弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴は何れもこれを棄却する。
     控訴費用は控訴人等の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は原判決を取消す。被控訴人等は各自神奈川県足柄下郡a村b地先別
紙定置漁業図記載の漁場において、漁業時期毎年六月一日より十二月十五日迄の間
控訴人等の右漁場使用の妨害となるべき漁網の張立、海浜の使用その他一切の行為
を為し、又は第三者をして為さしめてはならない。執行吏は右仮処分決定を明確に
する為適当な公示方法を為すべし。訴訟費用は第一、二審共被控訴人等の負担とす
るとの判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の供述は控訴代理人に於て漁業権等臨時措置法第五条により
漁業権の貸付契約は正当の事情ある場合を除き、その解除若くは解約をし又は更新
を拒み得ないものと定められた結果、控訴人の賃借した漁業権は賃借期間たる昭和
二十四年十二月十五日を以て終了せず将来も尚継続するに至つたものである。尚b
漁業協同組合は民法上の組合であつて、その組合員は何れもb漁業会の会員である
と述べ、後記の被控訴代理人主張事実を認め、抗弁撤回に異議がないと述べ、被控
訴代理人に於て被控訴人小田原水産興業株式会社は昭和二十四年一月十八日その商
号を株式会社小田原魚市場と変更した。被控訴人小田原水産興業株式会社即ち株式
会社小田原魚市場とb漁業会間の横浜地方裁判所小田原支部昭和二十三年(ワ)第
一八号漁業権賃借権確認訴訟事件に付、b漁業会は同支部にて昭和二十三年三月八
日敗訴の判決を受け、東京高等裁判所に控訴したが同年七月二十四日控訴を取下げ
た。尚右訴訟事件終了する迄の間暫定協定があつた旨の抗弁はこれを撤回すると述
べ、控訴代理人主張のb漁業協同組合は民法上の組合であり、その組合員はいずれ
もb漁業会の会員であることを認めると述べた外は原判決事実摘示と同一であるか
らここにこれを引用する。(疏明省略)
         理    由
 本件漁業権はb漁業会の有する所であるが、被控訴人株式会社小田原魚市場(以
下被控訴会社という)が昭和二十年六月一日これを右漁業会より同日以降昭和二十
四年十二月十五日に至る五漁期間賃借し、即日賃貸人たる漁業会の承諾を得てこれ
を被控訴人相海漁業経営組合(民法上の組合)と訴外b共栄組合(民法上の組合)
に転貸し、両組合は更に被控訴人b秋網経営組合(民法上の組合)を組織し、同被
控訴人にて漁業を経営し来つたことは、当事者間に争のないところである。而して
当審証人Aの証言により成立を認め得る甲第一号証同第二号証の一、同第三号証
(公文書の部分は成立に争がない)、同第九号証の三及び四、同第二十一号証の
二、原審証人B、原審及び当審証人Aの各証言を綜合すれば、b漁業会の会員の多
数は終戦後、右漁業権により漁業を自営したい意向であつたが、前記の如く既にこ
れを被控訴会社に賃貸していたので、これが対策として昭和二十二年四月二十二日
右漁業会は総会を開いて被控訴会社に対し右賃貸借契約解約の申入をなすこと及び
b漁業会の会員を以てb漁業協同組合を組織し、これに右の漁業権を賃貸すること
を決議し、これによつて実質上b漁業会に於て右漁業権による漁業を自営すると同
様の目的を達せんと図つたこと、翌二十三日右漁業会は被控訴会社に対し漁業権賃
貸借契約解除の意思表示をしたこと(この解除の意思表示ありしことは当事者間に
争がない)、次いで同年同月二十七日右漁業会の会員はb漁業協同組合(民法上の
組合)を組織し、控訴人三名をその業務執行者と定め、同日控訴人三名と右漁業会
との間にて、控訴人等が右漁業会より右漁業権を存続期間昭和二十二年六月一日よ
り同二十四年十二月十五日迄、賃料金一万千百円賃借権の讓渡転貸を為し得る旨の
特約付の賃貸借契約書を作成したこと、その後神奈川県庁に対し右漁業権賃借権の
