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平成25年(う)第857号法人税法違反,関税法違反被告事件
平成25年11月27日東京高等裁判所第1刑事部判決
主文
本件各控訴を棄却する。
理由
本件各控訴の趣意は,弁護人鈴木善和,同島田種次,同井上隆行及び同
中野光恵連名作成の控訴趣意書に,これに対する答弁は,検察官北英知作
成の答弁書にそれぞれ記載されたとおりであるから,これらを引用する。
論旨は,事実誤認,法令適用の誤り及び量刑不当の主張である。
第1事実誤認の主張について
論旨は,原判決は,原判示第3について,被告人は原審相被告人甲(以
下「甲」という。)との間で原審相被告会社株式会社乙(以下「乙」とい
う。)の法人税ほ脱を共謀していたとして,法人税法違反の罪の成立を認
めたが,被告人にはそのような共謀はなかったから,被告人を有罪とした
原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるというの
である。
そこで検討すると,この点につき原判決に事実の誤認はなく,その理由
として争点に対する判断の項において説示するところも概ね正当として是
認することができる。以下,所論に鑑み,補足して説明する。
原判決は,まず関係証拠から,被告人が,従業員を通じて乙の売上の一
部をA商店名義の売上として仮装し除外するように指示していたこと,ダ
イオキシンに汚染されたチリ産豚肉の返品による損失を乙が同豚肉を仕入
れたことにして損金処理するよう,同社の顧問税理士であったB税理士に
依頼したことを認定した上で,被告人がこのように乙の所得秘匿行為に関
与していることに加え,同社の設立及び法人税ほ脱そのものが,被告会社
の売上除外,ひいてはその法人税ほ脱につながるものであって,被告人が
乙から報酬その他の直接的な利益を得ていないことが直ちに共謀の存在を
否定することにはならないことなどからすれば,被告人は甲との間で乙の
法人税ほ脱を共謀していたと認められるとした。原判決の各証拠評価は相
当であり,その総合判断も論理則,経験則に沿う合理的なものといえる。
所論は,(1)被告人は,乙から何ら報酬を得ていない上,同社はあくま
でも甲の会社であり,これに税務調査に繋がりかねない不正申告を疑われ
るような行為をさせても被告人の利益とはならないから,乙の脱税につい
て動機が全くないばかりか,(2)ア被告人はA商店が独立した課税主体
とはなっていない実態を知らず,乙としての売上除外に当たるという事実
を知らなかったのであり,また,イ被告人は甲とともに,B税理士に対
して,ダイオキシンに汚染されたチリ産豚肉を乙において損金として処理
して欲しいと依頼したに過ぎず,棚卸資産の評価損の計上(法人税法33
条2項,同施行令68条1号)という本来なすべき処理がなされず,架空
の仕入れ高の期末計上が行われたのはB税理士の独断によるものだったの
であり,被告人はこうした事前の所得秘匿行為に関して共謀と評価される
ような関与をしていないから,乙の法人税法違反の罪について共謀共同正
犯は成立しない旨主張する。
しかしながら,(1)の点については,被告人は,捜査段階において自認
するとおり,年間総売上高が100億円を超過すると国税局により毎年税
務調査が行われると認識していたところ,平成19年末から同20年初め
にかけて乙の売上が相当伸長してきていたことから,同社が国税局による
税務調査を受け,それにより被告会社が行っていた差額関税等のほ脱が発
覚するのを避けるために,乙の売上をダミーに付け替えて減少させること
を画策し,甲にダミーの設立を依頼したものであって,当然乙の法人税額
が減少することも認識していたものと認められる。被告人の第一次的な目
的が,乙の法人税をほ脱することではなかったにせよ,それに繋がる同社
における売上除外について,上記のとおり,被告人には十分な動機があっ
たものと認められるのであって,同社から報酬を得ていないことによりこ
の認定が妨げられることにはならない。所論(1)は採用できない。
次に,(2)アの点については,そもそもA商店は,甲の次男Cの当時の
交際相手であったDの屋号であり,被告人からの上記依頼を受けた甲がC
及びDに働きかけて,乙に対する国税局による税務調査を避けるために,
