弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原決定を取り消す。
     本件訴訟を盛岡地方裁判所へ移送する。
         理    由
 抗告人は「原決定を取り消す。」との決定を求めた。
 その抗告の理由は
 (一) 民事訴訟法第二一条を共同訴訟にも適用することは誤りである。
 (二) 前記訴訟事件の原告(本件相手方)は、裏書人Aに対する訴を全部取下
げ、同人との間の訴訟係属は終了したものである。よつてその後は併合要件を欠く
に至るから本件移送申立は認容さるべきである。
 (三) 本件手形の裏書人Aは、右原告と共謀の上、同事件の被告である抗告人
を害する目的をもつて、不当に本件手形を補充して、これを右原告に裏書譲渡した
ものである。即ち、同人は、本件手形が純然たる融通手形である事実を知つていた
し、且つ本件手形の前者との間に何んらの原因関係がなく、前者に対抗できず、自
己名義をもつては、その手形金の請求訴訟を提起できないので、右原告と共謀し、
訴訟信託を目的として裏
書譲渡したものである。
 そして右原告は、管轄の利益を得るため、便宜的に同人に対し、共同被告として
償還請求をなしたものである。
 (四) 以上の事実を看過して、抗告人の移送申立を却下した原決定は、抗告人
の攻撃防禦の利益を不当に奪うものであつて正当でないからその取消しを求める。
というにある。
 よつて按ずるに
 (一) 民事訴訟法(以下単に法という)第二一条は、約束手形の振出人に対す
る請求と、裏書人に対する償還請求とをするためこれらを共同被告として提起する
主観的併合の場合にも適用があると解すべきである。
 (二) 管轄は、起訴の時を標準として定まるものである(法第二九条)から、
共同訴訟人であるAに対する訴が原裁判所の管轄に属したることにより、法第二一
条により抗告人についても管轄が生じたりとすれば、起訴後同人に対する訴が取り
下げられたことによつて、一旦生じた抗告人についての管轄を失うものではない。
 <要旨>(三) 然し乍ら、外形上、法第二一条の要件を充たす場合であつても、
当事者(原告)が、本来管轄のない請求について自己に便利な裁判所へ管轄
を生じさせるためだけの目的で、本来訴訟を追行する意思のないその裁判所の管轄
に属する請求を併せてしたと認められるような場合は、法第二一条によつて与えら
れる管轄選択権の濫用として、これを許容することができないものと解すべきであ
る。
 ところで本件記録によれば、本訴は、約束手形の振出人たる抗告人に対する請求
と、第二裏書人たる右A並びに第一裏書人たるBに対する請求とを併合提起したも
のであるが、法第一条及び第六条によれば、抗告人とBに対する請求は、本件約束
手形の支払地であり且つ同人らの住所地である大船渡市を管轄する盛岡地方裁判所
のみに本来その管轄があるものであるが、Aの住所地が原裁判所の管轄に属するた
め、原告は右Aに対する請求についての管轄権のある原裁判所を選択して併合提起
したものであるところ、原告は右Aに対する訴を第一回口頭弁論期日に、その訴状
の陳述もしないままこれを取り下げたことが認められる。また、抗告人が原裁判所
へ提出した答弁書の記載並びにこれに添付しであつたと認められる書面(口頭弁論
調書謄本等)を綜合すると、原告は、昭和三九年頃にも、原裁判所に抗告人並びに
右A及びBに対し本訴請求と同一の請求訴訟(原裁判所昭和三九年(ワ)第一四八
号)を提起し、その際も、Aに対する訴は今回同様第一回口頭弁論期日に訴状の陳
述もすることなくこれを取り下げたことが疎明される。(なお同訴訟は、抗告人に
対する関係でもその後取り下げにより終了したものと推認しうる。)
 かかる原告の訴訟態度からみれば、原告は、始めから明らかに、Aに対する訴訟
を追行する意思を持たず、ただ、自己に便利な(右原告の住所地が原裁判所の所在
地にあることは記録により明らかである)同人の住所地を管轄する原裁判所に他の
請求をも併せ管轄せしめる目的をもつて、同人に対する請求を併せ提起したものと
推認するを妨げない。されば、原告は本件の場合、抗告人に対する請求を、Aに対
する請求と併せて、同人に対する請求のみについてしか、管轄権を有しない原裁判
所へ提起することは、前叙の理由からいつて許されないところである。
 (四) 従つて、抗告人に対する本訴請求には管轄違の違法あるものというべ
く、これをその管轄裁判所である盛岡地方裁判所に移送を求める抗告人の本件移送
申立は理由がある。よつて、抗告人の移送申立を却下した原決定は不当であり、本
件抗告は理由があるので、法第四一四条、第三八六条、第三〇条に従い主文のとお
り決定する。
 (裁判長裁判官 伊藤淳吉 裁判官 今富滋 裁判官 潮久郎)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