弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
一 原告らの請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
○ 事実
第一 請求の趣旨
一 原告らが一般職に属する国家公務員である地位を有することを確認する。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
第二 請求の趣旨に対する答弁
主文同旨
第三 請求原因
一 建設省関東地方建設局甲府工事事務所長は、昭和二九年二月一日以降昭和四四
年三月三一日までの間、建設大臣から、同工事事務所に勤務する工事人夫(現場労
務者)たる一般職に属する職員を含む一定範囲の職員に対する任命権を委任されて
いた。
二 原告らは、別紙雇用年月日一覧表記載の日に甲府工事事務所長より、同工事事
務所に勤務する被告の一般職に属する職員である工事人夫として採用された。
三 しかるに、被告は、原告らが被告の一般職の職員である地位にあることを争つ
ている。
第四 請求原因に対する認否
第一ないし第三項の事実は認める。但し、甲府工事事務所長は、同工事事務所に勤
務する職員のうち一般職の非常勤職員に対する任命権のみを委任されていたもので
ある。
第五 抗弁
一 甲府工事事務所長は、原告らを任期を一日とするいわゆる日々雇用の形態で、
同工事事務所に勤務する非常勤の職員である工事人夫として任用した。そして、任
命権を委任されていた同所長が、原告らが引続き勤務していることを知りながら別
段の措置をしなかつたので、人事院規則(以下人規と略称する。)八-一二(職員
の任免)第七四条第二項により、その任用が日々更新されたものとして取り扱われ
てきたのである。
二 甲府工事事務所長は、原告A、同B、同Cを除くその余の原告らに対して昭和
四四年二月二一日に、また右原告Aら三名に対しては、同月二五日にいずれも同年
三月三一日限り任用の更新を拒絶する旨の通知をした。
よつて、原告らは同日の任期満了により当然退職したものである。
三 原告らの職務等の特殊性からして、前記任期の定めは有効である。
(一) 国家公務員法(以下国公法と略称する。)は、経常的業務に従事する常勤
職員を任用する場合は任期の定めのない任用をもつてその建前としている。と同時
に、同法付則第一三条は、人夫作業のように、就労する職員の資格や能力がさして
問題とならないような単純な肉体的作業で、その業務の存続が被告の政策や方針に
よつて左右され、その業務を必要とする事業量が事業施工方式によつて増減した
り、季節等によつても変動するような臨時的業務に従事する非常勤職員の任用等に
ついて、法律または人規をもつて同法の特例を規定することを許容している。そし
て、同条を受けて、人規には非常勤職員を任期を一日と限つて任用することができ
ることを前提としたものと解される特例規定が設けられている(人規八-一二第七
四条第一項第三号、第二項等)。したがつて、臨時的かつ肉体的単純労務に従事す
る非常勤職員を任期を一日として任用することは同法上当然に許されるものであ
る。
非常勤職員の任用に任期を定めることは国公法の定める身分保障を奪うものではな
い。日々雇用の非常勤職員にも同法第七五条第一項、第七八条等の適用はあるので
ある。ただ、任期が一日とされている関係上、任期である一日の範囲内に限つて身
分保障に関する右各規定の適用を受けるにとどまるだけのことである。また、同法
第六〇条の臨時的任用の規定は、常勤官職に欠員が生じた場合にその欠員を臨時的
に補充するための任用方法を定めたものである。したがつて、同条は同条によらな
いで非常勤職員を任期を一日と限つて任用することについての妨げとなるものでは
ない。
(二) 甲府工事事務所は河川(富士川、笛吹川、釜無川)および道路(国道二〇
号線等)の改築、改良、維持、補修等の業務を所管しているが、原告らは、同工事
事務所が直営方式で施工する河川の堤防の草刈り、堤防天端の補修、道路の路面、
側溝の補修、清掃等の工事人夫として採用され、土木作業、草刈り、抜根、芝付
け、空石張り、清掃等の単純な肉体的作業に従事していた。
ところで、同工事事務所がその所管業務を遂行するために施工する直轄工事の量お
よび規模は、各年度の予算ならびにこれを基礎として立案される工事実施計画によ
つて決定される。そして、直轄工事の施工方式には、同工事事務所が直接工事資材
を入手し、人夫等の労務者を雇用(賃金は工事費の中から支払われる。)して行な
う直営施工方式だけではなく、民間の土木業者に請負わせてする請負施工方式があ
る。このいづれの方式によるかは建設行政上の問題であつて、同工事事務所長が諸
般の事情を総合判断して決定するのである。したがつて、直営工事のために採用さ
れた原告ら工事人夫の従事する業務は、そのときの予算ならびに工事実施計画によ
つて決定される工事量、工事規模、工事施工方式さらには工事の進捗状況、天候等
によつて時々増減変動し、必要とされる人夫の数も一定しないような極めて臨時的
な肉体的単純労務であるということができる。
また、原告らの就労の実態をみると、原告らは、同工事事務所の係官から身体の確
