弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
     抗告費用は抗告人の負担とする。
         理    由
 抗告人の抗告の趣旨および理由は別紙記載のとおりである。
 本件記録中の不動産競売申立書、登記簿謄本、送達報告書および競売期日調書に
よると、本件競売手続の経過として次のように認められる。
 債権者株式会社北洋相互銀行は、債務者A所有の本件競落建物(小樽市a町b番
地家屋番号第c番木造亜鉛メツキ鋼板葺二階建工場兼居宅一階二五坪五合、二階二
六坪)に対する第一順位の根抵当権の実行として、昭和四一年七月二五日、競売の
申立をし、同月二六日競売手続開始決定があつて同日付で右建物につき競売申立登
記がなされた。他方、債務者Aは、昭和三九年一二月七日、Bとの間の金銭消費貸
借ならびに根抵当権設定契約に基づき、本件建物につき同人に対して第二順位の根
抵当権を設定し、同日付でその旨の登記をなし、昭和四〇年七月五日、有限会社同
新木工製作所(後に有限会社新建木工製作所と商号変更)がBから右金銭消費貸借
契約の承継に伴い根抵当権の移転を受け、同月一四日付をもつてその旨の附記登記
を経由し、さらに昭和四一年八月二〇日、同会社から抗告人に対して右金銭消費貸
借契約上の地位とともに根抵当権は譲渡され、同月二三日付をもつて右根抵当権移
転の附記登記がなされた。ところが、同年一二月一九日午前一〇時の本件建物競売
期日の通知書は前記Bに送達され、その当時における登記簿上の根抵当権者である
抗告人に対しては右期日の通知をせずに競売が実施され、右期日に競買を申出たC
に競落を許可する旨の決定が同月二〇日に言い渡された。以上のとおり認められ
る。
 <要旨>抵当権の譲渡を受けたものが附記登記によつてその移転を公示した場合、
当該譲受人は、既存の主登記に表示されている抵当権と同一の順位において
抵当権者となるものではあるけれども、右認定の経過によると、抗告人は、昭和四
一年八月二〇日に本件建物についての根抵当権を取得したのであつて、本件競売申
立登記がなされた同年七月二六日当時は、未だ本件建物について何らの権利を有し
ないものであり、もとより登記簿上根抵当権者として記載されていたわけでもない
のであるから、このような場合、抗告人は競売法第二七条第三項第四号によつて不
動産上の権利者としてその権利を証明し、競売裁判所にその旨の届出をなしたとき
に限り、右規定により競売手続上の利害関係人として競売手続に参加し、その権利
を保護する機会を与えられるべきものであると解するのを相当とする。従つて、右
届出のないかぎり競売裁判所としては利害関係人であるかどうかを知ることができ
ないのであるから、競売期日の通知を欠いたとしてもその措置をもつて違法とする
ことはできない。抗告人は、上記のとおり根抵当権移転の附記登記手続をしたとき
に、登記簿の記載によつて本件建物につき競売申立がなされていることを当然知り
得たものであつて、競売期日までの間に競売裁判所に対してその根抵当権者である
ことの届出をする機会は十分あつたのであるから、右のように解しても抗告人に対
し不当に不利益を帰せしめるものではないというべきである。
 そうすると、抗告人が競売裁判所に対して根抵当権者であることの届出をした事
実は本件記録上認められないのであるから、競売裁判所が抗告人に競売期日の通知
をしなかつたことは何ら違法ではない。
 よつて、本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人の負担とし
て主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 杉山孝 裁判官 田中恒朗 裁判官 島田礼介)

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