弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
1 本件訴えのうち、被告が平成13年12月10日付けでした決定中、「雇用率
未達成企業一覧」のうちの整理番号、会社名、産業分類、労働者数、合計、不足数
及び備考の各欄並びに「障害者雇入れ計画の実施状況報告書」のうちの「C 雇入
れを予定する事業所の数」、「D 雇用の状況」の①ないし⑥及び⑧、「E 雇入
れ計画の実施状況」の①ないし⑥の各欄を不開示とした決定の取消しを求める部分
を却下する。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
 被告が原告に対し、平成13年12月10日付けでした「雇用率未達成企業一
覧」及び「障害者雇入れ計画の実施状況報告書」について、「雇用率未達成企業一
覧」のうち整理番号、会社名、産業分類、労働者数、身体、知的、短時間、合計、
不足数及び備考の各欄並びに「障害者雇入れ計画の実施状況報告書」のうち「A 
事業主」、「C 雇入れを予定する事業所の数」、「D 雇用の状況」の①ないし
⑥及び⑧、「E 雇入れ計画の実施状況」の①ないし⑥の各欄を不開示とした決定
を取り消す。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
 本件は、原告が、被告に対し平成13年11月8日付けでした、行政機関の保有
する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)に基づく平成12年
度「雇用率未達成企業一覧」(以下「本件企業一覧」という。)及び「障害者雇入
れ計画の実施状況報告書」(以下「本件報告書」という。)の開示請求に対し、被
告が平成13年12月10日付けでした一部開示決定(以下「本件決定」とい
う。)につき、同決定により本件企業一覧のうち整理番号、会社名、産業分類、労
働者数、身体、知的、短時間、合計、不足数及び備考の各欄並びに本件報告書のう
ち「A 事業主」、「C 雇入れを予定する事業所の数」、「D 雇用の状況」の
①ないし⑥及び⑧、「E 雇入れ計画の実施状況」の①ないし⑥の各欄(以下「本
件不開示部分」という。
)が情報公開法所定の不開示事由に該当しないのにこれを不開示とした本件決定は
違法である旨主張して、本件決定のうち本件不開示部分を不開示とした部分の取消
しを求める事案である。
 なお、後記3(2)のとおり、本件決定は本訴提起後に厚生労働大臣の裁決によって
変更されて、当初不開示とされた部分の一部(主文第1項掲記の部分)が開示され
るに至り、被告は本件訴えのうち同部分(裁決開示部分)の取消しを求める部分の
却下を求めた。
2 前提となる事実
(1) 障害者の雇用の促進等に関する法律(以下「本法」という。)の制度概要
ア 本法の目的
 本法は、身体障害者又は知的障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための
措置、職業リハビリテーションの措置その他障害者がその能力に適合する職業に就
くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置を総合
的に講じ、もって障害者の職業の安定を図ることを目的とする(1条)。
イ 雇用義務
 本法は、すべて事業主は、身体障害者又は知的障害者の雇用に関し、社会連帯の
理念に基づき、適当な雇用の場を与える共同の責務を有するものであって、進んで
身体障害者又は知的障害者の雇入れに努めなければならない旨規定するとともに
(10条)、事業主は、厚生労働省令で定める雇用関係の変動がある場合(障害者
の雇用の促進等に関する法律施行規則(以下「本法施行規則」という。)5条は、
事業主に雇用率の達成、維持の義務を課すべき場合として、「労働者の雇入れ及び
解雇(労働者の責に帰すべき事由による解雇を除く。)」と定めている。)には、
その雇用する身体障害者又は知的障害者である労働者の数が、その雇用する労働者
の数に障害者雇用率(法定雇用率)を乗じて得た数以上であるようにしなければな
らない旨を規定してい
る(本法14条1項。なお、除外率設定業種については同項かっこ書きにおいて例
外規定が設けられている。)。
 本法14条1項の法定雇用率は、同条2項に基づいて政令で定めるとされてお
り、現在、民間事業主の法定雇用率は1.8パーセントである(障害者の雇用の促
進等に関する法律施行令9条)。
ウ 身体障害者又は知的障害者の雇用状況の把握
 雇用する労働者の数が常時56人以上である事業主は、毎年6月1日現在におけ
る身体障害者又は知的障害者の雇用に関する状況を、翌月15日までに、その主た
る事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長(以下「管轄公共職業安定所長」
という。)に報告しなければならないとされる(本法14条5項、本法施行規則7
条、8条)。
 障害者雇用状況は、本法施行規則8条に従い厚生労働大臣の定める様式(昭和5
1年労働省告示第112号第4条、様式第6号)により報告しなければならないも
のとされ、その記載事項は、常用雇用労働者の総数、常用雇用の身体障害者及び知