認を受ける程度で採用され、採用されると就労点検票の交付を受ける。そして、就
労する場合にはこれを各工事現場の係官に提出し、就業後に係官から就労の事実を
証する検印を押捺してもらつたうえその返還を受ける。この就労点検票は、原告ら
の就労確認表となるとともに、賃金計算の根拠とされるものである。賃金は、就労
点検票の領収欄に自己の受領印を押捺のうえ、係官に提出してその支払いを受ける
のである。また、原告らの就労状況は、作業日に就労するか否かは自由であるか
ら、各月の就労日数が各人によつてまちまちであり、特に農繁期等時期的に著しく
就労日数の少ない者もある。なお、雨天、荒天の日には作業は行なわないのであ
る。
このように原告らの就労の実態は任期の定めのない常勤職員のそれとは著しく異な
つたものであるが、賃金、勤務時間、休暇等その他の勤労条件についても常勤職員
とは異なつた取扱いがなされていた。
(三) 以上のとおり、原告らが従事していた業務は臨時的かつ肉体的単純労務で
あり、その就労の実態も任期の定めのない常勤職員のそれとは著しく異なつたもの
であつたのであるから、原告らの職務等の特殊性からして、前記任期の定めは国公
法に違反するものではなく、有効である。
第六 抗弁に対する認否
一 第一項について
原告らが甲府工事事務所に勤務する工事人夫として任用されたことは認めるが、そ
の余の事実は否認する。
二 第二項について
前段の事実は認める。
三 第三項について
仮に、原告らの任用が被告主張のとおりになされたものとしても、その主張のよう
な任期の定めは国公法上許されないものであるから、無効である。
(一) (一)について
国公法は、憲法第二五条、第二七条、第二八条による生存権、勤労権および労働基
本権の保障の趣旨を受け、国公法の定める根本基準の一つとして国家公務員の身分
保障を掲げ(同法第一条第一項)、分限事由を厳格に限定して規定し(同法第七五
条第一項、第七八条、第七九条等)、もつて国家公務員の身分保障をはかつてい
る。そして、この身分保障の趣旨から、職員の任用については任期の定めのない任
用を原則として定めているのである。国公法附則第一三条は、法律または人規によ
つて、職務と責任の特殊性に基づき国公法の特例を設けることができる旨規定して
いるが、同時に、その場合においても「その特例は、この法律第一条の精神に反す
るものであつてはならない。」としている。それ故、国公法附則第一三条を根拠と
して同法上の身分保障の原則に反するような特例を設けることはできない。しかる
に、日々雇用の形態による職員の任用を認めることは、更新拒絶により自由にその
地位を失わしめ得ることを許すことになるから、同法の定める身分保障の趣旨を没
却することになる。したがつて、国公法附則第一三条を基礎として任期を一日とす
る任用を認める特例を規定することはできないものといわなければならない。任期
を一日と限つて任用することを認める人規八-一二第七四条第一項第三号、第二項
は国公法附則第一三条、同法第一条第一項に違反し、無効である。
職員の従事する業務が臨時的かつ肉体的単純労務であるということは、国公法上の
身分保障を奪うような日々雇用の形態による任用を認める特則を、国公法附則第一
三条を根拠にして、規定することができる合理的理由とはならない。このことは、
機械的労務に従事する現業の国家公務員にも国公法上の身分保障に関する前記各条
は適用され(公共企業体等労働関係法第四〇条第一項)、単純な労務に雇用される
一般職に属する地方公務員の場合にも、他の一般職の職員と同様に、分限事由を定
めた地方公務員法第二八条が適用され、身分保障に関しては何ら異なつた取扱いは
なされていないこと(地方公務員法第五七条、地方公営企業労働関係法附則第四
項、地方公営企業法第三九条第一項)、また臨時的業務に従事する職員の任用につ
いては国公法上これを特に限定する規定が設けられており(同法第六〇条)、しか
も同条に基づいて任用された職員にもその相応の身分保障が与えられていること
(人規一一-四身分保障第八条、国公法第七八条)からして明らかである。
(二) (二)について
第一段の事実は認める。但し、原告らが従事していた作業のうちにはかなり複雑で
訓練や技能を要するものもあつたのであつて、必ずしも単純な肉体的作業ばかりで
あつたわけではない。
第二段のうち、直轄工事の施工方式に被告主張のような二方式があることは認める
が、その余の事実は否認する。原告らが従事してきた河川の堤防や道路の維持、補
修等の業務は、河川および道路の改築、改良、維持、補修等の業務を所轄する甲府
工事事務所の基幹的業務であり、河川や道路の存在する限り必らず継続的に行なわ
なければならない恒常的業務である。甲府工事事務所においては、昭和三五、六年
以降、大規模な護岸、築提等の工事は請負方式で施工されてきたが、河川の提防や
道路の維持、補修等の工事はもつぱら直営方式により、年間を通じてほぼ同じ規模
で、しかも継続的に施行されてきたこと、この直営工事には原告らを含む特定した
一定数の工事人夫が行政職俸給表(二)の適用を受ける常勤の一般職々員(以下行
(二)職員という。)とともに継続して従事してきたこと、またその作業内容も工
事人夫と右行(二)の常勤職員とで何ら異なるところはなかつたこと等の事実は、
