弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     上告人高知県農地委員会の上告を却下する。
     上告人A農地委員会の上告を棄却する。
     上告費用は上告人等の負担とする。
         理    由
 上告人高知県農地委員会の上告ついて、
 右上告人の上告状には上告理由の記載がなく、また上告人が昭和二五年七月一〇
日当裁判所書記官から訴訟記録受領の通知を受けたことは記録中の送達報告書によ
つて明白であるから、上告人は右の通知を受けた日から三〇日以内に上告理由書を
提出すべきにかかわらずこれを提出しない。
 よつて民訴三九九条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見によつて、
主文のとおり判決する。
 上告人A農地委員会訴訟代理人弁護士田村三吉上告理由第一点について、
 論旨は、要するに被上告人Bと訴外Dとの間の本件農地に関する賃貸借契約の解
約は農地調整法九条三項による農地委員会の承認がないから效力がない。しかるに
原判決が右賃貸借契約は適法に解約されたものと判示したのは、法令の解釈を誤つ
た違法があるというに帰する。しかし原判決の認定するところによれば、右両者間
の賃貸借契約が合意によつて解除されたのは昭和二元年二月二八日であつて、当時
の農地調整法九条には農地の賃貸借契約の解除等について市町村農地委員会の承認
(附則により都道府県知事の許可と読みかえられる)を受けなければならない旨の
規定はあつたけれども、承認(許可)を受けないでした解約等が效力を生じない趣
旨の規定はなかつたのである。昭和二一年一〇月二一日法律四二号をもつて同条は
改正され「第三項ノ承認ヲ受ケズシテ為シタル行為ハ其ノ效力ヲ生セズ」の項が加
えられたのであるが、右改正以前においては承認(許可)を受けなくても解除、解
約等の效力に調係のないものと解するを相当とする。(最高裁判所昭和二五年(オ)
第二三四号、同二六年六月二六日第三小法廷判決参照)従つて原判決が右改正前に
行われた本件契約解除について承認(許可)のないにかかわらず適法になされたも
のとして判示したのは正当であつて論旨は理由がない。
 同第二点について、
 原判決が訴外Dが本件農地について、いわゆる遡及買収の申請をしたのは、自作
農創設特別措置法六条の二第二項二号にいう「請求が信義に反する」ものと判示し
たのに対し、論旨は信義に反するものでないと言うのである。
 原判決の認定するところによれば、本件買収計画の定められたのは、昭和二二年
五月一一日であつて、昭和二二年一二月法律二四一号による自作農創設特別措置法
改正によつて六条の二乃至五が加えられるより以前であるから、本件買収計画は右
改正前の附則二項によつたものであること明白である。本件買収計画が附則二項に
よつて定められたものである以上、その当否を裁判所が判断するのは右買収計画が
附則二項に適合するかどうかであつて、六条の二以下に適合するかどうかではない。
(最高裁判所昭和二五年(オ)第二二〇号同二七年一月二五日第二小法廷判決参照)
従つて原判決が本件遡及買収計画について、同法六条の二第二項二号に基いてこれ
を違法としたのは法律の適用を誤つたものと言わなければならない。しかし改正前
の附則二項では市町村農地委員会が遡及買収を相当と認めたときにのみ買収するこ
とを規定しているのであつて、前記昭和二二年一二月法律二四一号は右附則二項を
削除し新に六条の二乃至五を加えたのであるが、その趣旨は、附則二項で買収を相
当と認めてはならない場合を明白にするため、限定的に列挙した趣旨と解するを相
当とし、六条の二第二項各号に該当する場合の如きは、従前の附則二項の適用にお
いても買収を相当と認めてはならないのであつて原判決が本件買収計画の当否につ
いて六条の二第二項二号に該当するかどうかを審理したのは結局において正当に帰
する。而して原判決の認定する事実に基けば、訴外Dの遡及買収申請について、原
判決が信義に反するものと判断したのは正当である。論旨はこの間の事実について、
るる述べるところがあるけれども、原判決の認定しない事実に基く主張はこれを採
用することができないのであつて、論旨は理由がない。
 同第三点について、
 論旨は小作人の遡及買収申請が信義に反するかどうかは市町村農地委員会の判断
すべきことであつて、上告人委員会が買収を相当と認め計画を定めた以上その計画
を違法とすべき理由はないというのである。本件買収計画の当否は附則二項に基い
て判断すべきことは前段説明のとおりであるけれども、買収を相当とするかどうか
は決して農地委員会の自由に判断し得べきことではなく同法の趣旨に従い客観的遡
及買収を相当とする場合にのみ買収し得るのであつて、買収を相当としない農地に
ついて農地委員会が買収を相当と認めたからと言つて常に買収が適法であるとは言
えない。換言すれば買収を相当とするかどうかは委員会の自由に裁量し得ることで
はないのである。上述のように本件買収計画が法の期待に副わない以上、上告人委
員会が本件農地について如何に認定したか、如何に審議したかはこれを明かにする
必要はない。論旨は理由がない。
 以上説明するようにA農地委員会の上告は理由がないから、民訴四〇一条、九五
条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見によつて、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