弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成29年10月16日宣告
号,第478号,
第875号
住居侵入,窃盗,建造物侵入幇助(変更後の訴因建造物侵入),建造物侵入,横領,
不正競争防止法違反被告事件
主文
被告人を懲役6年に処する。
未決勾留日数中210日をその刑に算入する。
理由
(犯罪事実)
被告人は,
第1【不正競争防止法違反:平成29年7月27日付け起訴状記載の公訴事実】
株式会社A銀行から,同社において秘密として管理されている事業活動に有
用な同社の顧客の氏名及び住所等の情報であって,公然と知られていないもの
(以下「顧客情報」という。)を閲覧する権限を付与され,営業秘密を同社から
示されていた者であるが,顧客情報の照会オペレーションは,業務上必要なも
のに限り,かつ,顧客情報については,みだりにコピーをとってはならない旨
の営業秘密の管理に係る任務に背いて,同社のサーバコンピュータにアクセス
して,営業支援システムを起動させ,預金額が1億円以上の同社の顧客らを検
索するなどし,同顧客らの氏名及び住所等の検索結果を紙面に印字するなどの
方法により領得した顧客情報が記載された顧客名簿を,不正の利益を得る目的
で,平成28年7月5日頃から同月12日頃までの間に,福岡市a区bc番d
号B店において,顧客情報を第三者に開示してはならない旨の営業秘密の管理
に係る任務に背き,Cに交付し,もって営業秘密を開示した。
第2【建造物侵入:平成29年6月8日付け請求書による訴因等変更後の平成2
8年12月22日付け起訴状記載の公訴事実】
D,E,F,G,H及びCと共謀の上,金庫破りの目的で,平成28年8月
8日午後4時41分頃から同日午後5時7分頃までの間に,株式会社A銀行I
支店支店長Jが看守する福岡市a区ef丁目g番h号の株式会社A銀行K支店
に,職員専用出入口の施錠を外して侵入した。
第3【横領:平成29年5月2日付け起訴状記載の公訴事実】
平成28年8月23日,福岡市i区jk丁目l番m号のL3階事務室におい
て,Mから,現金1300万円を株式会社A銀行N支店に開設されたO名義の
普通預金口座に入金するよう委託を受けて受領し,これを前記Mのため預かり
保管中,その頃,同所付近において,自己の用途に費消する目的で着服して横
領した。
第4【住居侵入,窃盗:平成28年11月4日付け起訴状記載の公訴事実】
氏名不詳者らと共謀の上,平成28年10月6日午後10時頃,福岡市i区
no丁目p番q号のA銀行P寮r号のQ方に,金品窃取の目的で,無施錠の出
入口ドアから侵入し,その頃,同所において,同人所有又は管理に係る鍵及び
セキュリティカード等8点在中のナイロンケース1個(時価合計約1210円
相当)を窃取した。
第5【建造物侵入,窃盗:平成29年6月8日付け請求書による訴因変更後の同
年2月14日付け起訴状記載の公訴事実】
C,R,H,G及びSと共謀の上,金品窃取の目的で,平成28年10月6
日午後10時36分頃,株式会社A銀行T支店支店長Uが看守する福岡市s区
tu丁目v番w号の株式会社A銀行T支店に,職員専用出入口ドアの施錠を外
して侵入し,その頃,同所において,同人管理に係る現金5430万円を窃取
した。
(量刑の理由)
本件は,銀行員であった被告人が,①同銀行の顧客名簿を第三者に不正に交付し
(第1),②共犯者と共謀し,金庫破りの目的で勤務先の銀行の支店に侵入し(第2),
③顧客から預かった現金を横領し(第3),共犯者と共謀し,④社員寮の同僚の部屋
から別の支店の鍵等を盗み(第4),⑤それらを利用して同支店に侵入して現金を盗
んだ(第5)各事案である。
量刑を検討する上で中心となる⑤の建造物侵入,窃盗は,もとより被害額が54
30万円と相当に高額な重大事案である。鍵やセキュリティカード,現金保管用の
機器を撮影した映像等を入手し,必要な道具等を用意し,相当額の現金を被害店舗
に移動させるなどの準備をした上,相当数の共犯者らが相互に連絡を取り合い,指
示役,実行役,見張り役等の役割を分担して実行されている。このように,本件が
周到に準備された計画的,組織的犯行であることは明らかといえる。
被告人は,多額の借金をしていた共犯者Cから脅されるなどしてやむを得ず犯行
に関与したもので報酬も一切得ていない旨述べ,これを排斥するに足りる証拠まで
はない(検察官は,被告人とCとの間で債務免除等の報酬約束があったとみるべき
旨主張するが,これを根拠付ける適確な証拠は見当たらない。)。しかし,この供述
を前提としても,被告人は,銀行員の地位を利用し,自ら④の住居侵入,窃盗の犯
行に及んで入手した鍵等や被害銀行の内部情報を共犯者らに提供し,相当額の現金
を被害店舗に移動させるなど,不可欠かつ極めて重要な役割を果たしたといえる。
また,②の建造物侵入も同様に計画的,組織的犯行である上に被告人の役割は重
要といえる。③の横領では1300万円もの高額の被害が生じている。①の不正競
争防止法違反も,被害銀行で最も厳格に管理されていた顧客情報のうち,預金額が
1億円以上の顧客らの情報を②と⑤の共犯者に流出させており,悪用の危険性は高
かったといえる。現に預金を引き上げた顧客もいる。これらの各犯行についても,
いずれも犯情は悪い。一連の犯行により勤務先の被害銀行が少なからず社会的信用
を失ったものとうかがわれる点も看過し難い。以上によれば,被告人の刑事責任は
重く,相当期間の実刑は免れない。
他方,被告人は最終的には本件各犯行を認めて反省の態度を示している。③の横
領につき被害額の一部を事実上返済している。①の不正競争防止法違反はCからの
要求に応じた面があることが否定できない。その他,被告人には前科前歴がないこ
と,母親が出廷して支援を約束したこと,本件により解雇されたこと等の被告人の
ために酌むべき事情もあるので,これらの各事情を最大限考慮し,刑期については
主文のとおり定めることが相当と判断した。
平成29年10月16日
福岡地方裁判所第1刑事部
裁判官岩田淳之

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