これを示すものである。
第三段のうち、原告らが甲府工事事務所の係官から身体の確認を受ける程度で採用
されたこと、および原告らが作業日に就労するか否かは自由であつたことは否認す
る。その余の事実は認める。原告らは同工事事務所の係官による一種の選考ともい
うべき面接を受けて採用されたものであり、昭和三七年二月にも後述のような職務
遂行能力の有無についての選考を経ている。また原告らが作業日に休むときはその
旨を口頭で届け出なければならないものとされており、現実にもそのようになされ
てきたのである。なお、農繁期等に就労日数の少ないのは、原告らばかりでなく、
行(二)職員の場合にあつても同じである。これは農村出身の職員の特殊性である
に過ぎない。
第四段は、原告らの就労の実態が任期の定めのない常勤職員のそれと著しく異なつ
たものであることは否認し、その余の事実は認める。
(三) (三)について
以上のとおり、臨時的な単純労務に従事する職員であるからといつて、このような
職員を人規八-一二第七四条第一項第三号、第二項を根拠に日々雇用の形態で任用
することは、そもそも国公法上許されないものであり、仮にこれが許されるとして
も、原告らが従事していた業務は決して臨時的なものではなく、継続的、恒常的業
務であつたのであるから、原告らを任期を一日と限つて任用することは国公法上許
されない。したがつて、仮に原告らが任期を一日として任用されたものであつたと
しても、右任期の定めは無効である。
第七 再抗弁
仮に、原告らが被告主張のとおり日々雇用の工事人夫として任用されたものとして
も、原告らに対する本件任用更新拒絶は次の理由により無効である。
一 任期の定めのない任用への転化
原告らは昭和三六年四月一日以降各行政年度末に任用更新を拒絶されることもな
く、二年以上一〇年近くにわたつて継続的に勤務してきた。その従事してきた業務
と本来任期の定めのない常勤職員が携わるべき恒常的業務であり、就労の実態も行
(二)職員のそれと何ら異なるところはなかつた。また、原告らは、昭和三五年か
ら昭和三七年にかけて、甲府工事事務所管内の出張所や派出所を中心に、そこに勤
務する者で次々と労働組合を結成し、その後相互に合併して、昭和三七年二月一七
日に建設省富士川上流労働組合(昭和四二年三月一七日に建設省甲府労働組合と名
称変更した、以下組合という。)を組織した。その際、組合が組合員名簿を同工事
事務所に提出したところ、同工事事務所は、就労の状況、勤務態度、家族数、経
歴、身元等からして、継続して就労する条件に欠ける不適当な者を組合員名簿から
削除するよう求めてきた。そのため、右のような不適格者は組合員名簿から除かれ
ることになつたが、原告らは組合員として登録することを許された。このようにし
て、原告らはこのとき職務遂行能力の有無について一種の選考ともいうべきものを
経ており、採用されるにあたつても面接という選考を受けている。したがつて、原
告らの任用は、少なくとも昭和四四年三月三一日当時には、期限の定めのないもの
に転化していたものというべきである。
二 手続的瑕疵
本件任用更新拒絶は、国公法第八九条第一項、人規八-一二第七一条第六号にいわ
ゆる免職ないしは著しく不利益な処分と解されるから、これをなす際には処分事由
を記載した説明書の交付を要するところ、原告らにはその交付がなかつた。この瑕
疵は明白かつ重大なものである。
三 国公法第七八条違反
本件任用更新拒絶は国公法第七八条にいう免職と解されるから、これをなすには同
条所定の事由がなければならず、日々雇用の非常勤職員の職務と責任を考慮して
も、少なくとも同条所定の事由に準ずる事由がなければならない。しかるに、原告
らについては右のような事由が存しない。
四 国公法第一〇八条の七違反
原告らは、前記のとおり組合を結成し、賃金値上げ、期末勤勉手当の増額、休日問
題等労働条件の向上、継続的雇用関係の確立化、定員化等を要求して、甲府工事事
務所と交渉を続けてきた。また、組合は昭和四三年五月二四日人事院に対し、常勤
職員なみの身分保障と労働条件の確立を求めて、行政措置要求をし、同年六月一六
日には建設大臣に対して団体交渉を申し入れ、期末勤勉手当を常勤職員なみに支給
することおよび身分保障を要求して交渉をはじめるに至つた。
しかるに、甲府工事事務所長は右のような活発な活動を続けてきた組合ないし組合
員である原告らを敵視し、本件任用更新拒絶におよんだものである。
五 国公法第七四条違反
本件任用更新拒絶は、次のような事情を考慮するときは、その合理性を欠くもので
あつて、国公法第七四条第一項に違反し無効である。
(一) 原告らが従事していた河川の堤防および道路の維持、補修等の業務は、日
常継続的に行なわれなければならない恒常的業務であり、これを停止することはで
きない性質のものである。この意味において、これは直営方式で行なわなければな
らない業務である。また業務の能率的遂行という面からみても、作業に習熟した原
告らを継続雇用する方がよいことは明らかである。
そうすると、右のような業務を請負方式により施工することとしてまで原告らの任
用更新を拒絶しなければならない合理的理由はないといわざるを得ない。
(二) 甲府工事事務所に勤務していた定員外職員には、準職員、補助員、附属調
