弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人内野経一郎,同仁平志奈子の上告受理申立て理由(上告受理の申立理
由4項〔上告受理申立理由2〕を除く。)について
1本件の主位的請求は,上告人らに対する賃金の支払を命ずる仮執行の宣言を
付した判決に基づく強制執行において,民事執行法122条2項の規定により弁済
を行った被上告人が,所得税法(以下「法」という。)183条1項所定の源泉徴
収義務を負う者として,法221条の規定により税務署長から上記賃金に係る源泉
徴収すべき所得税(以下「源泉所得税」という。)を徴収されたが,上告人らから
上記源泉所得税の徴収をしていなかったと主張して,上告人らに対し,法222条
に基づき,上記相当額の各支払を求めるものである。
原審は,被上告人の主位的請求をいずれも認容すべきものとした。
2所論は,本件のように,賃金の支払をする者が,その支払を命ずる判決に基
づく強制執行による取立てなどによりその回収を受ける場合には,上記の者は,当
該賃金の支払の際に源泉所得税を徴収することができないから,法183条1項所
定の源泉徴収義務を負わないと解すべきであるというのである。
3法28条1項に規定する給与等(以下「給与等」という。)の支払をする者
が,その支払を命ずる判決に基づく強制執行によりその回収を受ける場合であって
も,上記の者は,法183条1項所定の源泉徴収義務を負うと解するのが相当であ
る。その理由は,次のとおりである。
法183条1項は,給与等の支払をする者は,その支払の際,その給与等につい
て所得税を徴収し,その徴収の日の属する月の翌月10日までに,これを国に納付
しなければならない旨を定めるところ,給与等の支払をする者が,強制執行により
その回収を受ける場合であっても,それによって,上記の者の給与等の支払債務は
消滅するのであるから,それが給与等の支払に当たると解するのが相当であること
に加え,同項は,給与等の支払が任意弁済によるのか,強制執行によるのかによっ
て何らの区別も設けていないことからすれば,給与等の支払をする者は,上記の場
合であっても,源泉徴収義務を負うものというべきである。上記の場合に,給与等
の支払をする者がこれを支払う際に源泉所得税を徴収することができないことは,
所論の指摘するとおりであるが,上記の者は,源泉所得税を納付したときには,法
222条に基づき,徴収をしていなかった源泉所得税に相当する金額を,その徴収
をされるべき者に対して請求等することができるのであるから,所論の指摘すると
ころは,上記解釈を左右するものではない。
4以上によれば,上告人らに対する賃金の支払を命ずる仮執行の宣言を付した
判決に基づく強制執行において,民事執行法122条2項の規定により弁済を行っ
た被上告人が上記賃金に係る源泉所得税の徴収義務を負うとした原審の判断は,正
当として是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官田原睦
夫の補足意見がある。
裁判官田原睦夫の補足意見は,次のとおりである。
法183条1項によれば,給与等の支払義務者は源泉徴収に係る所得税の徴収義
務を負うが,それは,給与等を現実に支払うに当たり,「その支払の際」に生じる
ものである。それゆえ,給与等の支給を受ける者の請求権が確定していても,その
支払義務者が実際にその支払をなすまでは,その徴収義務が生じることはない。ま
た,支払義務者が給与等の一部を支払った場合には,給与等の請求権の総額に対す
る実際の支払額の割合に応じた所得税を源泉徴収した上で,その納税義務を負うこ
とになると解される。
その理は,法廷意見にて述べるとおり,給与等の支払が任意の手続ではなく,強
制執行手続によってなされた場合であっても同様である。もっとも,強制執行手続
においては,執行債務者が徴収すべき源泉所得税を徴収する手続は予定されていな
いから,本件のように給与等の債権者がその債務名義に基づいて民事執行法122
条2項により弁済を受ける場合には,源泉徴収されるべき所得税相当額をも含めて
強制執行をし,他方,源泉徴収義務者は,強制執行により支払った給与等につき源
泉徴収すべき所得税を納付した上で,法222条に基づき求償することになる。
なお,給与等の債権者による強制執行手続が複数回にわたって行われる場合に
は,給与等の支払義務者が第1回目の強制執行手続に基づいて支払った給与等に係
る所得税の源泉徴収義務は,その支払によって具体的に発生することになるから,
同税相当額は,それ以後に支払うべき金額から控除することができる。したがっ
て,給与等の支払義務者は,第1回目の強制執行によって生じた源泉所得税相当額
については,第2回目以降の強制執行に対して請求異議事由として主張することが
できることになる。
(裁判長裁判官田原睦夫裁判官那須弘平裁判官岡部喜代子裁判官
大谷剛彦裁判官寺田逸郎)

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