弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人等の負担とする。
         理    由
 上告訴訟代理人内藤丈夫、同青木彦次郎の上告理由第二点について。
 論旨は「本件審判の範囲は裁決の基を為す訴願に申立てられた事項に限定さるべ
きであり、」当事者が訴願でその事由として申出でなかつた所論の事実を斟酌した
原判決は違法であるというに帰着する。しかし、公職選挙法二〇三条二項によれば
地方公共団体の議会の議員の選挙の効力に関する訴訟は同法二〇二条一項の規定に
よる異議の申立に対する決定及び同条二項の規定による訴願に対する裁決を受けた
後でなければ提起することができない旨規定され、いわゆる訴願前置主義が採用さ
れているのであるが、この場合においても訴願は単に都道府県選挙管理委員会をし
て選挙の効力に関する市町村選挙管理委員会の決定を再審査せしめ、これが是正の
機会を与え以て無益な訴訟の提起を回避せんとしたに過ぎないものである。すなわ
ち訴願は行政権の作用として行政庁のなす再審査の手続なのに対し、訴訟は司法権
の作用として裁判所が当該行政庁の行政活動の合法性を審判する手続であり、この
両者は同一手続における続審的段階をなすものではない。この事は訴願と訴訟とが、
訴願庁の裁決の内容によつては常に必ずしも当事者及びその審判の対象を同じくす
るものでないことに徴しても明らかであり、従つて法律も所論のように訴願におい
て主張された事実でなければ訴訟において斟酌し得ないというような制約を規定し
てはいない。そして本件訴訟法において所論の事実が当事者により主張されたもの
であることは記録上明らかであるから、原審がそれらの事実を判断の基礎として斟
酌したからとて原判決に所論のような違法があるとはいい得ない。論旨は採用に値
しない。
 同第九点及第一〇点について。
 論旨は要するに、原判決が、訴願庁たる被上告人において職権を以て事実を探知
しこれに基ずき選挙無効の裁決をなした違法を是認し(第九点)、また本件適法な
不在投票はいわゆる潜在的無効投票に外ならないのであるから、公職選挙法二〇九
条の二に従い各候補者の得票数から当該無効投票を按分して差引くべきに拘わらず、
事ここに出でなかつたのは違法である(第一〇点)というのである。しかし訴願に
おいては訴訟におけるが如く当事者の対立弁論により攻撃防禦の方法を尽す途が開
かれているわけではなく、従つて弁論主義を適用すべき限りではないから、訴願庁
がその裁決をなすに当つて職権を以てその基礎となすべき事実を探知し得べきこと
は勿論であり、必ずしも訴願人の主張した事実のみを斟酌すべきものということは
できない。次にいわゆる潜在的無効投票なるものは公職選挙法二〇九条の二の説明
の示す如く当選の効力に関する異議の申立、訴願の提起又は訴訟の提起があつた場
合において、各候補者の有効投票の計算方法について認められたものに過ぎない。
すなわち潜在的無効投票が所論のように各候補者の得票数から按分して差引くべき
ものとせられるのは、選挙そのものは選挙の規定に違反することなく適法に行われ
たに拘わらず選挙の当日選挙権を有しない者の投票その他本来無効なるべき投票で
あつてその無効原因が表面にあらわれないものでしかも有効投票に算入されたこと
が推定され、且つその帰属の不明なものあることが判明した場合に限るのである。
 もし、選挙そのものが選挙の規定に違反しそれにより選挙の結果に異動を及ぼす
虞があつて無効たるべき場合においては、たとえ当選の効力に関する異議の申立、
訴願又は訴訟の提起があつた場合にあつても、選挙管理委員会又は裁判所はその選
挙の全部又は一部の無効を決定し裁決し又は判決しなければならないのである(同
法二〇九条参照)。しかるところ、本件訴は選挙無効の訴であり、原判決は判示事
実を認定しそれに基ずいて本件選挙は選挙の規定に違反し、しかも選挙の結果に異
動を及ぼす虞ある場合に該当するものとしてその無効なることを判示したのである。
この原判示は首肯するに足る。
 それ故論旨はいずれも採るを得ない。
 同第一点及び第三点乃至八点について。
 所論は違憲をいう点もあるがその実質は単なる法令違反、事実誤認の主張を出で
ないものであつて、いずれも「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関
する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せ
ず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められな
い。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎

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