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平成20年3月19日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成18年(ネ)第10065号特許権侵害差止請求控訴事件(原審・東京地方裁
判所平成17年(ワ)第2274号)
平成20年2月13日口頭弁論終結
判決
控訴人オーテーベーソシエテアノニム
訴訟代理人弁護士中島和雄
補佐人弁理士川口義雄,小野誠,坪倉道明
被控訴人オルガノ株式会社
訴訟代理人弁護士永島孝明,安國忠彦,明石幸二郎
補佐人弁理士中尾俊輔,伊藤高英,畑中芳実,大倉奈緒子,
玉利房枝,鈴木健之,磯田志郎
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30
日と定める。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴人
(1)原判決を取り消す。
(2)被控訴人は,別紙1「物件目録」記載の超高速凝集沈殿装置を製造し,販
売し,又は販売の申出をしてはならない。
(3)訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2被控訴人
主文1,2項と同旨
第2事案の概要
本件訴訟における以下の経緯は,いずれも当事者間に争いがないか,又は裁
判所に顕著な事実である。
1控訴人は,下記の特許権(以下「本件特許権」という。)の特許権者である
ところ,原審において,被控訴人が製造,販売する原判決別紙1物件目録1
(イ号装置)及び2(ロ号装置)記載の装置を用いた方法が本件特許権の特許
請求の範囲の請求項1及び2に係る発明(以下,請求項1に係る発明を「本件
発明1」,請求項2に係る発明を「本件発明2」といい,これらを「本件発
明」という。)の技術的範囲に属し,かつ,イ号装置及びロ号装置が本件発明
の方法の使用にのみ用いるものであると主張して,被控訴人に対し,主位的に
本件発明1に係る特許権に基づき,予備的に本件発明2に係る特許権に基づき,
イ号装置及びロ号装置の製造,販売等の差止めを求めた。

特許番号特許第2634230号
発明の名称細砂を用いて沈降により液体を処理するための方法及び装置
優先権主張1988年2月25日フランス共和国
特許出願日平成元年2月23日
特許登録日平成9年4月25日
訂正前の特許請求の範囲
【請求項1】コロイド混入及び不安定化スペースが内部につくりあげられてい
る未処理液流内に試薬を注入するという沈降による液体処理法であって,前記
液流は中間コロイド凝集スペース内を循環し,次に清澄化された液体が取出さ
れる分離板を備える沈降スペースに入り,液より濃厚な不溶性粒状物質があら
かじめ定められた比率で,乱流が維持される混合スペース内の液中に注入され,
乱流は中間凝集スペース内に生じて粒状物質を懸濁状態に保ち,事実上すべて
の粒状物質が沈降スペースにもたらされ,沈降スペース内で回収されたスラッ
ジが除去され,粒状物質がそこから除去され,洗滌後に再循環されることを特
徴とする,方法。
【請求項2】混合スペース内で,中間凝集スペース内で維持されるものより明
らかに大きな速度勾配が維持されることを特徴とする,特許請求の範囲第1項
に記載の方法。
2これに対し,被控訴人は,①イ号装置を製造,販売していることを否認する
とともに,②原判決別紙4記載の「ロ号方法」は,本件特許権の技術的範囲に
属しない,③本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものと認めら
れ,本件特許権を行使することができない,と主張した。
3原審は,①被控訴人がイ号装置を製造,販売していると認めるに足りる証拠
はない,②本件特許は進歩性を欠き,特許無効審判により無効にされるべきも
のと認められるから,控訴人はロ号方法に対し本件特許権を行使することがで
きない,と判示して,控訴人の請求を棄却した。
4控訴人は,原判決のうち,ロ号装置の製造,販売等の差止請求を棄却した部
分のみを不服として控訴を提起するとともに,控訴提起後の平成18年9月1
2日に訂正審判請求をしたが(訂正2006−39150号事件),当裁判所
は,平成18年11月8日の第1回口頭弁論期日において,本件の口頭弁論を
終結した。
特許庁は,平成19年3月27日,上記訂正審判請求事件について,「特許
第2634230号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正
明細書及び図面のとおり訂正することを認める。」との審決(以下,この審決
を「訂正審決」といい,訂正審決による訂正を「本件訂正」という。)をし,
同年4月6日,審決書の謄本が控訴人に送達された(本件訂正後の明細書(甲