的障害者の数、実雇用率等である。
エ 雇用義務の履行確保
(ア) 雇入れ計画の作成命令
 本法15条1項は、「厚生労働大臣は、身体障害者又は知的障害者の雇用を促進
するため必要があると認める場合には、その雇用する身体障害者又は知的障害者で
ある労働者の数が法定雇用障害者数未満である事業主に対して、身体障害者又は知
的障害者である労働者の数がその法定雇用障害者数以上となるようにするため、厚
生労働省令で定めるところにより、身体障害者又は知的障害者の雇入れに関する計
画の作成を命ずることができる。」と定め、雇入れ計画の作成命令の制度を設け、
雇入れ計画の作成を命じられた事業主は、計画の始期及び終期、期間中に雇入れを
予定する労働者の数並びにそのうちの身体障害者及び知的障害者の数、身体障害者
である労働者又は知的障害者である労働者の雇入れを予定する事業所の名称及び所
在地並びに当該事業
所ごとの雇入れを予定する労働者の数並びにそのうちの身体障害者及び知的障害者
の数、計画の終期において見込まれる労働者の総数並びにそのうちの身体障害者及
び知的障害者の数の各事項を含む計画を作成し(本法施行規則9条1項)、遅滞な
く、管轄公共職業安定所の長に提出しなければならない(同施行規則10条)。そ
して、雇入れ計画の作成命令に違反して計画を作成しなかった事業主又は当該計画
を提出しなかった事業主については、罰則が設けられている。
(イ) 雇入れ計画の実施状況報告
 雇入れ計画を作成した事業主は、毎年6月1日現在における雇入れ計画の実施状
況を、翌月15日までに、管轄公共職業安定所の長に報告しなければならず、ま
た、計画の期間が終了したときは、雇入れ計画の実施状況を、計画の終期の翌日か
ら遅くとも45日以内に、管轄公共職業安定所の長に報告しなければならない(本
法施行規則11条)とされ、この報告のために作成された書面が「障害者雇入れ計
画の実施状況報告書」であり、毎年6月1日現在で提出される計画期間中の報告書
と計画終了後に提出される報告書の2種類がある。
(ウ) 勧告
 本法15条5項は、厚生労働大臣は、同条1項の計画が著しく不適当であると認
めるときは、当該計画を作成した事業主に対してその変更を勧告することができる
とし、同条6項は、厚生労働大臣は、特に必要があると認めるときには、当該計画
を作成した事業主に対して、その適正な実施に関し、勧告をすることができる旨を
定める。
(エ) 公表
 本法16条は、厚生労働大臣は、同法15条1項の計画を作成した事業主が正当
な理由なく、同条5項又は6項の勧告に従わないときは、その旨を公表することが
できる旨を定める。
3 判断の前提となる事実(証拠を掲記しない事実は、いずれも当事者間に争いが
ないか、当裁判所に顕著な事実である。)
(1) 本件訴訟に至る経緯
ア 原告は、被告に対し、平成13年11月8日付けで、本件企業一覧及び本件報
告書の開示請求(本件請求)を行った。
イ 被告は、本件企業一覧及び本件報告書のうち、本件不開示部分を不開示とし、
その余の部分を開示する旨の決定をし、平成13年12月10日付けで原告に対し
決定通知書を発送した。
ウ 原告は、平成14年2月1日付け審査請求書をもって、厚生労働大臣に対し、
本件開示決定に不服がある旨の審査請求を申し立てるとともに、平成14年3月1
4日、被告に対し、本件訴訟を提起した。
(2) 本件訴訟提起後の事情
ア 厚生労働大臣は、原告の前記審査請求を受けて、情報公開審査会に諮問を行っ
たところ、情報公開審査会は、平成14年11月22日付けで本件企業一覧につ
き、諮問庁が不開示とした部分については、『整理番号』、『会社名』、『産業分
類』、『労働者数』、『合計』、『不足数』及び『備考』の各欄は開示すべきであ
る。また、本件報告書につき、諮問庁が不開示とした部分のうち、『C 雇入れを
予定する事業所の数』、『D 雇用の状況』及び『E 雇入れ計画の実施状況』の
各欄は開示すべきであるとの答申をした。
イ 厚生労働大臣は、情報公開審査会による上記答申を受けて、平成14年12月
9日付けで、本件審査請求に係る不開示決定処分はこれを変更し、本件企業一覧に
つき『整理番号』、『会社名』、『産業分類』、『労働者数』、『合計』、『不足
数』及び『備考』の各欄及び本件報告書につき『C 雇入れを予定する事業所の
数』、『D 雇用の状況』及び『E 雇入れ計画の実施状況』の各欄(以下、あわ
せて「裁決開示部分」と、裁決によって不開示とされた部分を「裁決不開示部分」
と、裁決不開示部分のうち本件企業一覧に係るもの(具体的には同一覧のうち「身
体」「知的」「短時間」の各欄である。)を「裁決不開示部分第1」、同じく本件
報告書に係るもの(具体的には「A 事業主」欄である。)を「裁決不開示部分第
2」という。)は、こ
れを開示し、その余の部分はこれを不開示とする。」との裁決を行った。
(3) 本件企業一覧、本件報告書の各記載内容
ア 本件企業一覧
 本件企業一覧は、東京労働局が、平成12年度において、同年度の障害者雇用状
況報告書を基礎資料として、東京都に主たる事務所が所在する事業所のうち、雇用
する障害者の人数が法定雇用者数を下回っている事業者をとりまとめ、作成したも
