弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被上告人の本件控訴を棄却する。
     原審及び当審における訴訟費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告指定代理人香川保一、同山田二郎、同河奈祐正の上告理由について。
 会社更正法(以下、「法」という。)は、更正会社に対し更正手続開始前の原因
に基づいて生じた財産上の請求権を更生債権とし(一〇二条)、租税債権について
も原則として同様の取扱をしているが、法一一九条前段は、更生債権のうち、源泉
徴収に係る所得税、通行税、有価証券取引税、酒税、物品税、砂糖消費税、揮発油
税、地方道路税、石油ガス税、入場税、トランプ類税及び特別徴収義務者が徴収し
て納入すべき地方税で、更生手続開始当時まだ納期限の到来していないものについ
ては、共益債権として請求することができるものと定めている。所論は、右にいう
納期限の意義につき、徴収のために納税の告知(国税通則法三六条、地方税法一三
条)を必要とする租税に関しては、各税法の規定により当該租税を納付すべき本来
の期限すなわち法定納期限(国税通則法二条八号、国税徴収法二条一〇号)を指す
ものではなく、右納税の告知において指定された納付の期限すなわち指定納期限を
意味するものと解すべきである旨主張する。
 思うに、法一一九条前段に掲げる租税は、もともと、更生会社が徴収義務者等と
して国又は地方公共団体に代わつて本来の納税義務者ないし担税者から徴収、保管
し、これを国又は地方公共団体に納付するものであつて、右徴収に係る税金は一種
の預り金的性質を有するものであるから、更生手続上においても、実質的には更生
会社に属しない財産として、取戻権(法六二条)に類する取扱をするのが相当であ
る。しかし、これを徹底して更生会社に対する右租税債権のすべてにつき右のよう
な取扱をすることは、他の更生関係人の利害に影響するところが大きく、会社更生
手続の目的(法一条参照)からみて必ずしも適当でないので、法は、その間の調整
をはかるという政策的見地から、右のような取扱をする租税債権の範囲を制限し、
更生手続開始当時まだ納期限の到来していないものについてだけ共益債権として更
生手続によらないで随時請求することができるものとし(法一一九条前段、二〇九
条)、その限度で取戻権的取扱をすることとしているのである。法一一九条前段の
立法趣旨をこのように理解するときは、同条の租税のうち徴収のために納税の告知
を必要とする源泉徴収に係る所得税等に関しては、同条にいう納期限は、上告人の
主張するように指定納期限を意味し、更生手続開始当時既に指定納期限を経過し徴
税当局においていつでも強制徴収の手続をとることができたものについては、取戻
権的取扱の対象から除外してこれを更正債権として取扱うこととするが、そのよう
な強制徴収手続をとることができなかつたものについては、その税金本来の預り金
的性質に鑑み、これを共益債権として取戻権的取扱をすることとしたものと解する
のが相当である。
 しかるに、原判決は、右と異なり、同条にいう納期限とは法定納期限を意味する
ものと解し、その理由として、同条の租税は、それが更生手続開始前の原因に基づ
いて生じたものであるかどうかを区別することが実際上極めて困難若しくは煩瑣で
あるので、これを避けるための技術的見地から、客観的に明白な法定納期限を区別
の基準としたものである旨説示している。しかし、同条前段の規定が右のような技
術的理由に基づくものではなく、本来ならば更生債権とされるべきもののうちで、
特に取戻権的に取り扱うのを相当とする債権について特則を定めたものであること
は、同条後段の規定との対比からも明らかなぱかりでなく、同条の租税債権が更生
手続開始前の原因に基づいて生じたものであるかどうかを区別することが、他の租
税債権と比較して特別に困難若しくは煩瑣であるとは、とうてい認めることができ
ない。また、徴税当局が任意に定めることのできる指定納期限を基準として共益債
権かどうかを決するときは、徴税当局において納税の告知を怠ればかえつて共益債
権として請求しうる範囲が広くなるという不都合な結果を生じかねないけれども、
右納税告知の遅延が徴税当局の恣意によるような場合には、信義則等により共益債
権としての請求を制限することも考慮できないわけではなく、いまだ前記解釈を左
右するには足りないというべきである。
 これを本件についてみるに、原審の確定した事実に徴すれば、第一審判決添付の
滞納金目録番号一ないし一三記載の各源泉徴収に係る所得税及び不納付加算税につ
いては、本件更生手続開始当時まだその指定納期限が到来していなかつたことが明
らかであるから、上記の理により、これらの租税債権はすべて共益債権として取り
扱うべきものである(なお、不納付加算税は、国税通則法六九条の規定により本税
と同じ税目に属するものとされるので、本税と同様、指定納期限が到来しないかぎ
り共益債権となるものと解すべきである。)。
 してみると、以上と異なる見解を前提として、上告人の本件差押処分を違法とし
た原審の判断には、法一一九条の解釈を誤つた違法があるものというべく、論旨は
理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、上記の説示によれば、右差押処分
には被上告人主張の違法はないから、同処分の取消を求める被上告人の本件請求を
棄却した第一審判決は正当であつて、これに対する被上告人の控訴はこれを棄却す
べきである。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、
八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岸   上   康   夫
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一

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