第22号証)は別紙2のとおりであり,以下「訂正明細書」という。)。
本件訂正後の特許請求の範囲(以下,本件訂正後の請求項1に係る発明を
「本件訂正発明1」,訂正後の請求項2に係る発明を「本件訂正発明2」とい
い,これらを「本件訂正発明」という。)は,下記のとおりである(訂正部分
を下線で示す。)。

【請求項1】コロイド混入及び不安定化スペースが内部につくりあげられて
いる未処理液流内に試薬を注入するという沈降による液体処理法であって,前
記液流は中間コロイド凝集スペース内を循環し,次に清澄化された液体が取出
される分離板を備える沈降スペースに入り,液より濃厚な不溶性粒状物質があ
らかじめ定められた比率で,中間凝集スペース内で維持されるものより大きな
速度勾配の乱流が維持される混合スペース内の液中に注入され,乱流は中間凝
集スペース内に生じて粒状物質を懸濁状態に保って凝集体を成長させ,その速
度勾配は成長した凝集体の破壊をもたらさず,事実上すべての粒状物質が沈降
スペースにもたらされ,沈降スペース内で回収されたスラッジが除去され,粒
状物質がそこから除去され,洗滌後に再循環されることを特徴とする,方法。
【請求項2】混合スペース内で,中間凝集スペース内で維持されるものより
明らかに大きな速度勾配が維持されることを特徴とする,特許請求の範囲第1
項に記載の方法。
5そこで,当裁判所は,本件の口頭弁論の再開を命じ,本件訂正後の特許請求
の範囲につき,更に審理をした。
以上の経緯により,本件の争点は,次の2点である。
(1)ロ号装置を用いた方法は,本件訂正発明の技術的範囲に属するか否か。
(2)本件訂正発明が特許無効審判により無効にされるべきものであるか否か。
第3当審における当事者の主張の要点
1争点(1)についての控訴人の主張
(1)本件訂正発明1の構成
本件訂正発明1の構成要件は次のとおり分説される(以下,各構成要件を
「構成要件①ないし⑦」という。)。
なお,訂正明細書及び図面(第1図)によれば,後記構成要件②の「中間
コロイド凝集スペース」と構成要件⑤の「中間凝集スペース」は同一のスペ
ースを意味するものと認められるから,以下,単に「中間凝集スペース」と
いう。
①コロイド混入及び不安定化スペースが内部につくりあげられている未処理
液流内に試薬を注入するという沈降による液体処理法であって,
②前記液流は中間コロイド凝集スペース内を循環し,
③次に清澄化された液体が取出される分離板を備える沈降スペースに入り,
④液より濃厚な不溶性粒状物質があらかじめ定められた比率で,中間凝集ス
ペース内で維持されるものより大きな速度勾配の乱流が維持される混合スペ
ース内の液中に注入され,
⑤乱流は中間凝集スペース内に生じて粒状物質を懸濁状態に保って凝集体を
成長させ,その速度勾配は成長した凝集体の破壊をもたらさず,
⑥事実上すべての粒状物質が沈降スペースにもたらされ,沈降スペース内で
回収されたスラッジが除去され,
⑦粒状物質がそこから除去され,洗浄後に再循環されることを特徴とする,
方法
(2)被控訴人方法
ロ号装置は別紙1「物件目録」記載の構成を有するから,被控訴人がロ号
装置を用いる方法(以下「被控訴人方法」という。)は,以下のとおりであ
る(以下,各要件を「要件アないしサ」という。)。ロ号装置をその構造に
即して合理的に使用すれば,その結果として,必然的に以下の凝集沈殿方法
を実施することになる。なお,控訴人が当審において主張する被控訴人方法
は,原判決別紙4記載の「ロ号方法」と一部表現が異なる。
ア被控訴人方法は,ロ号装置を使用して被処理水中の懸濁物質を除去するた
めの凝集沈殿方法である。
イ懸濁物質の混入した被処理水を導入した予備凝集槽14中で無機凝集剤を
添加して攪拌器12により攪拌し,懸濁物質を凝集させて微細フロックを形
成する。
ウ微細フロックを含む上記被処理水を導管3を介してフロック形成槽1内の
角錐形領域の底部に流入させる途次において,高分子凝集剤を添加する。
エ粒状物供給管5を介して被処理液より比重の大きい所定比率の粒状物(た
とえば砂)を上記角錐形領域に向けて落下させて供給する。
オフロック形成槽1内の攪拌器6により,微細フロック,高分子凝集剤及び
粒状物を含む被処理水を攪拌して上記角錐形領域内に大きな速度勾配の乱流
を維持しつつこれらを混合し凝集させてフロックを形成する。
カ上記フロックを含む被処理水をフロック形成槽1内の角筒形領域に移行さ
せ,攪拌器6により,上記角錐形領域内より小さい速度勾配であって,粒状
物の懸濁状態を保ちかつ成長したフロックを破壊しない範囲の速度勾配の乱
流を維持しつつ,これを循環させることにより,フロックを成長させる。
キ成長したフロックを移送口7を介して沈殿槽2に越流移送し,それに伴っ