のである。同文書には、具体的には「整理番号」、「会社名」、「産業分類」、
「労働者数」(常用、算定)、「身体」(重度、軽度、小計)、「知的」(重度、
軽度、小計)、「短時間」(身体、知的)、「合計」、「不足数」及び「備考」の
記載がある。
 裁決不開示部分第1のうち、「身体」の欄は、当該事業主が雇用するフルタイム
常用労働者であって、本法2条2号に該当する身体障害者の数を記載するものであ
る。「身体」の欄は、「重度」、「軽度」、「小計」に分かれ、「重度」の欄に
は、当該事業主がフルタイム常用雇用する身体障害者のうち、本法2条3号に該当
する重度身体障害者の数が、「軽度」の欄には、重度身体障害者に該当しない身体
障害者の数が、「小計」には、その合計が記載される。
 「知的」の欄も同様であって、「知的」の欄は、当該事業主が雇用するフルタイ
ム常用労働者であって、本法2条4号に該当する知的障害者の数を記載するもので
ある。「知的」の欄は、「重度」、「軽度」、「小計」に分かれ、「重度」の欄に
は、当該事業主がフルタイム常用雇用する知的障害者のうち、本法2条5号に該当
する重度知的障害者の数が、「軽度」の欄は重度知的障害者に該当しない知的障害
者の数が、「小計」にはその合計が記載される。
 また、「短時間」の欄は、当該事業主が雇用する短時間労働者(1週間の所定労
働時間が、通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短く、かつ、厚生労働大臣
の定める時間数未満である常用雇用する労働者、本法14条1項)であって、本法
2条1号に該当する障害者の数を記載するものである。「短時間」の欄は、「身
体」と「知的」に分かれ、「身体」の欄には重度身体障害者数が、「知的」の欄に
は重度知的障害者数が記載される。
イ 本件報告書
 本件報告書は、平成12年度分について、法定雇用率未達成企業のうち、本法1
5条1項に基づき障害者の雇入れに関する計画の作成を命じられて事業主が、その
計画の平成13年6月時点での実施状況について東京労働局長に提出した報告書で
ある。同文書には、具体的には「A 事業主」欄:住所(法人のときは主たる事務
所の所在地)、名称、氏名(法人のときは代表者の氏名)、事業の種類、事業所の
数、「B 計画の始期及び終期」欄:始期、終期、「C 雇入れを予定する事業所
の数」欄、「D 雇用の状況欄」:①常用労働者である身体障害者の数、②法定雇
用障害者数算定の基礎となる労働者の数、③常用労働者である身体障害者の数及び
知的障害者の数、④重度身体障害者である短時間労働者の数、⑤重度知的障害者で
ある短時間労働者の
数、⑥計、⑦実雇用率、⑧身体障害者又は知的障害者の不足数、「E 雇入れ計画
の実施状況欄」:D欄①~⑥の計画年ごとの雇入れ予定数、雇入れ実数及び合計、
「備考」欄が記載されている。
 裁決不開示部分第2の「A 事業主」欄には、東京都に主たる事務所の所在地を
有する事業主であって、その雇用する障害者の人数が法定雇用障害者数を下回って
おり、当該障害者雇入れ計画の実施状況報告書の作成を行った事業主の名前等の情
報が記載される。
4 争点及び争点に関する当事者の主張
(1) 争点
 本件の争点は、①本件訴えのうち裁決開示部分に係る部分の訴えの利益の存否
(争点1)、②裁決不開示部分第1の不開示事由該当性(争点2)、③裁決不開示
部分第2の不開示事由該当性(争点3)である。
(2) 争点に関する当事者の主張
ア 争点1(本件訴えのうち裁決開示部分に係る訴えの利益の存否)
(ア) 被 告
 前記3(2)のとおり、本件決定の不開示部分のうち、裁決開示部分に係る記載を不
開示とする決定は存在せず、本件訴えのうち裁決開示部分の取消しを求める部分の
訴えの利益は消滅したものである。
 なお、不開示決定の取消しの利益は、実際に開示を受けられるか否かではなく、
取消判決によって法的効力を除去すべき開示決定が存在しているか否かによって決
せられるものであるから、現実に開示がされるか否かの見込みは訴えの利益とは無
関係である。
(イ) 原 告
 開示決定の変更に対しては、情報公開法18条により不服申立権が認められてお
り、不服申立てがあった場合には、再度その不服申立てについて情報公開審査会に
諮問がされることとなる。
 そして、実際に未達成企業のうち約1500社が公開に反対する意見を述べてお
り、その企業からの不服申立てがされている限りは、開示はされず、情報公開審査
会の答申を待つこととなる。
 したがって、開示決定の変更により開示が命じられた部分であっても、現実に開
示がされるかどうかは非常に流動的であり、訴えの利益が欠けるものではない。
イ 争点2(裁決不開示部分第1の不開示事由該当性)
(ア) 被 告
a 情報公開法5条1号前段該当性
 裁決不開示部分第1には、上記3(3)アの記載のとおり、各区分ごとに該当する障
害者数が記載されているが、その数字の多くは「0ないし1」であり、あるいは一
桁の小さい数であることが大半である。そして、これらの数字を含む情報は、当該
事業主がどのような種類及び程度の障害者を、どのような勤務時間で雇用している
かに関する情報であるから、障害者個人に関する情報であるところ、これらの数字
