弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人紺野稔、同原隆男の上告理由第一点について。
 所論は、原判決が、本件物件について昭和三四年一〇月二三日までに所有権移転
登記手続のなされなかったことをもってDの債務不履行となして被告人のなした本
件売買契約解除を有效と認めたが、本件売買契約においては、前同日右物件の引渡
が遅滞なくなされている以上、登記手続履践の義務は単なる附随的義務にすぎない
から、原審の右判断は誤っているというにある。しかし、原判決が確定した事実関
係の下においては、原判示は正当であり、論旨は独自の法律的見解を主張するにす
ぎない。それ故所論は採用できない。
 同第二点、第六点について。
 所論は、本件売買契約においては、昭和三四年一〇月二三日は売買の目的物件の
引渡期日たることに主眼が置かれており、所有権移転登記義務の履行期日ではない
等と主張するが、原判決が、その挙示の証拠関係から右期日が登記義務の確定した
履行期と定められたものであるとした事実認定ならびに右期日におけるDの右債務
の不履行を理由として本件特約に基づきなされた契約解除が有效であるとした判断
は、いずれも肯認できる。論旨は、原審が適法に確定した事実と相容れない事実を
前提として、事実審の裁量に委ねられた証拠の取捨判断および事実認定を非難する
にすぎず、採用できない。
 同第三点について。
 所論は、昭和三四年一〇月二三日被上告人が本件残代金五〇〇万円を所轄登記所
に携行したことが債務の本旨に従った有効な弁済の提供となるとした原審の判断を
非難するが、原審の右判断は正当である。論旨はひっきょう、独自の法律的見解に
立脚する議論であって、採用できない。
 同第四点について。
 原判決は、被上告人が本件登記義務につき履行遅滞に陥った後昭和三四年一〇月
二四日被上告人がDに対し、本件物件の登記を同月二七日まで猶予する旨了承した
ことを認定しているだけであって、所論のように、右登記義務の履行期限を改めて
同日に延期変更する旨の合意がされたとしているものでないことは、原判文に徴し
明白である。されば、論旨は前提を欠く議論であって、採用できない。
 同第五点について。
 原審が、本件売買契約における手附に関する特約の趣旨を、損害賠償の予定たる
性質を有する違約手附の約定であると判示していることは、原判決が確定した事実
関係ならびに挙示の証拠関係から正当と認められる。論旨は、特自の法律的見解を
述べるものにすぎず、採用できない。
 上告代理人外池簾治の上告理由第一点ないし第四点、上告代理人大塚今比古、同
栗山茂武の上告理由第一点ないし第三点について。
 所論のうち、上告代理人紺野稔、同原隆男の上告理由と趣旨を同じくする部分に
ついては、その理由のないことは、いずれも、前記上告代理人紺野稔、同原隆男の
上告理由に対し説示したとおりである。その他の論旨は、要するに、原審が適法に
確定した事実と相容れない事実を前提として、事実審の専権に属する証拠の取捨判
断および事実の認定を非難するか、もしくは独自の法律的見解に立脚して原判決の
判断を攻撃するものであって、いずれも採用できない。
 よって、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    斎   藤   朔   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    松   田   二   郎

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