弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人等の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は原判決を取消す被控訴人は控訴人両名に対しそれぞれ金二十五万円
及び之に対する昭和二十七年八月十五日以降完済に至るまで年六分の割合に依る金
員を支払うべし訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とするとの判決並に仮執行
の宣言を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の陳述は左記主張の外は何れも原判決事実摘示と同一である
から之を引用する。
 控訴代理人の陳述
 (一) 被控訴会社の主たる業務は建物の月賦販売であつてそのA支部は被控訴
会社の所謂第一線である、不特定多数の公衆に対し勧誘加入せしめ建物の月賦販売
を為すことの直接的な第一線である。A支部が被控訴会社との間に如何なる運営規
則によつて運営されておるかは被控訴会社の内部構成の問題であつて外部即ち会社
の権利義務と相対的立場にある関係とは厳に区別されなければならない、本件は被
控訴会社と取引を為す者の立場から考察されなければならない、A支部が建物の月
賦販売の勧誘、申込、申込金の受領を為すことは第三者から云へば月賦販売の契約
をなすことであつてその外に何等の目的を持つものでなく、況んや株式の申込、割
当、増資、減資、建築請負契約の如きは第三者としては何等の利害関係のないこと
で法定要件を欠く株式申込証と称する書面(乙第七、八号証)、日附余白の委任状
(乙第九号証)の如き法律上無効の書類に押印させることは会杜業務の目的とは云
へない、第三者たる加入者と交渉し加入者の納得の建物を月賦で販売することがA
支部の主たる業務である、仮りにA支部が被控訴会社の主たる業務たる建物の月賦
販売の営業をしておらないとせば被控訴会社の如何なる組織体が右第一線営業を為
しておるのか、会社の主たる目的業務につき第三者に対して直接的独立的に而も独
立店舗を設けてその店舗に隷属する多数の社員を使用しておる営業所は所謂支店に
該当するものと謂わねばならない。
 A支部長Bは他に数多い会社の役員を兼任し日らは木材商を営みおつた者で単に
名義上の支部長であり日日の一切は次長の資格でC(本名C)が取扱つており、そ
のことは被控訴会社自体が承認しおつたものである。然らば商法第四十二条所定の
支店の営業の主任者たることを示す名称とは必ずしも支部長なる名称を要するに非
ずして実際的に営業所の総括的立場にあつて日々の業務を遂行しておつた者の名称
が次長であつても支店営業の主任者に該当するものである。
 (二) 仮りにCが支店営業主任者でないとしても被控訴会社の営業に関する或
種類又は特定の事項の委任を受けた使用人である、而してCが委任を受けた業務の
範囲は前述の如く被控訴会社の主要目的営業の不特定多数の第三者に対する建物の
月賦建築の勧誘加入申込、加入者の加入条件の取極め、加入金の受領等広範囲に亘
り単にその間にあつて被控訴会社の自主組織体内のルールによつて行うと云うのみ
である、建物月賦販売の申込のときに申込者と会社との間に契約が決定され第一回
申込金の受領があるのであつてその後は目動的に被控訴会社自体が運営の便宜上増
資減資の手続、建物の建築、建物の引渡が行われ第三者たる加入者の関係する所で
ない、Cは表見的には被控訴会社の主たる目的である建物の月賦販売に関する一切
の事項につき被控訴会社の委任を受けた使用人であつて同会社A支部次長の資格を
有する同人が一時的会社のために借財を為すことは経済通念上何人にも考へられる
事項であるから控訴人等が手形を受取つて右Cを通し被控訴会社に金を貸したこ之
