弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴はこれを棄却する。
     控訴費用は控訴人等の負担とする。
         事    実
 控訴人代理人は「原判決を取消す、被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第
一、二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却
の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の陳述は、被控訴代理人において、本件土地に建物を築造す
るには、都市計画法、昭和二十一年勅令第三八九号戦災都市における建築物の制限
に関する勅令及び昭和二十一年戦災復興院告示第九十七号等の規定によつて、地方
長官の許可を必要とするのであるから、控訴人等は被控訴人に対し、本件土地の賃
貸申出をするについては、該土地に建物を築造するにつき地方長官の許可を得た上
で、これをなすべきであるに拘らず、その許可を得ないで申出をしたのであるか
ら、控訴人等の賃借申出は無効である。被控訴人が昭和二十三年一月十二日地方長
官から本件土地に建物を築造することの許可を得たことは認める。然し控訴人等は
本件土地の旧借主又は疎開建物の旧借主として、罹災都市借地借家臨時処理法(以
下単に臨時処理法と略称する)の規定により本件土地の賃借申出をする為め、被控
訴人の受けた右許可と重複して地方長官から建物築造につき許可を受けることがで
きるのであるから、控訴人等のこの点に関する主張は理由がないと述べ、控訴人等
代理人において、控訴人Cは昭和二十一年暮頃被控訴人に対し本件土地の賃借申出
をしたのである。本件土地が被控訴人主張のように、地上に建物を築造するにつき
地方長官の許可を要する土地であることは知らない。仮に被控訴人主張のように地
方長官の許可を必要とする土地であるとしても、控訴人後閑は昭和二十一年暮に被
控訴人に対し本件土地の賃借申出をする頃は、被控訴人との間に借地関係の争があ
つて事実上建物築造の許可を受けることができなかつた。而して許可は予めこれを
受けることを要しないから、同控訴人はその後許可を受けようと思つていたとこ
ろ、被控訴人の方で昭和二十三年一月十二日その許可を受けてしまつたので、同控
訴人は最早重複して許可を受けることができなくなつてしまつたから、その許可の
申請をしなかつたのである。かような場合には賃借申出について建物築造の許可は
全然要らないのである。次に控訴会社が昭和二十三年九月四日被控訴人に対し本件
土地の賃借申出をしたときは、右のように被控訴人において建物築造の許可を得て
居り、控訴会社は重複して許可を受けることができなかつたのであるから、右賃借
申出には全然許可は要らないのである、と述べた外は、原審判決事実摘示と同一で
あるから、ここにこれを引用する。
 証拠として、被控訴代理人は甲第一乃至第四号証、第五号証の一、二第六号証、
第七、八号証の各一、二を提出し、原審証人Aの証言及び原審における被控訴本人
Bの訊問の結果を援用し、乙号各証の成立を認め、控訴人等代理人は、乙第一、二
号証、第三号証の一、二を提出し原審における控訴本人兼控訴会社代表者Cの訊問
の結果を援用し、甲第八号証の一、二中官署の作成部分は認めるがその他の部分は
不知、その他の甲号各証の成立を認める、と述べた。
         理    由
 被控訴人先代Dが昭和十三年十二月一日、その所有の東京都中央区ab丁目c番
地の二宅地百五十五坪三合二勺の内約四十一坪九合を、控訴人Cに対し、普通建物
所有の目的で、賃料一ケ月三十七円七十銭、賃貸期間二十年の定めで賃貸したが、
Dは昭和十九年三月四日死亡し、被控訴人がその家督相続をして右土地の所有権を
取得し且つ右賃貸人の地位を承継したこと、控訴人Cは右賃借地の上に建物を所有
していたが、該建物は昭和十九年十二月中強制疎開により収去されて、右土地の賃
借権も消滅したこと及び同控訴人が昭和二十一年暮臨時処理法に基ずいて被控訴人
に対し右土地につき建物所有の目的で賃借の申出をしたことは当事者間に争がな
い。
 被控訴人は、本件土地は、都市計画法、昭和二十一年勅令第三八九号戦災都市に
おける建築物の制限に関する刺令、昭和二十一年戦災復興院告示第九十七号等の規
定によつて、建物を築造するにつき地方長官の許可を必要とするに拘らず、控訴人
Cは、その許可を得ないで、被控訴人に対し本件土地の賃借申出をしたのである<要
旨第一>から、右賃借申出は無効である、と主張するから審按するに、本件土地が都
市計画法第十一条ノ二の規定により都市計画として内閣の許可を受けた
土地区劃整理の区城内にあることは、昭和二十一年戦災復興院告示第九十七号東京
都市計画地域指定の件により明かであるから、昭和二十一年八月十五日勅令第三八
九号戦災都市における建築物の制限に関する勅令第三条により同勅令の施行された
