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平成23年2月23日神戸地方裁判所姫路支部平成21年(ワ)第555号
地位確認等請求事件
主文
1被告は,原告ら各自に対し,各50万円及びこれに対する平成21年1
0月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,これを5分し,その4を原告らの負担とし,その余は被告
の負担とする。
4この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1原告A,同B,同C及び同Dが,被告に対し,それぞれ雇用契約上の地位を
有することを確認する。
2被告は,原告A,同B,同C及び同Dに対し,平成21年11月から本判決
確定に至るまで,毎月5日限り,別紙1の各原告に対応する1月平均欄記載の
金額及びこれに対する各支払期日の翌日から各支払済みまで年6分の割合によ
る金員をそれぞれ支払え。
3被告は,原告らに対し,各300万円及びこれに対する平成21年10月1
日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。
第2事案の概要
本件は,株式会社S(以下「S」という。)と雇用契約を締結し,同社・被告
間の出向協定,業務委託(請負)契約ないし労働者派遣契約に基づき,被告姫路
工場(以下,単に「姫路工場」という。)で就労していた原告らが,いわゆる派
遣切りをされ,その後,被告と直接期間雇用契約を締結したものの,更新されな
かったこと等につき,精神的苦痛を被ったとして,被告に対し,不法行為に基づ
き,慰謝料各300万円及びこれに対する上記期間雇用契約が終了した日の翌日
から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(請求の趣旨
3項)をそれぞれ求めるほか,原告A,同B,同C及び同D(以下,この4名を
併せて「原告Aら4名」という。)が,同人ら・被告間には,期間の定めのない
黙示の労働契約が成立しており,したがって解雇は無効である等として,被告に
対し,雇用契約上の地位を有することの確認(同1項),及び,前記期間雇用契
約が終了した月の翌月から本判決が確定するまでの間の各給与として,Sによる
解雇(派遣切り)の直近3か月間に同社から支給されていた給与の平均額による
支払及びこれに対する各支払期日の翌日から各支払済みまで商事法定利率年6分
の割合による遅延損害金の支払(同2項)をそれぞれ求めた事案である。
1前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によ
り容易に認められる。
(1)当事者
ア原告らは,Sと雇用契約を締結し,姫路工場で就労し,ベアリングの製
造業務に従事していた者である(別紙2の「契約締結月」欄参照。なお,
上記雇用契約締結当時のSの名称は,そのほかに,株式会社T,同U及び
同Vと様々であるが,本件での呼称は,「S」に統一する。)。
(甲A1の1ないし7,甲A2,甲B1,甲C1の1・2,甲D1の1・
2,甲E1の1・2,甲F1の1ないし7,甲G1の1ないし7,甲H1
の1ないし6,甲I1の1ないし5)
イ被告は,軸受(ベアリング)等の製造,販売等を業とする株式会社であ
る。同社の生産拠点には,姫路工場のほか,岐阜製作所及び鎌倉工場があ
る(なお,姫路工場及び鎌倉工場は,同社の業務組織上,岐阜製作所の一
部門であるが,本件では,所在地としてのそれを指す。)。
(甲6,乙1)
ウSは,請負業,労働者派遣事業,有料職業紹介事業等を業とする株式会
社である。
(甲1,甲2,乙8,乙9)
(2)事実経過の概略
ア被告は,平成15年12月1日,Sとの間で,出向協定(以下「本件出
向協定」という。)を締結し,同社からの社員の受入れを開始した。
その後,被告・S間の契約関係は,平成17年10月1日から業務委託
(請負)契約(以下「本件業務委託契約」という。)となり,平成18年
8月21日からは労働者派遣契約(以下「本件派遣契約」という。)に変
更された。
(甲35,甲36,甲37の1ないし40)
イ原告らは,平成16年4月ないし平成20年4月の間にSと雇用契約を
締結し(別紙2参照),その後,被告・S間の本件出向協定,本件業務委
託契約ないし本件派遣契約に基づき,姫路工場で就労し,ベアリングの製
造業務に従事していた。
ウ原告らは,平成21年2月3日,Sから,同社が被告から本件派遣契約
を平成21年3月31日をもって中途解除する旨の通知を受けたため,同
日をもって中途解雇(前記雇用契約の本来の終期は,平成21年8月20
日である。)する旨の解雇予告通知を受けた。
(甲14,甲A1の7,甲A2,甲B1,甲C1の1・2,甲D1の1・
2,甲E1の1・2,甲F1の6・7,甲G1の6・7,甲H1の5・6,
甲I1の4・5)
エ兵庫労働局は,平成21年3月23日,被告及びSに対し,労働者派遣
事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律
(以下「労働者派遣法」という。)違反(派遣期間制限違反)及び職業安
定法違反(労働者供給事業禁止違反)があったとして,同年4月23日ま
でに,原告ら派遣労働者の雇用の安定を図るための具体的方策を講じて報
告するようにとの是正指導(以下「本件是正指導」という。)を行った。
(甲39,乙2)
オそこで,被告は,本件派遣契約の解除につき,平成21年3月31日付
けから同年4月23日付けと変更し,Sも,前記解雇を同日付けに変更し
た。
さらに,被告は,同年4月23日,原告らとの間で,期間を同月24日
から同年9月30日までとして,期間雇用契約(以下「本件期間雇用契
約」という。)を締結した。この際,原告らは,上記期間制限等につき,
異議を留める旨を述べた。
(甲17ないし甲23,甲25,甲27,乙3の1ないし9)
カ本件期間雇用契約は,平成21年9月30日をもって,更新されること
なく終了した。
2争点
(1)原告Aら4名・被告間の労働契約の成否(争点1)
(原告Aら4名の主張)
ア被告による「採用への関与」(事前面接)による,同社との間の労働契
約の成立
最高裁判所平成21年12月18日第二小法廷判決・民集63巻10号
2754頁(以下「松下PDP事件判決」という。)は,発注元が請負業
者による採用に関与していたとは認められないことを,発注元との間の労
働契約が成立したとは認められないことの根拠の一つとしているが,この
ことは逆に,「採用への関与」が認められた場合には,当初から,黙示の
労働契約の成立が認定され得ることを示唆したものと解される。
本件では,姫路工場長(当時)であったEらが,原告Aら4名につき,
工場見学の際に面接をし,油の臭いを嫌わずに仕事ができるという,被告
が予定した作業に適応できる能力を持つことを確認して採用を決定し,そ
れと同時に,Sは,既に被告との間で締結していた本件出向協定,本件業
務委託契約ないし本件派遣契約に基づき,原告Aら4名を労働者として被
告に提供することを最終的に確定し,原告Aら4名は,上記面接後に姫路
工場での就労を開始したのであるから,被告が,原告Aら4名の採用に関
与していることは明らかである。
そして,事前面接が実施され派遣先での就労が実現した場合,同面接の
時点では,派遣元・派遣労働者間で雇用契約が締結されていない以上,派
遣先を含めた三者の関係を労働者派遣の概念で説明することはできず,派
遣元の行ったことは,法的にも私的な職業紹介であると評価するしかない
から,労働契約は,派遣元のあっせんを受けて,派遣先・派遣労働者間に,
事前面接の段階で黙示に成立したと理解せざるを得ない。
したがって,事前面接が行われた本件では,原告Aら4名には,被告と
の間で,黙示の労働契約が成立する。
イ偽装出向下での労働契約の成立
ところで,本件出向協定によれば,出向とは在籍出向のことであること
が明示されているところ,在籍型出向については,出向労働者は,出向元
事業主との間に雇用契約関係があるだけではなく,出向元事業主・出向先
事業主間の出向契約により,出向労働者を出向先事業主に雇用させること
を約して行われるから,労働者派遣には該当しない。もっとも,その形態
は,労働者供給に該当するので,その在籍型出向が,①労働者を離職させ
るのではなく,関係会社において雇用機会を確保する,②経営指導,技術
指導の実施,③職業能力開発の一環として行う,④企業グループ内の人事
交流の一環として行う等の目的を有しない場合は,それは業として行われ
る出向で,しかも労働者派遣ではないから,違法な労働者供給であり職業
安定法44条違反を構成するところ,被告が本件出向協定に基づき実施し
た出向形態での外部労働者の受入れは,人材派遣会社であるSが「業とし
て」行うものにほかならず,労働者派遣ではなく,違法な労働者供給であ
ることは,本件是正指導の内容から明らかである。そうすると,本件出向
協定が締結された後これが本件業務委託契約に切り替えられる平成17年
10月1日以前に,姫路工場での就労を開始した原告A及び同Dについて
は,松下PDP事件判決は妥当せず,Sとの間だけではなく,被告との間
でも二重に労働契約が成立していたこととなる。
そして,原告A及び同Dについては,姫路工場での就労開始時,労働者
派遣法の適用はなく,事前面接は労働者派遣法26条に違反するものでは
ないから,被告との間の完全な労働契約(黙示の労働契約)の成否は,
「採用への関与」の問題を措き,「使用従属関係」「労務給付関係」「賃
