弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
       事実及び理由
第一 申立て
一 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、原判決添付別紙物件目録記載の土地において建築中の建物の建築
工事を続行してはならない。
3 訴訟費用は、第一、二審を通じて被控訴人の負担とする。
二 控訴の趣旨に対する答弁
 主文同旨
第二 事案の概要
 事案の概要は、次のとおり原判決を付加、訂正し、争点1及び2に関する控訴人
の新たな主張とこれに対する被控訴人の反論を付加するほかは、原判決事実及び理
由欄「第二 事案の概要」(原判決一枚目裏一〇行目から二一枚目表六行目まで)
記載のとおりであるから、ここに引用する。
一 原判決の付加、訂正
1 文中「原告」とあるを「控訴人」と、「被告」とあるを「被控訴人」と、「別
紙」とあるを「原判決添付別紙」と各訂正する。
2 三枚目表末行「特別工業地区の指定が併せてされた。」とあるを「工業の利便
と住居の環境の保護との調和を図ることを目的とする特別工業地区の指定がされ、
同日施行された「宝塚市特別工業地区建築条例」(以下「特別工業地区条例」とい
う。)により、右特別工業地区内におけるパチンコ店の建築は原則的に禁止される
に至った(右条例は、その施行の際、現に建築確認を受けた建築物については適用
されない。)。」と訂正する。
3 七枚目表四行目「すなわち、」とあるを次のとおり訂正する。
「 すなわち、国の法令が条例による規制を制約するか否かについては、地方自治
の憲法的保障を促進するように解すべきであり、地域的対応の必要性があり、法律
に明確な条例制定権を制約する規定のない限りは条例による規制は容認されている
と解すべきであるところ、」
4 七枚目表一〇行目「また、」の前に次のとおり付加する。
「昭和五九年の風営法の改正において全国的に統一されたのは都道府県条例であっ
て、これにより市町村の条例制定権を剥奪する趣旨ではないし、風営法施行令六条
三号は、当該都道府県内の規制の必要度の最も低い地域の状況に合わせて都道府県
条例を定めるのが相当であるという趣旨で、都道府県条例で定める制限地域の指定
は必要な最小限度のものでなければならない旨規定したのであり、規制の必要度の
高い地域には、市町村条例によって独自の規制をすることを風営法自体が予定して
いると解すべきである。」
5 七枚目裏六行目末尾の次に以下のとおり付加する。
「なお、特別用途地区の指定という手段も十分ではなく、現に、後記のとおり、被
控訴人がパチンコ店出店計画を公表し、建築確認を得た平成四年ないし平成五年当
時本件土地を特別工業地区に指定した上で、建築基準法四九条に基づく条例を設定
し、これによりパチンコ店の建築を制限するという手法を採ることができなかっ
た。」
6 八枚目表九行目「及び川西市」とあるを「川西市、芦屋市、三木市、龍野市、
太子町、揖保川町、新宮町、茨木市、高槻市、交野市、四条畷市、枚方市、大阪狭
山市及び鎌倉市」と、同裏七行目「右審査会」から九行目「なっている。」までを
「本件条例第三条により市長の同意を求められた事案につき、右審査会に諮問し、
右審査会はその審査結果を市長に報告することになっている。」と各訂正する。
7 九枚目表八行目から九行目にかけて「存在しない。」とあるを「存在せず、実
効性の確保を民事訴訟手続に委ねている。」と訂正する。
8 九枚目裏九行目から一〇枚目表六行目までを次のとおり訂正する。
「(5) 市町村条例によって法律の規制以上の規制を行い得るかを検討するにあ
たっては、国の法令と同一の対象についてより強度の規制を行う「上乗せ条例」
と、国の法令が規制していない対象について規制を行う「横出し条例」を区別し、
「横出し条例」を一般的に適法とする考え方があり、確かに「上乗せ」であれば許
されないが、「横出し」であれば許されるというような単純な問題ではないが、右
考え方自体は本件においても参考とされるべきである。本件条例は、法令が規制の
対象としていない地域を規制の対象とする意味においては「横出し条例」であ
る。」
9 一〇枚目裏五行目「以上」から八行目までを次のとおり訂正する。
「以上によれば、風営法は、地方公共団体の条例制定権を制約する趣旨で、その場
所的規制につき条例を制定し得るのは都道府県のみとし、かつ、その内容も風営法
施行令六条で定める基準に従い、必要最小限度のものにしなければならない旨規定
しているのであり、市町村が条例によって風営法及び都道府県条例を超えた規制を
することは許されない。」