て,事実上すべての粒状物が沈殿槽2にもたらされる。
ク沈殿槽2内で,分離板8の作用により,沈殿する汚泥及び粒状物と上澄み
の清澄水とに分離される。
ケ清澄水は沈殿槽2上部の取出口9から,汚泥及び粒状物の混合物は沈殿槽
2下部の排出口10から,それぞれ槽外に取出しまたは排出される。
コ沈殿槽2下部の排出口10から排出された汚泥と粒状物の混合物は,ポン
プ付配管11を通ってサイクロン4内に配送される。
ササイクロン4内で汚泥と粒状物は分離され,それぞれの排出口12,13
から排出されるが,粒状物は再び粒状物供給管5を介してフロック形成槽1
内の角錐形領域に向けて供給される。
(3)対比
本件訂正発明1と被控訴人方法とを対比すれば,被控訴人方法における要
件アないしサの各構成が本件訂正発明1の構成要件①ないし⑦に対応してこ
れらを充足することは,以下のとおり明らかであるから,ロ号装置は,被控
訴人方法の実施にのみ使用される装置である
構成要件①の「不安定化スペース」とは,凝集の行われる領域という意味
であるから,ロ号装置の予備凝集槽14及びフロック形成槽1の角錐形領域
は,併せて構成要件①の「コロイド混入及び不安定化スペース」に該当する。
構成要件④の「液より濃厚な」は,被処理水より比重が大きいという意味
である。また,「混合スペース」とは,粒状物質が凝集剤を含む被処理水と
混合される領域を意味するから,被控訴人方法においては,フロック形成槽
1の主として角錐形領域がこれに該当する。
構成要件②の「中間コロイド凝集スペース」と構成要件④,⑤の「中間凝
集スペース」とは同義であり,被控訴人方法においては,フロック形成槽1
の主として角筒形領域がこれに該当する。
構成要件②は,構成要件⑤の「凝集体を成長させ」るために必要な滞留時
間の確保のために,少なくとも中間凝集スペース内に循環流が生じることを
必須構成要件としたものであって,混合スペースに跨る循環流が生じるか否
かには関わりのない要件である。
被控訴人方法においては,「混合スペース」に相当するフロック形成槽1
内の角錐形領域は,「中間凝集スペース」に相当する角筒形領域よりも明ら
かに容積が狭く形成されているので,共通の一本の攪拌器で攪拌しても,角
錐形領域における乱流の速度勾配は,角筒形領域におけるそれよりも明らか
に大きくなり,構成要件④の「中間凝集スペース内で維持されるよりも大き
な速度勾配の乱流が維持される混合スペース」の要件を充たすことになる。
また,本件訂正発明2の付加的構成についても同様である。
(4)被控訴人による本件特許権侵害行為
以上によれば,被控訴人方法は,本件訂正発明1の構成要件をすべて充足
し,その技術的範囲に属する。また,本件訂正発明2についても同様である。
したがって,被控訴人方法の実施にのみ使用されるロ号装置は,本件訂正
発明の「方法の使用にのみ用いる物」(特許法101条4号)に該当するか
ら,その製造,販売及び販売のための申出をする行為は,いずれも本件特許
権を侵害するものとみなされる。
2争点(1)についての被控訴人の反論
(1)本件訂正発明1の構成要件が控訴人主張のとおり分説されることは認める。
(2)被控訴人方法についての認否
aロ号装置が別紙1「物件目録」の要件AないしEのとおりであることは,
認める。
要件F−1の「二段の撹拌翼のうち,下段は角筒形部の下端に…設けられ
ている」ことについて,ロ号装置の一部については認めるが,その余のロ号
装置については否認する。
要件F−2及びGは認める。
要件HないしLは認める。
ロ号装置が被控訴人方法の実施にのみ使用される装置であることは,否認
する。本件装置は,被処理水の流速を適宜変更することが可能であり,種々
の条件での凝集沈殿方法を実施することができ,被控訴人方法の実施にのみ
使用されるものではない。
b要件アないしウは認める。
c要件エのうち,「所定比率の粒状物」及び「粒状物を角錐形領域に向けて
落下させて供給する」ことは否認し,その余は認める。
控訴人の主張によれば,「所定比率の粒状物」とは,フロック形成槽1内
に導入される被処理水の量に対応して適宜に定められる量の粒状物を意味す
るとされるが,被控訴人方法においては,一定の濃度となるようにフロック
形成槽1の容積に応じて設定される量の粒状物が供給されるのである。
ロ号装置において,粒状物は,粒状物供給管5の下端からフロック形成槽
1内に供給されると,供給された粒状物は,フロック形成槽1内に発生した
乱流によって即座にフロック形成槽1内全体に一様に分散される。また,粒
状物供給管5の下端は,角錐形部と角筒形部の境界から約300∼1000
mm上方の角筒形部内に位置しているものと,境界から約100mm下方の
角錐形部内に位置しているものとが存在する。控訴人の「粒状物を角錐形領
域に向けて落下させて供給する」という主張自体不明確であるが,仮に粒状