が「会社名」欄記載の会社名とともに公にされた場合、その会社名やその他の通常
入手し得る情報と照合することにより、特定の個人を識別することが可能となる。
 したがって、裁決不開示部分第1は、情報公開法5条1号前段にいう「個人に関
する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定
の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人
を識別することができることとなるものを含む。)」に当たり、不開示とすべきで
ある。
b 情報公開法5条1号後段該当性
 また、仮に、裁決不開示部分第1が特定の個人を識別することができないとして
も、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるというべきで
ある。
 まず、裁決不開示部分第1を開示すると、ここに数字として記載された障害者個
人の権利利益を害するおそれがある。すなわち、雇用率未達成企業に勤務する障害
者のうち、心臓機能障害、腎臓機能障害等の内部機能障害者や、軽度の知的障害者
などは、外形的には障害者であることがわかりにくいため、障害者であること等を
周囲の同僚等に知られていない場合もある。しかるに裁決不開示部分第1が開示さ
れると、当該障害者が勤務する職場内で、障害者であることや障害の種類及び程度
を同僚等に推認されたり、詮索されたりするおそれがある。そのような事態となれ
ば、みだりに自己の障害の有無、種類及び程度を他人に知られないという障害者の
権利利益が害されることになる。
 また、裁決不開示部分第1を開示すると、当該事業主に雇用されている障害者の
うち、ここに数字として記載されていない障害者個人の権利利益を害するおそれが
ある。すなわち、事業主が雇用する者が本法2条各号に定める障害者に該当するか
否かの確認は、身体障害者にあっては身体障害者手帳又は所定の医師の診断書・意
見書によって行われ、知的障害者にあっては、都道府県知事又は政令指定都市市長
が交付する療育手帳等又は地域センターの判定書(知的障害者であると判定した旨
記入したもの)によって行われることとなっているところ、これらの手帳の交付申
請や医師等の診断書の取得は本人の意思に基づいて行われるものであるから、事業
主が強制することは許されない。このため、雇用率未達成企業に勤務する障害者の
中には、当該個人が
思想又は信条に基づき障害者としての保護を希望しないため、身体障害者手帳等の
交付申請を行っておらず、医師等の診断書等も得ていないため、障害者雇用率算定
の基礎データに含まれない障害者もいる。また、身体障害者手帳等の交付を受け、
あるいは医師等の診断書等を得ていても、それを事業主に明らかにしていないため
に、障害者算定の基礎データに含まれない障害者もいる。しかるに、裁決不開示部
分第1が開示され、当該企業に勤務する障害者の内訳が明らかになると、その数字
と当該企業内で外形的に障害者であると推測されるものの数との不一致をとらえ、
同僚等が本人の意思を無視して身体障害者手帳の交付申請等をするよう働きかけた
り、個人的な好奇心から、当該障害者が身体障害者手帳の交付申請をしない理由等
を詮索するおそれが
ある。そうなれば、当該個人の権利利益を害する結果となる。
 以上によれば、裁決不開示部分第1が、情報公開法5条1項前段の個人識別情報
に当たらないとしても、これを公にすることにより、障害者である個人の権利利益
を害するおそれがあるものであって、情報公開法5条1項後段に該当する。
(イ) 原 告
a 被告は、当初、情報公開法5条1号該当性に関する主張をしておらず、平成1
5年3月20日に裁判所に提出した同月26日付け準備書面(2)において初めてこの
主張を行ったものである。この主張は、厚生労働大臣の裁決及びその前提となる情
報公開審査会の答申に依拠するものと思われるところ、これらがされてから1ヶ月
以上経過して開かれた本件第4回口頭弁論期日(平成15年1月24日)において
も、被告は、この主張をしていないのであるから、このような主張の追加は信義則
に反し、時期に遅れたものである。
b 職場内で、同僚等が障害者である者を探索すること自体がプライバシーの侵害
であり、違法な人権侵害である。責められるべきはかような人権侵害であるのに、
違法行為があることを前提にして情報公開を認めないのであれば、障害者の働く権
利の実現はますます遠のいてしまう。
 また、障害の程度の区分の数字が「0ないし1」あるいは一桁の少数であること
が大半であることから、特定の者が障害者であること及びその障害の程度を推認す
る可能性は否定できないとしているが、そもそもこのような少数の雇用しか実現さ
れていないことが問題であるとして、情報公開を求めているのである。
 さらに、障害者雇用率を向上させていくためには、障害者の種別についてきめ細
かい対応が必要であり、どういった種別の障害者がどのような企業に雇用されてい
るか、また雇用されていないのかを明確にしていくことが、今後の障害者雇用施策
を進めていく上で有益である。
ウ 争点3(裁決不開示部分第2の不開示事由該当性)
(ア) 被 告
a 5条6号該当性
