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平成16年(行ケ)第63号 特許取消決定取消請求事件(平成16年7月7日口
頭弁論終結)
          判           決
      原      告     三菱レイヨン株式会社
      訴訟代理人弁理士     野口武男
      同            塩澤克利
      被      告     特許庁長官 小川洋
      指定代理人        橳島愼二
      同            八日市谷正朗
      同            高木進
      同            田々井正吾
      同            伊藤三男
          主           文
      特許庁が異議2003-71319号事件について平成15年12月
25日にした決定を取り消す。
      訴訟費用は被告の負担とする。
          事実及び理由
第1 請求
   主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
 (1) 原告は,名称を「切換弁及びその結合体」とする特許第3347258号
発明(平成8年4月16日特許出願〔以下「本件特許出願」という。〕,平成14
年9月6日設定登録,以下,この特許を「本件特許」という。)の特許権者であ
る。
    平成15年5月19日,本件特許の請求項1ないし10,12,13につ
き特許異議の申立てがされ,同申立ては,異議2003-71319号事件として
特許庁に係属したところ,原告は,平成15年11月11日,本件特許出願の願書
に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の記載等を訂
正する旨の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)をした。
 特許庁は,同特許異議事件について審理した上,同年12月25日,「訂
正を認める。特許第3347258号の請求項1ないし10,12,13に係る特
許を取り消す。」との決定をし,その謄本は,平成16年1月19日,原告に送達
された。
 (2) 原告は,決定の取消しを求める本訴を提起した後,平成16年5月14
日,本件明細書の特許請求の範囲の記載等を訂正する旨の訂正審判の請求をしたと
ころ,特許庁は,同請求を訂正2004-39095号事件として審理した上,同
年6月9日,上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,
その謄本は,同月21日,原告に送達された。
 2 特許請求の範囲の記載
 (1) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1ないし10,12及び13の記載
【請求項1】水道蛇口と浄水器の間に配される切換弁であって,蛇口と連結
可能な原水流入口,原水をそのままストレート状またはシャワー状に吐水する各原
水吐出口及び浄水器に接続可能な原水送水口を備え,切換弁本体の内部に切換コッ
クの回動操作と連動して回動する回転軸を用いて各原水吐出口または原水送水口へ
の水路の切り換えを行う水路切換機構を有し,切換弁本体の外壁に切換コックによ
る水路の切り換えの該当状態のみ示し,該回転軸とは別体の軸を中心に,該回転軸
と連動して回動する表示部材を有するインジケータを配置してなる切換弁。
【請求項2】回転軸と,該回転軸とは別体の軸とを,水平方向に離れた位置
に配置してなる請求項1に記載の切換弁。
【請求項3】インジケータが切換弁本体の外壁正面部に配置されている請求
項1又は2に記載の切換弁。
【請求項4】インジケータに水路の切り換えの該当状態を表示する切り欠き
または透明板で形成した表示窓が設けられている請求項1~3のいずれか1項に記
載の切換弁。
【請求項5】水路切換機構が切換コックの回動操作と連動するアーム付き回
転軸を有している請求項1~4のいずれか1項に記載の切換弁。
【請求項6】アーム付き回転軸がアームを回転軸の長手方向に60°ずつ位
相をずらして設けたものである請求項5に記載の切換弁。
【請求項7】インジケータがアーム付き回転軸の回転と連動して水路の切り
換えの該当状態を表示すものである請求項5又は6に記載の切換弁。
【請求項8】水路切換機構が切換コックと連動するアーム付き回転軸のアー
ムにより移動するボールによって水路が開閉するボール弁を用いた切換機構である
請求項5~7のいずれか1項に記載の切換弁。
【請求項9】回転軸がポリアセタール樹脂からなる請求項5~8のいずれか
1項に記載の切換弁。
【請求項10】ボールが軟質ゴムからなる請求項8に記載の切換弁。
【請求項12】原水送水口が浄水器の接続部と着脱自在な嵌合構造である請
求項1~11のいずれか1項に記載の切換弁。
【請求項13】請求項1~12のいずれか1項に記載の切換弁の原水送水口
に,浄水器の接続部を接続した結合体。
(2) 本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし10,12及
び13の記載(下線が訂正部分。)
【請求項1】水道蛇口と浄水器の間に配される切換弁であって,蛇口と連結
可能な原水流入口,原水をそのままストレート状またはシャワー状に吐水する各原
水吐出口及び浄水器に接続可能な原水送水口を備え,切換弁本体の内部に切換コッ
クの回動操作と連動して回動する回転軸を用いて各原水吐出口または原水送水口へ