金支払関係」の3つの指標で判断せざるを得ないところ,この3つの指標
を用いても,やはり黙示の労働契約の成立を認めることができる。
すなわち,被告は,Sによる原告A及び同Dの採用後,同社に対し,一
貫して業務委託料(派遣料)を出来高ではなく時間給として支払い(1人
1時間1700円。なお,本件出向協定の時代も,時間単価で被告がSに
負担する料金が決められていた。),同社から同人らに対し支給される諸
手当についても全額負担し,昇給も決定していた以上,同人らの賃金は,
被告が実質的に決定していたと評価できるし,被告は,原告ら社外労働者
の配置をすべて決定し,それにSが関与することは一切なく,本件出向協
定が本件業務委託契約に切り替えられた後も,原告A及び同Dが業務を遂
行するために必要な設備,機械,器材,材料等は,すべて被告が所有し調
達するもので,対してSは何らの設備等も有しておらず,製造する商品
(ベアリング)に対する専門的技術,経験を有しているのも被告の正社員
であり,Sはそれらの経験を有していなかった上,原告A及び同Dに対し,
作業上の指揮命令権を取得し,出退勤の管理を行っていたにとどまらず,
配置,懲戒,解雇(雇止め)に関する権限をも保持していたことからすれ
ば,被告は,労務給付請求権を有していたと評価できるのであって,かか
る使用従属関係の実態に鑑みれば,原告A及び同D・被告間には,労働関
係展開中も黙示の労働契約が存続していたといえ,仮に採用時(就労開始
時)には黙示の労働契約は成立していないと考える立場に立っても,本件
では,労働関係展開中に,上記使用従属関係を基礎とする黙示の労働契約
が成立していたこととなる。
ウまとめ
以上のとおり,原告Aら4名・被告間には,①被告が同人らの「採用に
関与」したことによって,姫路工場での就労開始当初から,また,②特に
本件出向協定下で就労を開始した原告A及び同D・被告間には,「使用従
属関係」「労務給付関係」「賃金支払関係」の3指標がいずれも認められ
ることにより,「採用への関与」の問題を措いても,やはり黙示の労働契
約が成立している。
そして,原告A及び同Dについては,上記黙示の労働契約成立後,本件
業務委託契約,本件派遣契約へと契約形態が変更された旨の説明もなけれ
ば,就労実態にも変化がなかった以上,上記労働契約が本件出向協定の解
除によって影響を受ける余地はないし,翻って「採用への関与」を理由に
成立する黙示の労働契約も,請負,労働者派遣への切替えによって解消さ
れることはない。
また,原告Aら4名・被告間で成立する労働契約は,黙示のものであり,
当事者間に雇用期間に関する合意が存在しない以上,原則形態である期間
の定めのないものとなると考えるべきである。
(被告の主張)
ア松下PDP事件判決
同判決は,あくまでも,事実関係を総合して,これまでの枠組みに沿っ
た黙示の意思表示の認定手法により,雇用契約の存否を判断したものにす
ぎず,事前面接行為があればそれだけで黙示の労働契約関係が認められる
と述べたとは明らかに解し得ないし,また,事前面接があった場合には,
賃金額の事実上の決定についての判断が緩められるとか不要であるとかい
う経験則を示したものでも全くない。
イ工場見学の経緯
姫路工場において,就業決定前に工場見学がされるようになった経緯は,
平成15年の出向社員受入れから約3か月間に,就業した7人のうち3人
もが,油のにおいが体質的に合わないなどという理由で退職した事態を受
けて,就業希望者が事前に工場を見学し,職場環境及び業務内容を本人が
見れば,少なくとも油のにおいが体質的に合わないなどという理由ですぐ
に辞めることがなくなるし,逆にいえば,そういう人は見学すれば就業を
希望しないということで,外部会社と話し合って,実施されるようになっ
たものであり,その目的からして,就業予定場所以外の場所を見学させて
も何の意味もなく,時間も無駄であるため,見学をする範囲は,就業予定
場所に限定されており,その際,部屋に通してパンフレットの配布や,業
務の説明等を行う必要性もないから,実際にも行っていなかった。さらに,
被告は,工場見学に訪れた外部会社の社員につき,1人も受入れを拒んだ
ことはない。そして,工場見学後の就業の意志の確認は,Sの社員(当
時)であったFがしており,Eが就業可能期間等を質問したことはない。
したがって,Eにおいて,見学者の採否を判断したことはないし,Sの
側で,被告に対し採否の判断を委ねたこともない。
ウ本件出向協定から本件派遣契約に至る経緯
そもそも,被告は,平成14年のリストラの教訓として,外部社員活用
の方針をとり,これに則って,主力工場である岐阜製作所において平成1
5年ころから請負化を進め,姫路工場についても同じように請負化を導入
する方針をとり,Sと協議をしたが,姫路工場の多品種少量生産の特色か
らして,即時の請負化の導入は難しいとの指摘がなされたため,まずは技
能習得のために出向社員として受入を始め(本件出向協定),平成16年
11月からは常駐管理者としてFが配置されたこと,一定の技能習得が進
んだことから,平成17年10月から,当初からの構想であった請負化に
着手したが(本件業務委託契約),現実には,姫路工場の社員からの段取
り指示などが生じる場面が見られる状況にあり,また,折からの偽装派遣
問題の浮上に伴い,労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に
関する基準(労働省告示第37号)の実際的運用に関する当局のハードル
が引き上げられていった中では,請負体制を継続するのは困難であるとの
意向がSから示されため,平成18年8月20日,自主的に派遣契約に切
り替えることとした(本件派遣契約)。
そして,被告は,原告らを含む社外の人材に対し自ら給与を支払ったこ
とは一度もなく,それは各請負会社・派遣会社から支払われており,派遣
料金についても,1時間あたり1700円と定め,それに関して契約され
ている割増率はこれを賃金とみた場合の法定割増率そのものとなっており,
その意味で,何ら被告のSに対する賃金決定に関する支配を示すものでは
ない。
また,原告らについては,被告において,兵庫労働局の強い指導(本件
是正指導)を受けた結果,やむなく期間を定めて直接雇用した経過からす
れば,被告において,原告らが自社の社員であるとか労働契約の他方当事
者であるとの認識を有していたとの事情は一切なく,原告Aら4名も,S
との間で,自署により雇用契約を締結し,同社から被告に派遣されるに当
たり,「上記の条件で雇用・派遣されることに同意いたします」との不動
文字のもとに自署していることが明らかであること,原告Aら4名は,本
件前にも派遣社員として働いた経験を有していること等からすれば,同人
らは,自らの雇用契約の相手方がSであることを十分に理解していたと考
える以外にない。
エ出向労働関係について
そもそも,出向における二重労働関係とは,出向労働者と出向元及び出
向先との間に,それぞれ完全な労働契約関係が存在する関係を意味するも
のではなく,出向労働者はもともと出向元の使用者と労働契約を結んだの
であり,基本的には,出向によりその労働契約関係の一部が出向先に移転
すると考えられている。
したがって,労働者及び出向先は,それぞれが有する権利を主張し,相
手方が負う義務の履行を請求することができるが,出向先は,労働者の地
位を失わせる解雇や懲戒解雇を行うことはできず,出向労働者も,出向先
の労働者たる地位まで有するものではない。
したがって,そもそも出向労働関係にあることを理由として原告A及び
同Dが,被告に対し,労働者たる地位の確認を求める主張は,独自の見解
にすぎず,証拠上,明らかに請負・派遣という後の契約形態を経ているこ
と,それについて原告A及び同Dが一定の説明をSから受けていることな
どの事実関係を無視した議論にすぎず,失当というほかはない。
オまとめ
したがって,原告Aら4名・被告間に,黙示の労働契約が成立すると解
する余地はない。
(2)解雇(更新拒絶)の無効(争点2)
(原告Aら4名の主張)
ア労働契約法16条の(類推)適用
前記のとおり,上記原告Aら4名・被告間には,期間の定めのない黙示
の労働契約の成立が認められるから,平成21年2月の派遣切りは,労働
契約法16条に違反するものであって,無効である。
また,原告Aら4名・被告間に成立する黙示の労働契約が,仮に有期契
約にすぎないと解した場合でも,①原告Aら4名は,姫路工場で行われて
いる軸受(ベアリング)の製造業務という基幹業務に,正社員と渾然一体
となって従事していたこと,②契約の更新回数は多いもので6回であり,
原告Aら4名以外の者も含め,社外労働者の中で「雇止め」された者は誰
一人おらず,更新が当然の前提となっていたこと,③派遣切り直前の契約
期間も,ほとんどの者が2年,短い者でも1年4か月であり,有期契約と
しては異例の長期であり,かかる期間自体,長期雇用が前提とされていた
と解されること,④更新に際しては,期間雇用契約書や派遣労働者雇入通
知書がSから一方的に郵送されてくるだけで,更新手続も極めて形式的な
もので,更新が当然の前提となっていたこと,それ故,原告Aら4名は,
当然に契約は更新されると期待していたし,かかる期待は法的保護に値す
るものといえることからすれば,上記雇止めについては,当然に解雇法理
(労働契約法16条)が類推適用されることとなる。
さらに,仮に原告Aら4名・被告間に黙示の労働契約の成立が認められ
ないとすると,その雇用契約(直接契約)は,平成21年4月23日に成