が仮りにCに借入の権限がなく被控訴会社がら云つて権限を超へた不正の行為であ
つても控訴人等は善意でCの懇請に基き手形によつて貸与した以上被控訴会社は商
法第四十三条第二項によりその責任を負うべきは当然である。
 被控訴代理人の陳述
 (一) 被控訴会社は本店の下に営業所を設け営業所の下に営業所直営の支部と
特別支部設置契約による請負的な支部とがあり本件のA支部は後者に属するもので
ある右A支部に勤務する職員は支部長が募集し被控訴会社が任免するものである。
 (二) 控訴代理人の前記主張事実中被控訴会社A支部には支部長次長平社員の
職制があり、Cが支部長に次く次長の地位にあつて部下職員を使用していたこと、
建物月賦販売については第一回掛金は募集に当つた社員に受領権限があることは認
めるが其余の被控訴代理人の従来の主張に反する事実は否認する。
 証拠として控訴代理人は甲第一号証乃至第四号証、同第五号証の一、二、同第六
号証を提出し原審並当緯証人D、E、原審証人F、G、H、Iの各証言、原審に於
ける控訴本人Jの訊問並検証の各結果を援用し、乙第二、第四、第六、第十二号証
の各成立を認めて之を利益に援用し爾余の乙各号証の成立は不知と述べ被控訴代理
人は乙第二号証乃至第十二号証を提出し、原審並当審証人K、原審証人L、Fの各
証言並原審に於ける検証の結果を援用し甲第一、二号証中拒絶証書の成立及同第五
号証の一、二が被控訴会社A支部事務所の写真であることを認め甲第一、二考証中
の爾余の部分及其余の甲各号証の成立は不知と述べた。
         理    由
 拒絶証書の成立につき当事者間に争なく、その余の部分については原審に於ける
控訴本人Jの訊問の結果に依り成立を認め得る甲第一、二号証及成立に争のない乙
第二号証、原審証人L、F、原審並当審証人Eの各証言及右J本人訊問の結果に依
れば訴外Cが被控訴会社A支部次長の肩書を以て控訴人両名主張の日に控訴人両名
各自に宛ててその主張のような内容の約束手形各一通を振出し控訴人両名はそれぞ
れ右各手形の所持人としてその支払呈示期間内に支払場所に右手形を呈示して支払
を求めたがその支払を拒絶されたこと、及Cは本名をCと云い、従てCとCとは同
一人の呼称であることが認められる。また右Cが昭和二十七年三月一日以降被控訴
会社A支部次長の職に就任していたことは被控訴人の自認するところである。
 控訴代理人は右Cは商法第四十二条に所謂表見支配人であると主張するから案ず
るに被控訴会社が控訴人主張のような営業目的を有しその主張の場所にA支部を設
置し支部長にBを任命したことは当事者間に争なく右の事実に成立に争のない乙第
六号証及第十二号証原審並当審証人Kの証言に依り成立を認め得る乙第五号証、原
審証人Lの証言に依り成立を認め得る乙第七号証乃至第十一号証、右証人L、前記
証人K、F、E、原審証人Gの各証言を綜合すると被控訴会社の主たる営業目的は
建物の月賦販売同建物の建築施行等であつて右建物月賦販売の方法は建物の月賦販
売を受けようとする者は先づ被控訴会社の株主となることを要し月賦建物申込書と
共に株式予約申込書と株式申込予約金(建物代金月賦金に相当するもの)とを添え
て提出し爾後月賦建物の建築着手順位到来に至るまで(但最長期間満五ケ年)毎月
右予約金の支払を継続し其間に被控訴会社は右申込人に被控訴会社の株式を割当て
て株主となし、右申込者の中から毎月抽籖又は入札の方法により建物建築着手者を
定め右建築順位到来者とは建築請負契約並建物月賦販売契約を締結の上既に支払つ
た株金に相当する金額を右建物販売代金の一部に充当して株主たる地位を去らしめ
之がため被控訴会社はその都度増資或は減資の手続をとることとなし、更に建物の
建築を為して右当籖者又は落札者にその所有権を譲渡すると同時に右建物代金残額
につき月賦辨済契約を締結し之に基<要旨>き月賦販売代金を回収し以て建物の月賦
