弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     被告会社に対する原判決中第二期の中間逋脱罪並びに第二期確定の逋脱
罪に関する部分を破棄する。
     右判決中前記部分以外に対する被告会社の本件控訴は棄却する。
     被告人に対する原判決はこれを破棄する。
     被告会社に対する第二期確定の逋脱罪並びに被告人に対する本件は東京
地方裁判所に差戻す。
     本件公訴事実中第二期の中間の逋脱罪に関する分については被告会社並
に被告人はいずれも無罪。
         理    由
 弁護人木村篤太郎、井本台吉、渡辺靖一、小林蝶一、是恒達見の控訴趣意は末尾
添附の控訴趣意書と題する書面記載の通りで、これに対する当裁判所の判断は次の
ようである。
 <要旨第一>第一点 法人税法第四十八条に所謂詐欺其の他不正行為というのは所
論のような積極的行為に限らない。広く詐欺その他の一切の不正行為を
いうので必ずしも税務官吏が法人の所得や資産を調査するに際し、これに虚偽の答
弁をするような行為に限らないのである。原判示によれば被告人は被告会社の代表
者として会社事業の一切を統轄していたが判示生産工場の設備資金に充てるため別
に資産を作り(B資産)その別口資産は被告会社の取引のうち法定価格超過売上額
即ち闇所得所謂出目製品又は進駐軍に納入すべきもののうち不合格品の売上額を以
てし、右B資産は法人税所定の所得申告をなすときにはこれを計上しないことと
し、判示所得申告をなすに際し判示のように実際の所得より遥かに少額の所得しか
なかつた旨虚偽の申告をして、これに基き法人税として判示の税額を納付し以て判
示法人税を逋脱したというのであるから不正行為により法人税を免れたと解すべき
は当然である。又被告人の判示行為は所謂期待可能性ないものと認めることはでき
ない。原判決が判示第一の(一)の事実に対し判示法条を適用したのは相当であ
る。論旨は理由がない。(判示第一の(二)(三)については後述のように原判決
は破棄を免れないからこの分については判断を省略する。第二点以下の論旨につい
ても同じ。なお同一の論旨か数個の論点中に展開されている場合には最初の論点に
おいてこれに対し、なした判断は他の論点におけるそれに援用する。)
 <要旨第二>第二点 法人の代表者が正規の法人税所定の期限までに納付せないで
不正行為によりこれを免れたときは直ちに法人税法第四十八条の犯罪が
成立する。その後訴追前に修正申告したときでも右犯罪の成立に関係なく、その修
正した分についても成立する。只かような事情は刑の量定に影響あるだけである。
従つて原判決が判示のように被告人の不正行為により被告会社の法人税を逋脱した
後所論修正申告があつたに拘らず判示逋脱税額全部について犯罪の成立を認めたの
は正当である。論旨は理由がない。
 <要旨第三>第三点 法人税法第二十一条の中間報告は概算申告的の性質を有する
ものと解するのが相当である。蓋し同条第二項は同法第十九条第二項を
準用し中間申告に際しては概算による計算書の提出を求めているばかりでなく同法
第二十二条第一項の確定申告をなす場合には法定事業年度全体についての決算に基
いて所得申告をなすべき旨規定している即ち中間申告した分についても確定申告を
なすべき旨を規定しているのである。もし中間申告が確定申告ならばいわゆる看做
事業年度の所得については確定申告を二重にすることになるのである。中間申告が
概算申告であるから同法第二十二条がこの中間申告の分についても確定申告をなす
べきことを命じているのである。中間申告は過去の所得に関するもので、その申告
当時において確定していて計上し得るものは凡て計上して課税標準を算出して所定
の税額を納付すべきことは勿論であるが、これがために中間申告は確定申告と解す
るのは不当である。過去の所得でも事業年度の決算が確定していない場合には概算
申告をするより他に方法がないので、現に法律もこれを認めているのである(同法