 雇用関係は、労使の信頼を基調とする人的結合であり、身体障害者又は知的障害
者の適正な雇用を実現するためには事業主の理解と協力が不可欠であるから、障害
者の雇用促進は事業主の自主的な努力によってのみ達成されるものである。
 そこで、本法は、障害者の雇用に関する事業者の自主的努力を促進すべく、障害
者雇用状況報告書の提出、雇入れ計画作成命令、事業主による雇入れ計画作成、厚
生労働大臣による勧告、勧告に従わない事業主の公表という段階的な雇用率達成指
導の制度を設け、この指導を通じて法定雇用率未達成の企業が自主的に雇用義務を
果たすことを促進しようとしている。そして、段階的指導の中で、最終的な制裁措
置として予定されているのは本法16条に基づく公表であり、段階的な雇用率達成
指導の最後に厚生労働大臣による公表という効力な社会的制裁措置を設けることに
より、その威嚇効果をもって、公表前の各種指導を実行あらしめ、もって、障害者
雇用に関する事業主の自主的努力を促進しようとしているものである。
 しかるに、裁決不開示部分第2に記載された情報が指導と無関係に開示される
と、このような雇用率達成指導制度に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ
がある。すなわち、裁決不開示部分第2には、当該障害者雇入れ計画の実施状況報
告書の作成を行った事業主の名前が記載されているところ、これが開示されれば、
実施状況報告書の作成を行ったすべての事業主の情報が開示されることとなるし、
また、開示請求には特段の時期の制限はないから、実施状況報告書の作成を行った
事業主に係る障害者雇用状況が開示されることとなるが、このような情報が時期を
問わず広く公開されるとなると、なされつつある雇用率達成指導に悪影響が生じる
上、それ以後にされる公表の最終的制裁としての感銘力が殺がれ、社会的制裁とし
ての機能を十分に発揮
しなくなる。
 情報公開審査会の答申においても「本件実施状況報告書は、本件企業一覧とは異
なり、法定雇用率未達成事業者のうち、障害者の雇用に消極的であるなどの理由に
より、本法15条1項により雇い入れ計画の作成を命じられた各企業が、それぞれ
その計画の実施状況を報告するものとして提出したものであるが、その実施状況如
何によっては、さらに、適正実施勧告、特別指導等の措置が取られるなど、正に公
表制度における勧告・指導の手続きの一環としてなされるものであると認められ
る。このように、本件実施状況報告書は、将来における公表の有無に直接関わるも
のであって、これらをすべてそのまま開示し公にすると、諮問庁が説明するように
障害者の雇用の促進に対するその後における当該企業の熱意や努力に悪影響を及ぼ
すこともあり得るもの
と考えられ、これによりその後に予定される適正実施勧告や特別指導、さらには公
表措置を含む現行の制度による改善指導の効果が減殺され、当該制度の適正な運営
に支障をきたすおそれがあることは否定できないものということができる、このよ
うな点から当該企業名が特定できる『A 事業主』欄については、情報公開法5条
6号『その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を
及ぼすおそれがあるもの』に該当することを理由にこれを不開示としたことは妥当
と認められる。」と述べているところである。
b 5条1号該当性
 前記第2、3(2)のとおり、障害者雇入れ計画の実施状況報告書について、「E 
雇入れ計画の実施状況」について開示する旨の裁決がされているところ、このうち
「③常用労働者である身体障害者の数及び知的障害者の数」、「④重度身体障害者
である短時間労働者の数」及び「⑤重度知的障害者である短時間労働者の数」の各
欄には、その程度等の区分ごとに数字のみが記載されており、その数字は0又は1
あるいは一桁の数字であることが大半である。そして、裁決不開示部分第2及び上
記数字を含む情報は、前記イ(ア)記載のとおり、当該事業主が、どのような種類及
び内容の障害者を、どのような勤務時間で雇用しているかに関する情報であって、
特定の個人(障害者)に関する情報であるところ、裁決不開示部分第2以外の部分
が既に開示されてい
ることを前提として裁決不開示部分第2を開示すると、前記各欄の記載及びその他
通常入手し得る情報と照合することによって、特定の個人を識別し得ることにな
る。したがって、裁決不開示部分第2は、情報公開法5条1号前段に該当するとい
うべきである。
 また、仮に、特定の個人を識別することができないとしても、裁決不開示部分第
2は、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあり、情報公
開法5条1号後段に該当することは上記イ(ア)bで述べたことと同様である。
(イ) 原 告
 本法15条に基づく公表制度における勧告・指導はそもそも手続きがあいまいで
あり、本法16条によっていかなる場合に公表がされるかも明らかでない。現実
に、過去に同法による公表がされたのは平成3年の4社のみである。実施状況報告
書の作成を命じられた企業に対する勧告・指導がされた結果として障害者の雇用状
況が改善されたのであれば格別、雇用状況の改善がされていない企業が多数存在す
