弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴はこれを棄却する。
     控訴費用は控訴人等の負担とする。
         事    実
 控訴人等は適式の呼出を受けながら、昭和二十四年七月二十七日の最初に為すべ
き口頭弁論期日及びその後の口頭弁論期日に出頭せず。
 控訴人等が提出した控訴状の記載によれば、控訴人等は原判決を取消す、被控訴
人の請求を棄却する、訴訟費、用は第一、二審共被控訴人の負担とするとの判決を
求め、控訴人等の事実上の主張は原判決事実摘示の通りであると云うのである。
 被控訴代理人は主文第一項同旨の判決を求め、原判決事実摘示の通り原審の口頭
弁論の結果を陳述した。
         理    由
 よつて、当事者双方の事実上の主張及び証拠の提出、援用及び認否については、
いずれも原判決の事実の部の記載を引用する(尤も原審における証人A、B、被控
訴本人、控訴人C本人の各訊問はいずれも二回に亘つて行われた。
 被控訴人が別紙目録第一の家屋を所有していること、控訴人等がそれぞれ被控訴
人主張の通り右家屋を占有していること及び被控訴人が右家屋を昭和十二年四月三
十日に控訴人Dに対して賃料一ケ月金八十円、毎月二十五日その月分支払の約定で
賃貸したことは、いずれも当事者間に争がない。控訴人等は控訴人Dの希望する限
り右賃貸借を継続する趣旨の諒解が当事者間にあつたと主張するが、かようた事実
を認めるに足りるなんらの証拠がなく、反つて成立に争がない、甲第一号証によれ
ば、かような諒解がなかつたことが窺われるから右賃貸借は期間の定めがないもの
であると推認することができる。
 被控訴人は、右賃貸借については、昭和二十二年九月五日に被控訴人の代理人で
ある同人の長男Aと控訴人Dの代理人である同人の長男控訴人Cとの間に、控訴人
Dは一ケ月後たる同年十月六日かぎり右建物全部を明渡す旨の合意解約が成立した
と主張し、原審証人A(第一、二回)、E、B(第一、二回)の各証言によれば、
右被控訴人主張の日時にAが被控訴人を代理し、控訴人Dの代理人たる控訴人Cに
対して右建物の明渡を請求した事実は認められるが、控訴人Cがこれを承諾して、
被控訴人の主張するような合意解約が成立した事実は、この点に関する右各証人の
証言は信用し難く、他に右事実を認定するに足りる証拠はない。
 しかしながら、前示明渡の請求は少くとも本件賃貸借の解約申入としての効力を
有するものと解し得られるから、その申入について自己使用その他正当理由の有無
を審按するに、成立に争がない甲第一乃至第三号証、第十二号証、第十三号証原審
証人A(第一、二回)B(第一、二回)E、F、Gの各証言及び被控訴本人の供述
(第一、二回)を合せ考えれば、被控訴人は以前は居村地方有数の大地主
あつたが、終戦後財産税の納入、農地改革による農地の買上等の為め、広大な所有
農地を喪い、一般地主同様没落の悲運に遭遇したので、一家協議のうえ、生活の再
建を計る為め、下駄材の製材事業を始めることとし、その資金調達の方法として、
昭和二十二年二月頃本件家屋を訴件兼松組に代金五十万円で売却する契約を締結
し、控訴人Dに対して、以上の事情を告げこれが明渡方を求めたところ、同人は転
居先がないことを理由として応ぜず、却つて本件家屋の買取方を懇請したので被控
訴人は兼松組との右売買契約を合意解除した上、同年四月頃控訴人Dに対して、こ
れを代金を五十万円とし数日内にその支払を受けると云う約定で売渡すことを約束
したとと、しかるに同人は約旨に反して代金の支払をしないので被控訴人方から再
三督促の結果、同年八月六日頃漸く内金十万円を預金名義で支払い、残金は数日中
に支払うととを約束したが、被控訴人方から数度の請求にもかかわらずその支払を
しなかつたこと、これが為め被控訴人は予定通り資金の入手ができないので、当初
の計画である製材事業の開始を断念するほかないこととなり、しかも生活は愈々困
窮の度を加え売喰によつて辛じて生計を維持する始末であつた為め、一家は更に協