立したものと考えるほかないことになるところ,同契約は,期間を同月2
4日から同年9月30日までとする有期契約であり,原告Aら4名は,最
初の期間満了時に,一度も契約を更新されることなく雇止めされたことに
なるが,①本件是正指導によって成立した上記直接契約は,本来,期間の
定めのない契約として実現されなければならなかったのであり,その雇止
めは法的には解雇と評価されなければならないし(従って,当然に労働契
約法16条が適用される。),②仮に有期契約によって直接契約を実現す
ること自体は許されるとしても,「雇用の安定」を図る措置を講じるよう
にとの本件是正指導からすれば,実質的には「1か月」だけの雇用を確保
するに過ぎない直接契約では「雇用の安定」を図る措置とは到底評価でき
ないのであって,その雇止めには信義則の観点から労働契約法16条が類
推適用されなければならない。
イ整理解雇4要件
そして,整理解雇については,①整理解雇を行う経営上の必要性がある
こと,②希望退職者の募集等,整理解雇回避措置を尽くしていること,③
人選基準が合理性を有していること,④労働組合ないし労働者代表と十分
な協議を尽くしたこと,の4要件を満たす必要があるところ,①被告は,
平成21年3月期の決算が2億円の赤字見込みとなったとして,派遣切り
を行っておきながら,実際の決算では4億4500万円の黒字を確保して
おり,平成22年3月期には単年度で一定の赤字を出したようではあるが,
派遣労働者を受け入れるようになって以降,この5年間で内部留保を約1
55億円増やし,約500億円もの内部留保を保有していること,②被告
には,人員整理(派遣切り)を行うに際し,姫路工場,岐阜製作所及び鎌
倉工場を含めた全正社員を対象に希望退職者の募集を行うべき義務があり,
仮に正社員の雇用を優先し,原告ら9名の契約社員の人員削減はやむを得
ないと考えるにしても,希望退職者の募集だけではなく,岐阜製作所への
転勤も整理解雇回避措置として検討すべき義務が存在したことと相俟って,
岐阜製作所も含めた全社の契約社員を対象に希望退職者の募集を行うべき
義務があったにもかかわらず,これらを実施していないこと,③被告が,
期間雇用社員であったという理由で原告らを正社員に先立ち人員整理の対
象とする基準には合理性を認めることはできず,仮に正社員の雇用の優先
確保は仕方がないとの考え方を採用するにしても,岐阜製作所を含めた全
契約社員につき,誰を切って,誰を残すのかについて何らかの人選基準を
設定した形跡もないこと,④原告ら派遣労働者との十分な協議も何ら尽く
していないことに加え,被告が原告らを雇い止めするに際し,再就職のあ
っせんや退職金の支給,上積みなどを検討した節は一切なく,また,期間
満了慰労金7万5000円のみの支給をもって一定の配慮などと評価する
ことはおよそ不可能であり,格段の配慮をしていないことからすれば,本
件では,上記整理解雇4要件をどれも満たしていない。
ウまとめ
したがって,本件における解雇(雇止め)は,いずれも無効である。
(被告の主張)
ア被告は,平成21年2月3日,Sに対しやむなく本件派遣契約を解除す
る旨を通知して以来,同年3月23日には本件是正指導を受け,その対応
に苦慮していた。そして,同指導への対応を検討し,兵庫労働局との相談
を進める中で,同労働局からは,結局,派遣労働者全員の直接雇用をする
以外には是正報告として受理しないとの見解が示され,その中で可能な方
法を模索した結果が,本件期間雇用契約だったのである。
そして,本件期間雇用契約は,平成21年4月23日を初回として,一
度も更新をされておらず,また,仮に原告Aら4名・被告間に黙示の労働
契約が成立しているとした場合,原告Aら4名の個別の更新回数のみをと
ってみても,このうち原告B及び同Cについては更新をしたことがなく,
原告A及び同Dについては5回ないし6回の更新をしたものではあるが,
同更新手続は,いずれもSによってきちんとなされていたことが明らかで,
また採用に際しての言動についても,長期継続雇用に関するものがあった
とみるべき証拠はない上,正社員への登用についても,これに関する原告
A及び同Dの契約書の記載は,被告ではなくSの正社員を指していること
が明らかで,しかも無限定・無条件に正社員化が認められるものでもない。
したがって,本件においては,解雇法理の適用はないというべきである。
イまた,原告Aら4名の個別の更新回数については上述のとおりであり,
採用及び契約手続はSにおいて個別に契約書によって行っていたこと,そ
れに原告Aら4名がその都度署名をしていることなどに加え,もともと本
件期間雇用契約は,本件是正指導を契機とするものであって,業務上の必
要性に基づくものではなく,むしろ人員の余剰を生じたものであり,その
ために姫路工場においては,一時帰休の日数を増日して対応したものであ
ったこと,これまで,被告においては期間雇用を行ったことがなく,期間
雇用社員としては原告らのほかに例がないこと,被告側からは,平成21
年10月1日以降の契約更新につき,契約書の文言上,その判断は被告に
留保されている上に,団体交渉の場において,現実的には現下の経営環境,
姫路工場の状況に照らして,大幅な景気の回復がない限り困難である旨を
伝えてきたこと等からすれば,原告Aら4名において,本件期間雇用契約
が同年8月21日以降も継続される(更新される)との期待が合理的に生
じているものとは解されず,同年10月1日以降についての合理的期待の
有無についても同様に消極に解するほかなく,本件に関し,雇止めに解雇
法理の類推適用をするのは前提を欠いているというべきである。
(3)賃金請求権の有無(争点3)
(原告Aら4名の主張)
原告Aら4名に対する賃金は,形式的にはSから,毎月20日締めの翌月
5日払いとして支払われていたところ,本件における解雇(更新拒絶)は無
効であって,原告Aら4名・被告間の労働契約関係は現在も継続しており,
原告Aら4名は,被告に対し,労働契約上の地位を有している以上,少なく
ともSから支給を受けていた解雇直前3か月間の給与の平均額につき,賃金
請求権を有している。
(被告の主張)
否認する。本件の雇止めは有効であるから,賃金請求権は発生していない。
(4)被告の不法行為(争点4)
(原告らの主張)
ア派遣元を介在させた違法状態下で就労させ続けた行為の違法性
雇用においては,直接雇用が大原則であり,三者間労働関係は,法が許
容する場合に,法の規制を遵守する限りにおいて認められるに過ぎないと
ころ,被告は,当初は偽装出向及び偽装請負という違法状態のもとで,偽
装請負を労働者派遣に切り替えてからも,この時点で既に原告ら全員との
関係で派遣可能期間を徒過していたのであるから,労働者派遣法35条の
2に違反する状態のもとで原告らを被告工場で就労させてきたように,原
告らは,姫路工場での就労を開始した当初から平成21年3月末日に派遣
切りされるまでの全期間,直接雇用の原則に反する違法状態下での就労を
余儀なくされてきたのである。
そのような就労を強いてきたことにつき,被告に故意,少なくとも過失
があることは明白であるが,不安定かつ違法な状態下で就労させられるこ
と自体,労働者に精神的打撃を与えるものであるというだけでなく,この
間,原告らは,被告が直接雇用の原則を遵守して原告らを雇用していれば
当然原告らに支払われていた労働の対価の一部を,実質Sにピンはねされ
続けてきたのであって,そのこと自体が,原告らに対し,重大な精神的打
撃を被らせるものであることも明白である。
イ派遣切りしたことの違法性
原告ら・被告間においては,黙示の労働契約が成立しているから,平成
21年2月に予告された派遣切りの実質は解雇(雇止め)ということにな
るところ,権利濫用にあたる解雇は,使用者に故意・過失のある限り,労
働者の雇用を保持する利益や名誉を侵害する不法行為になるのであるから,
原告らには,派遣切りされたことにつき,相応の慰謝料が認められるべき
である。
ウ直接雇用下で手当の支給を打ち切ったことの違法性
被告は,自ら全額を負担して,原告Gを除く原告らに対し,技能手当等
の諸手当を支給していたところ,直接契約(本件期間雇用契約)において,
原告らが,更新を前提としていないだけでなく,賃金も派遣時に比して大
幅に減額されることから異議を留めたにもかかわらず,これに耳を傾ける
ことなく,諸手当の支給を全面的に打ち切った。
しかし,本来,直接雇用下での賃金は,当然に直接契約切替直前の賃金
を維持するものでなければならず,そもそも合理的な理由もないのに賃金
をカットすることなど許されないところ,原告らは,直接契約締結後も従
前と同じ業務に従事し,しかも手当は従前からSではなく被告が全額を負
担しており,これをカットしなければならない理由は何もないこと等から
すれば,被告が,合理的な理由もなく諸手当をカットして直接契約を締結
したことは,少なくとも従前と同じ条件で直接契約が締結されると期待し
ていた原告らの合理的な期待を裏切るもので,違法である。
エ直接雇用を更新しなかったことの違法性
原告らが,兵庫労働局に対して行った,違法派遣であることを指摘して
直接雇用を求める旨の申告は,まさに公益通報者保護法2条にいう「公益
通報」であるところ,被告は,同労働局から,「雇用の安定」を図る措置
を講じるようにとの本件是正指導を受け,その方策として直接雇用を採用
しておきながら,一度も更新することなく,最初の期間満了時に雇止めを
したものであり,本件是正指導に反するものであるばかりか,原告らとの
関係では,明らかに不利益取扱いであって,公益通報者保護法にも違反す
