点とする日本拳法の指導・普及活動に
おいて互いに切磋琢磨している。協会は日本拳法会との対立が原因で設立さ
れたのではない。また,昭和59年の連合協議後も,拳法会と協会とは対立
していたわけではなく,一定の交流はあり,拳法会,全国連盟が主催・後援
する大会に協会加盟団体が出場するのを拒んだことはない。
⑷武道の慣習上,創始者及び創始者が自ら允許権を与えた者のみが流派名
(本件では「日本拳法」)を用いることができる。協会を設立したFも,B
の許可がなければ日本拳法を指導・普及できない旨著書に記しており(乙2
5),その後,Fは,協会とは別に士道日本拳法協会を設立しているが,こ
れはBの允許権付与の効果であって,士道日本拳法協会も控訴人日本拳法会
と同じグループに属する。そして,Bは日本拳法会,中部本部及び協会並び
にそれらの下部組織にのみ日本拳法の指導・允許及び「日本拳法」の名称の
使用を許諾し,それ以外の団体には認めなかった(なお,控訴人日本拳法会
は,下部組織である日本拳法連盟及び控訴人全国連盟に「日本拳法」の名称
の使用を許諾した。)。これらの組織に属する者は,いずれも控訴人日本拳
法会,控訴人全国連盟又は協会から段位を得ており,これらの段位はBの許
諾に基づく。このように,控訴人ら及び協会(F)並びにその下部組織は,
「Bの日本拳法」の修行という点で結束している。
そして,特定の営業表示に係るグループであるために共同の行為は必要な
く,共通の目的を各自が達成するようにすれば足りるから,控訴人全国連盟
及びその傘下組織(控訴人日本拳法会,中部本部,日本拳法連盟及びこれら
3団体の傘下組織)並びに協会及びその傘下組織は,Bを頂点とする日本拳
法グループであり,「日本拳法」の名称はこの日本拳法グループの営業表示
である。
また,「日本拳法」の名称は控訴人ら各々の営業表示として周知である。
⑸「日本拳法」の名称の識別力が希釈され,普通名称化・慣用化したことは
ない。
ア控訴人日本拳法会,中部本部及び日本拳法連盟に属する者は,「日本拳
法」をBの許可なく営業名として使用できないことを知っていた。
イ協会はBから日本拳法の名称を許され,允許権を与えられたグループの
一員であり,控訴人日本拳法会と対立していたわけではないから,識別力
の判断に影響しない。協会所属の大学の多くは控訴人全国連盟にも所属し
ており,控訴人日本拳法会と協会とを兄弟団体と認識していた。
ウ「世界日本拳法連合総本部講武会」は日本拳法とは異なる技法を持つ他
流派であり,「日本拳法」の名称の慣用化を認める根拠とはいえない。日
本拳法九州連盟及び東北連盟は控訴人全国連盟の傘下団体であり,グルー
プをなしているから,「日本拳法」の名称を慣用化しない。
エ被控訴人Aには允許権がないから,乙6による段位は認められない。乙
7の発行者である「日本拳法連合会」なる団体は存在しない。乙8の認定
状(少年少女に対する級認定)は,控訴人全国連盟の九州連盟に対する許
可に基づくものである。乙10,11は,日本拳法東北連盟の名を騙った
ものである(なお,同連盟は日本拳法連盟の傘下にある。)。
(被控訴人らの主張)
⑴「日本拳法」は,これに携わる者が比較的自由に使用している名称であり,
控訴人らの営業を積極的に表示するものではない。
⑵「日本拳法」の名称が,Bを頂点とし,控訴人らと協会を含むグループの
営業表示として周知性を獲得していることは否認する。需要者が控訴人らが
主張するグループを「日本拳法」の営業主体と認識することはない。
協会は,日本拳法連盟(後に控訴人全国連盟に加入)が分裂脱退した後,
さらにNPO(特定非営利活動法人)日本拳法協会と士道日本拳法協会とに
分裂したが,この2団体は町道場を中心として日本拳法の発展に寄与し,独
自に認定証を発行している。また,日本拳法連合講武会館など,独自に日本
拳法の普及・発展に寄与している団体もあり,NPO日本拳法協会や士道日
本拳法協会の活動記録等によると,控訴人グループ傘下にない多数の日本拳
法道場等がある(乙18,20ないし22)。徳島地裁判決(乙2)も,
「日本拳法」が協会の営業を表示するものであることを否定した。
⑶周知性の有無は,差止め請求については事実審口頭弁論終結時を(最高裁
昭和63年7月19日第三小法廷判決参照),損害賠償請求については行為
時を基準に判断すべきである。
2争点⑵(「日本拳法会」「日本拳法全国連盟」の名称はそれぞれ控訴人日本
拳法会及び同全国連盟の営業表示として周知か)
(控訴人らの主張)
「日本拳法会」「日本拳法全国連盟」の名称はそれぞれ控訴人日本拳法会及