第二十二条第三項参照)。又同法第二十九条が一定の場合に確定申告については課
税標準の更正を必要的としているが中間申告についてはこれを任意的としている点
から考えても中間申告の独立性を否定したものと解するのが相当である。且つ中間
申告に独立性を認めると上半期の所得と下半期の所得とが著しく異なる場合には納
税義務者に多大の不利益を蒙むらせることがあるのである。元来中間申告の制度は
現時わが国家財政及び経済状況に鑑み、法人をして成るべく早く納税させる必要が
あるのと他面個人納税の場合の予定申告の制度との権衡をも考えて設けられたので
あるがこの国家の早期徴税の必要から直ちに中間申告を確定申告と解するのは早計
である。中間申告を概算申告と解しても法人は所定の税額を所定期限までに納付せ
ねばならないことになつているのであるから国家の早期徴税の要求を無視しないの
である。中間申告を確定申告と解すると前述のように個人の利益を著しく害するこ
ととなるから資本主義下のわが国の税法の解釈としては明確な規定のない以上確定
申告説は採用すべきでない。むしろ概算申告説を裏付ける規定の存することは前述
の通りであるから中間申告は概算申告の性質を有するものと解するのが相当であ
る。即ち同法第二十一条が六箇月間を一事業年度とみなし、いわゆる看做事業年度
を設けたのは単に法定の納税期間の設定即ち計算期間を規定したに過ぎないので、
中間申告に基く納税額は法定事業年度の確定申告に基く終局的税額と差引が行はれ
る運命をもち、次の納税期に至るまでは暫定的なもので、確定的、独立的な性質を
有するものでない。従つて中間申告をなすに当り脱税の目的で不正行為をしても脱
税の未遂で租税を逋脱したものということはできない。従つて無罪である。然るに
原判決は中間申告は確定申告の性質を有するものとなし、判示第一の(二)の中間
申告の分も既に法人税を免かれたものとして有罪としたのは違法で、この分は破棄
を免れない。論旨は理由がある。
 前述のように前記第一の(二)の分が無罪だとすれば同(三)の脱税額に自ら影
響する。且つ原判決は右(三)の申告に際し被告会社の納税について何等判示して
いないが、記録を検討するとこの点について原判決は事実の誤認の疑がある。もし
何等納税がなかつたとすれば逋脱額は原判決の弐千六百二十二万六千五十二円六十
銭より多くなるようである故に原判は判示第一の(三)の分は事実誤認があつて破
棄を免かれない。
 <要旨第四>第六点 (一)法人の代表者が法人の業務に関して犯罪行為をなした
ため法人も代表者と共に処罰せられる場合は実体法上の共犯ではないが
訴訟費用の殆んど全部は両者のためにする証拠調から生ずるのであるから刑事訴訟
法第百八十二条に所謂共犯と解するのが相当である。故に原判決が右法条により被
告人と被告会社とに対して訴訟費用の連帯負担を命じたのは正当である。(他の論
旨に対する判斯は省略する。)
 以上の理由により被告会社の控訴については被告会社に対する原判決中判示第一
の(二)の第二期の中間の逋脱罪同(三)の第二期の確定の逋脱罪に関する部分は
刑事訴訟法第三百八十条、第三百八十二条、第三百九十七条に従いこれを破棄し右
(二)(三)以外の分に対する控訴は同法第三百九十六条に従い棄却し、被告人の
控訴については同法第三百八十条、第三百八十二条、第三百九十七条に従い全部破
棄し、(論旨第七点に対する後段の説明参照)被告会社に対する右第二期の確定の
逋脱罪並被告人に対する本件は同法第四百条により原裁判所に差戻し、なお本件公
訴事実中第二期の中間の逋脱罪に関する部分については被告会社並びに被告人に対
し同法第四百条但書第四百四条第三百三十六条に従い無罪の言渡をすべをものとす
る。
 仍て主文の通り判決する。
 (裁判長判事 吉田常次郎 判事 保持道信 判事 鈴木勇)

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