書および人夫という職種があつた。この準職員、補助員および附属調書は年間継続
的に雇用されていたものであつたが、補助員および附属調書が従事していた作業の
内容は原告らと全く同じものであつた。ところが、準職員、補助員およひ附属調書
は昭和三三年ころから昭和三七年にかけて、全員が定員内職員となつていつた。そ
して原告らも、前記のとおり、昭和三六年四月一日以降各行政年度末に任用更新を
拒絶されることなく継続的に勤務するようになり、同工事事務所の係官からも、継
続雇用されていれば定員内職員になれる、とも言われていたので、原告らは行
(二)の定員内職員になれるであろうと期待し、昭和三七年一月一九日の閣議にお
いて、昭和三七年度の定員化により定員外職員の定員繰入れ措置は終了した、との
決定がなされたことも知らずに、以後も継続的に勤務してきたのであつた。それな
のに、甲府工事事務所長は、昭和三六年二月八日および昭和三七年一月一九日の各
閣議において定員外職員の常勤化防止措置が定められたにもかかわらず、その措置
を講ぜず、昭和三六年四月一日以降各行政年度末に任用更新拒絶をしないで原告ら
の任用を更新しておきながら、定員化の期待を持つて継続的に勤務してきた原告ら
に対し本件任用更新拒絶におよんだものである。
第八 再抗弁に対する認否
一 任期の定めのない任用への転化について
昭和三七年度以降各行政年度末に任用更新を拒絶しなくなつたこと、原告らがその
主張のとおり組合を結成し、組合から甲府工事事務所に組合員名簿の提出がなされ
たことは認める。その余の事実は否認する。
二 手続的瑕疵について
争う。
三 国公法第七八条違反について
争う。
四 国公法第一〇八条の七違反について
前段の事実は認めるが、後段の事実は否認する。
建設省の所管行政は昭和二七、八年ころからその範囲が漸次拡大したので、行政経
済の観点と民間業者の施工能力が十分に整備された状況にかんがみ、それまで直営
事業とされていた業務の執行の能率向上をはかるため、漸次工事施工方式を請負方
式とする方針をとることになつた。そして甲府工事事務所においてもその所管業務
が年々増加の一途をたどり他方では定員内職員が減少傾向にあつたので、その所管
業務を合理的、能率的に遂行するためには、工事施工方式を直営方式から請負方式
に転換せざるを得ない状況にあつた。そのため建設省の方針に従つて、関東地方建
設局管内の他の二三工事事務所とともに、事業を請負化することにし、これまで直
営工事に従事していた原告らに対しその任用を更新しないことにしたのである。
五 国公法第七四条違反について
冒頭の事実は否認する。
原告らの任用を更新しないことにした理由は前述のとおりであつて、合理的なもの
である。
(一) (一)について
原告らが従事していた業務の内容は認めるが、その性質等その余の事実は否認す
る。
(二) (二)について
甲府工事事務所に勤務していた定員外職員の職種、人夫を除くその余の定員外職員
が年間継続的に雇用されていたものであり、その大部分は昭和三三年ころから昭和
三七年にかけて定員内職員となつたこと、原告らに対し昭和三七年度以降各行政年
度末に任用更新拒絶をしなくなつたこと、昭和三六年二月八日および昭和三七年一
月一九日に原告ら主張のような各閣議決定がなされたことは認める。その余の事実
は否認する。
昭和三六年二月八日および昭和三七年一月一九日になされた定員外職員の常勤化防
止に関する各閣議決定は、定員規定の対象となる職員と同種または類似の職員が定
員規定の外に発生することを防止することを目的としたものであつた。したがつ
て、原告らのような臨時的かつ単純な肉体的作業に従事する職員については、その
規制の対象としていないと解する余地があつた。そこで甲府工事事務所では、建設
省の方針に従い、昭和三七年九月以降、就労点検票に「あなたは、日々雇用の非常
勤職員です。」と明示する、簡略な手続をとることにしたのである。そして、右の
ような方法を講じたので、昭和三七年以降各行政年度末に任用更新拒絶をとらなく
なつたのである。
第九 証拠関係(省略)
○ 理由
一 甲府工事事務所長が、昭和二九年二月一日以降昭和四四年三月三一日までの
間、建設大臣から、少なくとも同工事事務所に勤務する職員のうち一般職の非常勤
職員に対する任命権を委任されていたことは当事者間に争いない。
しかし、同所長が右の範囲以上の任命権、すなわち常勤職員の任命権を委任されて
いたことを認めるに足りる証拠はない。
請求原因第二項の事実は、当事者間に争いない。
二 原告らの任用の形態
証人D、同E、同Fの各証言によれば、建設省の非常勤職員には準職員、補助員、
附属調書および人夫の四職種があつたこと、準職員は任期を二か月として、その他
の非常勤職員は任期を一日として、すなわち日々雇用の形態で任用されていたもの
であること、以上のことは甲府工事事務所においても同様であつたことが認められ
る。また、成立に争いない乙第一五号証の一ないし六、八、九、一一ないし一三、
一五ないし一七、二〇、二二、二六、二七、二九、三一、三五ないし四〇、四二、
四三、四八、五〇ないし五五、五七ないし六一の各一、二および原告G、同H、同
Iの各供述ならびに弁論の全趣旨によれば、原告らは右にいわゆる人夫という職種