び同全国連盟の営業表示として周知である。
昭和30年時点で控訴人日本拳法会(及びその傘下組織)以外に日本拳法を
指導する団体はなく(協会,日本拳法九州連盟,日本拳法東北連盟及び世界日
本拳法連合総本部講武会はいずれも昭和30年より前には存在しない。),唯
一の指導者団体であり,「日本拳法」と「日本拳法会」とは不即不離であった。
よって,「日本拳法」が周知となった時点で,これを周知のものとした「日本
拳法会」の名称も同時に周知となった。そして,上記1(控訴人らの主張)⑵
ないし⑸の事実に照らし,この状況は現在も同じである。
また,控訴人全国連盟は,平成2年以降日本拳法の最高峰の大会である日本
拳法総合選手権大会を開催しており,その名称は遅くとも平成7年には営業表
示として周知となった。
(被控訴人らの主張)
争う。
3争点⑶(「日本拳法会」「日本拳法全国連盟」と「全日本拳法連盟」とは類
似し,混同のおそれがあるか)
(控訴人らの主張)
⑴不正競争防止法2条1項1号の営業表示の類否判断は,表示の静的対比で
はなく,競合関係の有無,事業の内容,営業主体の活動を反映するイメージ
等を総合して,需要者が営業主体を混同するか否かを基準に判断すべきであ
る。
⑵「日本拳法会」及び「日本拳法全国連盟」の名称中識別力を有するのは
「日本拳法」である。「日本拳法会」を他の武道の「会」と区別するものは
「日本拳法」のみであり,「日本拳法」は「Bの日本拳法」「日本拳法会の
日本拳法」として周知であるから,識別力を持つ要部は「日本拳法」である。
「日本拳法全国連盟」と「全日本拳法連盟」とは,外観・称呼は異なるが,
識別力がある「日本拳法」の部分は外観・称呼・観念とも同一であり,その
余の部分も「「すべて」の「団体」」という観念が同一である。
仮に「日本拳法」の部分に識別力がないとしても,被控訴人連盟が設立さ
れた平成21年2月には,日本拳法関係者の中で,控訴人全国連盟は周知の
営業表示であったから,これと被控訴人連盟とが同一団体であると誤認し,
日本拳法連盟等の他団体と混同し,各種大会の開催主体の誤認混同し,取得
した段位が相互に有効であるなどと誤認することが生じ得る。
⑶「日本拳法」の名称が普通名称化・慣用化されておらず,識別力が失われ
ていないことは,上記1(控訴人らの主張)⑸のとおりである。
(被控訴人らの主張)
争う。
4争点⑷(信義則・公序違反)
(控訴人らの主張)
被控訴人連盟の代表者である同Aは,日本拳法九州連盟の代表者であったと
きに無断で段位を発行したことなどから控訴人全国連盟から処分を受け,その
後被控訴人連盟を設立して控訴人全国連盟と対立するようになった。この行為
は信義則に反し,「全日本拳法連盟」の名称を存続させることは公序に反する。
(被控訴人の主張)
争う。
5争点⑸(控訴人全国連盟の損害)
原判決「事実及び理由」第3の3のとおり
6争点⑹(信用回復措置の要否)
原判決「事実及び理由」第3の4のとおり
第3当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人らの請求をいずれも棄却すべきであると判断する。その理
由は以下のとおりである。
1認定事実は原判決「事実及び理由」第4の1⑴のとおりである。ただし,1
2頁12行目の次に改行して,「なお,乙14によれば,その後もFと控訴人
らとの間に一定の交流があることが認められるが,その内容は明らかでなく,
儀礼的あるいは個人的な交流を超えるものであるとは認められない。」を加え,
13頁10行目の「開設する」を「解説する」と改める。
2争点⑴(「日本拳法」は控訴人らグループの営業表示として周知か)につい

⑴日本拳法の名称が遅くとも昭和30年代には武道・拳法に携わる者の間で
Bが考案した格闘技を指すものとして周知となったものと認められること,
他方,「日本拳法」の名称が控訴人らを含むグループ(控訴人らグループ)
の営業表示として周知と認められないことは,以下のとおり付加するほか,
原判決「事実及び理由」第4の1⑵ア,イのとおりである。ただし,原判決
21頁24行目の「日本拳法協会の」の次に「実質的な」を加える。
不正競争防止法2条1項1号所定の「他人」には,特定の表示に関する商
品化契約によって結束した同表示の使用許諾者,使用権者及び再使用権者の
グループのように,特定の表示の持つ出所識別機能,品質保証機能及び顧客
吸引力を保護発展させるという共通の目的の下に結束しているものと評価で
きるようなグループも含まれると解するのが相当である(最高裁昭和59年
5月29日第三小法廷判決・民集38巻7号920頁参照)。この点につき,
