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主文 
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は1審被告の負担とする。
事実及び理由
(以下,略語は原判決に準ずる。)
第1 当事者の求めた裁判
 1 1審被告
 (1) 原判決を取り消す。
 (2) 1審原告の請求をいずれも棄却する。
 (3) 訴訟費用は第1,2審とも1審原告の負担とする。
2 1審原告
(1) 主文同旨
(2) 1審被告は,1審原告に対し,(原判決別紙物件目録記載の)本件土地の1審
被告の持分22分の1につき,真正な登記名義の回復を原因とする共有持分全
部移転登記手続をせよ(選択的追加請求)。
第2 事案の概要
 1 本件は,1審原告(地方自治法260条の2第5項の認可を受けた地縁団体)が,1
審被告に対し,委任契約の終了に基づき,本件土地についての1審被告名義の共
有持分22分の1(以下「本件持分」という。)の移転登記手続を求めたのに対し,1
審被告が1審原告主張の委任契約を否認し,本件持分は1審被告の祖父A(以下
「A」という。)が買い受け,1審被告が相続したものであると主張した事案である(1
審原告主張の委任契約は,委託の内容から準委任契約と解されるが,「準委任」
含む趣旨で「委任」という。)。
 原審は,1審原告の主張を認めてその請求を認容したので,1審被告がこれを不
服として控訴した。1審原告は,当審において,本件土地所有権に基づく本件持分
の移転登記手続請求を選択的に追加した。
2 争いのない事実は,次のとおり改めるほかは,原判決「事実及び理由」の「第2 
事案の概要」の1のとおりであるからこれを引用する。
 原判決2頁5行目の「Aほか21名の者の共有名義で登記されていたところ,」を
「元は西加茂郡a村大字b(旧b村)の所有であり,その旨保存登記されていたが
(甲11,乙10),大正7年5月1日売買を原因とし,同月7日受付で,本件区域在
住のA外21名の者の共有名義として所有権移転登記されていたところ(以下,この
登記を『本件共有登記』という。)」と改める。
3 争点
(1) 本件共有登記は,西加茂郡a村大字b(以下「大字b」という。)が,その住民で
あったA外21名に委任してその登記名義を借りたという委任契約に基づいてさ
れたものであったか。
(2) Aは大字bから本件持分を買い受けたか。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,本件共有登記は,大字bがA外21名に依頼してその名義を借りて登
記をしたもので委任契約に基づくものであると認められ(Aが大字bから本件持分を
買い受けた事実は認められない。),委任契約の終了を理由とする1審原告の本件
持分移転登記手続請求は理由があると判断する。その理由は以下のとおりであ
る。
2 証拠(甲1,2,甲3の1,2,甲4ないし11,13,乙1,6ないし10)及び弁論の全
趣旨によると次の事実が認められる。
(1) 西加茂郡b村は,明治22年の町村制施行に伴い同郡c村に組み込まれて大
字bとなり,c村は明治39年に合併して同郡a村となったところ,大字bは,平成1
2年10月6日,地方自治法260条の2第5項に基づき,同郡a村村長の認可を
受けて,本件区域(大字b地区)における地域的な共同活動のための不動産又
は不動産に関する権利等を保有するための地縁団体として成立し,1審原告と
なった。
(2) Aは昭和9年10月10日に死亡し,その長男Bが家督相続をし,同人は昭和3
9年8月17日に死亡してその長女である1審被告が本件持分に関する権利関
係を相続した。そして,A名義から上記相次相続を原因として,昭和49年3月26
日受付で1審被告名義へ移転登記がされたが,1審被告はA名義での本件持分
の登記済証を所持していない。
(3) 西加茂郡a村において,平成4年度の西部簡易水道工事用地として,本件土
地を分筆前の旧1番2の土地の一部を買い取ったことがあり,その土地代金13
2万4700円を平成5年5月12日に支払ったが,本件土地の共有名義人22名