10 一二枚目裏一〇行目「建築基準法」とあるを「建築基準法(ただし、平成四
年法八二号による改正前のもの。以下、同じ。)」と訂正する。
11 一三枚目表三行目「特定のイメージの町づくり」とあるを「高度な住宅都市
としての町づくり」と訂正する。
12 一三枚目表七行目「建築基準法は、」とあるを次のとおり訂正する。
「建築基準法についても、地域的対応の必要性があり、明確な条例制定権を制約す
る規定がないのであるから、全国一律に適用されるべき最低限度の規制を規定した
ものであり、」
13 一三枚目裏五行目「また、」の前に次のとおり付加する。
「すなわち、建築基準法の条例への明文の授権規定は、条例制定権を創設する規定
ではなく、単に条例制定権を確認する規定であると解すべきである。」
14 一四枚目表二行目から三行目までを次のとおり訂正する。
「 する理由は存在しない。建築基準法の規制だけでは地域の実情に対応できず、
今後も同法の規制を上回る条例が必要になることは、大阪府や兵庫県で、同法の規
制を上回る規制を内容とする「福祉のまちづくり条例」が制定されていることから
も明らかである。なお、地方自治法二条三項一八号で、土地利用規制は、「法律の
定めるところにより」地方公共団体の事務に属するとしているが、この規定は、都
市計画法(ただし、平成四年法八二号による改正前のもの。以下、同じ。)や建築
基準法が直接適用される限りにおいてはこれによるとの趣旨であり、建築基準法に
よる規制が存在しない事項においては、条例によって独自に土地利用規制を行うこ
とも可能であると解される。
(3) 用途地域の決定及び変更、特別用途地域の指定は、町づくりの手法として
は不十分である。
 現に、本件土地の存する御所の前町及び近隣の高松町、」
15 一四枚目裏七行目から一五枚目表一〇行目までを次のとおり訂正する。
「また、後記のとおり、被控訴人がパチンコ店出店計画を公表し、建築確認を得た
平成四年ないし平成五年当時本件土地を特別工業地区に指定した上で、建築基準法
四九条に基づく条例を設定し、これによりパチンコ店の建築を制限するという手法
を採ることができなかったものである。
 町づくりは、用途地域の変更や特別用途地区の設定のみにより行うべきであると
の被控訴人の主張は妥当ではなく、地域の実情に応じて制定できる条例によっても
行うことができると解すべきである。」
16 一五枚目裏六行目「すなわち、同法四八条」とあるを次のとおり訂正する。
「 すなわち、地方自治法二条三項一八号は、土地利用規制は、「法律の定めると
ころにより」地方公共団体の事務に属するとしており、都市計画法は、用途地域等
の地域地区内における建築物等に関する制限は、同法で特に定めるもののほか、別
に「法律」で定めるとしているところ、建築基準法四八条」
17 一六枚目表九行目と一〇行目の間に次のとおり付加する。
「また、同法は、平成四年の改正により、都市計画区域外の区域内の建築物に係る
制限を条例で定めることができる旨規定するに至ったが(六八条の九)、同法が建
築物の制限ないし禁止について条例による規制を許容しているならば右のような規
定をおく必要はない。」
18 一六枚目裏一〇行目末尾に次のとおり付加する。
「 控訴人の主張する「福祉の町づくり条例」は、違反者に対する立入調査、勧
告、公表しか定めておらず、建築基準法より強力な規制を加えたものとはいえない
し、そもそも右条例と建築基準法とは目的を異にするので両者間で抵触ということ
はあり得ないものである。また、建築基準法が最低限度の規制を規定したものか否
かは法解釈によるものであり、このような条例が制定されていることから、建築基
準法が最低限度の規制を規定したものとの結論を導くこともできない。」
19 一六枚目裏末行から一七枚目表二行目までを次のとおり訂正する。
「3 本件条例は、職業選択の自由を保障する憲法二二条一項、財産権の保障を規
定する同法二九条に反し違憲か
(一) 控訴人の主張
 前記1(一)(3)のとおり、本件条例の規制方法には合理性が認められ、裁量
権逸脱の違法性がないので、本件条例は、憲法二二条一項、二九条には反しない。
(二) 被控訴人の主張」
20 一七枚目表三行目「(一)」とあるを「(1)」と、一九枚目表一行目
「(二)」とあるを「(2)」と各訂正する。
21 一八枚目裏七行目「一切存在しない。」の次に「市長の同意、不同意を決す
るにあたり、公開の聴聞も予定されていない。」を付加する。
22 一九枚目裏六行目と七行目の間に次のとおり付加する。
「 また、同様に、本件条例は財産権の保障を規定する憲法二九条にも反する。」
23 二〇枚目表六行目「科された以上、」とあるを「課された以上、」と訂正す
る。
