弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人等の負担とする。
         理    由
 被告人両名弁護人人見福松の上告趣意第一点について。
 論旨は原審の是認した第一審判決の判示第一の一の事実の認定につき証拠上の違
法又は理由不備があるという単なる訴訟法違反の主張に帰し、刑訴四〇五条に定め
る上告の理由にあたらない。
 同第二点乃至第四点について。
 各論旨は結局原審の是認した第一審判決の判示にそわない事実(所論赤皮の靴は
昭和二一年九月贈与を受け引続き所持する事実)を独断し、所持罪についての独自
の見解を展開し、これを前提として第一審判決の擬律錯誤と当裁判所の判例違反を
主張するに帰し、論旨すべてその前提を欠き、理由なき単なる訴訟法違反の主張に
とどまり、刑訴四〇五条に定める上告の理由にあたらない。
 同第五点について。
 論旨は原審の是認した第一審判決は被告人の自白にあたる司法警察員に対する供
述を録取した調書を刑訴三〇一条に違反して証拠調をし且つこれを証拠とした違法
があり、東京高等裁判所の判例に違反すというのであるが、第一審は現行犯人逮捕
手続書、捜索調書、受領証等の証拠調の後に、所論被告人の供述調書の証拠調をし
ていること記録上明らかであるから、右証拠調が所論刑訴の規定に反するものでな
いし、従つて所論の判例違反の主張はその前提を欠くから、論旨は明らかに刑訴四
〇五条に定める上告の理由にあたらない。
 同第六点について。
 しかし、所論の供述調書は、被告人Aが現行犯人として逮捕された日(昭和二四
年四月二日)から数日後(同月八日)に録取されたものであること、記録上明らか
なところであるから、同調書の供述は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白
にあたらない。されば所論違憲の主張はその前提を欠き、刑訴四〇五条に定める上
告の理由にあたらない。
 同第七点について。
 しかし、所論Aの供述調書が証拠能力を有するものであること第六点で説明した
とおりであるし、所論第一審判示の各事実とその挙示する各証拠と対照するときは、
いずれの事実をいずれの証拠によつて認定されたかが明らかであるから、原審の是
認した第一審判決には所論の違法はない。されば所論の違法を前提とする判例違反
の主張はその前提を欠き、刑訴四〇五条に定める上告の理由にあたらない。
 同第八点、第九点について。
 論旨第八点は第一審判決は審判の請求のなかつた事件について判決をした違法、
同第九点は同判決は証拠によらないで事実を認定した違法と審判の請求をうけた事
件について審判しなかつた違法があるという単なる訴訟法違反の主張に帰するから、
刑訴四〇五条に定める上告の理由にあたらないし、記録を精査するも本件には同四
一一条を適用して職権で原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認め
られない。
 同第一〇点について。
 しかし、所論の司法巡査B作成の差押調書及び占領軍作成の受領書(C分)は、
いずれも、所論の被告人Cの第一審公判廷における供述の補強証拠として何等欠く
るところがないから、第一審判決は被告人の自白を唯一の証拠として所論の判示事
実を認定してはいないのであるから、所論違憲の主張はその前提を欠きとるをえな
い。されば論旨は刑訴四〇五条に定める上告の理由にあたらない。
 同第一一点について。
 論旨は結局量刑不当の主張に帰し、刑訴四〇五条に定める上告の理由にあたらな
いし、同四一一条を適用すべきものとも認められない。
 よつて刑訴四〇八条、一八一条に従い全裁判官の一致で主文のとおり判決する。
  昭和二六年一一月一五日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    齋   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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