に属する職員として雇用されたこと、給料は日給制で、雇用当初から自他ともにそ
の雇用形態を日々雇用のものと称していたこと、甲府工事事務所においては、昭和
三六年度までは、同工事事務所が直営方式で施工していた工事に従事していた原告
らをはじめとする工事人夫に対し、各行政年度末に一旦その任用の更新を拒絶する
という措置がとられてきたこと、そしてこの措置がとられると工事人夫は一定期間
就労することができなかつたのであるが、昭和三六年度の原告らの場合には引き続
き就労できたこと、原告ら自身としても少なくとも昭和三五年度末ころまでは自己
が日々雇用の職員であると考えていたのであり、その後別個な任命行為があつたわ
けではないが、ただ右のような事情があつたので、昭和三六年度以降は日々雇用の
職員であるという意識が希薄になつたに過ぎないこと、原告らは職員に採用される
と就労点検票の交付を受け、就労する場合にはこれを工事現場の係官に提出し、就
業後に係官から就労の事実を証する検印を押捺してもらつてその返還を受けるとい
う手続により就労していたのであるが、この就労点検票の裏面には、昭和三七年九
月以降、「あなたは日々雇用の非常勤職員です。」 との文言が記載されるように
なつたこと、これに対し原告らは甲府工事事務所長にその記載の意味を尋ねた程度
で、これが自己の任用条件と異なるものであるとの主張ないし異議を述べたことは
なかつたことが認められる(以上の事実のうち、原告らに対しては、昭和三七年度
以降、各行政年度末に任用更新を拒絶するという措置がとられていなかつたこと、
および原告らは就労点検票の交付を受け、これの提出返還という手続により就労し
ていたことは、当事者間に争いない。)。
以上認定の事実ならびに甲府工事事務所長は同工事事務所に勤務する非常勤職員に
対する任命権のみを委任されていたものであつて、原告らは同所長により同工事事
務所に勤務する工事人夫として採用されたものであるとの事実を総合すれば、原告
らは、いずれも、任期を一日とする非常勤の工事人夫として任用されたものである
と認められる。
三 期限付任用の許否
(一) 国公法には、一般職に属する国家公務員を任用する場合、任期を定めるこ
とができるか否かについて明示の規定はない。ただ、わずかに同法第五九条が条件
付任用について、同法第六〇条が臨時的任用について、それぞれその任期を規定し
ているにとどまる。
同法第五九条の条件付任用の規定は、職員の職務遂行能力の有無を判定するために
六か月間の条件付採用を認めたものであつて、期限を付することが特に必要な場合
であるから、この規定があるからといつて、国公法が期限付任用をこの場合にのみ
特に限定的に許したものとは解されない。また、同法第六〇条の臨時的任用の規定
も期限付任用を例外的に認めた趣旨のものと解することはできない。むしろ、同条
は、恒常的に置く必要のあるいわゆる常勤官職に欠員を生じた場合に、その欠員を
臨時的に補充するための任用方法に関する特則を定めたもの、すなわち同法第三三
条第一項が職員の任用に関する根本基準として成績主義の原則を規定していること
に対する特則を定めたものであると解せられるのである。常勤官職に欠員を生じ、
これを緊急に補充しなければならない必要があつて職員を臨時的に任用する場合な
どには、その事柄の性質上、任用について同条同項の成績主義の原則による余裕の
ない場合もある。しかし、だからといつて、成績主義の原則によらないで採用した
職員を無期限に国家公務員たる地位に置いておくことは、他方において成績主義の
原則を採用した趣旨にもとり、任用制度の正常な運用を阻害する虞れを生ずる。同
法第六〇条の規定は、右のような相反する要請の調和をはかり、一方で緊急の必要
がある等一定の場合には成績主義の原則によらない任用を許容するとともに、他方
でその任用から生ずる虞れのある弊を避けるため特に臨時的任用の期間を厳格に定
めたものと解されるのである。したがつて、同条の規定が存するからといつて、一
般職に属する国家公務員の期限付任用が原則として禁止されているものと解するこ
とはできない。
原告らは、一般職々員の任用に期限を付することなかんずく日々雇用は国公法の定
める身分保障を奪うものであると主張するが、この主張はあたらない。同法は、職
員の分限および懲戒の事由を限定的に規定し(同法第七五条、第七八条、第七九
条、第八二条)、職員の身分保障をはかつている。国公法が予定する国家公務員の
身分保障とは、国家公務員は、国公法の定める事由または手続によらなければ、そ
の意に反して、身分をはくだつされる等の不利益処分を受けないということであ
る。国家公務員の期限付任用が適法であるかどうかは暫くおくとしても、期限付任
用が成立するためには、使用者としての政府(任命権者)と相手方(国家公務員と
なるべき者)との間において、任命行為の内容である期限についても、合意が成立
しなければならない。
任命権者が期限付任用を申し出で、相手方がその期限を承諾せず、期限の定めのな
い任用として同意したとすれば、任用の表示行為は合致しないから、任命は成立し
ない。また期限の定めなく任用された者について、後に任命権者が一方的に期限を
設定しても、相手方の同意のない限り、有効な期限付任用とはならない。したがつ