ると考えられるにもかかわらず、上記のように過去に4社しか公表されたことがな
いという事実は、本法16条による公表制度が期待される効果を上げていないこと
を意味している。
 このような現状において、「A 事業主欄」を公表することによって公表制度を
含む現行の制度による改善指導の効果が減縮されるという理由に合理性はないとい
える。
 それどころか、公表された事業主が社会的責任を自覚することによってより障害
者雇用促進「事業の適正な遂行に」資することにもなると考えられる。すなわち、
事業主の側で障害者の雇用を促進支障とするなれば、事業所によっては新たな設備
が必要であったり、障害者の就業を可能とするための方策を講じる必要がある場合
が考えられるが、これまで必ずしも積極的にその努力を行ってこなかった事業主が
状況の改善を行うことには何かきっかけが必要であり、そのきっかけとして事業主
名が公表されることは有益であると考えられるのである。さらに、事業主が障害者
の雇用が少ないことを反省し、障害者雇用の促進に取り組んでいくことを社会にア
ピールすることはむしろ事業主の社会的評価を高くするものである。この観点でも
障害者雇用促進事業
の適正な遂行に資するものと考えられる。このように雇用状況報告書を提出した企
業名が公表されることによって現行制度による行政指導の効果が減縮されることは
なく、逆に、障害者雇用の促進に資するものである。
 なお、情報公開法5条1号該当性については、前記イ(イ)aのとおり、主張する
こと自体が許されないものである。
第3 争点に対する判断
1 争点1(本件訴えのうち裁決開示部分に係る訴えの利益の存否)
 本件不開示決定については、前記第2、3(2)イ記載のとおり、厚生労働大臣が平
成14年12月9日に、本件不開示決定のうち裁決開示部分について、当初された
本件不開示決定を変更して開示を行う旨の決定をしており、これによって裁決開示
部分については既に不開示決定が取り消されたものというべきであって、現時点に
おいては、取消しの対象を欠くこととなり、その意味で訴えの利益は消滅したもの
というべきである。
 原告は、裁決開示部分について取消判決がないと未達成企業からの不服申立てが
され、その審理過程において再び判断が覆る可能性があることを指摘し、取消判決
の効力によってそのような事態を防止することが必要であり、そのために裁決開示
部分に係る訴えの利益が存する旨を主張する。しかし、仮に、そのような必要性が
存するとしても、前記のとおり、本件不開示決定中の裁決開示部分については、既
に不開示決定が取り消されているのであるから、これをさらに取り消すことは不可
能というべきである。また、本件訴訟手続には未達成企業は全く関与していないの
であるから、その不服申立ての機会を奪うことはできず、むしろ、同部分の開示の
可否については、その不服申立てを受けた後の手続において最終的な解決が図られ
るべきものである(
このように解すると、不開示決定の取消しを求めるものは2段階の訴訟に関与せざ
るを得なくなる事態が生ずることとなるが、現行の情報公開法制の下においては、
そのような事態もやむを得ないものというべきである。)。
 よって、本件訴えのうち、本件不開示決定のうち裁決開示部分の取消しを求める
部分は不適法である。
2 争点2(裁決不開示部分第1の不開示事由該当性)
(1) 情報公開法5条1号該当性を主張することの可否
 被告がこの点について主張をしたのが、本訴提起後1年以上経過した平成15年
3月20日に提出した同日付け準備書面(2)においてであることや、その主張に至る
経緯については、原告の指摘するとおりである。
 しかし、この点は、本件提起後の平成14年12月9日にされた厚生労働大臣の
裁決によって、それまで不開示とされた部分のうち相当部分が開示することとされ
たことにより新たに生じた不開示事由と考えられるから、それ以前に被告がこの主
張をしなかったことはやむを得ないことというべきである。もっとも、同裁決後の
本件第4回口頭弁論期日(平成15年1月24日)においては、被告は、同裁決書
及びその依拠する情報公開審査会の答申(乙6、7)を書証として提出したもの
の、それらに記載のある上記主張を追加することはせず、当裁判所がこの点を質し
たのに対し、被告指定代理人は、同裁決書の考え方は被告がこれまで主張してきた
ことと基本的に同一であるとして、主張の追加をする意思はないと理解できる発言
をした。原告は、同期
日において口頭弁論の終結を希望したが、当裁判所としては、上記裁決を踏まえて
原告が請求の趣旨の変更を検討するのが相当であり、かつ、被告指定代理人が同裁
決の趣旨を誤解している可能性がある以上、本来あるべき主張をさせるのが本件の
適正な処理に資するものと考え、次回期日を同年2月21日と定め、同期日に弁論
を終結する予定であると告げた。その後、被告から準備書面の作成が間に合わない
旨の上申がされたため、当裁判所は、当年3月26日に期日を変更し、同期日にお
いて、上記被告準備書面(2)の陳述がされ、口頭弁論を終結したものである(以上の
事実は、当裁判所に顕著な事実である。)。以上の経緯からすると、被告は、本
来、平成15年1月24日の期日において主張すべきであった上記主張につき、い