24 二一枚目表四行目から六行目までを次のとおり訂正する。
「 段を定めた規定は存在しない。このようなことからすれば、右命令に基づき行
政上の義務が生じるとはいえないし、仮に、行政上の義務が生じるとしても、本件
条例は民事司法的にその履行を強制することは予定していない。また、そもそも行
政上の義務について民事司法的にその履行を強制することができるか法理論上の問
題がある。
5 控訴人が本訴を提起することが信義則に反するかどうか
(一) 控訴人の主張
 被控訴人は、本件土地にパチンコ店を建築する計画を立てた当初の時点で本件条
例の存在を認識しながら、右計画を進め、控訴人は、右当初から本件条例によって
パチンコ店の建築ができないことにつき指導、勧告しており、中止命令を出すに至
ったのであるから、控訴人が本訴を提起することは信義則に反しない。
(二) 被控訴人の主張
 控訴人は、被控訴人に対し、本件中止命令を出すまでは、本件条例は行政指導し
かできない条例であり、これをもってパチンコ店の建築禁止を法的に強制すること
ができないことを表示しており、被控訴人は、これを信じてパチンコ店の建築を計
画したのであるから、控訴人が本件条例に基づいて本訴を提起することは信義則に
反する。」
二 争点1及び2に関する控訴人の新たな主張
 本件条例は、高度な住宅都市としての町づくりを目的とするもので、都市計画上
の観点からその建築物の用途制限を規定するものであり、建築基準法の法領域に属
するものである。前記のとおり、建築基準法は、全国一律に適用されるべき最低限
度の規制を規定したものであり、条例による規制を容認していると解すべきである
ところ、本件条例は建築基準法の趣旨を逸脱したものではない。
 また、従来の建設省による通達「用途地域に関する都市計画の決定基準につい
て」(昭和四七年四月二八日建設省都計発第四二号建設省都市局長通知)において
は、準工業地域内における特別工業地区の設定に関しては、「既成市街地内の準工
業地域及び工業地域の区域についても、公害防止上の観点から必要があるときは、
特別工業地区を積極的に定めること」という基準が示されていたにとどまり、本件
土地を特別工業地区に指定した上で、建築基準法四九条に基づく条例を制定し、こ
れによりパチンコ店の建築を制限するという手法を採ることができなかった。平成
五年六月二五日に出された新たな通達「用途地域及び特別用途地区に関する都市計
画の決定・運用等について」(平成五年六月二五日建設省都計発第九二号建設省都
市局長通知)により、「準工業地域等において、地域における工業の利便と住居の
環境の保護との調和を図る地区」を特別工業地区として指定することができること
が明確に示されるに至ったのであり、これを受けて、前記のとおり平成八年二月一
三日に本件土地周辺を特別工業地区に指定し、特別工業地区条例により地区内のパ
チンコ店の建築を原則的に禁止するに至ったが、その根拠とされた本件土地周辺の
住居地域化の実情は、被控訴人がパチンコ店出店計画を公表し、建築確認を得た平
成四年ないし平成五年当時既に顕著であった。したがって、少なくとも、本件土地
における本件条例の適用に絞って検討すると、本件条例による規制は、建築基準法
の予定している規制の趣旨、目的内におさまるものであり、実質的違法性はない。
 本件条例と風営法は、対象とする分野及び究極的に達成しようとする目的に大き
な隔たりがあり、本件条例と風営法との間の抵触は問題とはならない、すなわち、
本件条例に基づく建築規制は、風営法上保証された地位を侵害するものとはいえな
い。
三 控訴人の右主張に対する被控訴人の反論
 控訴人の右主張は、①建築基準法が全国一律に適用されるべき最低限度の規制を
規定したものであるとか、②建築基準法と本件条例とは目的を異にするとか、③法
の不備があるところではこれを補う条例は有効と判断されるべきであるとか、④本
件土地における本件条例の適用に絞って検討すると、本件条例による規制は実質的
違法性がないとかといった種々の主張を寄せ集めたものに過ぎない。①、②の主張
は従前の主張と同一であり、③、④の主張は独自の見解に基づくものであって失当
である。
第三 証拠
 原審及び当審における証拠関係目録記載のとおりであるから、ここに引用する。
第四 当裁判所の判断
一 当裁判所の判断は、次のとおり原判決を付加、訂正し、争点1及び2に関する
控訴人の新たな主張についての判断を付加するほかは、原判決事実及び理由欄「第
三 争点に対する判断」(原判決二一枚目表八行目から三六枚目表三行目まで)記
載のとおりであるから、ここに引用する
1 原判決の付加、訂正
(一) 文中「原告」とあるを「控訴人」と、「被告」とあるを「被控訴人」と各
