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判決 平成14年6月28日  神戸地方裁判所 平成13年(わ)第1291号,
第1395号,第1510号,平成14年(わ)第85号道路交通法違反,麻薬及び
向精神薬取締法違反被告事件
          主    文
被告人を懲役2年4月に処する。
未決勾留日数中100日をその刑に算入する。
押収してあるストロー片入りヘロイン5本(平成14年押第25号の1な
いし5)を没収する。
          理    由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 公安委員会の運転免許を受けないで,
1 平成13年7月31日午後2時54分ころ,兵庫県三田市ab丁目c番地付
近道路において,普通乗用自動車を運転した
2 同年11月22日午後8時49分ころ,神戸市d区ef丁目g番h号付近道
路において,普通乗用自動車を運転した
第2 法定の除外事由がないのに,同月22日ころ,同区ij丁目k番l号先路上
に駐車中の普通乗用自動車内において,ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)塩類を含
有する麻薬の粉末若干量を加熱気化させて吸引あるいはその他の方法によって自己
の体内に摂取し,もってジアセチルモルヒネ(ヘロイン)塩類を施用した
第3 みだりに,同月22日,同区mn丁目o番p号兵庫県A警察署において,ジ
アセチルモルヒネ(ヘロイン)塩類を含有する麻薬の粉末約1.458グラム(平
成14年押第25号の1ないし5はその鑑定残量)を所持した
ものである。
(証拠の標目)
(省略)
(補足説明)
1 関係各証拠によれば,被告人が,判示第2及び第3の各日時場所において,本
件ストロー片入りヘロイン(以下,「本件粉末」ともいう。)を施用及び所持した
ことは間違いがないと認められるところ,被告人は,それを下痢薬と思っていて,
ヘロインであることは知らなかった旨弁解するので,当裁判所が前示のとおり認定
した理由について,補足して説明する。
2 被告人の弁解は,概略,次のようなものである。すなわち,
「私は,下痢気味で腹がものすごく痛くなったので,以前,良い下痢薬を持って
いると聞いていたBA駅近くにいるC人を探し,声をかけてきた外人に下痢薬を買
うためC人を探していると話をすると,その外人は,俺がC人だと言って,ストロ
ー片入り本件粉末4本を持ってきた。私は,それを下痢薬と思って1万円で買い,
自動車に戻ったが,そのC人も自動車に乗り込み,別のストロー片入り本件粉末1
本を取り出して,その中の粉末を銀紙の上に少し出し,ライターの火で銀紙の下か
ら炙り,発生した煙をパイプで吸って見せ,使い方を教えてくれた。私は,同じよ
うにして煙を吸ったが,煙が臭くて吐き出してしまったところ,そのC人が吸えな
かったらジュースと一緒に飲んでもよいと言ったので,そのストロー片入り本件粉
末を口に入れ,ミルクティと一緒に飲み込んだ。そのC人は,このストロー片の開
けたところをライターの火で焼き付けて封をし,この使い残しのストロー片入り本
件粉末1本を自分にくれて,自動車から降りどこかへ行ってしまった。私は,これ
まで薬局に行ったことも,薬局で薬を買ったこともない。」などというものであ
る。
3 しかしながら,被告人の上記弁解は,下痢薬を薬局ではなくC人から買おうと
思ったという点,被告人がC人に下痢薬を買いたいと言ったというのに,C人がス
トロー片入りヘロインを持ってきたという点,被告人が1万円もするストロー片入
り本件粉末4本を下痢薬だと思ったという点,その下痢薬が加熱気化して吸引する
方法により使用するものであるという点などにおいて,不自然不合理である上,被
告人方からは薬局で販売されている薬が何種類も発見されており,被告人が,これ
まで薬局に行ったことも,薬局で薬を買ったこともないというのも,客観的事実に
反すると思われるのであるから,そのような弁解は全く信用することができない。
 むしろ,関係各証拠によれば,被告人は,平成9年から平成11年2月当時,
ヘロインを密売したり,それを吸って施用したりしていたものであって,そのヘロ
インも本件へロインと同様にストロー片入りのものであったことや,被告人方から
はヘロインの付着したストロー片も発見されていることが認められるのであるか
ら,これらを考え併せると,被告人が,本件ストロー片入りヘロインをヘロインと
認識した上で施用し所持していたことは十分推認できるということができる。
(累犯前科)
 被告人は,平成11年10月8日岡山地方裁判所で窃盗,道路交通法違反罪によ
り懲役1年8月に処せられ,平成13年4月22日その刑の執行を受け終わったも
のであって,この事実は検察事務官作成の前科調書(乙12)及びその裁判の判決
書謄本(乙20)によって認められる。
(法令の適用)
罰条
 判示第1の1,2の各行為 いずれも平成13年法律第51号附則9条により同
法による改正前の道路交通法118条1項1号,64条
 判示第2の行為      麻薬及び向精神薬取締法64条の3第1項,12条
1項
 判示第3の行為      麻薬及び向精神薬取締法64条の2第1項
刑種の選択         判示第1の1,2の各罪についていずれも懲役刑
累犯加重          刑法56条1項,57条(いずれも再犯の加重)
併合罪の処理        刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情
の最も重い判示第3の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重)
宣告刑           懲役2年4月
未決勾留日数の算入     刑法21条(100日)
没収      麻薬及び向精神薬取締法69条の3第1項本文
訴訟費用の不負担      刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の事情)
 本件は,無免許運転2回及びヘロインの自己施用と所持の事犯である。
 被告人は,平成9年9月に無免許運転と速度違反の罪により,平成10年1月に
無免許運転と一時不停止の罪によりそれぞれ罰金刑に処せられ,更には,判示累犯
前科のとおり,平成11年10月に窃盗と道路交通法違反(指定最高速度違反,無
免許運転3回)の罪により懲役1年8月に処せられて服役しておりながら,判示第
1の1,2の各犯行に及んだものであって,被告人には無免許運転の常習性が認め
られるだけでなく,判示第1の1の無免許運転の距離は約14.7キロメートルと
長く,また,判示第1の2の無免許運転中,パトカーの追跡を逃れるため一時停止
違反をして交差点に進入し,タクシーと衝突する交通事故まで起こしているのであ
るから,犯情はよくなく,被告人の刑事責任は軽くないというべきである。
 また,被告人は,かつてヘロインの密売や自己施用をしていたものであって,被
告人のヘロインに対する親和性や依存性の程度には看過できないものが窺われる
上,判示第2及び第3のヘロインの施用及び所持の罪を犯しながら,不自然不合理
な弁解に終始していて,全く反省の色が認められないのであるから,被告人の刑事
責任は重いといわざるを得ない。
 してみると,被告人が判示第1の1,2の各無免許運転の罪については認めて反
省の態度を示していることなどの,被告人のために酌むべき事情を考慮しても,主
文の刑はやむを得ないところである。
(検察官の科刑意見 懲役2年6月)
よって,主文のとおり判決する。
   平成14年6月28日
      神戸地方裁判所第12刑事係甲
              裁判官   森   岡   安   廣

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