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裁判例


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平成15年5月1日宣告
平成14年(わ)第2065号,同第2137号 業務上横領被告事件
             判        決
             主        文
   被告人Aを懲役4年6月に,被告人Bを懲役3年に処する。
   被告人両名に対し未決勾留日数中各180日をそれぞれその刑に算入す
る。
             理        由
(罪となるべき事実)
被告人Aは,木更津市a土地区画整理組合(以下「a組合」という)の理事長
として,a組合の事務を代
表し,その財産管理等の業務に従事していたもの,被告人Bは,被告人Aの長男
であるが,被告人両名は,
共謀の上,別紙一覧表記載(省略)のとおり,平成10年5月22日ころから同
13年7月25日ころまで
の間,前後24回にわたり,千葉県木更津市a組合事務所敷地内(以下「a事務
所敷地」という)ほか同市
有限会社b事務所付近(以下「b事務所付近」という)において,a組合が木更
津市c組合d支店から借り
入れた現金合計2億4720万円を,a組合のため業務上預かり保管中,いずれ
もそのころ,上記場所付近
において,被告人両名の借入金返済等自己の用途にあてるため,ほしいままに,
これを着服して横領したも
のである。
(証拠の標目)
 省略
(法令の適用)
 省略
(量刑の理由)
 本件は,千葉県に製鉄会社が進出したことを契機に土地区画整理事業に携わり
a組合を設立してその理事
長に就任し,かたわらZ市長を兼職していた被告人Aが,いわゆるバブル経済の
崩壊により,かねて展開し
ていた不動産取引の事業に失敗し自己の固定資産税等の支払いもままならない経
済的苦境に陥っていたにも
かかわらず,これらの法的な精算を図ることなく,市長の体面を守り被告人両名
の不動産事業等の延命を図
る目的で,長男である相被告人Bと共謀の上,支援していた縁戚の個人企業に要
請されるまま無担保で多額
の融資を継続し,あるいは,被告人Bの経営する株式会社の事業資金に提供する
目的並びに自己の税金等支
払などの資金繰りに当てるため,a組合の職員らを介して,a組合が木更津市c
組合にしている定期預金を
担保に借り出した事業資金を,判示のとおり足かけ4年の長期間,回数24回の
多数回にわたり合計2億4
720万円の大金を業務上横領した事案である。これら被告人両名の私利私欲目
的の犯行の動機に酌むべき
ものは無い。被告人Aは,Z市長という公人の立場にもあった以上,厳に公私の
区別をつけて,市民や県民
の信頼を損なわないようにすべきことが当然期待されていた。しかるに,同被告
人は,多年にわたりa組合
の理事長職にあったことからこれを私物視して,本件犯行に及び千葉県民の人心
に強い衝撃を与えた社会的
悪影響は重大である。現在,a組合が受けた本件損害金は同組合の役員,職員に
より填補され,被告人両名
がこれらの関係者に返済すべきものとして処理されていることが認められるが,
その額は約2億円であり,
被告人両名が弁償の原資として弁護団に換価を依頼して提供している私財の不動
産には他の債権者らに巨額
の担保が設定されていることが窺える現況等からして,これらの被害弁償が早期
に実現する可能性は乏しい
と思われる。従って,被告人Aが,青年時代から区画整理事業の中心となって活
躍し,千葉県県会議員,Z
市長などの要職を歴任しZ市の発展に寄与した功績が存すること,xの手術をし
た病歴があること,74歳
の高齢であること,相当長期間勾留されたこと,弁済を誓っていること,老妻が
帰宅を待ちわびているこ
と,古い罰金前科以外に前科が存しないこと等同被告人に有利に斟酌すべき事情
を十分考慮しても,厳罰を
免れないというべきである。次に,被告人Bは,父親を深く尊敬していたことや
市長になった被告人Aから
全面的にその出納をゆだねられたことから,本件各犯行以前には父親の借財精算
に奔走し,一時的には自転
車操業状態で小康状態を保つことに奏功していたことも窺える。しかし,結局,
同被告人は,縁戚の個人企
業の借財に被告人両名が連帯保証をしていたことから同企業の倒産による保証債
務の追及による共倒れを恐
れて無謀な融資を継続し,あるいは,自己の経営する不動産会社の事業資金に利
用する意図から,本件各犯
行に加担したものであり,この経緯に酌むべき事情は乏しい。よって,被告人B
には,a組合の業務上占有
者の地位がなく,従属的な役割であったこと,前科前歴がないこと,相当長期間
勾留されたこと,地域社会
の活動に参加しそれなりに貢献していたことが窺えること,被害者に被害弁償を
誓うなど改悛の情が認めら
れること,家族がその帰宅を鶴首していること等同被告人に有利に斟酌すべき諸
事情を考慮しても,刑の執
行を猶予すべき事案とは認め難い。以上のとおり,本件各犯行の動機,態様,被
害が巨額である結果からす
ると厳罰に処して一罰百戒とする必要性を否定できない。ただ,被告人両名に対
し,寛大な刑を願う嘆願の
声があがっていることも窺えるので,当裁判所は,被告人両名に対するこれらの
有利,不利な一切の各事情
を総合考慮し,被告人両名に対し,それぞれ主文の刑期を相当と判断した次第で
ある。
(求刑 被告人Aに対し懲役7年,被告人Bに対し懲役5年)
平成15年5月1日
  千葉地方裁判所刑事第1部
         裁 判 官  大   谷   吉   史

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