その売上の一部を付け替える先として設けたものに過ぎず,そのことはこ
の一連の操作を主導した被告人も十分承知していたと認められる上,被告
人は,実際にも何ら業務上の必要がないのに,それまで名義上は乙と国内
の食肉卸業者との間で行われていた取引のうち,個人であるA商店との取
引に応じてくれる旧知の業者との取引を選別してA商店との取引に振り替
えることとし,EやFを介して輸入元会社に対し乙及びA商店のいずれに
名義変更するかを伝えていたのであるから(このような実態については,
EやFのみならず,被告人も供述するところである。),被告人がA商店
名義の取引が乙の売上除外に当たることを認識していないはずがない。所
論(2)アは,失当である。さらに,(2)イの点については,そもそも乙は,
被告会社において正規の関税を納付せずに豚肉の輸入取引を行っていた被
告人が,自らの氏名が会社の代表取締役として表に出る状態を解消するた
め,甲に持ちかけて設立されたもので,名義上,国内の食肉卸業者に対す
る輸入豚肉の販売元となるに過ぎず,その実質的な販売元は被告会社であ
ったと認められる。そうすると,そもそもダイオキシンに汚染されたチリ
産豚肉が販売先の業者から返品され,何らかの損失が生じたとしても,そ
れは本来であれば被告会社において計上すべきであって,乙において計上
できる筋合いのものではない。被告人自身,そのことは十分承知しつつ
も,被告会社において損失を計上すれば輸入豚肉取引の名義を仮装してい
ることが明るみに出るため,そうすることはできず,また乙において相当
額の利益が見込まれており,損失を計上したとしても法人税額が減少する
だけで甲の損失にはならないことなどから,甲に対して乙において損失を
計上することを依頼したものと認められる。所論は,この点を正解せず,
棚卸資産の評価損の計上が本来なすべき処理であった旨主張するが,前提
を欠くものとして失当である。また,平成20年9月期の決算処理の時点
においては,上記チリ産豚肉の仕入代金が仕入先から返金されるかどうか
は明らかになっていなかったのであるから,被告会社の平成21年5月期
の修正損益計算書において損失として計上されていないことも何ら不当で
はない。所論(2)イも失当である。
所論はいずれも採用できず,被告人は,乙の法人税ほ脱について,上記
のとおりこれを自己の犯罪として行う十分な動機を有しており,同社の売
上除外及び上記チリ産豚肉の損失計上といった事前の所得秘匿行為に関し
て主導的に関与したのであるから,原判示第3の罪につき甲との共謀共同
正犯が成立すると認められ,その他所論に鑑み記録を検討しても,原判決
の認定に誤りはない。
事実誤認の論旨は理由がない。
第2法令適用の誤りの主張について
論旨は,(1)原判示第4について,豚肉の差額関税制度は「世界貿易機
関を設立するマラケシュ協定」(平成6年条約第15号,以下「WTO協
定」という。)の「農業に関する協定」(以下「WTO農業協定」とい
う。)4条2項に違反して無効であり,被告人両名は関税を免れたことに
はならないから無罪であり,(2)仮に,差額関税制度が有効であるとすれ
ば,同第2について,被告人両名が免れたとされる関税約21億600万
円は,被告会社の平成21年5月期における実際所得金額の計算上,法人
税法22条3項1号の売上原価として損金に算入されるべきものであり,
その結果実際所得金額は大幅な赤字となって法人税額も零円となるから,
被告人両名は無罪であるのに,原判示第2の法人税法違反の罪及び同第4
の関税法違反の罪の成立を認めた原判決には判決に影響を及ぼすことが明
らかな法令適用の誤りがあるというのである。
そこで検討すると,WTO農業協定は国内の裁判規範として直接適用さ
れるものではないから,豚肉の差額関税制度が直ちに無効になることには
ならず,また被告人両名が免れた関税を法人税法22条3項1号の売上原
価として算入することはできないとした原判決の判断はいずれも相当であ
って,原判決に所論がいうような法令適用の誤りはない。以下,所論に鑑
み,補足して説明する。
1差額関税制度がWTO農業協定4条2項に違反して無効となるか
所論は,我が国では,所定の公布手続を了した条約は,他に特段の立法
的措置を講ずるまでもなく当然に国内法的効力を有しており,この国内法
的効力が認められた条約が国内において直接適用可能か否かについては,
