弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中、原審被控訴人敗訴の部分を破棄する。
     前項の部分につき、被上告人の控訴を棄却する。
     訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人古谷明一名義の上告状及び上告理由補充書並びに同田邨正義、同石井
吉一名義の上告理由補充書記載の上告理由について。
 原審が適法に確定した事実関係によれば、訴外E株式会社(以下、Eという。)
は、昭和四一年六月二四日被上告人よりその所有の本件農地(第一審判決別紙目録
(六)記載の土地)を含む六筆の本件土地を、建売住宅の敷地とする目的で買い受け、
本件農地につき農地法五条の許可を条件とする所有権移転仮登記を、その余の各土
地につき所有権移転登記を、それぞれ得たうえ、同年七月初旬、本件土地を上告人
の被承継人である原審被控訴人F工業株式会社(以下、被控訴会社という。)に対
する債務についての売渡担保として被控訴会社に譲渡し、同会社のため、本件農地
については右仮登記移転の附記登記を、その余の各土地については所有権移転登記
を、それぞれ経由したところ、被上告人とEとの前記売買契約(以下、本件売買契
約という。)は、Eの代表者の詐欺に基づくものであつたため、被上告人は、同年
七月二七日、Eに対し、本件売買契約の意思表示を取り消したが、被控訴会社は上
記の売渡担保契約(以下、本件売渡担保契約という。)に際し、右詐欺の事実を知
らなかつた、というのである。
 しかして、原審は、詐欺をした者から目的物を善意で転得した者がその所有権取
得について対抗要件を備えているときにかぎり、この者に対して詐欺による取消の
結果を対抗しえない旨説示したうえ、本件農地については被控訴会社はもとよりE
もその所有権を取得しているとはいいがたく、たんにその移転請求権を取得してい
るにすぎないし、かりにその現況のいかんにより所有権の移転が実現しているとし
ても、被控訴会社は所有権取得の対抗要件を備えている者ではないから、被上告人
は詐欺による取消の結果を被控訴会社に対抗できると判示して被控訴会社の抗弁を
排斥し、本件農地について被控訴会社が経由した仮登記移転の附記登記の抹消登記
手続を求める被上告人の請求を認容したことは、所論のとおりである。
 おもうに、民法九六条一項、三項は、詐欺による意思表示をした者に対し、その
意思表示の取消権を与えることによつて詐欺被害者の救済をはかるとともに、他方
その取消の効果を「善意の第三者」との関係において制限することにより、当該意
思表示の有効なことを信頼して新たに利害関係を有するに至つた者の地位を保護し
ようとする趣旨の規定であるから、右の第三者の範囲は、同条のかような立法趣旨
に照らして合理的に画定されるべきであつて、必ずしも、所有権その他の物権の転
得者で、かつ、これにつき対抗要件を備えた者に限定しなければならない理由は、
見出し難い。
 ところで、本件農地については、知事の許可がないかぎり所有権移転の効力を生
じないが、さりとて本件売買契約はなんらの効力を有しないものではなく、特段の
事情のないかぎり、売主である被上告人は、買主であるEのため、知事に対し所定
の許可申請手続をなすべき義務を負い、もしその許可があつたときには所有権移転
登記手続をなすべき義務を負うに至るのであり、これに対応して、買主は売主に対
し、かような条件付の権利を取得し、かつ、この権利を所有権移転請求権保全の仮
登記によつて保全できると解すべきことは、当裁判所の判例の趣旨とするところで
ある(昭和三〇年(オ)第九九五号同三三年六月五日第一小法廷判決・民集一二巻
九号一三五九頁、同三三年(オ)第八三六号同三五年一〇月一一日第三小法廷判決・
民集一四巻一二号二四六五頁、同三九年(オ)第一三九七号同四一年二月二四日第
一小法廷判決・裁判集民事八二号五五九頁、同四二年(オ)第三〇号同四三年四月
四日第一小法廷判決・裁判集民事九〇号八八七頁、同四六年(オ)第二一三号同四
六年六月一一日第二小法廷判決・裁判集民事一〇三号一一七頁参照)。そうして、
本件売渡担保契約により、被控訴会社は、Eが本件農地について取得した右の権利
を譲り受け、仮登記移転の附記登記を経由したというのであり、これにつき被上告
人が承諾を与えた事実が確定されていない以上は、被控訴会社が被上告人に対し、
直接、本件農地の買主としての権利主張をすることは許されないにしても(最高裁
昭和二九年(オ)第九七一号同三〇年九月二九日第一小法廷判決・民集九巻一〇号
一四七二頁、同三七年(オ)第二九一号同三八年九月三日第三小法廷判決・民集一
七巻八号八八五頁、同四六年(オ)第二一三号同四六年六月一一日第二小法廷判決・
裁判集民事一〇三号一一七頁参照)、本件売渡担保契約は当事者間においては有効
と解しうるのであつて、これにより、被控訴会社は、もし本件売買契約について農
地法五条の許可がありEが本件農地の所有権を取得した場合には、その所有権を正
当に転得することのできる地位を得たものということができる。
 そうすると、被控訴会社は、以上の意味において、本件売買契約から発生した法
律関係について新たに利害関係を有するに至つた者というべきであつて、民法九六
条三項の第三者にあたると解するのが相当である。
 論旨は、被控訴会社が被上告人に対して本件農地についての所有権移転請求権な
いし条件付所有権の取得を対抗できることを前提として原判決を非難するものであ
つて、本件売渡担保契約について被上告人がなんらの関与もしていない以上、その
前提を欠くけれども、被控訴会社が、被上告人のした本件売買契約の意思表示につ
き、民法九六条三項の第三者にあたると解すべきこと上述のとおりであつて、原審
は右法令の解釈適用を誤つているのであり、その誤りは判決に影響を及ぼすことが
明らかで、この点を指摘する論旨は、結局において理由があり、原判決は破棄を免
れない。
 そして、原審の確定した事実関係に右法令を適用すれば、本件農地についての被
上告人の本訴請求についても、被控訴会社の抗弁は理由があり、被上告人の右請求
は失当として棄却すべきものである。
 よつて、民訴法四〇八条、九六条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    下   田   武   三
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岸   上   康   夫

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