ったん同期日において
主張する意思はないかのような態度を採ったのち、その後2ヶ月後に改めて主張す
るに至ったこととなるが、同期日における被告の対応は指定代理人の誤解に基づく
ものと考えられ、それ自体誠に遺憾なことではあるが、信義則に反するとまでは評
価し難い。また、これによって本件口頭弁論の終結が約2ヶ月遅延したこととなる
が、その原因となった上記指定代理人の誤解を重大な過失と評価し得るか否かには
疑問がないでもなく、その遅延の期間と本件の適正な処理の要請を総合考慮する
と、被告の上記主張を却下するのは相当でないというべきである。
 よって、この点についての原告の主張は採用できない。
(2) 情報公開法5条1号前段該当性
 情報公開法5条1号は、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、
生年月日、その他の記述等により特定の個人を識別することができるものを不開示
情報と定め、個人の識別性のある情報、すなわち個人の内心、身体、身分、地位、
健康状態その他個人に関する一切の事項についての事実、判断、評価等のすべての
情報を一般的に開示しないことを定めたものと解される。そして、前記の情報に
は、「他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることと
なるものを含む。」旨が規定されており、当該情報自体では特定の個人を識別する
ことができないが、他の情報と照合することにより特定の個人を識別することがで
きるものについても個人識別情報として不開示情報とする趣旨である。
 これを本件についてみると、本件企業一覧の基礎資料である障害者雇用状況報告
書の提出を義務付けられているのは、雇用する労働者の数が常時56人以上の事業
主であり、そして、法定雇用率が1.8パーセントとされていること、そして、本
件企業一覧には法定雇用率を下回った事業主に関する情報が記載されていることに
かんがみれば、裁決不開示部分第1の身体、知的、短時間の小計欄には、0または
1、あるいはそれに近い小さい数が記載されており、その内訳である各欄にはさら
に小さい数が記載されていることが推認され、これを覆すに足りる証拠はない。
 被告は、このことを前提として、これらの部分を裁決開示部分に含まれた事業主
名等、既に開示された部分とともに開示した場合には、その会社名やその他の通常
入手し得る情報と照合することにより、特定の個人を識別することが可能であると
主張する。
 確かに、当該事業場における同僚は、既に同僚中に障害者が存在することを認識
していた場合においても、その障害の種類が身体障害か知的障害か、その程度が重
度か軽度かは認識していないことであるから、上記の「身体」、「知的」及び「短
時間」の各欄の人数の多くが0か1であることからすると、それらの開示により、
これらを新たに認識し得ることとなる(想定①)。また、同僚中に障害者が存在す
るとは認識していなかった者も、上記の開示によってその存在を知り、その後改め
て同僚らを仔細に観察し、あるいは同僚らに問い質すことにより、同僚のうち誰が
障害者であるかを特定し、かつ、その障害の種類及び程度を認識し得る場合もある
(想定②)。
 ところで、情報公開法5条1号にいう上記「他の情報」がいかなる範囲の者を指
すかについては、同法の文言のみからは明らかでないといわざるを得ないが、これ
を一般人が容易に入手し得る情報について限定すると、不開示情報の範囲は自ずか
ら限定されるのに対し、特定の個人と特別の関係のある者のみが有している情報を
含むとすると、不開示情報の範囲はかなり広くなるし、さらに、ある情報の開示を
きっかけとして聞き取り調査等を行うことによって入手し得る情報をも加えると、
個人に関する情報はほとんどが開示し得ないこととなりかねない。この「他の情
報」範囲を広く捉える考え方は、情報開示請求の主体に限定がないことからする
と、特定の個人と特別の関係にある者も開示請求をし得るという点を論拠とするも
のであり、傾聴に値する
点がないでもない。しかし、個人に関する情報のすべてを情報公開の対象外とする
ことは、情報公開法が想定しているところではないのであって、同法も、本来は、
そのうち公開によって個人の権利利益を害するおそれのあるもののみを不開示とす
べきところ、この点を個々の情報ごとに吟味して決定することは多大の困難が伴う
ため、やむを得ず個人を識別し得る情報は、それが当該個人の権利利益を害するも
のか否かを問わず、一律に不開示と定めたものである。そして、上記「他の情報」
と組み合わせることによって、特定の個人を識別し得る情報をも不開示とした点
は、それをさらに広げる附加的な規定であるから、これによって不開示情報の範囲
が本来の個人識別情報の範囲を大きく超えて拡大することは、同法の想定していな
いところであり、この
点については、開示された情報のみでは特定の個人を識別できるとはいい難いが、
ほとんどそれと等しいもの、すなわち、一般人が容易に入手し得る情報と組み合わ
せると特定の個人が識別され得る場合には、本来の個人識別情報と同様に取り扱わ
ざるを得ないという趣旨に解するのが相当である。もっとも、上記のような解釈に