物供給管5の内部において粒状物が液中を沈降している状態を指していると
善解しても,上記のとおり,粒状物がフロック形成槽1内に供給されれば,
乱流によって即座にフロック形成槽1内全体に一様に分散されるので,控訴
人の前記主張は,被控訴人方法における粒状物の供給方法を正確に示すもの
ではない。
d要件オ及びカについては否認する。本件方法においては,フロック形成槽
1内の撹拌器6によって,フロック形成槽1内の被処理水全体を撹拌してお
り,フロック形成槽1内には全体として一定の乱流が発生している。
e要件キは認める。
f要件クは否認する。被控訴人方法では,沈殿槽2に流入する吸合体の殆ど
は沈殿槽2の下部にそのまま沈降し,ごく一部の沈降速度の小さい吸合体の
みが水の流れに乗って沈殿槽2の上方に移送されるのである。本件装置にお
ける沈殿槽2内の分離板8は,この極一部の沈降速度の小さい吸合体を分離
するために設置されているものであり,控訴人が主張するように,「分離板
8の作用により,沈殿する汚泥及び粒状物と上澄みの清澄水とに分離され
る」のではない。また,「汚泥及び粒状物」は,正確には「無機のフロック,
高分子凝集剤(ポリマー)及び粒状物(沈降促進剤)の吸合体」(以下「吸
合体」という。)である。
g要件ケ及びコについて,沈殿槽2下部の排出口10から排出されるのは,
正確には「汚泥及び粒状物の混合物」ではなく,「吸合体」である。その余
は認める。
h要件サのうち,「粒状物は角錐形領域に向けて供給される」という点につ
いては否認し,その余は認める。前記のとおり,被控訴人方法において,粒
状物供給管5の下端からフロック形成槽1内に供給された粒状物は,フロッ
ク形成槽1内に発生した乱流によって即座にフロック形成槽1内全体に一様
に分散されるのである。
(3)対比について
a構成要件①の「コロイド混入及び不安定化スペース」は,コロイドを含む
未処理液体中に,試薬及び細砂を注入し,撹拌及び細砂によってコロイドを
不安定化させる領域であると解釈される。ロ号装置の「無機凝集槽14」に
は粒状物質が注入されず,また,「フロック形成槽1」にはコロイドを含む
被処理水が流入しない。したがって,被控訴人方法は,構成要件①の「コロ
イド混入及び不安定化スペース」を具備するものではない。
bロ号装置においては,角筒形領域と角錐形領域との間に循環流が形成され
ている。したがって,構成要件②の「前記液流は中間コロイド凝集スペース
内を循環し」を充足しない。
cロ号装置のフロック形成槽1内には,物理的な仕切り等は存在せず,全体
として一定の乱流が発生している。したがって,「中間凝集スペース内で維
持されるものより大きな速度勾配の乱流が維持される混合スペース」は存在
しないから,被控訴人方法は構成要件④を充足しない。
d本件訂正発明1の被処理液流は,「混合スペース」から「中間凝集スペー
ス」を経て「沈降スペース」の順に移行するものであり,液流は一方通行で
あり,スペース間を逆流するものではない。しかし,被控訴人方法において
は,控訴人が「中間凝集スペース」であると主張する「角筒形領域」と,
「混合スペース」であると主張する「角錐形領域」との間の循環流によって,
液流は「角筒形領域」と「角錐形領域」とを自由に移動している。これに加
えて,本件訂正発明1において,「混合スペース」に維持される乱流では,
「凝集体の破壊が生じている」と解されるのであれば,被控訴人方法が,本
件訂正発明1の構成要件⑤を充たさないことは,明らかである。
(4)以上のとおり,被控訴人方法は,本件訂正発明1の構成要件①,②,④及
び⑤を充足しないから,その技術的範囲に属するものではない。また,本件
訂正発明2についても同様である。
したがって,被控訴人方法の実施にのみ使用されるロ号装置は,本件訂正
発明の「方法の使用にのみ用いる物」(特許法101条4号)ではなく,そ
の製造,販売及び販売のための申出をする行為は,いずれも本件特許権を侵
害するものではない。
3争点(2)についての被控訴人の主張
本件訂正発明は,以下の無効理由により特許無効審判によって無効にされる
べきものである。
(1)無効理由1(特許法36条4項違反)
本件訂正後の請求項1及び2には,以下のとおり発明の構成に欠くことが
できない事項が記載されていない。
a本件訂正発明1には,四つのスペースが記載されているが,その外延が不
明瞭であり,その相違について判別することができない。
b「成長した凝集体の破壊をもたらさない」の記載は,抽象的であり,具体
的な速度勾配及びその範囲を特定することができないし,訂正明細書にはそ
の記載が存在しない。控訴人は,訂正審判請求書において,「総体として凝
集体が成長し,大きなフロックになる」と主張するが,何の根拠もない独自
の見解にすぎない。