るものとして違法である。
また,被告が本件期間雇用契約を一度も更新することなく,実質的には
僅か1か月雇用を確保しただけで原告らを雇止めしたのは,被告が労働組
合を嫌悪しているからとしか考えられないところ,被告の有期契約への固
執は,その意味で,不当労働行為的色彩を帯びているのであり,そのこと
自体,労働組合法7条1号,3号の不当労働行為を構成する。
オまとめ
上記各違法事由は,全体として1つの不法行為を構成するところ,これ
らの事情に鑑みたとき,被告の解雇(更新拒絶)及び本件是正指導後の不
誠実な対応によって原告らが被った甚大な精神的苦痛を金銭に見積もれば,
各自金300万円を下らない。
(被告の主張)
黙示の労働契約の成立を前提とした主張については,そもそも,本件にお
いては,同契約は成立しておらず,不法行為を構成するとはいえない。
また,原告らの姫路工場における就労は,原告ら・S間の雇用契約をもと
にして,被告・S間の本件出向協定,本件業務委託契約ないし本件派遣契約
によって行われたものであり,それ自体が不法行為を構成するものではなく,
原告ら各人の処遇は,原告ら・S間で契約をして定められているものであっ
て,それらの事情が被告との関係で不法行為を構成すると解すべき理由はな
く,また,雇止めが違法であると解することもできず,これについて不法行
為が成立すると解する理由はない上に,雇止めの理由は,急激な減産からの
回復がされていない中で本件是正指導によりやむなく行った直接雇用を期間
満了によって終了したものにすぎず,労働組合に対する不当労働行為である
などの理由ではない。
したがって,原告ら主張の不法行為が成立しないことは明らかである。
第3争点に対する判断
1本案前の答弁について
被告は,答弁書において,請求の趣旨第1項に関し,訴え却下を求めている
が,これは,同書面陳述当時,いまだ本件期間雇用契約が存続していたことに
よるものであるから,同契約終了後である現時点(口頭弁論終結時)において
は,理由がない。
2認定事実
前記前提事実に加え,証拠(各項末尾掲記)及び弁論の全趣旨によれば,以
下の事実を認めることができる。
(1)被告は,平成15年12月当時,姫路工場につき,ベアリング製造の請負
化を目指していたが,Sとの協議の結果,同社には同製造に関する技能,経
験がなく,いきなり請負化しても単独での運用は難しいため,まずは被告が
Sから出向の形態で同社の社員を受け入れ,出向者が技能を習得することが
できたと判断された時点において,請負形態での運用に移行することとした。
そこで,被告は,同月1日,Sとの間で,同社からの出向社員を被告の事
業に協力させることを目的として,「出向社員の取り扱いに関する協定書」
(本件出向協定)を締結し,同社からの社員の受入れを開始した。
なお,被告では,その当時,姫路工場において,工場見学は実施していな
かったが,当初受け入れた出向社員4名のうち3名が3か月以内に辞めたと
いう事態を受け,Sと話し合った結果,就業前に工場見学をしてもらい,職
場環境や業務内容を本人に見てもらうことで,姫路工場で使用する油のにお
いが体質的に合わないとか,液体が肌に合わないなどという理由ですぐに辞
めるといったトラブルを避けるため,工場見学を開始することとした。
(甲35,乙15ないし乙17,証人E4(尋問調書の丁数を示すが,当該
箇所に限定する趣旨ではない。以下同じ。)・5・29・31,同H2・1
1)
(2)ア原告Aは,平成16年4月19日,Sとの間で,契約期間につき同日か
ら同年10月18日まで,配属事業所につき姫路工場,従事する業務につ
きベアリング加工・組立・検査,賃金につき基本賃金:時間給1200円
(その他,通勤手当や所定時間外,休日及び深夜の割増あり。)で毎月2
0日締切・翌月5日支払,特記事項として「会社が必要とする優秀な技術
又は経験を有する者は,期間満了後正社員として採用する事もある。」等
の条件で,雇用契約を締結し,姫路工場での就労を開始し,同契約は半年
ごとに更新された。
なお,原告Aは,同年4月15日,Sの担当者とともに,姫路工場を訪
れた。そして,原告Aは,被告社員のIから,業務内容に関する説明を受
けたほか,Iとともに,3人で工場見学をし,その後で,Iからいつから
出勤できるかを聞かれたので,いつからでも答えたところ,同月19日か
ら出勤することとなり,同出勤の際,前記契約の契約書を作成した。
イまた,原告Dは,平成17年3月18日,Sとの間で,契約期間につき
同月22日から同年4月5日まで,基本賃金につき時間給840円とする
ほかは,主に原告Aと同条件で雇用契約を締結し,姫路工場での就労を開
始し,その後は,基本賃金につき時間給1200円として,半年ごとに更
新された。
なお,原告Dは,平成17年2月ころにFの面接を受け,その後,同人
から,合格したので姫路工場の見学をしてもらいたい旨を言われ,同年3
月17日,Fとともに,姫路工場に赴き,事務所にて,Eからベアリング
の製造工程の説明を受け,今までこういう仕事の経験があるかといったこ
とを聞かれた後,3人で工場見学をした。同見学後,事務所に戻ったとこ
ろ,Fは,Eに対し,原告Dはやる気があるのでお願いしたいこと,給料
日の締めが毎月20日だから,翌21日以降から就労を開始するのがよい
のではないかと言ったところ,Eは,同月22日から来てもらおうかなど
と言った。そして,原告Dは,Fから,契約書を渡され,署名押印して持
ってくるように言われたので,署名押印し,同月22日に初出勤した際,
これをFに渡した。
ウさらに,原告J,同K及び同Lは,別紙2の「契約締結月」欄記載の時
期に,Sとの間で雇用契約を締結し,姫路工場での就労を開始し,同契約
は基本的に半年ごとに更新された。
(甲A1の1ないし4,甲A7,甲A8,甲F1の1ないし4,甲F3,甲
F4,甲G1の1ないし4,甲H1の1ないし3,甲I1の1・2,乙15,
乙17,証人E10・14・23・24,原告A本人1・2・6・21,同
D本人1ないし3・11)
(3)その後,被告及びSは,同社の社員の技能習得や,常駐管理者等の体制の
点から,請負に切り替えても問題ないであろうと考え,平成17年10月1
日,期間につき同日から平成18年3月31日まで(ただし,原則として6
か月ごとに更新される。),契約料金につき1人1時間当たり1700円と
して,本件業務委託契約を締結した。
しかし,Sと同社の社員との雇用契約は,何ら改められることはなく,上
記業務委託は,依然として,S社員の技能や経験が不足しており,その実態
は,専ら被告正社員がSの社員に対する段取り等の指揮監督を行い,両者が
混在して業務に従事しており,本件出向協定のときと格段の変化はなく,さ
らに,これらの一部が指揮命令に当たるとして業務改善命令を受けるなど,
請負というには程遠いものであった。
そこで,被告は,業務委託から労働者派遣に切り替えたいというSからの
強い要望を受け,平成18年8月20日,同社との間で,契約料金につき1
人1時間当たり1700円,契約期間につき同月21日から平成19年8月
20日までとして,本件派遣契約を締結した。また,被告は,Sとの間で,
同社の個々の社員につき,派遣期間を同日までとして,労働者派遣個別契約
を締結した。
(甲36,甲37の1・2・7・8・12・17・18・21・26・2
8・29・33・34,甲52,乙15,乙16,証人E3・25ないし2
7・33,同H3ないし6・23ないし25)
(4)原告Aは,平成18年8月21日,Sとの間で,採用区分につき派遣社
員,契約期間につき同日から平成19年8月20日まで,就業場所につき
姫路工場,従事する業務につきベアリングの製造,賃金につき基本賃金:
時給1200円(その他,通勤,年功及びセッターの各種手当,並びに所
定時間外,休日及び深夜の割増あり。)で毎月20日締切・翌月5日支払
等の条件で,雇用契約を締結した。
また,原告Dも,平成18年8月21日,Sとの間で,手当の種類及び
額が異なるほかは原告Aと同条件で,派遣社員として雇用契約を締結した。
さらに,原告J,同K及び同Lも,同日,Sとの間で,原告Aや同Dと
類似の条件で(基本賃金:時給1200円の点は同じである。),派遣社
員として雇用契約を締結した。
(甲A1の5,甲F1の5,甲G1の5,甲H1の4,甲I1の3)
(5)被告は,平成19年1月26日,全日本金属情報機器労働組合日本トム
ソン支部(以下「JMIU支部」という。)に対し,派遣受入期間につき,
1年から3年に延長し,平成21年8月20日までと変更することにつき
意見を求めたところ,JMIU支部は,平成19年2月21日,被告に対
し,本件派遣契約は,平成18年8月21日より派遣受入開始となってい
るものの,実際には,平成15年12月から,「請負」という形式のもと,
実態は正社員が業務指示を行う等の偽装請負が続けられてきており,この
間,労働者は,実態として派遣として従事していたのであるから,組合と
しては,派遣期間延長ではなく,直接雇用すべきものと考える旨を回答し
た。
これに対し,被告は,平成19年3月8日のJMIU支部との団体交渉
において,本件を団体交渉事項とは考えていない旨を改めて示すとともに,
派遣延長の理由として,外部社員の活用の必要性を挙げた。
そして,被告は,派遣受入期間を,平成21年8月20日までと変更し,
原告A,同D,同J,同K及び同Lにかかる派遣契約についても,平成1
9年8月21日以降のものは,その終期が平成21年8月20日までとな
った。
(甲12,甲13,甲17,甲37の3ないし6・9ないし11・13ない