の相続人等のうちで上記代金を受領したのは1審被告だけであり,その余の21
名分の代金は1審原告のb特別会計へ繰り入れられた。
(4) 1審原告は,平成12年10月6日の上記地縁団体としての認可を受けて,1審
被告を含む本件共有登記名義人22名の相続人等の承継人に対し,委任の終
了を原因とする共有持分の移転登記手続を求め,平成13年5月から平成14年
12月の間に,A以外の本件共有登記名義人21名の相続人等の承継人は,平
成12年10月6日委任の終了を原因として各自の共有持分を1審原告へ移転す
る登記手続をした。
3 以上の認定事実と上記争いのない事実(原判示を含む。)によれば,本件土地は
b村が町村制に伴って生じた大字bの所有であったが,権利能力なき社団である大
字b名義の所有権移転登記については登記実務上問題があったため(登記実務に
おいては,かねてより,権利能力なき社団所有不動産の登記について,社団名義
を許容すべきでないとされていたことは当裁判所に顕著である。),大字bに在住の
22名の者に依頼し,その名義を借りて本件共有登記を経由したものであると認め
られ,本件共有登記は,大字bとA外21名との間の委任契約によるものといえる。
4 1審被告は,本件土地をA名義にしたときにA夫婦がお金を出した旨を実父Bから
聞いたこと,b区が1審被告を相手に民事調停を申し立てた際の昭和49年2月21
日,b区長は1審被告が本件土地の共有持分を有することを承認したこと等を主張
し,乙第3,4号証を提出する。
 しかし,A夫婦がお金を支払ったという点については金額も明らかではなく,その
支払を裏付ける証拠は何もないこと,乙第3号証はb区長が1審被告において本件
持分の相続登記をすることを認めたものに過ぎないし,乙第4号証は,1審被告が
大字b字d及び同字eの土地に対するAの共有持分を160万円の支払を受けて放
棄する旨の文書であって,いずれの文書もb区長が本件土地(字fの土地)について
1審被告が持分(本件持分)を有することを承認した文書ではない。そして,上記2
の(3)及び(4)の事実によると,本件共有登記の名義人22名のうちA以外の21名の
相続人等の承継人は,本件土地が同名義人らの承継人の共有ではなく,1審原告
の所有であることを認めていることが明らかである。1審被告の上記主張はこれを
認めることのできる的確な証拠はないものであって,これを採用できない。
5 大字bと本件共有登記の名義人22名との間の委任契約は,大字bが登記名義人
適格を有しないために登記名義人となるとのものであることからすれば,受任者の
死亡によって終了するものではなく,大字bの構成員としてその財産に対する登記
名義人の持分を承継した者において同委任契約を承継すると解することが当事者
の合理的意思に沿うものである。そして,1審被告はAの本件土地についての権利
義務を承継した者であることは既に判示のとおりであり,また,1審原告の地縁団
体としての認可により登記名義人となることが可能となったことに伴い,上記委任
契約の解約告知のなされたことも上記2(4)の事実に照らして明らかである。してみ
れば,1審原告が成立した平成12年10月6日,上記委任契約は終了したというこ
とができるから,同日の委任終了を原因として本件持分の移転登記手続を求める
1審原告の請求は理由がある。なお,上記委任契約がAの死亡により終了すると
解するとしても,受任者には委任の終了により登記名義を委任者に返還すべき義
務が発生すると考えられ,同義務はAの相続人において負うものと解されるところ
であり,この場合においても1審被告は本件持分全部移転義務を負担するというべ
きである。
第4 結論
   よって,1審被告の委任終了を原因とする持分移転登記請求を認容した原判決は
相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却し,控訴費用を1審被告に負
担させることとして,主文のとおり判決する。
 名古屋高等裁判所民事第1部
    裁判長裁判官    田村洋三
  裁判官    小林克美
  裁判官    佐藤真弘

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