議の上、当初の方針を変更し、祖先伝来の現住家屋を売却し、一家を挙げて新潟市
に出で、被控訴人等の子等において、それぞれ同市内に職を求めて俸給生活に入る
こととしたが、被控訴人方には本件家屋以外には新潟市内に家屋を所有せず他に移
るべき家屋もない為め、余儀なく移転先として本件家屋を必要とするに至つたこ
と、そこで被控訴人は同年九月五日長男Aを控訴人D方に赴かせて前示売買契約及
び賃貸契約を解除して本件家屋の明渡を請求させたところ、同人の代理人である控
訴人Cは売買契約の解除は承諾したが賃貸借解約の申入に対しては明碓な承諾をせ
ず、とりあえず数室の明渡を望む被控訴人方の要求に対しても一応諒承する態度を
示したが、同年十月十日頃電報を以てこれを拒絶したこと、及び被控訴人方は被控
訴人、その母、妻、長男A夫婦、その子H、Dと娘二人の九人暮であり、残存保有
田畑を自作しているが、収入は生活費を支えるに足らず、多額の赤字を生じ、家財
を売却して生計を維持していることを認めることができる。また原審証人Iの証言
によつて成立を認められる甲第四号証、成立に争がない同第五号証、第九号証の一
乃至三、第十、十一号証、原審証人A(第一、二回)Iの各証言、原審における控
訴人D同C(第一回)各本人訊問及び檢証の結果を合せ考えれば、控訴人Dは本件
家屋に隣接して総評数百三十余坪の宏大な木造瓦葺二階建の店舗兼住宅用建物を所
有していたところ、被控訴人から本件家屋の明渡を請求せられた後である昭和二十
二年十月頃、賃借人である新潟中央更生合作社に対して明渡を求め翌二十三年一月
十五日にこれを明渡させた後、同年五月五日にこれを光生命保険株式会社に売却し
たこと、控訴人Hは右以外にも、本件家屋の附近に和室二十七室の外、十八坪の倉
庫及びそめ他の附属室からなる南山荘アパートを経営しており、これに多少の手入
を加えれば、控訴人一家の居住も可能でおり、現に十疊の間を含む数室の空室があ
るとと及び控訴人Dは無職であり、その妻、長男である控訴人Cその他数名と共に
本件家屋に居住し、控訴人Cは荒物雑貨商を職業としているが本件建物を商店舗と
して使用していないことを認定することができる。原審におけるD、同Cの各本人
の供述中右認定に反する部分はこれを採用しない。而して以上認定の事実を参酌す
れば、前示被控訴人の解約申入は正当の理由があるものということができ、従つて
本件賃貸借は解約申入のあつた昭和二十二年九月五日から六ケ月の法定期間を経過
した翌二十三年三月六日を以て終了したものと云うことができる。控訴人等は被控
訴人が本件家屋を買受ける以前にも控訴人Dが社宅としてこれに居住していたこと
があり、右売買も専ら同控訴人の斡旋によるものであると主張しているが、かよう
な事実の存否は右の判定を為すについてなんら妨げなるものではない。
 控訴人Dは右賃貸借以外にまた控訴人C及び同Jは控訴人Dの子であると云う以
外には本件家屋を占有する正当の権原については、なんらの主張及び立証をしない
から、控訴人等の本件家屋に対する占有はいずれも被控訴人の所有権を侵害してい
るものと云うことができ、従つて本訴請求中右家屋の明渡を求める部分は理由があ
る。
 又控訴人Dが被控訴人に対して昭和二十二年五月一日以降右賃貸借終了の日まで
の一ケ月金八十円の割合による賃料を支払つていないことは同控訴人の争わないと
ころであり、また右賃貸借終了の翌日以降の同控訴人の本件家屋に対する占有が同
人の故意又は少くとも過失に基くこと及びこれが為め被控訴人が右賃料と同一割合
の損害を被つていることはこれを推認することができるから、本訴請求中同控訴人
に対して右割合による賃料及び損害金の支払を求める部分もまた理由がある。
 以上の次第で被控訴人の本控請求は全部理由がおり、原裁判所がこれを認容した
のは相当である。
 よつて民事訴訟法第三百八十四条、第八十九条、第九十三条を適用して主文の通
り判決する。
 (裁判長判事 大野璋五 判事 柳川昌勝 判事 浜田宗四郎)

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