登録申請手続を為し、昭和二十三年四月五日その免許漁業原簿に登録の為されたこ
とを認め得る。而して被控訴会社は右の如くb漁業会より解約の意思表示を受くる
や、同漁業会を被告として横浜地方裁判所小田原支部に漁業権賃借権確認の訴(昭
和二十二年(ワ)第十八号)を提起して昭和二十三年三月八日勝訴の判決を得、右
漁業会はとれに対し東京高等裁判所に控訴したが同年七月二十四日控訴を取下げた
ことは当事者間に争のないところである。
 凡そ漁業権は物権と看做されて土地に関する規定がこれに準用される結果、その
賃貸借は民法の規定中不動産の賃貸借に関する規定に従うこととなり、従つて漁業
権の賃貸借を免許官庁に登録したときは、不動産の賃借権が登記された場合と同様
の効力を生ずるのでおる。従つて右の如く控訴人等に於てb漁業会との間に本件漁
業権に関する賃貸借契約書を作成し、その賃貸借契約を紳奈川県庁の免許漁業厚簿
に登緑した以上、一見控訴人等の賃借権は爾後被控訴人等に対しても効力を生ずる
ものと考えられるのである。しかし前記認定の如くb漁業協同組合はb漁業会の総
会の決議に基いて組織され、その組合員は総てb漁業会の会員より成り、然もb漁
業協同組合の目的とするところは、正にb漁業会の意図して自ら為し得ざるところ
を、これに代つて実行せんとするものに外ならない。換言すればb漁業協同組合な
るものは、その背後に存在するb漁業会の傀儡であり、藁人形たるに過ぎず、単に
外部に対する関係に於て別個の存在の如く見えるものに止<要旨第一>る。而して近
時機関の観念を従来に於けるよりも広義に解し、一の団体が他の団体に対し全く従
属の関係に立ち、その道具又は手段として用ひらるるときは、その支配
団体と従属団体との間に機関関係ありと解する。而して斯る機関関係の存在する場
合、その従属団体がその名に於て背後の支配者のため契約を締結したとき、この背
後の支配者の責任を如何にして追求するかの問題を生じ、又従属団体と支配者との
間に契約の締結せられたとき、これを如何に解するか等の問題を生じ、斯る機関関
係は殊に近時企業集中の傾向の中にあつて、親会社がその支配下の機関会社に対す
る関係にて問題となるのである。
 <要旨第二>惟うに叙上の機関関係の存在する場合に於ては、たとえ、従属団体が
背後の支配者と経済的に一体を為すときと雖も、両者間に法律上契約の
締結せられ得ることを認めざるを得ず、決して簡単に両者間に於ける契約の存在を
否定し去り得るものではない。しかしこの場合には機関関係に於ける支配、利用の
関係の実体を究め、斯る観点よりこの契約の実質的内容を判断することを要する。
 今これを本件について見るに、前示認定によるときはb漁業協同組合なるものは
b漁業会に対し機関関係に立つものと認められ、且つ控訴人等はb漁業協同組合の
業務執行者である以上、これを前記機関関係について述べた所より判断すればb漁
業会と控訴人等との間の右漁業権賃貸借契約書となるものは漁業権そのものの賃貸
借を約したものとは認め難く、却つて斯る形式の下に、b漁業会がその機関たるb
漁業協同組合の業務執行者たる控訴人等に対し、自己の為漁業権を行使すべきこと
を命じ、控訴人等に於てこれを承諾したものに過ぎないものと認めらるるのであ
る。
 果して然らば控訴人等は漁業権をb漁業会より賃借したものと認むることを得
ず、而して控訴人等が既に漁業権の賃借人にあらざる以上、漁業権を賃借したりと
して免許官庁の免許漁業原簿に登録したとしても、その効力を生じないことは明で
ある。従つて漁業権に付賃借権の存在することを前提とする控訴人等の本件仮処分
の申請は爾余の点を判断する迄もなく、既にとの点に於て失当なること明白であ
る。
 仍て本件控訴はこれを棄却すべきものとし、民事訴訟法第三百八十四条第八十九
条を適用して主文の如く判決する。
 (裁判長判事 松田二郎 判事 岡崎隆 判事 多田威美)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