c混合スペースの乱流の機能又は特性は限定されていないため,混合スペー
スと中間凝集スペースとを区別することができない。
d本件訂正発明2の「明らかに大きな速度勾配」とは,いかなる程度の速度
勾配の差であるのか不明確である。
(2)無効理由2(特許法36条3項違反)
訂正明細書の「発明の詳細な説明」には,当業者が容易に本件訂正発明を
実施することができる程度に,本件訂正発明1及び2の構成が記載されて
いない。
a上記「発明の詳細な説明」には,一つの撹拌槽内の一部の領域を「混合ス
ペース」とし,その他の領域を「中間凝集スペース」及び「中間コロイド凝
集スペース」としたものは,記載されていないし,示唆もない。
b上記「発明の詳細な説明」には,物理的な仕切りを設けずに,1台の撹拌
機によって,一つの攪拌槽内に異なる乱流を発生させることは記載されてい
ないし,示唆もない。
c訂正明細書中の「室1」と「室2」のうちの一部の領域におけるエネルギ
ーの算定方法について記載も示唆もないから,撹拌槽の一部の領域における
速度勾配を算出することができない。
d混合スペースの機能又は特性は限定されていないので,その乱流の速度勾
配は中間凝集スペースの乱流よりも速度勾配が大きければ足り,凝集体の
「破壊をもたらさない」ものも含まれる。しかし,上記「発明の詳細な説
明」によれば,非常に高いせん断係数を持つ二次乱流が生じているから,当
業者は,混合スペースの乱流が「粒状物質を懸濁状態に保って凝集体を成長
させ,その速度勾配は成長した凝集体の破壊をもたらさない」ものを含むと
は把握することができない。
(3)無効理由3(進歩性の欠如)
a本件訂正発明1の「混合スペース」及び「中間凝集スペース」の容易想到

厚生省監修『水道施設設計指針・解説』(1977年,日本水道協会)1
55頁左欄25行∼32行(乙第3号証。以下,原判決と同様に「引用例
2」という。)には,混和池(混合スペース)において急速に撹拌した後,
沈殿池でフロックを沈殿させるまでの間に,より緩やかな撹拌でフロックを
成長させるフロック形成池(中間凝集スペース)を設けることが開示されて
いる。
引用例2の161頁左欄11行∼13行には,混和池の後に続くフロック
形成池において砂粒を添加された微小フロックを緩やかに撹拌して成長させ
ることが実質的に記載されている。
フランス特許第1411792号公報(乙第2号証。以下,原判決と同様
に「引用例1」という。)記載の発明(以下,原判決と同様に「引用発明
1」という。)において,後に続く沈降処理を容易にするため,筒1から清
澄化室までの間に,強い撹拌状態の混和池と,それよりも弱い撹拌状態のフ
ロック形成池とを設けることは,当業者が容易に行い得る事項である。
訂正審決は,引用例2の砂粒添加に関する記載について,「これが如何な
る装置であるのか,混和とフロック形成の凝集操作で行われ[る]ものかも
特定できない。」とし,本件訂正発明1の技術的意義を窺わせる記載も示唆
もないと判断したが,この記載は「薬品沈でん池」の項にあり,「薬品沈で
ん池」とは,混和池およびフロック形成池から構成される凝集地の後に設け
られることを前提としたものである。したがって,引用例2の砂粒添加に関
する記載に接した当業者は,その記載が「薬品沈でん池」の項に記載されて
いることから,その前段として混和池及びフロック形成池から構成される凝
集池が存在していると理解し,「凝集の段階で砂粒を添加してフロックの核
とし」の記載は混和池について言及したとものであると把握するから,訂正
審決の判断は誤った前提に基づくものである。
b本件訂正発明2の進歩性欠如
引用発明1の筒1において,上方の広い領域において維持される乱流より
も大きい速度勾配の乱流が下方の領域で発生する。よって,本件訂正発明2
の構成要件は引用例1に開示されている。
4争点(2)についての控訴人の反論
本件訂正発明に,控訴人の主張する無効理由はなく,特許無効審判によって
無効にされるべきものではない。
(1)無効理由1(特許法36条4項違反)について
本件訂正後の請求項1及び2の記載には,発明の構成に欠くことができな
い事項のみが記載されており,記載要件の違反はない。
(2)無効理由2(特許法36条3項違反)について
訂正明細書の「発明の詳細な説明」には,当業者が容易に本件訂正発明を
実施することができる程度に,本件訂正発明1及び2の構成が記載されて
おり,記載要件の違反はない。
(3)無効理由3(進歩性の欠如)について
a本件訂正発明1の「混合スペース」及び「中間凝集スペース」の容易想到
性について
引用例2のフロック形成池と本件発明の中間凝集スペースは同等のもので
はない。引用例2には,比重の大きい粒状物質を懸濁状態に保つ機能を有す
る領域は何ら開示されていないから,引用例1の筒1から清澄化室までの間