訂正する。
(二) 二三枚目表七行目から八行目にかけて「反対運動を行ったことを契機
に、」とあるを「反対運動を行い、風俗営業施設の出店に対する規制条例の制定を
求める請願がなされたことを契機に、」と訂正する。
(三) 二三枚目裏末行から二四枚目表五行目までを次のとおり訂正する。
「 ところで、条例が法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対
比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛
盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない。例えば、特定事項に
ついてこれを規律する法令と条例が併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に
基づく規律を意図するものであり、その適用によって前者の規定の意図する目的と
効果を何ら阻害することがないときや、両者が同一の目的に出たものであっても、
法令が必ずしもその規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨でな
く、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解さ
れるときは、法令と条例との間になんらの矛盾抵触はなく、条例が国の法令に違反
する問題は生じえないというべきである(最高裁昭和四八年(あ)第九一〇号同五
〇年九月一〇日大法廷判決・刑集二九巻八号四八九頁)。」
(四) 二四枚目裏一行目から二行目にかけて「禁止行為ついては」とあるを「禁
止行為については」と、同五行目「善良な風俗と清浄な風俗環境を保持」とあるを
「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し」と各訂正する。
(五) 二五枚目表四行目から同裏六行目までを次のとおり訂正する。
「(三) 本件条例は、前記一で認定のとおり、控訴人の芸術的な色彩と豊かな自
然環境という特色を保全、推進して良好な住宅都市づくりを基本目標とする一連の
環境保全条例の一つとして位置付けられており、良好な住宅、自然及び文化環境の
保持を目的とするものであるが、パチンコ店が青少年等に悪影響を及ぼし、犯罪の
温床になりかねないとする地域住民の反対運動及び風俗営業施設の出店に対する規
制条例の制定を求める請願を契機に制定されたこと、本件条例一条は、単に良好な
環境の確保を目的とする旨規定するにとどまること、パチンコ店等、ゲームセンタ
ー及びラブホテルの建築等の規制に関する本件条例が対象とする施設はいずれも風
俗営業に関するものであり、これらの施設の建築規制を内容とするものであること
に照らしても、本件条例は、少年の健全な育成に支障を及ぼす行為の防止をもその
目的に取り入れており、また、住宅、自然及び文化環境の保持といっても、風俗環
境の保持の観点を主眼とするものであるということができる。したがって、風俗営
業の規制につき、風営法と本件条例は、風俗環境の保持、少年の健全な育成に支障
を及ぼす行為の防止という同一の目的で規制しているということができる。」
(六) 二六枚目表四行目「したがって、」から五行目までを次のとおり訂正す
る。
「したがって、両者の規制方法は、実質的には同一であるということができる。」
(七) 二八枚目裏七行目「解されている。」とあるを次のとおり訂正する。
「解されており、その場所的規制は、都道府県条例で定めることとし、その内容
も、風営法施行令六条で定める基準に従い必要最小限度のものにしなければならな
い旨規定しているのである(控訴人は、風営法施行令六条三号を、都道府県内の規
制の必要度の最も低い地域の状況に合わせて都道府県条例を定めるのが相当である
という趣旨で、都道府県条例で定める制限地域の指定は必要最小限度のものでなけ
ればならない旨規定したものである旨主張するが、文言にそぐわない独自の解釈で
あって採用することができない。)。」
(八) 二九枚目裏一行目「したがって、」から六行目「法は、」までを次のとお
り訂正する。
「したがって、風営法及び県条例は、これによる規制が地域の実情に適合しなくな
った場合、地方公共団体が都市計画における用途地域の変更を通じて、これに対処
することを予定しているものと解するのが相当である。しかも、後記説示のとお
り、都市計画法は、」
(九) 三〇枚目表末行から同裏四行目「主張する。」までを次のとおり訂正す
る。
「 さらに、控訴人は、市町村条例によって法律の規制以上の規制を行い得るかを