の水路の切り換えを行う水路切換機構を有し,切換弁本体の外壁に切換コックによ
る水路の切り換えの該当状態のみ示し,該回転軸とは別体の軸を中心に,該回転軸
と連動して回動する表示部材を有するインジケータを配置してなり,前記回転軸と
前記別体の軸とは平行に配され,前記水路切換機構及び前記表示部材とが他の連動
部材を介することなしに前記切換コックの回動運動により直接作動される切換弁。
【請求項2】~【請求項10】,【請求項12】及び【請求項13】は,上
記(1)と同じ。
 (3) 本件訂正審決に係る訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし10,12
及び13の記載(下線が訂正部分。なお,二重下線は,上記(2)との相違部分であ
る。)(編注;二重下線は太字斜体で代用)
【請求項1】水道蛇口と浄水器の間に配される切換弁であって,蛇口と連結
可能な原水流入口,原水をそのままストレート状またはシャワー状に吐水する各原
水吐出口及び浄水器に接続可能な原水送水口を備え,
切換弁本体の内部に切換コックの回動操作回動する
回転軸を用いて,
水路の
切り換えを行う水路切換機構を有し,切換弁本体の外壁に切換コックによる水路の
切り換えの該当状態のみ示し,回転軸とは別体の軸を中心に,回転軸と連
動して回動する表示部材を有するインジケータを配置してなり,前記回転軸と前記
別体の軸とは平行に配され
前記水路切換機構及び前記表示部材とが他
の連動部材を介することなしに前記切換コックの回動運動により直接作動される切
換弁。
【請求項】インジケータが切換弁本体の外壁正面部に配置されている
の切換弁。
【請求項】インジケータに水路の切り換えの該当状態を表示する切り欠き
または透明板で形成した表示窓が設けられているの切換
弁。
【請求項】水路切換機構が切換コックの回動操作と連動するアーム付き回
転軸を有しているの切換弁。
【請求項】アーム付き回転軸がアームを回転軸の長手方向に60°ずつ位
相をずらして設けたものであるの切換弁。
【請求項】インジケータがアーム付き回転軸の回転と連動して水路の切り
換えの該当状態を表示すものであるの切換弁。
【請求項】水路切換機構が切換コックと連動するアーム付き回転軸のアー
ムにより移動するボールによって水路が開閉するボール弁を用いた切換機構である
の切換弁。
【請求項】回転軸がポリアセタール樹脂からなる
の切換弁。
【請求項】ボールが軟質ゴムからなる。
【請求項】インジケータがアーム付き回転軸のアームにより表示クラン
クを移動させて水路の切り換えの該当状態を表示する
の切換弁。
【請求項】原水送水口が浄水器の接続部と着脱自在な嵌合構造である

【請求項】の原水送水
口に,浄水器の接続部を接続した結合体。
 3 決定の理由
   決定は,本件訂正請求に係る訂正を認め,本件訂正請求に係る訂正後の特許
請求の範囲の請求項1ないし10,12及び13の記載(上記2(2))によれば,上
記各請求項に係る発明は,本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物で
ある特開平6-178974号公報,特開平8-75018号公報及び周知技術に
基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項1ないし
10,12,13に係る発明についての特許は,特許法29条2項の規定に違反し
てされたものであって,特許法113条2号に該当し,取り消されるべきものであ
るとした。
第3 当事者の主張
 1 原告
   決定が,特許請求の範囲の請求項1ないし10,12及び13記載の発明の
要旨を本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(上記第2の2(2))のと
おり認定した点は,本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記第2の
2(3)のとおり訂正されたため,誤りに帰したことになる。そして,この瑕疵は決定
の結論に影響を及ぼすものであるから,決定は違法として取り消されるべきであ
る。
 2 被告
   本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正された
ことは認める。
第4 当裁判所の判断
   本件訂正審決の確定により,本件明細書の特許請求の範囲の記載が上記第2
の2(3)のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく,この訂正によって,特許
請求の範囲が減縮されたことは明らかである。
   そうすると,決定が,特許請求の範囲の請求項1ないし10,12及び13
記載の発明の要旨を,本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(上記第
2の2(2))のとおり認定したことは,結果的に誤りであったことに帰し,これが決
定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,決定は,瑕疵があるものとして
取消しを免れない。
   よって,原告の請求は理由があるから認容することとし,主文のとおり判決
する。
     東京高等裁判所知的財産第2部
           裁判長裁判官    篠  原  勝  美
      裁判官    岡  本     岳
      裁判官    早  田  尚  貴

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