に循環させる領域を設けるなどの着想を得ることはあり得ない。
「砂粒添加に関する記載」の装置は,一般の「薬品沈でん池」ではなく,
「高速凝集沈でん池」である。すなわち,専ら沈降(沈でん)過程において
同時にフロックの凝集,成長を図る装置を指している。引用発明1の「シク
ロフロック」装置はまさに「高速凝集沈でん池」の例にほかならない。
被控訴人の主張は,「砂粒添加に関する記載」が「薬品沈でん池」である
かのように誤解し,「薬品沈でん地」の前段に「凝集池」が置かれているこ
とに注目したものである。しかし,「砂粒添加に関する記載」の装置が「高
速凝集沈でん地」であることは前述のとおりである。「高速凝集沈でん地」
の前段には「凝集池」は置かれていない。よって,被控訴人の主張は根本的
に成り立たない。
b本件訂正発明2の進歩性欠如について
本件訂正発明1について述べたところは,本件訂正発明2にもそのまま妥
当するから,上記aと同様に,被控訴人の主張には理由がない。
第4当裁判所の判断
1本件訂正発明
本件訂正後の請求項1及び2の記載が前記第2の4のとおりであり,本件訂
正発明1の構成要件が前記第3の1(1)のとおり分説されることは,当事者間
に争いがない。
2争点(1)について
控訴人は,被控訴人方法が本件訂正発明1の構成要件①ないし⑦を充足する
と主張するのに対し,被控訴人は,構成要件①,②,④及び⑤を充足しないと
主張する。そして,控訴人は,構成要件②,④及び⑤について,被控訴人方法
におけるフロック形成槽1の主として角筒形領域が構成要件②及び⑤の「中間
凝集スペース」に,同じく主として角錐形領域が構成要件④の「混合スペー
ス」にそれぞれ該当すると主張する。そこで,まず,構成要件②の充足の有無
について検討する。
(1)乱流の速度勾配
a控訴人は,本件訂正発明1における「乱流」の技術的意義について,中間
凝集スペース内では,「接触衝突機会を増大させ,懸濁状態で循環させるこ
とによって沈澱を防止しつつフロック成長に十分な滞留をさせ,相俟ってフ
ロックの濃厚化を助長する。」ものであり,また,「混合スペース」の速度
勾配について,「『中間凝集スペース内で維持される乱流より速度勾配が大
きい』もので『混合スペース』内で維持される乱流の速度勾配が,成長した
凝集体の破壊をもたらす程度の速度勾配を意味することは,請求項の文言自
体の合理的解釈から自明であ」ると主張する。
b訂正明細書(甲第22号証)には,次の記載がある。
①「公知の方法において,フロックの濃厚化はフロックの生長を混乱させやすい撹
拌又は乱れが存在しないスペースで行われることが理解されよう。
本発明はこの方法で処理された液体の質を危うくすることなく沈降出力速度を
さらに高めることを目指す。
本発明は試薬が,コロイド混入及び不安定化スペースが生じる未処理液流に注
入された沈降により液体を処理する方法を提案する。前記液流は中間コロイド凝
集スペース内を循環し,次に清澄化された液体が移動される分離板を備える沈降
スペースに入り,本発明の特徴とするところは,液より濃厚な不溶性粒状物質が
流れが乱される混合スペース内の液中にあらかじめ定められた比率で注入され,
乱流は中間凝集スペース内に生じて粒状物質を懸濁状態に保ち,事実上すべての
粒状物質が沈降スペースにいたらされ,沈降スペース内で回収されたスラッジが
除去され,粒状物質がそこから除去され,洗滌後に再循環されることである。
本発明はさらに沈降により液体を処理する装置をも提案する。本装置は連続し
て,未処理液体及び試薬注入口及び撹拌装置を備えたコロイド混合不安定化室と,
中間凝集室及び,その上部に清澄化された液体取出口と,その下部にスラッジ回
収スペースを備えた分離板を備えた沈降室を備えており,その特徴とするところ
は,本装置が,液体中に不溶性の混合室内で液体より濃厚な粒状物質のための注
入口と,凝集室内に撹拌装置と,及び粒状物質注入口が結合された取出口へのス
ラッジ/粒状物質分離局へ沈降室内で回収されたスラッジを取出すための出口を
含んでいることである。」(5頁11行∼末行)
②「本発明は公知方法と関連して凝集スペース内のかなりの乱れを結びついた粒状
物質の使用を特徴とすることが理解されよう。殆んどの沈降は分離板を含む沈降
スペース内で生じ,これはまさしくより最近の方法が避けようと試みているとこ
ろのものである。
注入粒状物質が,どの公知方法に比較しても沈降速度を向上させることができ
ると考える理由が以前には存在しなかった。従って乱れは不利であると考えられ
ていた。このためには再循環に先立ってそこから形成されるスラッジを分離する
ため外部再生回路を付加する必要があり,さらに砂は特定の場合,その望ましく
ない研磨特性が当業者をしてその利用を断念させていた。
さらに,反応室と沈降室との間に凝集室を後者に沈降を生じることなく備える