し16・19・20・22ないし25・27・30ないし32・35ないし
40,甲38の1ないし3・6ないし8・11ないし13・16・17・2
0・21・24・25・28ないし31,甲52,甲A1の6・7,甲A2,
甲F1の6・7,甲G1の6・7,甲H1の5・6,甲I1の4・5,証人
M2・3)
(6)ア原告Bは,平成19年9月26日,Sとの間で,派遣労働者として,契
約期間につき同日から平成21年8月20日まで,就業場所につき姫路工
場,従事する業務につきベアリングの加工,賃金につき基本賃金:時給1
200円(所定時間外,休日及び深夜の割増あり。また,遅くとも平成2
0年9月21日以降は,交通費及び技能手当の支給あり。但し,試用期間
(2週間)中の賃金等は減額。)等の条件で,雇用契約を締結した。
なお,原告Bは,平成19年8月ころ,Sの社員のNから,被告で工場
見学をしてもらいたい旨を言われ,同年9月21日,Fとともに姫路工場
に行った。そして,原告Bは,Eから仕事に関する説明を受けた後,3人
で姫路工場の見学を行い,Eから,ここでやってもらおうと思うとか,ラ
イン作業ではないので快適に仕事ができるであろうなどと言われた。その
後,原告Bは,Fから,2,3日後に決められても困るので,今すぐ決め
てほしい旨を言われたので,姫路工場で就労する旨を即答したところ,F
は,Eのもとへ向かった。さらに,原告Bは,Fとともに,Eのところに
行き,そこで,Eから,いつころから来てもらえるかという趣旨のことを
言われたので,同月26日から行ける旨を回答した。そして,原告Bは,
同日,前記雇用契約の契約書に署名押印した。
イまた,原告Cは,平成19年8月21日,Sとの間で,派遣労働者とし
て,契約期間につき同日から平成21年8月20日まで,就業場所につき
姫路工場,従事する業務につきベアリングの加工,賃金につき基本賃金:
時給1200円(所定時間外,休日及び深夜の割増あり。また,遅くとも
平成20年8月21日以降は,技能手当の支給あり。但し,試用期間(2
週間)中の賃金等は減額。)等の条件で,雇用契約を締結した。
なお,原告Cは,上記契約に先立ち,Fから口頭で面接を受け,その際,
姫路工場長の面接を受ける必要がある旨を言われた。そこで,原告Cは,
平成19年8月7日,Fらとともに姫路工場に赴き,Eの面接を受けた。
その際,Eは,原告Cの履歴書のコピーを見ながら,同人に対し,以前の
派遣契約の際の仕事内容,同種の仕事内容の経験の有無とか,交替勤務で
あるが大丈夫であるか,といった質問をし,また,研磨工場の旋盤のとこ
ろで働いてもらう旨を述べた。そして,Eから,仕事の工程や内容の説明
を受けた後,仮に来ることになった場合はすぐに来ることができるかを聞
かれたので,すぐに行ける旨を答えた。その後,原告Cは,就業初日(同
月21日)までに,F及びEとともに,姫路工場の見学をし,おおまかな
仕事内容の説明を受け,就業初日の朝に,前記雇用契約の契約書に署名押
印した。
ウさらに,原告O及び同Gは,別紙2の「契約締結月」欄の時期に,Sと
の間で,契約期間につき平成21年8月20日まで,派遣労働者として,
従事する業務につきベアリングの加工,賃金につき基本賃金:時給120
0円(所定時間外,休日及び深夜の割増あり。また,原告Oについては,
交通費及び遅くとも平成20年5月21日以降にセッター手当の支給あり。
但し,試用期間(2週間)中の賃金等は減額。)等の条件で,雇用契約を
締結した。
(甲B1,甲C1の1・2,甲C3,甲C4,甲D1の1・2,甲D3,甲
D4,甲E1の1・2,乙17,原告B本人2ないし7・9・14,原告C
本人2ないし5・9・10)
(7)その後,被告は,Sに対し,平成20年11月ころから,姫路工場での生
産量の減少を理由に,本件派遣契約の終了を打診していたが,平成21年2
月3日,同年3月31日付けでの同社の派遣労働者全員の派遣契約解除を通
知した。
これを受け,S神戸支店長P及びNは,同年2月3日,原告らに対し,原
告ら・S間の雇用契約につき,解雇予告通知を行い,「…貴殿と弊社におけ
る雇用契約を終了せざるを得ない状況との判断に至りました。付きましては
労働基準法(法二〇条)に則り,平成二十一年三月三十一日付で解雇する旨,
取り急ぎ書面にて通知します。」等と記載された「解雇予告通知書」を渡し,
これに署名するよう要求したが,原告らは,最終的に上記署名を拒否した。
(甲14,乙4,証人H6・7,同Q1)
(8)原告らは,平成21年2月5日までに,JMIUに加入するとともに,原
告ら及びJMIU支部は,同月16日,兵庫労働局に対し,本件業務委託契
約は偽装請負であり,この期間も通算すると,派遣期間は5年以上となり,
製造業における派遣の制限期間3年を大きく上回っているとして,労働者派
遣法48条1項,49条の2第1項に基づき,被告が同法40条の4に基づ
き原告らに対し雇用契約の申込みをしなければならない旨を,被告に対して
指導,助言,勧告するよう求めた。
兵庫労働局は,同年3月23日,被告及びSに対し,平成15年12月1
日から平成18年8月20日までの間に連続して出向及び業務請負として行
われていた業務の実態は,出向目的がなく,適正な請負事業とも判断されず,
労働者派遣に該当するから,Sが平成18年8月21日から連続して行って
いる労働者派遣は,既に派遣可能期間の制限を超えており,職業安定法44
条,労働者派遣法35条の2及び同法40条の2第1項に違反すると認め,
両社に対し,当該業務につき,労働者の雇用の安定を図るための措置を講ず
ることを前提に,直ちに労働者派遣を中止するよう是正指導をした。
これを受け,被告は,平成21年3月30日,本件派遣契約の解除通知を
撤回し,改めて同年4月23日付けに変更し,Sも,原告らの解雇を,同日
付けに変更した。
(甲15,甲17ないし甲23,甲39,甲52,甲A3,乙2,証人M4
ないし6)
(9)被告人事総務部第1課課長のQは,平成21年4月2日,同部第2課課長
のR及びEとともに,兵庫労働局を訪れ,被告の経営環境等を説明したが,
同労働局からは,派遣労働者につき,被告において直接雇用することも考え
るよう促された。
Q,E及び被告訴訟代理人の石橋達成(以下「石橋」という。)は,同月
7日,兵庫労働局を訪れ,上記直接雇用の件について,派遣労働者の数人に
ついて,時給1200円により,平成21年9月末までの有期といった条件
で雇用することを考えている旨を伝え,また,石橋は,同月以降の処遇につ
いて,期間満了により終了するが業務量等により更新することがあるといっ
た一般的な契約文言で対処することを考えているが,実際には被告の経営環
境が大きく好転しない限り悲観的であり,同月以降の更新は難しい旨を述べ
た。これに対し,同労働局からは,派遣労働者の全員につき直接雇用するこ
とを検討するよう依頼された。
Q,R及びEは,同年4月14日,再度,兵庫労働局を訪れ,派遣労働者
全員を直接雇用する方針を伝え,説明資料として,同雇用契約の募集・応募
用紙を提出したところ,同労働局からは,是正報告をこの方針で受理する旨
をいわれた。なお,上記募集・応募用紙には,契約期間満了後の更新に関す
る文言は,記載されていなかった。
(甲25,乙4,証人Q2ないし5・11ないし15)
(10)被告は,平成21年4月14日,JMIU支部に対し,原告らにつき同月
24日付けで,契約期間につき同日から同年9月30日まで,賃金につき時
間給1200円(ほかに,時間外及び休日出勤の手当並びに交通費の支給あ
り。)で毎月末日締切・翌月15日支払,契約期間満了時に慰労金として7
万5000円を支給する等の条件で期間雇用社員として雇用したいと考えて
いるとして,前記募集・応募用紙を渡し,原告らにつき,同月16日に同雇
用契約の募集説明会を行い,同月20日に同契約手続を行う予定である旨を
伝えるとともに,同年上半期から下半期にかけて業績が良くならない限り,
契約更新は難しく,現在の受注状況が続くのであれば,契約更新は難しい旨
を述べた。
これに対し,JMIU支部は,被告に対し,同年9月末までに限定した雇
用では雇用の安定にならず認めることはできないから,引き続き正社員化を
求める等として,同年4月16日に本社交渉を開催することを申し入れた。
これに対し,被告は,同月20日に前記の説明会及び契約手続を一括して
行うこととしたが,正社員化の要求については,同月16日の本社交渉にお
いて,これを拒否した。
(甲25,甲26,甲44,甲52,甲A5,乙4,証人M7ないし9,証
人Q5・11ないし15)
(11)JMIU支部の組合員らは,平成21年4月15日,兵庫労働局を訪れ,
同労働局に対し,被告の雇用計画案は,直接雇用ではあるものの,同年9月
30日までの有期のものであり,これでは雇用の安定につながらないので,
被告に対する指導をしてほしい旨を要請した。
また,JMIU支部の組合員らは,同年4月20日にも,兵庫労働局を訪
れ,同労働局に対し,「雇用の安定」とは解雇予告付きではなく継続した雇
用が保障されること及び派遣の時の労働条件を下回らないことが最低限必要
であるところ,被告の上記提案はこれを満たさないこと,被告及びSがいま
だ「是正計画書」を同労働局に提出していないため,同労働局が,両社に対
して,同計画書の是非を判断するまで雇用契約を留保することとし,雇用の
安定を講ずるという本件是正指導に沿って,指導するよう要請する旨の要請
書を提出したところ,同労働局からは,是正報告書を被告からファックスで
取り寄せ,労働局として判断したものを午後2時までにJMIU支部に報告