条約締結権者及び立法者の意思(主観的基準)並びに内容の明確性(客観
的基準)によって判断されるものであるところ,日本政府は,WTO協定
の直接適用可能性について公式の見解を表明していないが,実際に韓国と
コスタリカにおいてWTO協定の直接適用が認められていることからも明
らかなように,その内容は詳細かつ明確であって客観的基準を満たしてい
るといえるから,日本においてもWTO協定は直接適用されるとの前提に
立った上で,差額関税制度は,WTO農業協定4条2項が明示的に禁止す
る「可変輸入課徴金」,「最低輸入価格」ないし「その他これらに類する
通常の関税以外の国境措置」に該当するのであって,同条項に違反して無
効である旨主張する。
憲法98条2項の定めによれば,国会の承認を経て公布された条約は国
内法的効力が肯定されることになるのは所論が主張するとおりである。し
かし,このように国内法秩序に受容された条約が直接適用可能か否か,ひ
いて法律の規定と抵触する場合に当該規定を無効ならしめるか否かは別の
問題である。これをWTO協定についてみると,同協定は,その直接適用
可能性については何ら規定しておらず,それを認めるか否かを含めて,協
定の国内的実現の手段方法は各加盟国の判断に委ねられたものと解されて
いるところ,日本政府はWTO協定の直接適用可能性に関して公式の見解
を表明していない。そこで,WTO協定につき直接適用可能性が肯定され
るか否かは,我が国の国内法に依拠して決まるものであるが,本件に即し
ていえば,WTO農業協定4条2項の内容及び性質を基礎として,我が国
における三権分立の在り方,国内法制の状況,訴訟における請求や主張の
形態なども勘案して総合的に判断することになる。まず,WTO協定の内
容は,GATTとの対比においてより詳細かつ明確になったとはいえ,な
お交渉を通じた柔軟な紛争解決の余地が排除されたわけではなく,規律の
柔軟性が残っている部分もあると考えられる。また,アメリカ合衆国及び
EC(平成21年のリスボン条約の発効により,ECは廃止され,現在
は,EUがWTO加盟国としてのECの地位を承継。)は,WTO協定を
国内・域内に実施する法令において直接適用可能性を明示的に否定してい
るところ,日本及びアメリカ合衆国及びEU加盟国との間では貿易が盛ん
に行われており,こうした状況下で日本のみがWTO協定の直接適用可能
性を肯定することになれば,これらの国との関係でWTO協定上の義務履
行に関して著しい不均衡が生じ,不利益を被ることにもなりかねない。こ
のことは取りも直さず,立法及び行政による裁量権の行使がWTO協定に
関する司法審査によって制約されるということになるが,これは日本国憲
法が採用する権力分立の観点からも好ましいものとはいえない。そうする
と,WTO農業協定との関係で差額関税制度の適法性ないし有効性が問題
となっている本件においても,WTO協定の直接適用可能性を認めるべき
根拠を見出し難い。所論は,その前提を欠きこれを採用することができな
い。
2免れた関税が売上原価に該当し,損金として算入されるか
所論は,原判決は,原判示第2の事実に関して,被告会社の平成21年
5月期事業年度につき法人税法違反の罪の成立を認めたが,法人税法22
条3項1号にいう売上原価は,購入代価と引取費用等の合計額であるとこ
ろ,輸入品の関税は引取費用等に含まれる以上,売上原価に該当するとい
うべきであり,また費用収益対応原則によれば,関税のように収益とそれ
を得るために使われた費用との対応関係が商品や製品を媒介として個別に
直接認識できる,いわゆる収益対応費用については,その売上と同一年度
に計上すべきである,そうすると,仮に,差額関税制度が有効であるなら
ば,被告人両名が免れた関税約21億600万円は,被告会社の平成21
年5月期における実際所得金額の計算上,同条3項1号の売上原価として
損金に算入されるべきこととなり,そうすると被告会社の法人税額は零円
となって,法人税法違反の罪が成立する余地はなくなる旨主張する。
一般に,関税は,棚卸資産の取得価額の一部として売上原価に含まれ,
損金として算入されるものである。本件においても,申告済みの過少な関
税については,被告会社の修正損益計算書において棚卸高の算定に当たっ
てこれが考慮されているところである。しかしながら,所論が主張するよ
うに,本件において被告人両名が免れた関税を損金として算入することが