ことに何らかの利点があることは明らかでなかった。しかしながら,より最近の
解決法はこの種の中間室をそこで沈降が生じないという明白な目的をもって備え
ている。
最後に最も重要な点は,中間室において粒状物質の粒子をとりまくコロイドの
凝集によって形成される凝集体の成長を沈降なしに達成することは不可能である
ことが明らかである。沈降なしにこれらの凝集体を懸濁状態に保つためには,一
見したところでは,砂の粒子上に物質を保持しておく,従って成長の現象を除外
することとは相容れないように思われる撹拌が必要である。従って粒子物質の使
用は一見したところでは,沈降なしの濃厚化室の構想を排除するように思われた。
しかしながら実験によれば,本発明は得られた液体の清澄化を危うくすること
なしに公知速度(30∼60さらには90m/h)より高い速度を達成することを可能にす
ることを示した。」(6頁1行∼19行)
「本発明方法の好ましい具体例では,そのいくつかが相互に結合されてもよい。
−混合スペースにおいては,中間凝集スペース内に維持されるよりはるかに大
きな速度勾配が維持される。
−細砂の場合には,中間凝集スペース内では400∼1,500sの速度勾配が達成さ
れる。
−細砂の場合には,混合スペース内に1,500∼4,000sの速度勾配が達成される。
−細砂の場合,混合スペース内の速度勾配は好ましくは3,000∼3,500sであり,
凝集スペース内の速度勾配は好ましくは700∼900sである。」(7頁4行∼10
行)
c以上によれば,構成要件②,④及び⑤について次のことが認められる。
(a)構成要件②及び⑤の「中間凝集スペース」は,当該スペース内で未処理
液流を循環させ,当該スペース内に生じる乱流が粒状物質を懸濁状態に保
って凝集体に成長させるスペースであり,そこにおける乱流の速度勾配は,
成長した凝集体の破壊をもたらさない点に技術的意義がある。
(b)構成要件④は「中間凝集スペース内で維持されるものより大きな速度勾
配の乱流が維持される混合スペース・・・」と規定しているから,「混合
スペース」内の乱流の速度勾配は「中間凝集スペース」内の速度勾配より
も大きい。
(c)構成要件⑤において,「中間凝集スペース」内の乱流の「速度勾配は成
長した凝集体の破壊をもたらさ(ない)」ものであるから,「混合スペー
ス」における乱流の速度勾配は凝集体の破壊をもたらし得る程度に大きい
ものである。
(2)未処理液流の移動方向
a本件訂正発明1においては,未処理液流の移動方向について,構成要件②
において「前記液流は中間コロイド凝集スペース内を循環し,」と規定し,
続いて,構成要件③において「次に清澄化された液体が取出される分離板を
備える沈降スペースに入り,」と規定しているから,上記液流が「中間凝集
スペース」から「沈降スペース」へ移動することは,明らかである。
また,構成要件④において「不溶性粒状物質が・・・混合スペース内の液
中に注入され」と規定し,構成要件⑤が「中間凝集スペース内に・・・粒状
物質を懸濁状態に保って・・・」と規定していることから,未処理液流が
「混合スペース」から「中間凝集スペース」へと移行することも明らかであ
る。
控訴人は,この点について「・・・『中間コロイド凝集スペース』とは,
明細書の記載を参照すれば,混合スペースと沈降スペースの中間にあって,
混合スペースの速度勾配の大きい乱流中で・・・混合した後,・・・循環さ
せ,それらの凝集体である大きなフロックに,実質的な破壊を伴うことなく
成長させる領域ということになる」と主張しており,未処理液流が,混合ス
ペース,中間凝集スペース,沈降スペースの順に移動すると述べている。
したがって,本件訂正発明1における液流は,「混合スペース」,「中間
凝集スペース」,「沈降スペース」の順に移動するものである。
b訂正明細書(甲第22号証)には,次の記載がある。
「本発明はこの方法で処理された液体の質を危うくすることなく沈降出力速度を
さらに高めることを目指す。」(5頁13行∼14行)
「本発明は,細砂を用いた公知方法に比較して,30∼60m/h及びさらには90m/hの
沈降速度が平常的に期待できる(レイノルズ数は200よりはるかに高い)から,非
常に明らかな量的増大が得られることが証明された。」(11頁28行∼12頁
1行)
また,上記「沈降速度」について,本件訂正の訂正審判請求書(乙第5号
証)には,次の記載がある。
「沈降速度(注:廃水処理速度または廃水処理効率をいう。)」(6頁3行∼8
行)
上記(1)に認定したとおり,「混合スペース」内における乱流の速度勾配
は,「中間凝集スペース」内のそれよりも大きく,かつ,凝集体の破壊をも
たらし得る程度に大きいものである。そのため,凝集体を含む未処理液流が
混合スペースに戻った場合には,一旦フロック化した凝集体が再び破壊され
