弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を無期懲役に処する。
未決勾留日数中150日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,顔見知りのA(当時48歳)を殺害して金品を強取しようと企て,平
成17年1月11日午前9時15分ころ,大阪市a区bc丁目d番e号fg号室の
B方において,Aの頸部を,自転車かご用カバーネットを用いて強く絞めつけ,そ
のころ,同所において,同女を窒息死させた上,Bら所有の現金約61万5000
円及び財布等4点(時価合計6000円)を強取したものである。
(証拠の標目)
省略
(法令の適用)
被告人の判示所為は刑法240条後段に該当するので,所定刑中無期懲役刑を選
択して被告人を無期懲役に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中150日を
その刑に算入し,訴訟費用は刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に
負担させないこととする。
(量刑の理由)
1本件は,顔見知りの女性方で同女を絞殺して現金等を強取した強盗殺人の事案
である。
2本件犯行に至る経緯をみると,被告人は,学生時代からパチンコや競馬等のギ
ャンブルを始め,妻と結婚した後もこれにのめり込み,そのため多額の借金を抱
え,妻に咎められて家出を繰り返し,親族に借金の清算をしてもらっても,ある
いは,長年勤めた会社を辞めて得た退職金を借金返済に充てても,ギャンブルを
やめることができず,消費者金融等から多額の借金をしてはこれをたちまちギャ
ンブルに費消し続け,ついに平成14年には家族に無断で自宅を担保に入れてま
で消費者金融から融資を受けてギャンブルに費消し,他方,新たに就いた仕事は
長続きせず,本件犯行前の平成16年12月ころ,度重なる借金等が要因となっ
て自宅に居づらくなって家出をし,公園等で野宿生活をするうち,所持金もなく,
食べる物にも窮し,まとまった金を手に入れて,それを元手にギャンブルで増や
し,借金を返済するとともに不安定で惨めな生活から抜け出そうなどと思うに至
り,以前の勤務先で被告人の部下のパート従業員であった被害者に借金を申し込
み,これを断られれば同女を殺害してでも同女方にある現金等を奪おうなどと考
え,ついに本件犯行に及んだというのである。このように,本件犯行は,多額の
借金を抱えた野宿生活から抜け出すための金を得ようとして敢行したものである
が,被告人が多額の借金を抱えて,野宿生活を余儀なくされるに至ったのは,ひ
とえに被告人自身の自堕落な生活態度が原因であって,自ら招いたそのような苦
境を脱するために他者の生命を奪って金を得ようとした被告人の態度は余りにも
短絡的で身勝手極まりなく,犯行に至る経緯や動機に酌量の余地はまったくない。
3次に,犯行態様をみると,被告人は,被害者方に赴き,久闊を叙するふりをし
て上がり込み,同女に借金を申し込んだものの断られ,退出を促された際,立ち
上がって退出するそぶりを見せつつ,振り向きざまに突如として同女の頸部にひ
も状に伸ばした自転車かご用カバーネットを巻きつけて強く絞めつけ,同女が倒
れ込んだ後も背後から強く絞め続けたのである。そして,被害者が動かなくなる
や,すぐさま室内にあったバッグの中の金品を物色し始め,その際,同女が声を
発したことから,同女が息を吹き返したのではないかと思って,うつ伏せに倒れ
ていた同女の背中に馬乗りになり,再び上記ネットを頸部に巻きつけて,息が絶
え,心臓の鼓動が止まるのを確認するまで絞め続けたというのである。誠に残忍
で冷酷非道な犯行というほかはない。
なお,弁護人は,本件は強固な犯意に基づく計画的犯行ではなく,被告人に確
定的殺意が生じたのは,犯行当日に被害者に借金を断られた後であったと主張し,
被告人も,まずは被害者に借金を申し込み,貸してくれないときには被害者を殺
害してでも金を奪おうと考えた旨供述する。実際にも,被告人は,被害者に対し
てまず金を貸して欲しい旨申し出たというのであって,被害者が被告人の申し出
に応じればそれで済ませようという気持ちもあったことは否定できない。しかし
ながら,被告人は,被害者に借金を申し込んでもおそらく断られるであろうと予
測し,断られた場合には被害者を絞殺することをあらかじめ企図し,そのための
凶器として自転車かご用カバーネットを利用することとして,その四隅について
