弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     被上告人(三)に関する原判決を破棄し、被上告人(三)が(イ)福岡
市ab番地のc田一反五畝一歩、(ロ)同市同所同番地の三畑一一歩の土地につい
て昭和二三年九月買収令書の交付を以て為した買収処分はこれを取消す。
     被上告人(一)に関する原判決中右(イ)の土地についての本件上告を
棄却し、同(ロ)に対する部分を破棄し、同土地につき昭和二三年五月三一日被上
告人(一)が為した買収計画を取消す。
     被上告人(二)に対する本件上告を棄却する。
     上告人と被上告人(一)との関係においては、訴訟の総費用(被上告人
(二)との関係において上告人の負担に帰する分をも含む)の四分の一づつを各自
が負担する。
     上告人と被上告人(二)との関係においては、訴訟費用の全部を上告人
の負担とする。
     上告人と被上告人(三)との関係においては、訴訟の総費用の四分の二
を被上告人(三)の負担とする。
         理    由
 上告代理人菅野虎雄の上告理由第一点について。
 原控訴判決が被控訴人(被上告人)(三)との関係において第一審判決書に示さ
れた摘示理由と同一理由によつて控訴人(上告人)の本訴請求を失当と認めるから、
右摘示理由をこゝに引用すると説示した第一審判決書の摘示理由に所論摘示のとお
り判示したことは、所論のとおりである。すなわち、その要旨は、本件は、自作農
創設特別措置法三条一項一号の不在地主の所有する小作地に該当すると共に同法三
条五項四号の「法人その他の団体の所有する小作地」にも該当するものとして認定
買収計画を定めたものではあるが、本件農地は小作地ではなく不耕作地と認定すべ
きものであるから、右条項四号の小作地の買収計画としては違法であるけれども、
同じく認定買収である同条項五号の不耕作地の買収計画としては適法であつて、右
両者の買収計画の間に処分の同一性が認められるから、結局本件買収計画、ひいて
は、買収処分は適法に帰するというのである。しかし、政府が、同法三条の規定に
よる買収をするには、市町村農地委員会の定める農地買収計画によらなければなら
ないものであることは同法六条一項の明定するところであつて、市町村農地委員会
が農地買収計画を定めるには、同条四項の規定によりその自作農となるべき者に関
する同条項の事項を勘案してしなければならないものである。そして、同法三条五
項四号により買収した小作地は、買収の時期における小作農に売り渡すべく(同法
施行令一七条一項一号)、同条項五号(後に六号に変更)により買収した農地は、
自家労力に比し農地の著しく不足している者に売り渡すべきもの(同令一七条一項
七号)であつて、両者の間に自作農となるべき者が異なるのであるから、同条五項
四号の小作地と同条項五号の不耕作地とは、農地委員会がその買収計画を定めるに
ついてその勘案すべき内容を異にするものであること明らかであるといわねばなら
ない。従つて、本件のようにD農地委員会が同法三条一項一号又は同条五項四号の
小作地として買収計画を定めたものであり、従つて、同条項五号の不耕作地として
これを定めたものでないことについて当事者間に争のない場合においては、たとい
裁判所が本件土地が同条項五号にも該当するものと認められるとしても、右農地委
員会において同号により買収計画を定めたものでない以上政府は買収することがで
きないものといわなければならない。それ故、両者の間に処分の同一性を認め、本
件買収計画ひいては本件買収処分を適法とした原判決は失当であり、また、D農地
委員会が小作地でない不耕作地を小作地として買収計画を定めたのは違法であると
いわなければならない。されば、論旨は、その理由がある。
 そして、原判決は前記理由を以て、被控訴人(三)との関係において上告人の本
訴請求を失当と認めその控訴を棄却したものであるから、原判決中右部分を破棄し、
民訴四〇八条により主文掲記の本件(イ)(口)の土地について昭和二三年九月買
収令書の交付を以て為した買収処分はこれを取消すべきものとする。また原判決は、
上告人と被控訴人(被上告人)(一)との関係において本件(口)の土地について
は同一理由を以て上告人の本訴請求を失当と認めその請求を棄却したものであるか
ら、この部分に対する原判決をも破棄し、民訴四〇八条により同(口)の土地につ
き被上告人(一)が昭和二三年五月三一日為した買収計画はこれを取消すべきもの
とする。
 同第二点について。
 自作農創設特別措置法第三次改正四七条の二の規定は、同法による行政処分に対
する訴の出訴期間を定めた規定であつて、財産権の保障に関する法律規定には何等
の関係もないから、所論憲法二九条に違反するとの所論は、その前提を欠き採用で
きない。
 そして、原判決は、上告人の被控訴人(被上告人)(一)に対する本件(イ)の
土地についての本訴は、右四七条の二所定の出訴期間を経過し不適法であるとして
上告人の訴を却下した第一審判決を結局是認してその控訴を棄却したものであるか
ら、この部分に対する本件上告はその理由なく棄却を免れない。
 なお、原判決は、上告人の被上告人(二)に対する請求は本件取消訴訟の対象と
なるべき行政処分ではないとしてその請求を失当と認めその控訴を棄却したもので
あつて、その判断は正当であると認められるから、本件上告も失当と認めこれを棄
却すべきものとする。
 よつて民訴三九六条、三八四条一項、四〇七条、四〇八条、九六条、八九条、九
二条、九三条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    入   江   俊   郎

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