弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を高松高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告人は被上告人に対する占有保持の訴を本案として、(一)被上告人の立入禁
止、(二)上告人の占有妨害禁止の仮処分を請求して居るのであつて、本申請も占
有に基くものであること記録により明である。されば本件は専ら占有関係によつて
のみ判断すべきであつて本権の理由によることを得ないものである(昭和一一年一
一月九日、同年(オ)第一四九七号事件判決参照)。しかるに原審は特別都市計画
法(原判決には「都市計画法」と記載しているが誤記と認められる)一四条及行政
事件訴訟特例法一〇条を理由として、上告人申請の仮処分は許されないものと判断
したこと判文上明である。しかし換地予定地の指定により、指定を受けた者は指定
された土地の上に、これを使用収益すべき本権を取得するけれども、指定があつた
だけで従来の事実上の占有状態に変更のない限り、占有権の変動移転を生ずるもの
ではない。蓋占有権は物を所持する事実に付せられた法律効果であつて、使用収益
を為し得べき本権とは別個のものだからである。されば原審が特別都市計画法一四
条を根拠として上告人は被上告人に対し占有妨害停止請求権を有しないものとし、
上告人の本件申請を許すべきでないと判断したのは法律の適用を誤つたものといわ
ざるを得ない。次ぎに行政権の作用を阻止する様な民事訴訟法の仮処分が許されな
いことは行政事件訴訟特例法一〇条の解釈上明だけれども、上告人申請の如き仮処
分は何等行政権の作用を阻止するものではない。即ち右仮処分が為されても被上告
人が本件換地予定地を使用収益し得べき権原(本権)を有し、上告人が右権原を有
しないことには何等の変りなく、被上告人は右本権に基いて上告人に対し該土地の
明渡を請求し得べく、前記特別都市計画法一四条に規定された法律効果には全然影
響を及ぼす処はないし、又計画施行者たる宇和島市長を当事者とするものでないか
ら、該仮処分は右市長が本件特別都市計画施行についての権限の行使を阻止するも
のでもない。要するに本件仮処分は何等行政権の作用を阻止するものではないから、
原審が行政事件訴訟特例法一〇条によりこれを許すべきでないとしたことも亦違法
たるを免れない。そして右違法は原判決主文に影響を及ぼす可能性あること勿論で
あるから原判決はこの点において破毀を免れない。
 よつて民訴四〇七条に従い裁判官全員一致の意見により主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    本   村   善 太 郎
 裁判官小林俊三は出張につき署名押印することができない。
         裁判長裁判官    井   上       登

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