同日以降は、地方長官の許可がなければ本<要旨第二>件土地に建物の築造ができな
いものといわねばならない。従つて本件土地は臨時処理法第九条により準用せら 要旨第二>れる同法第二条にいわゆる「他の法令により、その土地に建物を築造する
について許可を必要とする」土地に該当するから、控訴人Cは被控訴人に対し前記
賃借申出をするについては、本件土地に建物を築造するにつき予め地方長官の許可
を得るか、少くともその許可の申請をした上で地方長官の許可を停止条件としてで
なければ賃借申出をすることができないことは、同条の規定により明瞭である。然
るに同控訴人が昭和二十一年暮に前記賃借申出をするにつき、かかる許可を得てい
ないし又許可の申請もしていないととは、同控訴人の自認するところであつて、そ
の当時地主たる被控訴人との間に争があつたとしても、かかる許可又は許可の申請
を要しない理由とはならないから、同控訴人の前記土地賃借の申出は無効である。
又右のように本件賃借申出には、予め建物築造の許可を得るか少くとも許可申請を
要するのであるから、同控訴人の被控訴人が昭和二十三年一月十二日にその許可を
受けてしまつたから、同控訴人は本件賃借申出にはこれが許可を要しないものであ
るという主張は採用することができない。従つて同控訴人は右賃借申出により本件
土地につき何等賃借権を取得することができなかつたものというべきである。而し
て同控訴人が現に前記申出によつて、本件土地の賃借権を取得したものであるとし
て、被控訴人と争つていることは、本件弁論の趣旨により明かであるから、被控訴
人が、かかる賃借権がないことを即時に確定する法律上の利益があることは勿論で
あり、従つて同控訴人に対しかかる賃借権の存しないことの確認を求める被控訴人
の本訴請求は正当としてこれを認容すべきである。
 次に控訴会社が昭和二十一年頃から、本件土地を鉄材料等の置場として使用占有
していることは当事者間に争がない。控訴会社は昭和二十三年九月四日本訴で本件
土地の疎開建物が除却された当時の建物の借主として、被控訴人に対し本件土地の
賃借申出をしたから、本件土地の賃借権を取得したものであると主張するから按ず
るに、控訴会社が昭和二十三年九月四日本訴で本件土地の賃借申出をしたことは、
同日の口頭弁論調書(記録第七十五丁)の記載により明かであつて、右申出をする
についても控訴会社が予め地方長官に建物築造の許可を受けず又許可の申請もしな
かつたことは、控訴会社の自認するところである。この点について控訴会社は本件
土地については既に同年一月十二日被控訴人の方で建物築造の許可を得ておるから
(この事実は争がない)控訴会社は本件賃借申出をするにつきその許可を要しない
と主張するけれども、かような場合でも建物築造について地方長官の許可を得るか
少くとも許可の申請をした上でなければ賃借申出ができないものと解するのが正当
であるから、控訴会社の右申出は臨時処理法第二条の要件を具備しない無効のもの
であるというべきである。蓋し建物築造につき地方長官の許可を必要とする土地に
対し重複して賃借申出をする場合のあることは臨時処理法第十六条によつても明白
であり、かかる賃借申出をすることのできる者から建物築造の許可申請があつた場
合には、地方長官はその申請者をして適法に賃借申出をさせる為めに、重複して許
可を与えることができるものと解すべきであるから、既にその許可があつた土地に
ついて賃借申出をする場合でも賃借申出者はその許可を受けるか少くとも許可申請
をしなければならないものと解すべきだからである。従つて控訴会社の前記主張は
採用することができない。
 而して控訴会社が他に本件土地を占有すべき権原があることについては、何等の
主張も立証もしないから、控訴会社は本件土地を不法に占有して、被控訴人の本件
土地に対する所有権を侵害しているものというべきである。而して被控訴人は控訴
会社から本件土地の所有権を侵害されている為め、反証なき限り本件土地の賃料に
相当する損害を蒙つているものと認定するのが相当であり、その相当賃料が一ケ月
金三十七円七十銭を下らないことは当事者間に争ないところであるから、控訴会社
は被控訴人に対し、本件土地を明渡し、且つ昭和二十二年十月二十四日から本件土
地の明渡をすますまで、一ケ月金三十七円七十銭の割合による損害金を支払うべき
義務があること明かである。従つて被控訴人の控訴会社に対する本訴請求も正当と
してこれを認容すべきである。
 然らば右と同趣旨にいでた原判決は相当であるから、控訴人等の控訴はこれを棄
却すべきである。依つて民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条、第
九十三条により主文の通り判決する。
 (裁判長判事 大野璋五 判事 柳川昌勝 判事 浜田宗四郎)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