弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する
         理    由
 辯護人木田茂晴上告趣意書第一點は日本國民は憲法第二十一條の規定によつて集
會結社及び言論出版その他一切の表現の自由は保障されて居るのである。食糧緊急
措置令第十一條の規定ば明かに此憲法違反の法律である。
 被告人は供出の必要も糞もないとか米を出さぬ事に決議しやうではないかとか演
説した事に對して原判決は參會者等に對し其生産にかかる米穀に付き食糧管理法の
規定に基く命令による政府に對する賣渡しを爲さざる事を煽動したものであると認
定して居るのであるが被告人の演説は原判決の摘示するところによつて見ても政府
の失政に對して攻撃して居るのであつて具體的に農民に對して其生産にかかる米穀
の賣渡行爲をするなと煽動して居るのではないのである。裁判所は斯の如く被告人
の眞意でもないのに煽動といふ文字を前記の如く認定する所以のものは此の法律は
政府の一政策である食糧管理制度に對する國民の批判を封じたところの換言すれば
國民に對して言論の自由を對じたところの憲法違反の法律であるからであつて斯る
法律が存在する以上國民は安心して政府の失政に對して之を攻撃する事が出來な
い。政府の政策に對して自由の批判がなされないでどうして民主々義を徹底する事
が出來やうか。日本の舊支配階級は言論の自由を極端に制限したが故に國民は批判
的精神を失つて時の支配者の言に盲從し太平洋戦爭を起して日本の悲劇を招來した
のである。供米阻害言動を取締る此法律は政府の食糧政策に對する國民の正當なる
批判の自由を妨害する悪法である。即ち食糧緊急措置令第十一條の規定は憲法の施
行によつて是れと牴觸し無効こ歸したる法律であるのに之を有効として被告人の有
罪を宣告した原判決は此の點に於て破毀すべきであるというのである。
 食糧緊急措置令は昭和二十一年二月十一日に公布された舊憲法第八條にいわゆる
緊急勅令であるがその趣旨とするところは、當時いよいよ窮迫していた食糧事情に
對處するため、政府が終戦前より採り來つた食糧管理制度を一層強化し(一)主要
食糧の強制収用(二)生鮮食糧品の統制(三)不正受配者の嚴罰(四)供出阻害行
爲の取締の四つの施策を強力に押し進めんとするにあつたのであり、(四)の施策
を具現したものが令第十一條の規定だつたのである。主食の絶對が不足している我
國において、しかも、終戦後食糧事情のますます悪化せんとする際において、政府
としては供出による食糧の蒐集にあらゆる施策を推進すベきであつたから供出な阻
害する言動を爲すようた者に對しては斷乎對處するの必要のあつたのは當然で令第
十一條はまさにその趣旨に出たものである。
 扨て右勅令は日本國憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する
法律にいわゆる命令ではないから昭和二十二年十二月三十一日限りその効力を失つ
たものではないが、その内容は國の最高法規である新憲法の批判の下に在るわけで
あるからもしそれが新憲法の條章に違反するとすればその効力を持績し得ない筋合
である。そこで論旨は令第十一條は新憲法の保障する言論の自由に牴觸するが故に
無効のものだというのであ<要旨>る。新憲法の施行後萬般の制度が整頓し經済事情
もようやく安定しかけてはいるが、食糧事情は必ずしも楽観し難く、いまだ
食糧管理を緩和する状態にまでは立至つていない。即ち政府としては生産者に對し
可能なだけの供出を期待し且これを強制する一方、その供出を阻むような言動をす
る者に對しては取締の手をいささかも緩めることはできないのである。この故に令
第十一條は現下の國内事情にも妥當なるものといわなければならない。勿論新憲法
の下政府のそうした政策の是非善悪を批判することは自由であろう。しかしその批
判が單に政府の食糧對策な不可とするに止らないで、進んで生産者に對し供出をし
ないようこと煽動するに至つては現下緊急の食糧對策を危殆に頻せしめ延いては、
國民大衆を飢餓に陷らしめる機縁となるものであり、到底政治批判の枠内に在るも
のとは云い得ない。思うに新憲法下言論は自由だといつても、それは放埒、無軌道
を意味するものではなく、新憲法にいわゆる公共の福祉に合致する限りにおいての
み自由なることを意味する。現下窮迫せる食糧事情の打開が偏に生産者の旺盛な供
出如何にかかつている際に生産者に對し供出するなと煽動するようたことは公共の
福祉に和さる甚しく遠いものであつて到底言論の自由を以て許さるべきものではな
い。
 しかして原判決の認定した被告人の所爲は令第十一條にいわゆる煽動と斷じ得な
いわけのものではないのである。即ち論旨は採用の餘地なきものと考える。
 上告論旨第二點は原審公判では昭和二十二年五月一日A、B、C、同年五月十二
日D、E、同年五月二十二日F、G、a村の證人を呼んで昭和二十一年十一月十五
日の上川郡H村I國民學校の農民大會に於ける被告人の發言の内容を取調べたので
ある。其の結果は證人E(之は警察官)以外の證言は被告人の發言が明瞭に供米阻
止になると證言したものは一人もなく殊に證人A同Cの如きは明かに反對め證言を
して居るのである。演説の内容が如斯く聞く者によつて種々に判斷された場合は其
の眞意は演説するものの意思によつて決定する外はない。裁判所は事實の認定をす
る専權があるからと言つて常識から外れた事實の認定をする權利がないのは當然で
ある。
 然るに原審は被告人を有罪にせんとする餘りに演説という公衆の面前で行はれた
行爲に對して公衆が如何に之を感じたかといふ客觀的事實を無視して二、三の證人
の證言しかも警察官の證言を根本として本件事實の認定をして居るのである。斯る
事實の認定の方法は人間の常識に反する違法の認定方法であるから原判決は此の貼
に於ても破毀すべきであるというにある。
 しかし原審は證人Eの證言を措信し得べきものとして判示認定の證據に供したも
のであつて所論摘録の各證言は證據力が薄弱か或は皆無なものとして採用しなかつ
たことが明かであり、かような證據の取捨撰擇は原審の専權に任せられている事柄
だから、それを採用しなかつたからといつて、又原審が警察官の證言に依據したか
らといつて、それだけでは常識外れの認定だとは斷ずるを得ない。畢竟論旨は原審
のなした證據の取捨選擇を批難し、延いて原判決に事實の誤認あることを主張する
ものであるから刑訴應急措置法上適法な上告理由とするに足りないものである。
 以上説明した通り本件上告は理由のないものであるから刑事訴訟法第四百四十六
條に則り主文の通り判決をする次第である。
 (裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 原和雄 裁判官 藤田和夫)

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