する旨の回答を得た。そこで,JMIU支部は,同日,被告に対し,是正計
画書が提出されない場合には,午後2時からの前記雇用契約に関する説明会
の実施の延期をお願いする場合があることを伝え,同説明会の延期を申し入
れた。
もっとも,被告は,同日,上記説明会を開催し,その際,Fとの間で,上
記(10)認定の条件で,期間雇用契約を締結した。なお,同契約書には,「本
契約は,本契約に定める契約期間の満了により終了する。ただし,職場の状
況,本人の能力等を勘案して契約更新をすることがある。」との文言が記載
されていた。
また,被告は,同日,兵庫労働局の求めに従い,前記期間雇用契約に関す
る募集要項,労働契約書及び誓約保証書をファックスで送信した。
(甲45ないし甲48,甲52,乙4,乙12,証人M8・9・11ないし
13・29・30,証人Q6ないし8)
(12)被告は,平成21年4月21日,兵庫労働局に対し,是正報告書を提出し,
受理された。
ところで,JMIU支部は,同日前後,「本契約は,本契約に定める契約
期間の満了により終了する。ただし,職場の状況,本人の能力等を勘案して
契約更新をすることがある。」との文言が挿入された契約書のサンプルを入
手したのを受けて,「雇用の安定」を実現するためには正社員化を実現する
ほかないし,百歩譲って有期契約を認めるとしても,Sとの契約同様,更新
を前提とすることが大前提であるが,他方,就労を実現し,生活のための資
金を確保できる最大の機会でもあることから,期間が限定されていること,
更新が原則となっていないこと,賃金もダウンすることに異議を留めて契約
書を提出し,就労を開始することで意志統一をするとともに,被告に対し,
同契約に関する募集説明会及び契約手続の実施を要請した。
なお,被告は,このころ,JMIU支部に対し,同年9月30日以降の契
約更新の可能性について質問をされた際にも,経営環境が大きく好転しない
限りは,更新は難しい旨を回答した。
(甲27,甲49,甲52,乙4,証人M14・15・33・34,同Q
8・9・16・18・19)
(13)被告は,平成21年4月23日,姫路工場で入社説明会(期間雇用契約の
募集説明会)を実施した。この席で,原告Aは,参加した原告らを代表して,
Qに対し,賃金は派遣時よりダウンするし,契約期間も同年9月末まででは
労働局のいう雇用の安定には程遠いが,生活を維持するための収入を確保す
るため,やむなく異議を留めて契約したいと述べた。これに対し,Qは,異
議を留めた契約書の提出を拒否することなく,受領した。
また,原告らは,同年4月24日,原告ら訴訟代理人の吉田竜一を通じて,
被告に対し,被告の提案は,直接雇用するものであるとはいえ,従前,認め
られていた諸手当を全く認めない点で賃金ダウンを招来するものであるとい
うだけでなく,雇用期間を同年9月30日までに限定し,不更新を原則とし
ている点で,実質的に期間満了時に派遣切りを行うものと異なるところがな
く,雇用の安定を図るものとは言い難く,納得できないとした上で,生活を
維持するための収入を確保するため,やむなく直接雇用の募集に応募し,契
約書を提出したが,同提出後,契約書に記載された賃金,契約期間,更新方
法については異議を留めたものであり,あくまで正社員化を求めている旨を
書面で通知した。
(甲33の1・2,甲52,乙3の1ないし9)
(14)被告は,平成21年3月10日,JMIU支部に対し,姫路工場につき,
同年4月から6月まで毎月2日間の一時帰休を実施することを説明し協力を
求めていたが,さらに本件期間雇用契約締結後,同年5月は4日間,6月は
5日間,7月は5日間,8月は2日間にわたり,一時帰休を行った。
また,被告は,本件期間雇用契約締結後も,JMIU支部に対し,団体交
渉等の席において,経営環境等を勘案すると,同年9月以降の同契約の更新
は難しい旨を,重ねて説明していたが,同年8月25日の団体交渉において,
経営環境を説明の上,更新しない旨を正式に伝えた。
(乙4,乙15,証人E17,同Q9・10)
(15)被告(E)は,平成21年8月26日,Iを伴い,原告らに対し,本件期
間雇用契約の期間満了による終了を通知するとともに,「期間雇用社員契約
期間満了通知書」を渡そうとしたが,同人らが受け取らなかったため,これ
を郵送した。
そして,本件期間雇用契約は,同年9月30日の経過をもって,終了した。
(乙4,乙15)
3争点1(原告Aら4名・被告間の労働契約の成否)について
(1)判断基準
ア原告Aら4名は,松下PDP事件判決につき,同判決が,発注元が請負
業者による採用に関与していたとは認められないことを,発注元・労働者
間の労働契約が成立したとは認められない根拠の一つとしていることから,
「採用への関与」が認められた場合には,当初から,黙示の労働契約の成
立が認定され得ることを示唆したものであるなどと主張する。
しかし,松下PDP事件判決は,その判文からしても,事実関係等に現
れた全事情を総合的に判断した上で,発注元・労働者間の雇用契約関係が
黙示的に成立していたものと評価することはできないと判断したものであ
ることは明らかであって,同事実関係等に現れた事情のうち特に重要なも
のとして,誰が労働者の給与等の額を決定していたかとか,誰が労働者の
配置を含む具体的な就業態様を決定し得る地位にあったかといった事情と
ともに,並列的に,発注元が請負業者による労働者の採用に関与していた
かを挙げているにすぎず,仮に,全事情のうち,発注元による上記採用へ
の関与がとみに大きく,その結果として,敢えて他の事情を判断するまで
もなく,発注元・労働者間に黙示の労働契約が成立したものと評価できる
場合があり得ることは格別,「採用への関与」がありさえすれば同契約が
成立するといった規範を示したものとは到底解されない。
イまた,原告Aら4名は,本件出向協定が,Sが「業として」行うものに
ほかならず,労働者派遣ではなく,違法な労働者供給であり職業安定法4
4条違反を構成することを前提に,原告A及び同Dについては,松下PD
P事件判決は妥当せず,Sとの間のみならず,被告との間でも二重に労働
契約が成立していたなどと主張する。
この点,業務委託(請負)契約を前提とする場合,仮にその実態が労働
者派遣であっても,労働者は,請負業者との間にのみ労働契約関係を有し,
発注元との間には同関係を有しないのに対し,出向の場合,労働者は,出
向元企業との労働関係を維持しつつ,出向先との労働契約関係に入るもの
であるから,業務委託契約の事案を前提とする松下PDP事件判決が,出
向関係下の事例において,直接に妥当するものとまではいえない。
もっとも,松下PDP事件判決は,労働者・請負業者間の労働契約の有
効性と,労働者・発注元間の労働契約の成否とを区別して判断しており,
結局,出向関係の場合であれ,業務委託契約関係の場合であれ,労働者・
就労先企業間に,黙示の労働契約の成立が認められるか否かは,同判示の
とおり,事実関係等に現れた全事情を総合的に判断するほかはないという
べきである。
(2)事実関係に基づく判断
ア採用への関与について
(ア)前記2(2),(6)認定のとおり,原告Aら4名は,Sの社員であるFな
いしNの面接を受けた後(原告Aを除く。),姫路工場を訪れ,Eない
しIから業務内容等に関する説明を受け,同人らとともに,同工場の見
学をしているところ,原告Aら4名は,これをもって,Eら(被告正社
員)が,原告Aら4名につき,被告の予定した作業に適応できる能力を
持つか否かを確認して採用を決定したと主張する。
しかし,前記2(1)認定のとおり,姫路工場で工場見学を行うように
なったのは,被告・S間で話し合った結果,Sの採用予定者に,事前に
工場見学をしてもらい,職場環境,業務内容を本人に見てもらうことで,
後のトラブルを避けるためであったにすぎない。
加えて,証拠(乙15ないし乙17,証人E5・6・28,同H8な
いし10)によれば,Sにおいては,自社の募集広告に対する応募者に
対し,面接及びテストを行い,希望の職種や履歴書等から総合的に採用
の可否を検討し,採用可と判断した場合には,就業先となる職場を見て
もらい,その上で本人の意思を確認し,同人の了解が得られた場合に,
雇用契約を締結することとしていたこと,被告が,これまでに,姫路工
場に見学に来た者の就労を拒否したことは一度もないのに対し,自ら就
労を取り止めた工場見学者は10名ないし20名にのぼることが認めら
れる。
そうすると,原告Aら4名が,工場見学の当日に,Eらから,業務内
容に関する説明や過去の職歴に関する質問を受けたことを考慮しても
(Eの陳述(乙15,乙17)及び証言は,これに反する限度において,
採用することができない。),Sによる労働者の採用は,姫路工場見学
の前に同社によって既に決定されているのであって,これに被告が関与
して,採用の可否を事実上決定したとは認められないといわねばならな
い。
(イ)なお,原告Aら4名は,被告の予定した作業に適応できる能力を持つ
ことの内実を,油の臭いを嫌わずに仕事ができるということであると捉
えているようであるが,これは労働者の技術的な能力に何ら関するもの
ではなく,労働者の体質面ないし健康面に直結する事柄であって,仮に
これを目的として事前面接をしたところで,それが被告との間の黙示の
労働契約を認めるための一事情になるとは到底解されない。また,仮に
この点を措くとしても,上記(ア)認定説示のとおり,被告は,姫路工場
の見学に来た者の就労を拒否したことはなく,逆に工場見学の後に自ら
就労を取り止めた者は10名ないし20名にのぼることからすれば,原