認められるか否かに関しては,原判決が説示するとおり,売上原価に当た
る費用の年度帰属については,当該事業年度終了の日までに当該費用に係
る債務が確定していない場合であっても,近い将来にこれを支出すること
が相当程度の確実性をもって見込まれており,かつ,同日の現況によりそ
の金額を適正に見積もることが可能であれば,その見積金額を法人税法2
2条3項1号の売上原価の額として当該事業年度の損金の額に算入するこ
とができると解されている(最高裁平成16年10月29日第2小法廷判
決参照)。一般の貨物輸入についての関税の納付手続は申告納税方式が採
られており,輸入者が輸入申告の際に貨物の品名,価格,税額等を税関に
申告し,輸入の時までに納税するのが原則であるが,本件において被告会
社は,原判示第4の別表番号1ないし372のとおり,貨物の課税価格及
び関税額について虚偽の輸入申告を行って関税の納付を免れており,一連
の手続の中で正規の関税額は一切明らかにされていない。しかも被告会社
は,その後の税関長による更正の処分に対して異議申立をし,これが棄却
されてもなお財務大臣に審査請求をし,未だその裁決は行われていないの
であるから,免れた関税額は確定していないばかりか,現段階において
も,これらを納付する意思さえ有していないものと認められる。そうする
と,被告会社が,近い将来にこれを支出することが相当程度の確実性をも
って見込まれるものとはいえないから,平成21年5月期において,免れ
た関税を売上原価の額として損金に算入することは認められないというべ
きである。さらに,そもそも損金の額は一般に公正妥当と認められる会計
処理の基準に従って計算されるところ,本件においては,被告会社は関税
を免れる意図で,貨物の課税価格及び関税額について虚偽の輸入申告を行
って実際に納付を免れたばかりか,上記のとおり税関長による更正の処分
についても異議申立をし,未だ財務大臣に審査請求中であって関税支払の
意思は認められないのである。このような事情もあって,約21億600
万円の関税については現在でも全く支払がなされておらず,また極めて多
額なその金額について支払の見込を窺わせる資料もない。このように見て
くると,本件で免れた関税を売上原価として損金算入することを認めるの
は相当ではない。なお,仮に免れた関税を支払った場合には,いずれの事
業年度分として計上するかはともかく,損金として計上されることがあり
得ると考えられるが,その場合でもいったん成立した法人税のほ脱犯が遡
って不成立になったり,そのほ脱額が減じられることはないのは当然であ
る。
なお,原判決は,その法令の適用の項の記載に照らして,原判示第4に
ついて一罪と捉えているが,関税ほ脱犯の罪数は関税の納付を免れた回数
によって定まるから別表番号1ないし372の各行為ごとに関税ほ脱犯が
成立するものと解するのが正当である(別表番号57,67,68,7
5,183,186については,免れた関税額の10倍が500万円を超
えないから平成22年法律第13号による改正前の関税法110条4項は
適用されない。)。また,これらの各罪は,被告会社については原判示第
1及び第2の各罪と,被告人については原判示第1,第2及び第3の各罪
と併せて併合罪であるところ,原判決は,被告人の懲役刑について犯情の
最も重い原判示第4の罪の刑に法定の加重をしているが,上記のとおり,
原判示第4は一罪ではないから,犯情の最も重い原判示第1の罪の刑に法
定の加重をすべきものである。しかしながら,これらの誤りはいずれも判
決に影響を及ぼすものではない。
法令適用の誤りの論旨は理由がない。
第3量刑不当の主張について
論旨は,被告人を懲役2年4月及び罰金1億円に処した原判決の量刑
は,重すぎて不当であるというのである。
そこで検討すると,本件は,食肉の販売等を業とする被告会社の代表取
締役である被告人が,(1)被告会社の業務に関し,売上を除外し仕入を水
増しするなどの方法により所得を秘匿し,2事業年度分の法人税を免れ,
(2)被告会社から委託された事務の代行等を業とする乙の代表取締役であ
る甲と共謀の上,同社の業務に関し,売上を除外するなどの方法により所
得を秘匿し,1事業年度分の法人税を免れ,(3)別会社名義を用いてアメ
リカ合衆国等から本件豚肉を輸入するに当たり,情を知らない通関業者の