て、国家公務員の任用に期限を付することは、その意に反する不利益処分ではない
から、同法の定める身分保障を奪うことになるものではない。むしろ、制度的に
は、両者は全く別個な問題である。私法上の雇用契約においては、労働者の保護を
目的として、民法の特別法たる労働基準法が設けられているが、同法は民法と同様
雇用期間を定めることを認めながら、かえつて民法とは異なつて一年を越える長期
の雇用契約を禁止している(労働基準法第一四条)。これは雇用契約に期間の定め
をすることと労働者の保護とが本来別問題であつて、相互に矛盾するものではない
ことを示している。同様のことは国家公務員の任用についてもいえる。何故なら、
国家公務員の任命も、その法的性質を公法上の契約と解すると否とにかかわらず、
国家公務員が労務に服し、使用者である政府がこれに報酬を支払うことを約する点
において、私法上の雇用契約と異なるところはないし、しかも、労働基準法第一四
条は、一般職の国家公務員にも準用されるものだからである(国公法第一次改正法
律ー昭和二三年一二月三日法律第二二二号一附則第三条)。期限付で任用された国
家公務員の場合にも、その任期の範囲内においては、特段の定め(国公法第八一
条)のある場合のほかは、同法ないし人規の身分保障の規定が等しく適用されるの
であるから、身分保障について欠けるところはないのである。
以上のとおり、国公法には、一般職々員の期限付任用の許否について明定するとこ
ろはなく、これを禁止していると解されるような規定も存しないし、またこれを一
般的に禁止しなければならない合理的理由も見出し得ないから、常勤官職であれ非
常勤官職であれ、その任用に任期を定めることは、後記のような特別の事情のある
場合を除いては、同法上必ずしも許されないものではないと解すべきである。当裁
判所は、以上のような結論に到達したのであるが、この結論の根拠とするところ
は、被告の主張を採用するものではない。すなわち、国公法附則第一三条、人規八
-一二第七四条第一項第三号、第二項の各規定は、一般職々員の期限付任用が原則
として禁止されないとの解釈を導く根拠となるものではない。国公法附則第一三条
は期限付任用について何ら定めていないし、問題とされるべきは期限付任用が国公
法上許されるか否かだからである。
しかしながら、一般職々員の期限付任用は全く無制約に許されるものでもない。国
公法は、国民に対し公務の能率的な運営を保障することを目的とするものである
(同法第一条第一項)。したがつて、職員を任期を定めて任用することが公務の能
率的運営を阻害するような場合には、期限付任用は許されないものといわなければ
ならない。この意味において、恒常的に置く必要がある官職にあてるべき常勤の職
員を任期を定めて任用することは、一般的には許されない場合が多いであろう。特
に職務の遂行について、専門の知識と経験とを要求されるような常勤の官職にあて
る公務員を期限付任用することは、職務への習熟を害し、ひいては公務の能率的運
営を阻害するから、到底許されないのである(人規八-一二第一五条の二の規定
は、この理を明示するものである。なお、この規定は、非常勤職員たる原告らに適
用はない。)。要は、任期を定めて任用することが許されるか否かは、当該職員の
職務の性質、内容、任期の必要性等からして、国公法の右制定目的に反しないかど
うかによつて判断しなければならない。
(二) 原告らの職務の性質、内容、任期約定の事情等
1 甲府工事事務所が河川(富士川、笛吹川、釜無川)および道路(国道二〇号線
等)の改築、改良、維持、補修等の業務を所管していること、原告らは、同工事事
務所が直営方式で施工する河川の堤防の草刈り、堤防天端の補修、道路の路面、側
溝の補修、清掃等の工事人夫として採用されたものであること、およびその従事し
ていた作業の具体的内容が、土木作業、草刈り、抜根、芝付け、空石張り、清掃等
であつたことは、当事者間に争いない。証人D、同Eの各証言ならびに原告G、同
H、同Iの各供述を総合すると、右直営工事には原告ら人夫のほか行(二)の常勤
職員(昭和三三年ころから昭和三七年にかけてその大部分が定員化された準職員、
補助員および附属調書を含む。)も従事していたこと、右行(二)職員は原告ら人
夫と同じ作業に従事していただけでなく、そのかたわら、人夫に対する作業の指
示、監督、資材の管理等のほか、請負方式による工事の監督等をも担当していたこ
とが認められる。これによれば、原告らが従事していた仕事の内容は、行(二)の
常勤職員のそれと必ずしも同じではなかつたことが明らかである。
2 証人D、同Eの各証言によれば、原告ら人夫が甲府工事事務所の工事人夫とし
て採用されたいと希望するときは、直接工事現場におもむいて係官にその旨を申し
出で、係官から作業に耐え得るかどうか身体を確認される程度で採用されていたこ
とが認められる。採用されると就労点検票の交付を受け、就労する場合にはこれを
工事現場の係官に提出し、就業後に係官から就労の事実を証する検印を押捺しても
らつてその返還を受けるという手続により就労していたことは、前認定のとおりで
ある。そして、この就労点検票が、原告らの就労確認表となるとともに、賃金計算
の根拠とされ、原告らは就労点検票の領収欄に自己の受領印を押捺のうえ、これを