いたフックを取り外して同ネットを伸ばしてひも状にし,これをジャンパーのポ
ケットに忍ばせ,取り出しやすいように同ネットの端をポケットの外に少し出し
ておき,さらに,指紋が残らないように手袋をするなどの準備をした上,被害者
の夫が不在となる時間帯を見計らって被害者方に赴き,被害者に借金を断られる
や,あらかじめ計画したとおり,躊躇することなく被害者の頸部を上記ネットで
絞め続けて殺害したのであって,被告人は,本件犯行の約1週間前に犯行を企図
した当初から,被害者殺害を借金申込拒絶という一定の事態の発生にかからせて
いたにせよ,そのようなときには被害者を殺害して金品を強取しようという意思
を確定的に有していたものであり,その犯意は強固なものであったといわざるを
得ず,また,本件は計画的犯行であったともいわざるを得ないのである。なお,
被告人は,犯行に及ぶ前には自分には被害者を殺害することなどできないだろう
と思っていた旨の供述もするが,そうであったにしても,被告人は,自分が陥っ
ている苦境を脱するには犯行に及ぶしかないと考えて犯行の準備をし,現に企図
したとおりの犯行に及んだのであるから,その犯意は当初から強固であったとい
うほかないし,その犯行は計画的との評価を免れない。
4そして,被告人は,被害者方にあった金品を奪った後,自分の指紋がついたコ
ーヒーカップや新聞紙等を被害者方から持ち去るなどの罪証隠滅工作を冷静沈着
に行った上,直ちに東京まで逃走し,何事もなかったかのように強取金でパチン
コに興じ,僅か1か月弱のうちに強取金を生活やギャンブルに使い果たしたので
あって,犯行後の情状もはなはだ芳しくない。
5本件犯行の結果は,改めていうまでもなく極めて重大である。被害者は,夫と
2人で充実した生活を送り,親族との関係も円満で,姪らにも慕われる幸せな日
々を過ごしていたのに,最も安全な場所であるべき自宅において,突如として被
告人による理不尽な凶行の犠牲となり,何の抵抗もできないまま,恐怖と苦痛の
中で,48歳という若さで,その生を終えたのである。被害者がこのような凶行
に遭わなければならない理由は何もない。たまたまかつて被告人のもとで働いた
ことがあったばかりに,被告人の手にかかって命を奪われるという被害に遭った
のである。被害者は,外出する間際の忙しい時刻に訪ねてきた被告人を,親切に
も自宅に招き入れ,コーヒーをふるまうなどしたものであって,被告人から感謝
されることこそあれ,命を奪われる理由など何もない。親切心があだとなって苦
悶のうちにその生涯を閉じることとなった被害者の無念さは察するに余りある。
遺族の悲哀や喪失感も甚大であって,被害者の夫や妹が公判廷で被告人に対する
極めて厳しい処罰感情を吐露しているのは,至極当然のことといわなければなら
ない。また,被告人は,被害者方にあった61万円余りの現金等を強取したので
あって,財産的被害も大きい。
6以上みたところによれば,被告人の刑事責任は極めて重かつ大である。
7他方,被告人は,本件犯行の約1年半後に逮捕されてからは,捜査・公判を通
じて,被告人しか知り得ない事実も含めて犯行に至る経緯や犯行状況等の事実関
係を詳細に供述し,極刑に処されることも厭わない,むしろ極刑を望む旨述べる
などして,人生に対する諦念も入り交じった感情からとはいえ,被告人なりの反
省の態度を示しており,被害者遺族の意見陳述を聴くに及んで,謝罪の言葉も述
べるに至っている。また,被告人は,消費者金融等から過払金の返還として得た
金員を,弁護人を通じて,弔慰金として被害者の遺族に届けている。そして,被
告人には前科がなく,被告人のため塗炭の苦しみを受けたはずの妻が情状証人と
して出廷し,被告人の帰りを待ち続ける旨述べるなどしている。これらはいずれ
も被告人のために些かなりとも酌むべき事情と認められる。
8しかし,既にみた本件犯行の極めて重大な結果,それを惹起した被告人の刑事
責任の重さにかんがみれば,被告人のために酌むべき事情を十分に斟酌してもな
お,被告人には終生ひたすら贖罪に努めさせるのが相当であって,酌量減軽をな
すべき事情があるとは到底認められない。そこで,被告人に対しては,無期懲役
刑をもって臨むこととした次第である。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑無期懲役)
平成19年1月25日
大阪地方裁判所第12刑事部
川合昌幸裁判長裁判官
増田啓祐裁判官
設樂大輔裁判官

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