弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2東京入国管理局主任審査官が平成20年10月8日付けでした,控訴人に係
る仮放免不許可処分を取り消す。
第2事案の概要
1本件は,大韓民国(以下「韓国」という)の国籍を有する外国人の女性で。
あり,収容令書及び退去強制令書の執行を受けて東京入国管理局(以下「東京
入管」という)収容場に収容された控訴人について,その夫が仮放免許可申。
請をしたところ,東京入管主任審査官から平成20年10月8日付けでこれを
不許可とする処分(以下「本件処分」という)がされたため,これを不服と。
する控訴人(なお,本件処分後に入国者収容所東日本入国管理センター(以下
「東日本センター」という)に移収された)が,被控訴人に対し,本件処。。
分の取消しを求める事案である。
原審は,仮放免の請求に対する許否についての主任審査官等の判断が違法と
されるのは,主任審査官等がその裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用した場合に
限られ,控訴人主張に係る各事実は,退去強制令書の発付を受けて収容されて
いる者である控訴人に係る仮放免を許可すべき根拠となり難いものであり,そ
の他控訴人に人道的配慮を要する等の特段の事情があると認めることはできな
いとして,本件処分に係る東京入管主任審査官の判断に,裁量権の範囲の逸脱
又は濫用があるということはできないから,本件処分は適法であるとした。
控訴人はこれを不服として控訴した。なお,控訴人は,当審において,行政
事件訴訟法19条,38条に基づき訴えの追加的変更を申し立て,東京入管主
任審査官が平成20年10月1日付けで控訴人に対してした退去強制令書発付
処分が無効であることの確認,東京入管主任審査官が平成20年9月30日付
けで控訴人に対してした異議の申出に理由がないとの裁決が無効であることの
確認,及び東京入国管理局長が控訴人に対し在留資格を「日本人の配偶者等」
とし在留期間を3年とする内容の在留特別許可をすることをそれぞれ求め,こ
れらの関連請求に係る訴えの併合を求めたが,被控訴人がこれに同意しなかっ
たため,控訴人が併合を求めた同訴えの部分は,同法19条1項,16条2項
により当審における管轄を欠くに至った。そこで,控訴人は,これらの追加し
た訴えを東京地方裁判所に移送することを申し立て,同訴えは,同申立てのと
おり移送された。
2前提事実(証拠等により容易に認めることのできる事実であり,括弧内に認
定根拠を付記している)。
原判決の「事実及び理由」の「第2事案の概要」1(同2頁18行目から
同5頁6行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,同5
頁3行目から同頁4行目にかけての「処分(以下「本件処分」という」を。)
「本件処分」に改める。
3争点及びこれに関する当事者の主張の要旨
次のとおり当審における控訴人の補充主張を付加するほか,原判決の「事実
及び理由」の「第2事案の概要」2(同5頁7行目から同6頁3行目まで)
記載のとおりであるから,これを引用する。
憲法31条の規律は入管法上の収容にも及び,身体の自由の制限は憲法上許
容されている限度でのみ可能であって,入管法による身体の自由の制限は必要
,,,最小限度にとどめるよう解釈運用しなければならず身柄を確保することは
その実質的な必要性がある場合に限定されるべきである。控訴人は,日本人と
の間で婚姻関係を結び,当該日本人配偶者との間で共同生活の基盤を構築して
いるのであるから,身柄を確保する実質的な必要性は認められないというべき
であり,この趣旨は入管法54条の仮放免の手続にも同様に及ぶものというべ
きであるから,主任審査官が,入管法54条の仮放免の許可を判断するに際し
ては,身柄を確保する実質的な必要性を考慮する義務があり,広汎な裁量権は
認められないというべきである。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人の本件請求は理由がないと判断する。その理由は,次の
とおり当審における控訴人の補充主張について付加するほか,原判決の「事実
及び理由」の「第3当裁判所の判断」1及び2(同6頁5行目から同9頁9
行目まで)において説示するとおりであるから,これを引用する。
,,,控訴人は当審において憲法31条の規律が入管法上の収容にも及ぶため
入管法によって身柄を確保するには,その実質的な必要性がある場合に限定さ
れるべきである等と主張する。しかしながら,憲法上,外国人が本邦に入国す
ることについては何ら規定しておらず,国際慣習法上も,国家は外国人を受け
入れる義務を負うものではなく,特別の条約がない限り,外国人を自国に受け
,,,入れるかどうかまたこれを受け入れる場合にいかなる条件を付与するかを
当該国家が自由に決定することができるものとされていることに照らせば,憲
法上,外国人は,本邦に入国する自由を保障されているものでないことはもち
ろん,在留の権利を保障されているものでもないと解される。
入管法による身柄の確保は,上記のように解される憲法の下で,入管法が外
国人の入国及び在留管理の基本となる制度として在留資格制度を採用した上
で,外国人の本邦において行う活動が,在留資格に対応して定められる活動の
いずれかに該当しない限りは,入国及び在留を認めないこととしていることに
基づくものであって,国家が,在留資格に反した活動をし自国にとって好まし
くないと認める外国人を,強制力をもって国外に排除する退去強制手続を行う
に当たっては,前記判示のとおり身柄を収容して行うことが原則であり,身柄
を確保することはその実質的な必要性がある場合に限定されるべきであるとす
る控訴人の主張は,採用することができない。
また,仮放免制度は,特段の事情が存する場合に,一定の条件を付した上で
一時的に身柄の解放を認める例外的な制度であって,入管法の規定上,具体的
な判断基準等の定めがないことを考慮すると,仮放免の請求に対する許否の判
断が,主任審査官等の広範な裁量にゆだねられていることは前記判示のとおり
であって,身柄を確保する実質的な必要性がなければ仮放免を許可する義務が
主任審査官等にあるとは認められないというべきである。
よって,控訴人の当審における補充主張は採用することができない。
2以上によれば,控訴人の本件請求は理由がなく,これを棄却した原判決は相
当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとする。
よって,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第7民事部
裁判長裁判官大谷禎男
裁判官相澤哲
裁判官吉村真幸

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