現場の係官に提出してその賃金の支払いを受けるものであることは、当事者間に争
いない。また、前掲乙第一五号証の一ないし六、八、九、一一ないし一三、一五な
いし一七、二〇、二二、二六、二七、二九、三一、三五ないし四〇、四二、四三、
四八、五〇ないし五五、五七ないし六一の各一、二、成立に争いない同第一〇号
証、弁論の全趣旨により成立を認める同第七、第九号証、証人D、同Eの各証言お
よび原告G、同Hの各供述ならびに弁論の全趣旨を総合すれば、原告らのうち昭和
三七年九月以後に採用された者も、かつてこれより以前から甲府工事事務所の工事
人夫として同工事事務所施工の直営工事に従事していたことがあるが昭和三五年こ
ろまでは原告らの大部分は毎年秋ころから翌年春の行政年度末までの間、すなわち
いわゆる渇水期にだけ就労していたに過ぎないこと、原告らの月々の就労日数をみ
ると、各人によりまた各月によつて必ずしも一定していないばかりでなく、年度末
に任用更新拒絶を受けることがなくなつた昭和三七年四月以前は勿論のこと、それ
以後においてすら、月によつては二〇日に満たない者が多数あり、一〇日に満たな
い者や全く就労していない者すらいること、原告らのうちかなりの者は副業として
農業を営んでおり、農繁期の六月には他の月に比して著しく就労日数が少ない者も
いること、雨天や荒天の日には作業ができないので原告ら人夫の場合には休日とさ
れていたこと、これに対し昭和三三年ころから昭和三七年にかけて定員化された準
職員、補助員および附属調書は、定員化前から雨天等の場合にも就労していたこと
が認められる(但し、原告らの月々の就労日数が各人によつてまちまちであり、特
に農繁期等時期的に著しく就労日数の少ない者がいたこと、および雨天、荒天の日
には作業を行なわなかつたことは、当事者間に争いない。)。このように、原告ら
の就労の実態も常勤職員の場合とでは著しく異なるところがあつた。
3 甲府工事事務所が行なう直轄工事の施工方式に、同工事事務所が直接工事資材
を入手し、人夫等の労務者を雇用して行なう直営施工方式と、民間土木業者に請負
わせてする請負施工方式とがあることは、当事者間に争いない。証人D、同E、同
Jの各証言によれば、同工事事務所が施工する直轄工事の量および規模は、各年度
の工事予算を基礎に上部機関(関東地方建設局)により立案される工事実施計画に
よつて決定されること、同工事事務所長は右工事実施計画によつて決定された直轄
工事を直営と請負のいずれの方式によるかを決定し、直営方式による場合には、工
事設計書を作成のうえ、当該工事の施工を担当する出張所に対し工事施工命令を発
すること、工事実施命令を受けた出張所は工事設計書をもとに必要な労働力を算出
し、工事現場の係官が作業に耐えられるかどうか身体を確認する程度で人夫の採用
を行ない、これにより直営工事を実施していること原告ら工事人夫の賃金は当該工
事費の中から支払われるものであることが認められる。以上認定の事実から明らか
なように、甲府工事事務所が所管する河川および道路の改築、改良、維持、補修等
の業務それ自体は恒常的な業務である。しかし、原告らが従事していた具体的業務
は、本来、各年度の工事予算ならびに工事実施計画によつて決定される工事量、工
事規模、工事施工方式等によつて増減変動し、前認定のように天候にも左右され、
必要とされる工事人夫の数も必らずしも一定しない性質のものである。また常に直
営方式によつて施工されなければならないというものでもない。
(三) 以上のとおり、原告らは、国公法の定める成績主義の原則によらずに採用
され、その従事していた業務はその時々によつて増減変動し、必要とされる工事人
夫の数も必ずしも一定しない性質のものであり、常に直営方式によつて施工されな
ければならないというものでもない。また作業の内容も常勤職員のそれと必ずしも
同じではないし、一般的にみれば極めて単純な肉体的労務であり、その遂行に専門
の知識および経験を必要とせず、したがつて、何人をもつてしても容易にその職務
に適応できるという意味で代替性の強い性質のものであるから、同一人をして継続
してその職務を担当させる必要性もない。さらに、就労の実態からみても、常勤職
員の場合に比して著しく異なつた面がある。そうすると、このような性質の業務に
従事する原告らを日々雇用の形態で任用したからといつて、公務の能率的運営を阻
害する等国公法の目的に反するものとも認められない。したがつて、原告らの任用
に付せられた任期の定めは、国公法上許されないものとは認められないから、有効
なものといわなければならない。
三 任期満了による退職
国公法第一次改正法律附則第三条によれば、一般職に属する国家公務員に関して
も、労働基準法第二一条但書、第一号、第二〇条第一項本文が準用されると解され
るから、原告らのように日々雇用の形態で任用された職員が一か月を越えて引き続
き使用されるに至つた場合には、被告が当該職員の任用の更新を拒否しようとする
ときは少なくとも三〇日前にその予告をするか、三〇日分以上の平均賃金を支払わ
なければならない。そして、甲府工事事務所長が、原告A、同B、同Cを除くその
余の原告らに対して昭和四四年二月二一日に、また右原告Aら三名に対しては同月