販売を為すのであるが、被控訴会社は右の方法による月賦販売の希望者を募
集するため東京に本店を置き東京、大阪、名古屋、京都に営業所を設置し更に各営
業所管下に各支部を設けて之が募集の宣伝並申込の勧誘に当らしめていること、右
営業所はその管下に於ける前記建物月賦販売に関する各種契約の締結、第二回以後
の株式申込予約金(建物月賦金)の集金徴収、建物の建築施行、管下各支部の監督
指揮、職員の任免、経理に関する事項等被控訴会社の基本的な営業行為を独立して
為す権限を有するのであるが右営業所管下の各支部はその管轄営業所の指揮監督の
下に前記建物月賦販売の希望申込者の勧誘募集、第一回株式申込予約金(建物月賦
金に相当)の受領及之が営業所への取次を為すことを主たる業務とし他に本店又は
営業所が為す前記基本的な営業行為を独立して為す権限を有しないこと、本件A支
部は被控訴会社名古屋営業所の監督下に属しその支部長はBなる者で同人と名古屋
営業所長との特別支部設置契約により設けられたもので同支部の業務は右契約に定
められたところに従い同人の責任に於て運営されていたもので同支部次長C以下の
職員は名古屋営業所長に於て任免権を有するが同支部の業務に関しては同支部長の
監督に服すべきものであることが認められる、右認定に反する原審並当審証人Dの
証言、原審に於ける控訴本人Jの供述は措信しない、他に右認定を左右するに足る
証拠はない、然らば右A支部は被控訴会社の本店又は営業所と同一の営業を為し得
る組織を具備しないから商法第四十二条に所謂支店ではないし其支部長もまた同法
条に云う営業主任者とは云い得ないことは明かである。従てA支部が商法に云う支
店に該当しない以上同支部次長の岡田雅典が事実上の営業主任者(その然らざるこ
とは前記認定の通りである)であるとするも同人が商法第四十二条に云う表見支配
人でないことは勿論であるから本件手形の振出につき被控訴会社が右法条による責
任を負うべきものでないことは明かである。
 次に控訴代理人は岡田雅典はA支部次長として同支部の営業に関しては商法第四
十三条により被控訴人の使用人としてその権限を有するから被控訴会社は本件手形
につきその責任を負うべき旨主張するから案ずるに、商法第四十三条に云う代理権
を有する商業使用人はその営業主から委任された営業に関する或る種類又は特定の
事項に関してのみ裁判外の代理行為を為す権限を有するのであつて委任されていな
い営業事項に関してはその権限を有しないことは明かである。而して本件に於て岡
田雅典は被控訴会社A支部次長として同支部の営業に関して同支部長を補佐し部下
職員の育成指導、並建物月賦販売に関する募集宣伝、申込の勧誘等同支部の前記営
業権限の範囲内のことに限り委任を受けていたに過ぎないのであつて同支部の営業
権限の範囲外に属する手形振出其他此種類に属する行為については毫も委任せられ
ていなかつたことは前記証人L、Kの各証言に依り明かであつて右認定を覆えすべ
き何等の証拠もないから岡田雅典が被控訴会社A支部次長名義を以て擅に為した本
件手形の振出行為は同法条に該当する行為ではなく同法条に基き被控訴会社がその
責に任ずべき理由はない、控訴代理人の右主張は採用できない。
 其外に本件手形につき被控訴会社として其支払の責に任ずべき理由については被
控訴人主張立証がないから其余の争点を判断するまでもなく本件手形の振出は被控
訴人に対しその効力を生ずるものでないと謂うべきである。依て控訴人両名の本訴
請求は理由のないことが明かであるから右請求を棄却した原判決は相当であつて本
件各控訴は理由なく棄却せらるべきである。仍て民事訴訟法第三百八十四条第九十
五条第九十三条に則り主文の通り判決する。
 (裁判長判事 中島奨 判事 石谷三郎 判事 県宏)

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