弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決および第一審判決を破棄する。
     本件を大阪地方裁判所に差し戻す。
         理    由
 弁護人関田政雄の上告趣意は、憲法違反をいう点もあるが、その実質は原判決の
法令解釈の不当をいうものであつて、単なる法令違反の主張に帰し、適法な上告理
由にあたらない。
 しかしながら、所論にかんがみ、職権をもつて調査すると、本件第一審判決が認
定した犯罪事実は、要するに、「被告人Aは、同B株式会社の業務に関し、法定の
除外事由がないのに、非居住者である台湾在住の各商社との契約にもとづく貨物の
輸出に関し、右各商社との間で、実際の輸出契約額より低価で輸出手続をしその差
額金は別途日本円で決済を受けることを約定したうえ、昭和三七年一〇月から同三
九年八月まで一四五回にわたり、右各商社に対し自転車部品等を実際の契約額より
低価でそれぞれ輸出し、よつて右各商社に対し低価輸出による差額合計四万四二〇
八ドル九六セント(邦貨換算一五六七万六三一一円相当)の外貨債権を発生させ、
もつて居住者と非居住者間の債権発生の当事者となつたものである。」というので
あり、第一審判決は右事実につき外国為替及び外国貿易管理法(以下外為法と略称
する)三〇条三号、七〇条一〇号、七三条を適用したものである。そして右外為法
三〇条にいう「政令で定める場合」として、外国為替管理令一三条の規定が存し、
本件は同令一三条一項一号所定の「居住者と……非居住者との間の……売買に関す
る契約に基く外貨債権について債権の発生等の当事者となる場合」に該当するとさ
れたものであることは、第一審判決の判文上明らかなところである。しかして原判
決は以上のような第一審判決を認容して被告人らの控訴を棄却したものである。
 ところで右外国為替管理令一三条一項一号にいう「外貨債権」とは、「外国にお
いて又は外貨をもつて支払を受けることができる債権」をいうものであること外為
法六条一項一四号の明定するところであるが、ある債権が外貨をもつて支払を受け
ることができるものであるかどうかについては、当該債権額が契約書等においてい
かなる通貨で表示されているかという点のみによつて決すべきものではなく、その
当事者間の具体的な契約内容を総合考慮して判断しなければならない。それゆえ本
件において、各輸出契約が締結された際、真実の契約代金額と手続上の低価代金額
との差額分につき、特に日本円によつて決済がなされるべき旨約定されていたとす
れば、その差額分の代金債権は、たとえその額が契約書においてドルで表示されて
いたとしても、外貨をもつて支払を受けることができる債権には該当しないものと
解するのを相当とする。この点につき、第一審判決ならびに原判決は、外為法の立
法趣旨等を強調し、本件の如き債権の規制の必要性を説くのであるが、本件が外為
法三〇条三号違反にあたらないとしても、本件の如き所為に関しては同法の他の条
文に触れることも考えられないわけではないのであるし、いずれにしても本件につ
き強いて外貨債権の発生を認め右三〇条三号に問擬する根拠にはならないというべ
きである。
 しからば、本件差額分の代金債権については日本円で決済を受けることを約定し
たと認定しながら、これを直ちに外貨債権にあたるものとし、被告人らにつき本件
外為法違反の罪の成立を認めた第一審判決ならびにこれを認容した原判決は、法令
の解釈、適用を誤つたものであり、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかで
あつて、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。
 よつて、刑訴法四一一条一号、四一三条本文により、原判決および第一審判決を
破棄し、本件については前記決済に関する特約の成立時期、内容等につきさらに審
理を尽くさせるべく、本件を第一審裁判所である大阪地方裁判所に差し戻すべきも
のとし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官 山本清二郎公判出席
  昭和四三年七月一九日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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