二五日に、いずれも同年三月三一日限り原告らの任用を更新しない旨の通知をした
ことは、当事者間に争いない。
四 再抗弁について
(一) 任期の定めのない任用への転化について
原告らが主張するところは必ずしも明らかではないが、任期の定めのない職員とし
て任用されるべき実質的資格を有する職員について、期限付任用が長期間更新して
継続されるとその任用は当然に任期の定めのないものになるというのであれば、こ
の主張は全く理由がない。期限付任用は、いかに長期間更新して継続されても、期
限付任用としての性質を変ずるものではない(人規八-一二第七四条第二項)。期
限付任用と任期の定めのない任用とは、性質を異にする別個の任用行為であり、し
かも少なくとも常勤職員の期限の定めのない任用行為は厳格な要式行為であるから
(人規八-一二第七五条第一号)、任命権者による任期の定めのない職員への任命
行為がなければ、任期の定めのない職員への任命が有効に成立し得る余地はないか
らである。また右の主張を、右のような実質的資格を有する職員について、期限付
任用が長期間継続されるという事実があれば、これを間接事実として、期限の定め
のない任用という要証事実の存在が推認されるべきであるという主張と解しても、
本件のような事実関係のもとにおいては、右の主張もとり得ない。前記認定の原告
らの採用および就労の実態、就労点検票の裏面の記載等からして、期限付任用を長
期間更新したことのみで期限の定めのない任用の存在を推認するのは困難だからで
ある。
(二) 手続的瑕疵について
国公法第八九条第一項の規定は、被処分者が当該不利益処分について不服申立てを
する場合において、右申立てをするための資料を被処分者に与えようとしたもので
あるから、処分事由説明書の交付がないからといつて、不利益処分自体が違法にな
ると解することはできない。
のみならず、本件任用更新拒絶は、前述のとおり、国公法第一次改正法律附則第三
条により労働基準法第二一条但書、第一号、第二〇条第一項本文が準用される関係
からなされたものである。日々雇用の形態で任用された職員については、一日の経
過をもつて任用は終了するのであり、将来に向かつて任用を拒否することは、従前
の任用を終了せしめる事由となるものではなく、その日以降の新たな任用を拒否す
るだけである。原告らの任用には、任用更新拒絶がなければ当然に従前の任用が更
新されるというような約款ないし条件は付されていないのであるから、原告らは任
期の満了をもつて当然に被告の職員たる地位を失なつたのであつて、本件任用更新
拒絶によりその地位を失なつたものではない。そうすると、本件任用更新拒絶をも
つて国公法第八九条第一項、人規八-一二第七一条第六号にいわゆる免職ないしは
著しく不利益な処分ということはできない。
(三) 国公法第七八条違反について
本件任用更新拒絶が国公法第七八条にいう免職にあたらないことは、前述したとこ
ろと同様であるから、原告らの主張は採用できない。
(四) 国公法第一〇八条の七違反について
原告らがその主張のとおり組合を結成し、組合が原告ら主張のとおりの活動をして
きたことは、当事者間に争いない。しかし、甲府工事事務所長が、組合ないし組合
員である原告らを、右のような活動をしてきたが故に敵視し、本件更新拒絶におよ
んだものであることを認めるに足りる証拠はない。かえつて、証人Fの証言により
成立を認める乙第一一号証、同証人ならびに証人Jの各証言によれば、建設省で
は、行政経済の観点と民間土木業者の工事施工能力の整備状況から、業務遂行の合
理化をはかるため、昭和三〇年前後ころからそれまで直営工事として行なわれてき
た業務を漸次請負方式で施工するようになつたこと、甲府工事事務所においては、
その所管業務特に河川および道路の管理業務が増大し、他方では定員内職員の削減
問題が生じていたので、所管業務の能率的遂行と職員の合理的配置をはかる必要が
あつたこと、そのため建設省の右方針に従つて工事施工方式を直営方式から請負方
式に転換することにし、昭和四四年一月中旬ころ、それまで直営工事に従事してい
た原告らの任用を同年三月三一日限り更新しない旨決定したことが認められる。し
たがつて、原告らのこの主張は認められない。
(五) 国公法第七四条違反について
国公法第七四条第一項の規定は、職員の分限、懲戒および保障についての根本基準
を定めたものである。そして、原告らの任用終了の原因は任期満了であり、本件任
用更新拒絶は、任用終了原因ではないのであるから、分限処分でもその他の不利益
処分でもないこと、前述のとおりである。そうすると、本件任用更新拒絶について
同条を適用する余地はないものといわなければならない。原告らの右主張は採用で
きない。
六 結び
以上のとおり、原告らは、昭和四四年三月三一日限り、一般職に属する国家公務員
である地位を失つた。よつて、本訴請求はいずれも理由がないから棄却することと
し、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条、第九三条第一項本文を適用し
て、主文のとおり判決する。
(裁判官 岩村弘雄 矢崎秀一 飯塚 勝)
(別紙省略)

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