検討するにあたっては、「上乗せ条例」と「横出し条例」を区別し、「横出し条
例」を一般的に適法とする考え方が参考とされるべきであり、本件条例は、「横出
し条例」である、と主張する。」
(一〇) 三一枚目表三行目から七行目までを次のとおり訂正する。
「5 また、本件条例は、都市計画法上の商業地域以外の用途地域においては、パ
チンコ店の建築について一律にこれを不同意にするというものであり、風営法に明
らかに矛盾抵触するのみならず、その合理性も肯定されないというべきである。な
お、本件条例は、宝塚市長がパチンコ店等の建築等の同意又は不同意をするにあた
り、審査会に諮問する手続を定めているが、右のとおり、都市計画法上の商業地域
以外の用途地域におけるパチンコ店の建築については、一律にこれを不同意にする
のであるから、右手続は意味をなさないことは明らかであるし、右禁止される地
域、すなわち都市計画法上の商業地域以外の用途地域の面積が小さいとしても、そ
のことで右合理性を肯定することはできない。
6 したがって、風俗営業の場所的規制に関し、風営法及び県条例と同一の規制目
的で、実質的に同一の規制方法を用いて、同法及び同条例よりさらに強度の規制を
するものである本件条例は、風営法及び県条例に違反しており、その効力を有しな
いものといわざるを得ない。
 控訴人は、用途地域の決定及び変更、特別用途地区の指定という手法は不十分で
あり、本件土地は、実質的には住居地域でありながら、操業している工場もあるた
めに住居地域への指定替えもできず、かつ、新たな通達が出るまでは特別工業地区
にも指定できなかった、と主張する。しかし、前記のとおり、風営法及び県条例
は、これによる規制が地域の実情に適合しなくなった場合には、地方公共団体が都
市計画における用途地域の変更を通じてこれに対処することを予定しており、風営
法及び県条例以上に強度な規制を内容とする市町村条例の制定でこれに対処するこ
とは予定していないというべきである。また、平成五年六月二五日に新たな通達が
出される前は、本件土地を特別工業地区に指定することができなかったという主張
は、法令上本件土地を特別工業地区に指定することができないと解すべき根拠はな
く、その運用基準についての従来の通達の下でも、本件土地を特別工業地区に指定
することができなかったと解することはできないので、これを採用することができ
ない。」
(一一) 三一枚目裏二行目「そして、」から四行目「図り、」までを次のとおり
訂正する。
「そして、これと同時に同法第三章の用途地域による建築規制は、都市計画によっ
て指定された用途地域を用いて、計画的な市街化を図り、」
(一二) 三一枚目裏九行目「両」から一〇行目までを次のとおり訂正する。
「本件条例の右の目的に関しては、本件条例と建築基準法は目的が同一であるとい
うことができる。」
(一三) 三二枚目裏二行目「実質的に」から四行目までを次のとおり訂正する。
「準工業地域内のパチンコ店等の建築を一切認めないものである。」
(一四) 三二枚目裏五行目から三五枚目表一〇行目までを次のとおり訂正する。
「3(一) 地方自治法二条三項一八号は、土地利用規制は、「法律の定めるとこ
ろにより」地方公共団体の事務に属するとしているところ、都市計画法は、用途地
域等の地域地区内における建築物等に関する制限は、同法で特に定めるもののほ
か、別に「法律で」定めるとしており、地方公共団体が法律の委任を受けない条例
によって独自の規制を行うことを予定していない(一〇条)。そして、都市計画法
及び建築基準法は、基本的に都市計画における一二種の用途地域の変更を通じて町
づくりを行うという都市計画行政体系を採用し(都市計画法八条、九条、建築基準
法四八条)、ただ、右用途地域における規制が全国一律に適用されるものであるの
で、この規制だけでは必ずしも地域の実情に十分に対応しきれないことを考慮し
て、右規制を補充し、地域の実情に応じた土地利用の推進、環境の保護等を図るた
め、特別用途地区を定めることができるものとし(都市計画法八条一項二号、九条
九項、同法施行令三条)、右特別用途地区内の建築制限は、地方公共団体の条例で
定めることにしている(建築基準法四九条、五〇条)。また、建築基準法におい
て、一定の事項に関しては、地方公共団体の条例において同法と異なる規制を行う
ことができる旨規定している(四〇条、四一条等)のに対し、用途地域内における
建築物の制限については、地方公共団体の条例において同法と異なる規制を行うこ
とができるとした規定は存在しない。
 以上によれば、建築基準法は、用途地域内における建築物の制限について、地方
公共団体の条例で独自の規制を行うことを予定していないと解すべきである。