告Aら4名がいうところの「被告が予定した作業に適応できる能力を持
つ」か否かを最終的に判断していたのは,被告でもSでもなく,応募者
(就労予定者)自身であったというほかはない。
(ウ)加えて,原告Aら4名は,同人ら・S間の雇用契約の締結が,就労初
日にされていることも,被告が原告Aら4名の採否を決定していたこと
の一事情として主張する。
しかし,前記(ア)認定説示のとおり,Sによる労働者の採用は,姫路
工場見学の前に同社によって既に決定されていたことは明らかである。
そして,証拠(乙16,証人H10・12・23)によれば,Sが,工
場見学の前に雇用契約を締結しなかった理由(趣旨)は,採用者の方か
ら,就労予定現場を見ずに雇用契約をした後で,説明を受けていた話と
異なるといったことを申し出られても,次の仕事をすぐに紹介できるわ
けではないし,入社手続が無駄になってしまうため,これを避けること
にあったことが認められる。これらによれば,雇用契約の締結が就労初
日,すなわち工場見学後であったことが,同見学(事前面接)の際に被
告が採用を事実上決定していたことを示す事情にはなり得ないというべ
きである。
また,前記2(2),(6)認定のとおり,EないしIは,姫路工場見学の
際に,原告Aら4名に対し,就労開始日時につき質問等をしているが
(Eの陳述(乙17)及び証言は,これに反する限度において,採用す
ることができない。),被告としても,就労者の受入れに当たっての準
備が必要であり,仮にいきなり出勤されたりしたら困惑すると考えられ
ることからすれば(証人E24),就労開始日時に関する質問も,上記
準備をするに当たってのおおよその見通しを立てる目的でされたもので
あると理解するのが相当であって,上記質問が採否の決定等他の目的の
もとにされたものであることを的確に示す証拠はない。
(エ)そして,以上の説示からすれば,姫路工場の見学が,原告Aら4名か
らの申し出により実施されたものでないことが,上記判断を左右するも
のでないことは,明らかである。
また,原告Aについては,Sの社員による面接の詳細については必ず
しも明らかではないが,証拠(甲A7,甲A8,原告A本人3ないし
5)によれば,原告Aは,他の人材派遣会社からSに紹介されたところ,
同社は原告Aの製造系で就労したいという希望を予め把握しており,同
人は,Sの社員から,製造業の仕事なら紹介できると言われた後,姫路
工場の見学に赴いていることが認められることからすれば,Sによる面
接等を経て工場見学を行うというおおまかな流れは,他の原告ら(原告
B,同C及び同D)と同様であって,原告Aのみ別異に解すべき理由は
見当たらない。
イ使用従属関係・労務給付関係・賃金支払関係について
(ア)前記2(1),(3)認定及び証拠(甲52,甲A7,甲C3,甲D3,甲
F3,乙15,証人E6・17ないし19・24・26,同H19・2
1,原告A本人8ないし10・17ないし19,同B本人7・8,同C
本人6,同D本人3・4)によれば,姫路工場では,本件出向協定当時
から,原告ら受入労働者に対する作業内容の指導,残業や休日出勤の指
示等の指揮監督は,専ら被告の正社員が行っており,常駐管理者であっ
たFは,工場とは別の建物で,出退勤の管理や給与の計算等を行ってい
たにすぎず,同指揮監督をするSの社員は存在しなかったこと,生産ラ
インにおいても,被告の正社員と受入労働者とが混在して業務に従事し
ており,受入労働者が使用する機材や制服,更衣室,ロッカー等は,全
て被告が用意していたことのほか,そもそも,被告が,Sに対し,姫路
工場で勤務する受入労働者の補充を依頼する際は,現場からの要請に基
づき,同社員の就労場所や配置を事前に決定していたことが認められる。
また,証拠(甲35)によれば,本件出向協定においても,被告は,
出向者につき,同人の責めに帰すべき事由が発生した場合には,出向期
間中にかかわらず,同人の出向を取り消すことができる権限を有してい
たことが認められる。
これらによれば,被告が,原告Aら4名に対し,作業上の指揮命令権
のほか,配置・懲戒の権限を有していたといえる。
(イ)a(a)次に,原告Aら4名は,被告が,Sに対し,業務委託料を一貫
して出来高ではなく時間給として支払い,Sから原告Aら4名に対
し支給される諸手当についても全額負担し,昇給も決定していた以
上,同人らの賃金は,被告が実質的に決定していたと主張する。
(b)しかし,被告が,Sに対し,業務委託料等を出来高ではなく時
間給として支払っていた点については,それは両者間の契約内容の
問題にすぎず,また,Sが,自己の雇用する従業員に対し賃金とし
ていくらを支払うか,被告から支払を受ける業務委託料等から,ど
の程度を自己の利益分として差し引くかは,まさにSが自ら決定す
べき事柄であって,それに被告が関与するとは考えがたく,同関与
を認めるに足りる証拠も見当たらず,かえって,証拠(甲35)に
よれば,本件出向協定においては,賃金及び賞与につき,Sが同社
の定める基準により支給し,それにかかわる費用は別に定める基準
により両社がそれぞれ負担すると定められていること,出向者にか
かわる保険についても,労災保険を除いては,健康保険,厚生年金
保険及び雇用保険は,いずれもSの取扱いに従い,その保険料は同
社が負担していたことが認められる。
これによれば,被告が,Sの社員であった原告Aら4名の賃金を
決定していたとは,認められないといわざるを得ない。
(c)また,年功手当,セッター手当及び技能手当については(前記
2(4),(6)認定参照),証拠(証人H15・16・29ないし3
1・33・34)によれば,Sが,姫路工場におけるベアリング製
造工程の同社による請負化を目指す過程において,同社の社員のモ
チベーションを維持するために支給することとし,被告に掛け合い,
その負担をさせたものであることが認められる。
そうすると,上記手当の支給は,Sが主体的に決定したものであ
ることは明らかである。
なお,上記認定のとおり,上記手当を支給することとした経緯か
らすれば,それは,本来,Sが負担すべきものであって,被告が負
担すべきものとは解し難い面があるのは事実である。しかし,業務
請負・派遣会社は,業務委託元・派遣先から支払を受ける業務委託
料ないし派遣料のなかで,自己の従業員に対し給与等を支払いつつ
自らの存続を図るものであることからすれば,業務請負・派遣会社
が,業務委託元・派遣先に対し,新たな手当を支給するに当たり,
業務委託料ないし派遣料そのものの改訂,ないし,それとは別に手
当分の上乗せを要請することは十分にあり得ることというべきであ
り,本件も,この趣旨のもとに捉え得るというべきである。
bまた,原告Aら4名は,被告が,原告A及び同Dに対し,作業上の
指揮命令権を取得し,出退勤の管理を行っていたにとどまらず,配置,
懲戒,解雇(雇止め)に関する権限をも保持していたことから,労務
給付請求権を有していたと評価できると主張する。
この点,被告が,原告Aら4名に対し,作業上の指揮命令権のほか,
配置,懲戒の権限を有していたことは,前記(ア)説示のとおりである。
しかし,証拠(甲35)によれば,本件出向協定において,被告が
出向社員に対して有する懲戒権限は,出向者が自己の責めに帰すべき
事由を生じさせた場合に,その者をSに復帰させるにとどまり,それ
を超えて,同出向者を同社から解雇する権限までをも有していたわけ
ではないことは,明らかである。
この点,原告Aら4名は,Sが,原告らとの間で,同人らが姫路工
場で就労する限りにおいて雇用契約を締結する意思しか有せず,被告
もその旨を十分認識していたことからすれば,実質的には被告が原告
らを解雇する権限を保有していたと評することが可能である旨を主張
する。
しかし,Sが,どのような趣旨の下に自社の社員を採用するかは,
同社独自の問題であって,仮に上記原告Aら4名主張のとおりである
としても,あくまで原告らを解雇する権限を有するのはSのみであっ
て,それが被告による出向社員に対する懲戒権限と連動していたから
といって,そのことから直ちに,被告が原告Aら4名に対する解雇権
限を有していたということにはならないというべきである。
(3)まとめ
以上のとおり,被告は,Sによる原告Aら4名の採用に関与していたとは
認められない上に,原告Aら4名に対する作業上の指揮監督権や配置・懲戒
の権限を有していたものの,解雇権限まで有していた訳ではなく,賃金や諸
手当についても,Sが主体的に決定していたことが認められる。
これらの諸事情を総合考慮すると,原告Aら4名・被告間の黙示の労働契
約が成立していたとまで評価することは困難というべきである。
したがって,原告Aら4名・被告間に黙示の労働契約が成立したとする原
告Aら4名の主張は,理由がない。
4争点2(解雇(更新拒絶)の無効)について
(1)上記3説示のとおり,原告Aら4名・被告間には,黙示の労働契約の成立
は認められないから,同契約の成立を前提としてその解雇(更新拒絶)の無
効をいう原告Aら4名の主張には,理由がない。
(2)アそして,黙示の労働契約の成立が認められないとすると,原告Aら4
名・被告間に成立したのは,本件期間雇用契約ということになるところ,
原告Aら4名は,①本件是正指導によって成立した本件期間雇用契約は,
本来,期間の定めのない契約として実現されなければならなかったのであ
り,②仮に有期契約によって直接契約を実現すること自体は許されるとし
ても,「雇用の安定」を図る措置を講じるようにとの本件是正指導からす
れば,実質的には「1か月」だけの雇用を確保するにすぎない本件期間雇
