弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人は控訴人に対し金二六万五、〇〇
〇円およびこれに対する昭和三四年八月九日より完済に至るまで年六分の割合によ
る金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を
求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の陳述および証拠の関係は、次に付加するほか、原判決の事
実摘示と同一であるから、これを引用する。
 被控訴代理人は、「本件手形は、被控訴人が昭和三四年五月五日訴外Aとの間
に、同人から砂利等の建築材料を買い受ける契約を締結し、その代金支払のため同
訴外人に対し、これを振り出し交付したものである。しかるにその后、同訴外人が
その義務を履行しなかつたため右売買契約は同年七月上旬頃解除され、その結果、
本件手形は原因関係を欠き、右訴外人から被控訴人に当然返還さるべき関係になつ
たものである。」と述べ、
 当審における新たな証拠関係として、控訴代理人は甲第三、第四号証の各一、二
を提出し、当審証人B、同A、同Cの各証言を援用し、被控訴代理人は当審証人A
の証言を援用し、甲第三、第四号証の各一、二の成立はいずれも知らないと述べ
た。
         理    由
 (一) 被控訴人が昭和三四年五月五日訴外Aにあて、金額二六万五、〇〇〇
円、満期同年八月八日、支払地および振出地とも千葉市、支払場所株式会社千葉興
業銀行と記載した本件約束手形一通を振り出し、控訴人は右訴外人からその裏書譲
渡を受け現に右手形を所持していることは、当事者間に争がない。
 (二) 次に本件手形につき、控訴人が実質上権利を有するかどうかにつき按ず
るに、成立に争のない乙第二ないし第四号証の各一、二、乙第五号証の一、乙第五
号証の二の一、二、乙第六ないし第八号証の各一、二、並びに原審および当審証人
A、同C、当審証人Bの各証言(但し右C証人およびB証人の各証言中、後記採用
しない部分を除く)を総合すれば、次の事実を認めることができる。
 すなわち、前記訴外Aは、昭和三三年末頃、控訴人から二回にわたりダンプカー
計二台を、代金一台につき各金二〇五万円で買い受け、その支払方法は、内一台の
分については頭金二〇万円を現金で支払い残金は一八カ月の月賦とし、他の一台の
分については、二〇カ月の月賦払とする旨を約し、その支払のために、右各月賦金
に相当する額の約束手形を控訴人あてに振り出し交付したところ、昭和三四年五月
頃以来、右手形のうち不渡になるものが生じたので、右訴外人は、その支払を担保
するため、自己の所持する他人振出名義の約束手形数通を控訴人に裏書譲渡した
が、そのうちの一通が本件手形であること、他方、右訴外人はその後、前記二台の
自動車の修理を控訴人に依頼したが、前記代金残額並びに修理代等の支払ができな
かつた結果、控訴人から右自動車二台を留置されるに至つたので、同年一〇月中、
控訴会社の本社に赴き、控訴人を代理する権限のある係員(右係員はDであると思
われるが、その氏名は明確ではない)と折衝した末、結局、右訴外人は前記自動車
二台を控訴人に返還し、控訴人は、その代りに右訴外人に対する前記自動車の未払
代金および修理代等の債権全部を放棄し、これにより、同年一〇月末日をもつて右
訴外人と控訴人間の債権債務は一切決済ずみとする旨の示談契約が成立し、控訴人
は右訴外人より前記自動車二台の返還を受けたので、右訴外人に対する控訴人の債
権は全部消滅するに至つたこと、以上の事実を認めることができる。しかして右認
定の事実と右認定の資料に供した証拠によれば、前記示談契約の際、右当事者間に
おいては、かねて控訴人が右訴外人から受け取つている手形は、本件手形も含め、
すべてこれを右訴外人に返還する趣旨の黙示の合意があつたものであると認めるの
が相当である。原審および当審証人C、並びに当審証人Bの各証言中以上の認定に
牴触する部分は当裁判所の採用し難いところであり、また前顕各証拠と対照すると
きは、弁論の全趣旨により成立を認め得る甲第三、第四号証の各一、二、その他本
件に顕われたすべての証拠によるも、未だ前段の各認定を左右するに足りない。
 しかして、以上認定の事実によれば、控訴人は、本件手形につき単にその原因債
権だけでなく、手形上の権利自体をも放棄したものであり、しかも前記認定事実お
よび前顕各証拠によれば、控訴人は爾後本件手形上の権利一切を行使しない趣旨で
あつたことが推認できるから、控訴人は単に前記訴外人に対する権利だけではな
く、振出人たる被控訴人に対する権利をも放棄したものと解するのが相当である。
しからば、被控訴人に対し本件手形金の支払を求める控訴人の本訴請求は、すでに
この点において失当として排斥を免れないものといわなければならぬ。
 (三) そればかりでなく、本件においては、さらに次の如き事実が認められ
る。すなわち、原審および当審証人A、原審証人Eの各証言並びに原審における被
告会社(被控訴人)代表者本人尋問の結果によれば、本件手形は被控訴人が、昭和
三四年五月五日前記訴外Aとの間に締結した砂利の売買契約に基き、その代金の前
払のために振り出したものであるところ、右売買はその後右訴外人の債務不履行の
ため適法に解除されたものであり、したがつて振出人たる被控訴人には、右手形に
つき、なんらの原因債務も存在しないものであることが認められるのである。
 ところで、かように原因債務が存在しないという事由は、単なる人的抗弁にすぎ
ず、したがつて、その後第三者が右手形を取得した場合は右抗弁は遮断され、もは
や右取得者に対抗できないのが本則であることは、い<要旨>うまでもない。(手形
法第一七条、第七七条第一項)。しかし元来、法律が人的抗弁の遮断を認めたの
は、手形取得者の利益の保護を目的とするのであり、したがつて、もし手形
所持人が当該手形につき自己固有の経済的利益を有しないときは、これに右の如き
保護を与えるのは無意味であるから、かかる場合は抗弁遮断の利益を受け得ないも
のと解するのが相当である。しかして前記(二)で認定した事実によれば、控訴人
は、本件手形について、これを保有すべき自己固有の経済的利益を有しないもので
あることが明らかであるから、前段説示の理論に照らし、控訴人は抗弁遮断の利益
を受け得ないものであり、したがつて被控訴人は、前記の如き原因債務が存在しな
いという人的抗弁を控訴人に対抗し得るものというべきである。それ故、この点か
らするも、被控訴人に対する控訴人の本訴請求は、他の争点につき判断するまでも
なく、到底失当たるを免れないものである。
 (四) 以上のとおりであるから、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は、結局
相当というべきである。よつて本件控訴は理由がないから、これを棄却すべきもの
とし、控訴費用につき民事訴訟法第八九条、第九五条を適用し、主文のとおり判決
する。
 (裁判長判事 牛山要 判事 田中盈 判事 土井王明)

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