控訴人らは,特定の営業表示に係るグループであるためには共同の行為まで
は必要なく,共通の目的を各自が達成するようにすれば足りるという前提の
下,武道の慣習上,創始者(本件ではB)及び創始者が自ら允許権を与えた
者のみが「日本拳法」の名称を用いることができるところ,控訴人ら及び協
会(F)並びにその下部組織は「Bの日本拳法」の修行という点で結束して
いたなどとして,控訴人全国連盟及びその傘下組織(控訴人日本拳法会,中
部本部,日本拳法連盟及びこれら3団体の傘下組織)並びに協会及びその傘
下組織は,Bを頂点とするグループであり,「日本拳法」の名称はこのグル
ープの営業表示であると主張する。
しかし,控訴人ら主張のグループ内(控訴人ら及びその傘下団体と協会及
びその傘下団体との間)で上記商品化契約による結束に準ずるような緊密な
結束があると認めるに足りる証拠はない(なお,各自が独立して共通の目的
を達成しようとしただけでこのような結束を認めることは相当でない。)。
かえって,原判決「事実及び理由」第4の1⑴のとおり,日本拳法の指導普
及活動をする団体として,控訴人ら及びその傘下の団体のほか少なくとも協
会及び協会から分裂したNPO日本拳法協会が存在すること,協会はBの許
諾の下で設立されたが,控訴人日本拳法会とは別組織として活動しているこ
と,関東地区においては協会が中心となって指導普及活動をしたこと,控訴
人日本拳法会加盟団体主催の大会に協会加盟大学の学生が参加していた時期
もあったが,その後協会を脱会しないと出場が認められなくなり,一部を除
いてこのような参加はなくなったこと(少なくとも昭和43年から53年ま
で参加がなかったことは控訴人らも認めるところであり,その余の反論・反
証も断片的なものにとどまる。),昭和62年には協会加盟の一部大学が脱
退して日本拳法連盟を結成し,控訴人日本拳法会と協調するようになったこ
と,協会の師範であったFはBから允許を許されていたが,控訴人ら参加団
体が控訴人日本拳法会会長ないし同全国連盟から允許を受けていたのとは異
なり,協会は控訴人らの審査等を経ることなく独自に允許状を発行していた
ことなどが認められるのであり,このような事実に照らすと,上記のような
結束は認められず,控訴人ら主張のグループの存在を認めることはできない。
⑵また,「日本拳法」の名称が控訴人ら各々の営業表示として周知と認
められないことは,以下のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」第
4の1⑵ウのとおりである。ただし,23頁2行目及び10行目の「大会パ
ンレット」を「大会パンフレット」と改め,24頁1行目から11行目まで
を削り,16,17行目の「その属するグループ」を「その傘下団体」と改
める。
上記⑴のとおり,「日本拳法」の名称を用いてその指導普及活動をする団
体で控訴人らと同じグループに属さないもの(協会等)が存在すること,協
会はBの許諾の下で設立されたが,控訴人日本拳法会とは別組織として活動
しており,関東地区においては協会が中心となって指導普及活動をしたこと,
控訴人日本拳法会加盟団体主催の大会に協会加盟大学の学生が参加していた
時期もあったが,その後協会を脱会しないと出場が認められなくなり,一部
を除いてこのような参加はなくなったこと,昭和62年には協会加盟の一部
大学が脱退して日本拳法連盟を結成し,控訴人日本拳法会と協調するように
なったこと,協会の師範であったFはBから允許を許されていたが,控訴人
ら参加団体が控訴人日本拳法会会長ないし同全国連盟から允許を受けていた
のとは異なり,協会は控訴人らの審査等を経ることなく独自に允許状を発行
していたことなどに照らすと,本件において控訴人全国連盟が損害賠償請求
の対象期間の始期とする平成20年当時においても,また当審口頭弁論終結
時においても,「日本拳法」が控訴人ら各々の営業表示として周知というこ
とはできない。控訴人ら及びその傘下団体に属する者が,「日本拳法」をB
の許可なく営業名として使用できないと主観的に考えていたとしても,上記
判断は左右されない。また,「世界日本拳法連合総本部講武会」が控訴人ら
の認識としては日本拳法と異なる技法を持つ他流派であるとしても,Bが創
始した格闘技に由来する武術であることを標榜し(乙12)「日本拳法」の
名称を公に用いている以上,「日本拳法」の名称の控訴人らの営業表示とし
ての周知性ないし識別力を検討するに当たり考慮すべき事情というべきであ
る。