用契約では,「雇用の安定」を図る措置とは到底評価できない旨を主張す
る。
しかし,前記2(9),(10),(12)認定のとおり,被告は,平成21年4
月7日の時点で,兵庫労働局に対し,本件是正指導に基づく措置として,
派遣労働者の数人につき,時給1200円により,同年9月末までの有期
という条件で雇用することを考えていること,及び,同月以降の処遇につ
き,契約上は,期間満了により終了するが業務量等により更新することが
あるといった文言で対処することを考えているが,実際には,被告の経営
環境が大きく好転しない限り,更新は難しい旨を述べたこと,これに対し,
兵庫労働局からは,派遣労働者全員の直接雇用を検討するよう指導された
ものの,有期といった契約条件に関する指導がされた事実はなく,かえっ
て,被告が,同年4月14日,同労働局に対し,派遣労働者全員を直接雇
用する旨の方針を伝えたところ,同労働局からは,当該方針のもとに是正
報告書を受理する旨を言われ,実際に,同月21日には是正報告書が受理
されたことが認められる。
これらの事実経過からすれば,本件是正指導にある「雇用の安定」とは,
期間の定めのない契約や,更新を前提とする有期契約の実現までをも意味
するものではないといわざるを得ない。
イなお,この点につき,原告Aら4名は,厚生労働省職業安定局「労働者
派遣事業関係業務取扱要領」(平成21年5月・甲58)によれば,「雇
入れの指導又は助言,勧告,公表の内容」として,「法の規定により派遣
先に対し派遣労働者を雇い入れるよう指導又は助言,勧告する際には,…
期間の定めなき雇用によるよう指導又は助言,勧告する。」(250頁)
とあることを理由に,本来,本件是正指導による直接契約は期間の定めの
ないものとして実現されるべきである旨を主張する。
しかし,上記記載は,直接には厚生労働大臣による指導,助言ないし勧
告の在り方につき定めたものにすぎないし,仮にこの点を措くとしても,
上記ア説示のとおり,本件では,兵庫労働局が,本件期間雇用契約を内容
とする是正報告書を受理したことは明らかであって,上記記載から,直ち
に,原告Aら4名・被告間の直接契約が期間の定めのないものとして実現
されなければならないとまではいえない。
ウまた,原告Aら4名は,当初,原告らに開示された契約案では,更新条
項は存しなかったのに対し,最終的に原告らとの間で交わされた本件期間
雇用契約書においては,更新条項が挿入されていることや,就業場所につ
いても,姫路工場に限定されていたこれまでの契約と異なり,異動命令の
可能性に触れていることからすれば,期間満了時には更新のための最大限
の努力をすること,姫路工場での更新が難しい場合も,原告らを姫路工場
から異動させることによって契約の更新を検討する旨を兵庫労働局に報告
し,同労働局もこの点を評価して,被告の直接契約案を受理したものであ
ると考えられるとする。
しかし,前記ア説示のとおり,被告は,既に平成21年4月7日の時点
で,兵庫労働局に対し,契約の更新につき,その旨の文言は入れるものの,
契約更新自体は難しい旨を伝えていたことからすれば,仮に更新のために
最大限の努力をする旨を伝えていたとしても,それは,景気動向を睨みな
がらの努力を意味するものであると考えるのが相当であって,同労働局が,
それを超える「努力」を期待して,是正報告書を受理したかは,はなはだ
疑問である。
さらに,姫路工場からの異動の点についても,兵庫労働局がこれに関心
を示していたことを認めるに足りる証拠はなく,前記2(11)認定のとおり,
JMIU支部は,本件期間雇用契約につき,雇用期間(及び賃金)を問題
として活動していたことは認められるものの,鎌倉工場や岐阜製作所への
異動をも考慮して,本件期間雇用契約を更新するよう,被告に直接求めた
り,あるいは兵庫労働局に対し被告への指導等を求めていたことを認める
に足りる証拠もない。
したがって,被告が,兵庫労働局に対し,姫路工場での更新が難しい場
合には,原告らを姫路工場から異動させることによって契約の更新を検討
する旨を報告し,同労働局がこの点を評価して是正報告書を受理したもの
と推認することはできない。
(3)したがって,本件の雇止めが,無効であるとは認められない。
5争点3(賃金請求権の有無)について
上記4説示のとおり,本件における更新拒絶は無効とはいえないから,原告
Aら4名には,同更新拒絶後の被告に対する賃金請求権は発生していない。
したがって,この点に関する原告Aら4名の主張には,理由がない。
6争点4(被告の不法行為)について
(1)原告らが主張する被告の違法性のうち,派遣切りしたことの違法性につい
ては,原告ら・被告間において黙示の労働契約が成立していることを前提と
する主張であるところ,原告Aら4名については,前記3説示のとおり,同
契約の成立は認められず,他の原告らについても,原告Aら4名と同様,被
告との間に黙示の労働契約が成立したことを認めるに足りる証拠はないから,
理由がない。
(2)また,前記2(9)ないし(12)認定のとおり,被告は,平成21年4月7日
の時点で,兵庫労働局に対し,本件是正指導に基づく措置として,派遣労働
者の賃金につき時給1200円の条件で雇用することを考えていることを伝
え,同月14日には,その旨の記載のある募集・応募用紙を提出し,JMI
U支部に対しても,同様の説明をし,同募集・応募用紙を交付したこと,そ
して,兵庫労働局は,同月20日に,JMIU支部から,「雇用の安定」と
は派遣労働時の労働条件を下回らないこと等が最低限必要である旨の要望を
受けたにもかかわらず,同月21日,被告から,賃金につき上記条件のまま
で是正報告書を受理したことが認められる。
このような一連の経過からすれば,原告らに,被告との間で従前の労働者
派遣契約下の雇用契約と同様の条件で直接契約が締結されるとの期待が生じ
ていたとみるのは困難である。
したがって,同期待が裏切られたことを前提に,従前の手当等の支給を打
ち切ったことの違法をいう原告らの主張には,理由がない。
(3)さらに,本件期間雇用契約を更新しなかったことが本件是正指導に反しな
いことは,前記4(2)説示からして,明らかである。また,同更新をしなか
ったことが,兵庫労働局に対し被告への指導等を求めた原告らに対する不利
益取扱いであるとか,被告が労働組合を嫌悪していることによるものである
ことを示す的確な証拠はないから,これが不当労働行為を構成するとの原告
らの主張にも,理由がない。
(4)しかし,前記2(1),(3),(5),(8)認定のとおり,被告はSとの本件出向
協定を2年足らずで本件業務委託契約に切り替え,さらに1年足らずで本件
派遣契約に切り替えており,その間,専ら被告正社員がSの社員に対する指
揮監督を行い,両者が混在して業務に従事するという就業実態には何ら変わ
りはなく,その点について業務改善命令を受けたにもかかわらず,何ら改善
することなく,更に本件是正指導を受けたものであって,もともと,本件出
向協定締結時から姫路工場におけるベアリング製造工程のSによる請負化を
目指していたことを考え合わせると,本件出向協定が締結された平成15年
12月当初から,その実態は労働者派遣であったというべきである。しかも,
製造業における労働者派遣は,平成16年3月1日になって初めて解禁され
たものであり,当初は1年間の派遣しか認められておらず,平成19年3月
1日以降も3年間の派遣しか認められていなかったにもかかわらず,被告は,
Sとともに,偽装出向,偽装請負,労働者派遣と契約形態を巧みに変化させ
ながら,本件是正指導がされた平成21年3月23日までの間をみても,実
に5年超の長きにわたって,違法に労働者派遣を実施していたことが明らか
である。
そして,本件出向協定を締結し,その後2年も経たないうちに本件業務委
託契約に切り替えたものの,わずか1年足らずでさらに本件派遣契約に変更
し,派遣労働期間も当初の1年から3年に変更するといった経緯等からすれ
ば,被告が,前記違法状態にあること,及び,本来は早期に完全な業務委託
(請負)等を実現しなければならないことを十分認識していたと推認される。
それにもかかわらず,被告は,これらを実現することなく,本件派遣契約
を締結し,漫然と派遣労働を継続したのであるから,これは,法が許容する
場合に限って三者間労働関係を認めている労働関係法規の趣旨に反するもの
であって,原告らに対し,不法行為を構成するというべきである。
そして,上記説示のとおり,原告らは,5年超の長きにわたる違法な派遣
労働下において,就労をさせられたという違法の重大性にかんがみれば,同
人らに対する慰謝料としては,各50万円が相当である(なお,前記2認定
のとおり,各原告らの姫路工場での就労期間には差異があるが,違法な労働
者派遣状態が継続している期間,当該違法性の重大さは刻々と増幅している
ものと考えられるので,同契約及び同就労開始の先後により,慰謝料の額に
差を設けるべきとはいえない。)。
第4結論
以上の次第で,原告らの請求は,被告に対し,各50万円及びこれに対する平
成21年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払をそれぞれ
求める限度で理由があるから,この範囲でこれを認容し,その余の請求は,いず
れも理由がないから,これを棄却すべきである。
よって,主文のとおり判決する。
神戸地方裁判所姫路支部
裁判長裁判官中村隆次
裁判官吉澤暁子
裁判官舘野俊彦

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