ることになりかねないから,沈降(出力)速度すなわち処理速度を高めると
いう本件訂正発明1の目的及び効果が失われることになる。したがって,循
環により中間凝集スペース内で成長させた凝集体をあえて混合スペース内に
戻し,破壊を繰り返すことは,本件訂正発明が達成しようとした上記目的に
反するから,本件訂正発明1は,未処理液流を「中間凝集スペース」と「混
合スペース」との間で循環させる構成を採用するものではないと解される。
c上記の点を踏まえると,構成要件②の「前記液流は中間コロイド凝集スペ
ース内を循環し」との構成は,凝集体成長のために未処理液流を中間凝集ス
ペース内だけで循環させることを規定した要件であって,中間凝集スペース
と混合スペースとの間で未処理液流を循環させる構成を含むとは解されない。
なお,発明を具現化した場合に,中間凝集スペース内の循環中に混合スペー
スへ入り込む液流があり得るとしても,そのような逆流は本件訂正発明1が
本来意図するものではないことは上述したところから明らかである。
(3)ロ号装置のフロック形成槽1
ロ号装置のフロック形成槽1は,下方が角錐形領域,その上方が角筒形領
域から形成されているところ,この二つの領域の間には隔壁がなく,1台の
撹拌器によってフロック形成槽1内の被処理水を撹拌する構造であることは,
当事者間に争いがない。
ロ号装置においては,撹拌器による撹拌によってフロック形成槽1内の全
体で乱流が発生していると解されるから,被処理水は,フロック形成槽1内
の角錐形領域において砂が注入された後,槽内を上昇し,隣の沈殿槽に越流
移動するが,上記の構造からみて,下降流も存在しており,フロック形成槽
1内の被処理水は槽内全体にわたって循環しているものと認められる。
(4)構成要件②について
控訴人は,フロック形成槽1の主として角筒形領域が構成要件②及び⑤の
「中間凝集スペース」に該当し,主として角錐形領域が構成要件④の「混合
スペース」に該当すると主張する。
前記(2)cのとおり,構成要件②の「前記液流は中間コロイド凝集スペー
ス内を循環(する)」とは,未処理液流が中間凝集スペース内だけを循環す
ることを意味し,混合スペースと中間凝集スペースとの間で循環することま
では含まないと解される。ところが,控訴人主張のように,フロック形成槽
1内の上部と下部を区分し,上部の角筒形領域が「中間凝集スペース」に相
当するとした場合,前記(3)に述べたように,被控訴人方法においては,未
処理液流は,フロック形成槽1内の「中間凝集スペース」内にとどまらず,
「中間凝集スペース」と「混合スペース」との間で循環していることになる。
したがって,フロック形成槽1内の角筒形領域は,構成要件②の中間凝集ス
ペースには該当しない。
(5)控訴人の主張について
上記の点につき,控訴人は,構成要件②は,構成要件⑤の「凝集体を成長
させ」るために必要な滞留時間の確保のために,少なくとも中間凝集スペー
ス内に循環流が生じることを必須構成要件としたものであって,混合スペー
スに跨る循環流が生じるか否かには関わりのない要件であると主張する。
しかし,前記(2)のとおり,本件訂正発明1は,混合スペースから中間凝
集スペースへ未処理液流を移動させて中間凝集スペース内で凝集体を成長さ
せるものである。仮に,本件訂正発明1が,未処理液流が中間凝集スペース
と混合スペースの間を移動することを許容する余地があるとしても,訂正明
細書には,そのような移動を許容することを示した記載はない。さらに,被
控訴人方法は,フロック形成槽1の構造からして,フロック形成槽内の全体
にわたって液流が循環するものであるところ,前述した中間凝集スペースの
技術的意義に照らすと,本件訂正発明1がそのような態様まで包含するとは
到底認められない。したがって,控訴人の上記主張を採用することはできな
い。
(6)以上のとおり,被控訴人方法が構成要件②の「液流は中間コロイド凝集ス
ペース内を循環し」を充足するということはできない。
そして,本件訂正発明2は,混合スペース内の速度勾配が「中間凝集スペ
ース内で維持されるものより明らかに大きな」ものである点以外は,請求項
1の記載を引用しているものであるから,本件訂正発明1の構成要件②が充
足されない以上,被控訴人方法が本件訂正発明2の技術的範囲に属すること
はない。
3結論
以上によれば,控訴人の本訴請求は,その余の点について判断するまでもな
く理由がない。よって,これと結論を同じくする原判決は正当であるから本件
控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
田中信義
裁判官
古閑裕二
裁判官
浅井憲

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