3争点⑶(「日本拳法会」「日本拳法全国連盟」と「全日本拳法連盟」とは類
似し,混同のおそれがあるか)について
上記2に判示したところによれば,「日本拳法」の名称は,控訴人らを含む
グループの営業表示としても,また,控訴人ら各々の営業表示としても周知で
あるとは認められない。もっとも,上記で認定した控訴人らによる日本拳法の
指導・普及活動の内容等にかんがみれば,武道・拳法に携わる者の間において,
控訴人らが日本拳法の指導・普及活動を行う主要な団体として広く認識されて
いると認められるから,「日本拳法会」との名称は控訴人日本拳法会の営業表
示として,「日本拳法全国連盟」との名称は控訴人全国連盟の営業表示として,
それぞれ周知性を獲得しているものと認めるのが相当である。
しかしながら,上記のとおり,「日本拳法」との名称は特定の団体の営業表
示として認識されているものではなく,「日本拳法会」の「会」の部分及び
「日本拳法全国連盟」の「全国連盟」の部分は特段の識別力を有するものでも
ない上,日本拳法連盟や日本拳法協会など,「日本拳法」に団体や組織を普通
に表す表現を付加した名称を使用している団体が複数あるという実情も併せて
考慮すれば,「日本拳法会」及び「日本拳法全国連盟」との控訴人らの名称は,
全体が不可分のものとして使用されることにより識別力を有し,周知性を獲得
するに至ったというべきであって,その名称のうち「日本拳法」の部分を識別
性のある部分すなわち要部ということはできない。
そこで,控訴人らの営業表示である「日本拳法会」,「日本拳法全国連盟」
と被控訴人連盟の営業表示である「全日本拳法連盟」とを対比すると,いずれ
も「日本拳法」の文字を含むものであるが(もっとも,「全日本拳法連盟」は,
「全日本」と「拳法」ないし「拳法連盟」の部分とに分解して読まれることに
より,「日本拳法」を意識しない読み方もされないとはいえないが,この点は
ここでは措く。),「日本拳法」の部分に控訴人らの営業表示としての識別性
があるとはいえないことは,前示のとおりである。そうすると,控訴人らの営
業表示である「日本拳法会」,「日本拳法全国連盟」との名称は,全体として
不可分のものとして把握すべきであるところ,これらと「全日本拳法連盟」と
は,外観及び称呼において明らかに異なっており,武道・拳法に携わる者やこ
れに興味を持つ者の間においても,全体的に類似のものと受け取られるおそれ
があるとは認められない。控訴人らの営業表示及び被控訴人連盟の営業表示中
に含まれる「会」,「全国連盟」,「連盟」といった語は,一般的には団体や
組織を示す慣用語であるが,前示のとおり,「日本拳法」なる格闘技の世界で
は,「日本拳法」の名称に団体や組織を普通に表す表現を付加した名称を使用
している団体が複数存在するという実態が長らく続いている状況になっており,
このことは,武道・拳法に携わる者やこれに興味を持つ者の間においても広く
知られているところであると解される。したがって,これら需要者としては,
「日本拳法」の名称に付加された団体・組織を示す名称にも相応の注意を払い,
その異同によって団体の異同を識別することが期待できるものというべきであ
るから,「日本拳法会」及び「日本拳法全国連盟」の営業表示と「全日本拳法
連盟」の営業表示の間で,お互いが同一団体であるとか,一方が他方の傘下に
あるとか,双方が共通の目的の下に結束し統制の取れた組織としてのグループ
を形成しているといった混同を生じるおそれがあるとも認められない(なお,
現実に両者間で混同の実例が生じていることの立証もない。)。
よって,控訴人らの営業表示である「日本拳法会」,「日本拳法全国連盟」
と被控訴人連盟の営業表示である「全日本拳法連盟」とが類似し,混同のおそ
れがあるとは認められない。
4争点⑷(信義則・公序違反)について
控訴人らは,被控訴人Aが,無断で段位を発行したことなどから控訴人全国
連盟から処分を受けたとし,その後被控訴人連盟を設立して控訴人全国連盟と
対立するようになったことは信義則に反し,「全日本拳法連盟」の名称を存続
させることは公序に反すると主張するが,仮にこのような経緯があったとして
も直ちに上記名称の使用が信義則や公序に反するとまではいえない。
第4結論
よって,控訴人らの請求はいずれも理由がなく,原判決は相当であるから,主
文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官小松一雄
裁判官久保田浩史
裁判官片岡早苗

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