よって個人識別情報に該当しないとしても、当該個人と特別の関係のある者が開示
請求によって得た情報と自己の有する情報を組み合わせることにより、当該個人に
関する情報を取得することにより、当該個人の権利利益が害されるおそれがある場
合には、情報公開法5条1号後段により、不開示情報となし得ることはいうまでも
ない。
 以上の観点から、裁決不開示部分第1の情報公開法5条1号該当性を検討する
に、被告が主張する「他の情報」は、いずれも一般人が容易に入手し得るものでは
なく、特定の個人と特別の関係ある者のみが有している情報であると考えられるか
ら、その主張は、同号前段かっこ書き該当性を基礎付けるものではなく、同号後段
該当性を指摘するものと理解するほかない。
 そこで、裁決不開示部分第1を開示することにより、そこに記載されている障害
者の権利利益を害するおそれが生ずるか否かを検討するに、上記想定①及び②のい
ずれの場合にも、当該障害者の同僚が、開示により又はそれをきっかけとして当該
障害者の障害の種類及び程度を知り得ることとなる。もっとも、このうち想定②の
場合は、そのような事態は開示自体によって生じたものではなく、開示をきっかけ
としてされた調査などによって生じるのであるから、開示によって障害者の権利利
益が害されたとはいい難い(被告が指摘する本件企業一覧に計上されていない障害
者への影響についても同様に考えることができる。)。これに対し、想定①の場合
には、それまでは当該障害者につき、単に障害者であるとの認識を有するのみで、
その種類及び程度に
ついて認識を有しなかった同僚が、上記開示によってそれらを認識するに至ること
となる。このような事態については、当該障害者が既に自己が障害者であることを
明らかにして雇用されていることを前提とすると、開示によって認識可能となる内
容が障害の種類及び程度ともに2種類の大分類のいずれかにすぎず、特に身体障害
の場合には、その性質上、身体障害の有無をその程度が重度か軽度かについては外
見上おおよそ明らかになるものであることからして、当該障害者としては、それら
を同僚に知られることは甘受すべきものであり、むしろ、共に働く同僚にはそれら
を積極的に理解してもらうよう努めるべきであるとの考え方もないではないが、未
だ障害者に対する偏見や差別意識が根強く存する現在の我が国の状況に照らすと、
これらの認識を得た
同僚から新たな嫌がらせ等が生ずるおそれは否定し難いところであり、上記部分の
開示は、そこに記載された障害者個人の権利利益を害するおそれを生じさせるもの
として、情報公開法5条1号後段に該当するものと考えられる(なお、「短時間」
欄の記載は、短時間労働に就いていることを示す点においては、それが外形上明ら
かなことからして、同号後段該当性は否定すべきであるが、同欄は重度の身体及び
知的障害者数の内数でもあることから、これらを開示することにより重度の身体又
は知的障害者を特定して認識することが可能となる点において、上記と同様の理由
から同号後段に該当するものと考えられる。)
 よって、裁決不開示部分第1を不開示として原処分の判断は、結論において相当
であり、原告の本訴請求のうち、その取消しを求める部分は理由がない。
3 争点3(裁決不開示部分第2の不開示事由該当性)
 まず、情報公開法5条1号後段該当性について検討するに、裁決不開示部分第2
を開示すると、同裁決によって開示することとされた「E 雇入れ計画の実施状
況」中の③常用労働者である身体障害者の数及び知的障害者の数、④重度身体障害
者である短時間労働者の数及び⑤重度知的障害者である短時間労働者の数の各欄の
記載と組み合わせることにより、同欄記載の障害者個人の同僚らが当該障害者の障
害の種類及び程度を認識し得る事態を招くこと及びその事態が当該障害者個人の権
利利益を害するおそれがあることについては、前記2(2)で説示したのと全く同様の
ことが当てはまると考えられる。
 そうすると、裁決不開示部分第2が情報公開法5条1号後段に該当することが明
らかであり、その余の不開示事由該当性について検討するまでもなく、これを不開
示とした原処分の判断は結論において相当であり、原告の本訴請求のうち、その取
消しを求める部分もまた理由がないこととなる。
第4 結論
 以上によれば、原告の訴えのうち裁決開示部分の開示を求める部分は不適法であ
るからこれを却下することとし、その余の請求は理由がないからこれを棄却するこ
ととし、訴訟費用の負担については、上記却下部分については本件裁決によって原
告の主張の大部分が認められる結果によるものであること、及び上記棄却部分につ
いても、その理由は、当初の被告の主張とは異なるものであって、その主張変更の
経緯においても被告に不手際のあったことからすると、行政事件訴訟法7条、民事
訴訟法61条、62条の趣旨に基づき、全部被告に負担させることとし、主文のと
おり判決する。
東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官    藤山雅行
   裁判官    鶴岡稔彦
   裁判官    廣澤 諭・

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