(二) 控訴人は、用途地域の決定及び変更、特別用途地域の指定は、町づくりの
手法としては不十分であり、町づくりは、地域の実情に応じて設定できる条例によ
っても行うことができると解すべきである旨主張する。
 しかし、前記のとおり、都市計画法及び建築基準法は、地方公共団体の町づくり
は、あくまで都市計画における用途地域の決定、変更及び特別用途地区の設定を通
じて行うこととしており、右規制につき、法律の委任を受けない条例が独自の規制
を行うことを予定していないということができるので、控訴人の右主張は理由がな
い。なお、平成五年六月二五日に新たな通達が出される前は、本件土地を特別工業
地区に指定することができなかったという主張を採用することができないことは前
記説示したとおりである。」
(一五) 三六枚目表一行目から三行目までを次のとおり訂正する。
「4 また、前記のとおり、本件条例は、都市計画法上の商業地域以外の用途地域
においては、パチンコ店の建築について一律にこれを不同意にするというものであ
り、建築基準法に明らかに矛盾抵触するのみならず、その合理性も肯定されないと
いうべきである。
5 したがって、建築基準法と同一の目的で、かつ、同一の規制手法を用いて、同
法の用途地域内における建築物の制限を超える規制を行う本件条例は、同法に違反
しており、その効力を有しないものといわざるを得ない。」
2 争点1及び2に関する控訴人の新たな主張について
 争点1及び2に関する控訴人の新たな主張は、要するに、①本件条例は、建築基
準法の法領域に属するものであるが、建築基準法が全国一律に適用されるべき最低
限度の規制を規定したものであり、本件条例は建築基準法の趣旨を逸脱するもので
はない、②本件土地における本件条例の適用に絞って検討すると、平成八年二月一
三日に本件土地周辺を特別工業地区に指定し、特別工業地区条例により地区内のパ
チンコ店の建築を原則的に禁止するに至ったが、その根拠とされた本件土地周辺の
住居地域化の実情は、被控訴人がパチンコ店出店計画を公表し、建築確認を得た平
成四年ないし平成五年当時既に顕著であり、本件条例による規制は実質的違法性が
ない、③本件条例と風営法は、対象とする分野及び究極的に達成しようとする目的
に大きな隔たりがあり、本件条例と風営法との間の抵触は問題とはならない、すな
わち、本件条例に基づく建築規制は、風営法上保証された地位を侵害するものとは
いえない、というものである。
 しかし、このうち、①、③の主張が理由がないことは既に説示したとおりであ
り、本件条例は、風営法にも、建築基準法にも違反しており、その効力を有しない
ものというべきである。②の主張についても、前記のとおり、平成五年六月二五日
に新たな通達が出される前は、本件土地を特別工業地区に指定することができなか
ったという主張は採用することができないし、また、本件条例は、前記のとおり効
力がないものであり、仮に、本件土地についてはこれを特別工業地区に指定するこ
とができる実情にあり、そうすれば、本件土地上のパチンコ店建築を禁止すること
ができたとしても、本件土地に効力のない本件条例を適用することを肯定すること
ができないことは明らかである。
二 よって、控訴人の請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないか
ら、これを棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却
し、控訴費用の負担につき民訴法六七条、六一条を適用して、主文のとおり判決す
る。
大阪高等裁判所第一一民事部
裁判長裁判官 中田耕三
裁判官 高橋文仲
裁判官 中村也寸志

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◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
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残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
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連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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応募方法
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