従業員を介し,虚偽の輸入申告を行い,その都度輸入許可を受け,関税を
免れたという法人税法違反,関税法違反の事案であるところ,本件におい
て量刑上考慮すべき事情は,概ね原判決が量刑の理由の項において説示す
るとおりである。
すなわち,本件のほ脱税額及びほ脱率は,それぞれ,被告会社の業務に
関する法人税法違反につき合計約6億600万円,100%,乙の業務に
関する法人税法違反につき約2900万円,約70%,被告会社の業務に
関する関税法違反につき約21億600万円,約91%と相当高額,高率
であって,本件各犯行は国家の租税債権を著しく侵害するものである。犯
行態様についてみても,法人税法違反については,ダミー法人から豚肉を
仕入れている形を取り,実際の仕入価格よりも仕入代金を水増ししたり,
被告会社らが取引主体ではないかのように仮装して売上を除外するなどし
て所得を秘匿し,関税法違反については,偽造のインボイスを利用して輸
入価格を偽った上,ダミー会社の名義を利用して通関手続を行い,さらに
複数のダミー会社を介在させて豚肉の名義変更を重ねていたのであって,
計画的かつ巧妙な犯行である。また,関税法違反については,約1年間の
間に372回にもわたって繰り返されたものであって,常習的かつ営業的
犯行といえる。本件各犯行は,被告人による直接あるいは間接的指示に基
づいて行われたもので,被告人は主導的役割を果たしたものと認められ
る。また,いずれも利欲的動機に基づくものである上,被告人は,長年食
肉業界で働く中で,豚肉の差額関税制度を悪用して利益を上げる方法を知
って,さしたる抵抗感もなく同様の犯行に及ぶに至り,同じくこれを悪用
していた同業他社が摘発された後も,犯行を自制するどころか逆に摘発さ
れた業者から豚肉を購入できなくなった業者らからの注文が増大する可能
性が高いと考えて,新たに設立した被告会社名義で本件関税法違反の犯行
に及んだもので,犯行の動機及び経緯に酌量の余地はない。そうすると,
被告会社及び被告人の刑事責任は重いというべきであって,被告会社らが
各法人税法違反について修正申告に応じ,乙の延滞税の一部を除いて,本
税及び附帯税を完納していること,被告人に前科はないこと,知人の税理
士が指導監督を約していることなどを十分に考慮しても,原判決の量刑は
やむを得ないものであって,これが重すぎて不当であるとはいえない。
所論は,(1)法人税ほ脱犯については,法人に罰金刑を,行為者に対し
懲役刑のみを科す例が多く,受刑主体であるべき法人が消滅していたり,
罰金の支払能力がないなどの理由で,法人についての起訴がなされていな
い場合に,行為者に対して罰金刑を併科した事例があるとされているとこ
ろ,原判決は,被告会社が起訴され,罰金の支払能力があるにもかかわら
ず,何らの理由説明もなく,被告会社のみならず被告人に対しても罰金刑
を併科しており不当である,また(2)原判示第2ないし第4については,
被告人は,無罪であるから懲役刑については刑の執行を猶予すべきである
などと主張する。しかしながら,(1)の点については,そもそも罰金刑併
科の趣旨は,行為者に対して懲役刑のみでは刑の感銘力が期待できない場
合に,さらに犯人から相応の金額を剥奪することによって,不法利益の取
得を目的とする犯罪行為が経済的に引き合わないことを強く感得させ,両
者相まって行為者に対する科刑の適正を図ることにある。本件において,
被告会社は被告人に対して約9億3900万円の債権を有するとはいえ,
被告人の資力からしてその全額を回収することは期待できず,休眠状態で
事業収益もないのであるから,罰金の支払能力が十分にあるとは考えがた
い。また,本件による不法利益のうち相当部分が被告人によって費消され
ていることも併せ考慮すれば,被告人に罰金1億円を併科した原判決の量
刑がその裁量を逸脱して不当であるとはいえない。また,(2)の点につい
ては,既に検討したとおり,原判示第2ないし第4の各罪について被告人
は有罪であるから,その前提を欠き,失当である。所論(1),(2)はいずれ
も採用できない。
量刑不当の論旨は理由がない。
よって,刑訴法396条により本件各控訴を棄却し,主文のとおり判決
する。
(裁判長裁判官角田正紀裁判官伊藤敏孝裁判官鎌倉正和)

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