弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人Dの上告理由第一点ないし第三点について。
 論旨は、要するに、駐留軍労務者も、労働基準法三四条三項により、休憩時間中
は、自由に組合活動、政治活動、集会等を行うことができるにもかかわらず、これ
らを禁止した立川基地司令官の本件命令は、右規定に違反するか又は基地管理権の
濫用であつて無効であるというのであり、所論違憲の主張も、結局、右違法の主張
に帰するものと解される。
 思うに、駐留軍労務者も、日本国とアメリカ合衆国との安全保障条約第三条に基
づく行政協定(以下「旧行政協定」という。)一二条五項により、労働基準法三四
条三項の適用を受け、休憩時間中は、駐留軍の指揮命令の下における服務の拘束を
離れ、この時間を自由に利用することができるのである。しかしながら、一般に労
働者は、休憩時間中といえども、その勤務する事業所又は事務所内における行動に
ついては、使用者の有する右事業所等の一般的な管理権に基づく適法な規制に服さ
なければならないものであつて、駐留軍は、旧行政協定三条により、その施設及び
区域内における管理権を有するのであるから、駐留軍労務者もまた、休憩時間中の
基地内における行動について、右基地管理権の適法な行使による制約をまぬがれる
ことができない。もつとも、労働者は、通常、休憩時間中も勤務場所における滞留
を余儀なくされるものであるから、使用者の管理権に基づく労働者の行動規制も無
制限であることをえず、管理上の合理的な理由がないのに不当な制約を課する場合
には、あるいは労働基準法の前記規定に違反するものとして、あるいは管理権の濫
用として、その効力を否定せられることもありうるというべきであるが、管理権の
合理的な行使として是認されうる範囲内における規制であるかぎりは、これにより
休憩時間中における労働者の行動の自由が一部制約せられることがあつても、有効
な規制として拘束力を有し、労働者がこれに違反した場合には、規律違反として労
働関係上の不利益制裁を課せられてもやむをえないものと解さなければならない。
 これを本件についてみると、原審が確定した事実によれば、立川基地司令官は、
駐留軍の使命達成のため、その安全と安定を保持する必要上、基地管理権に基づき
同司令官の管理する施設内における労働者の大会、示威運動、祝典、会議、集会を
禁止する本件命令を発したというのである。そこでまず、右命令が駐留軍の合理的
な理由に基づく基地管理権の行使と認めることができるかどうかを考えるに、駐留
軍は、極東における国際の平和と安全の維持及び日本国の防衛に寄与するために配
備されている軍隊であつて、その性質と任務にかんがみ、軍隊の安全と安定を確保
し、緊急非常の事態に即応して迅速かつ効果的に活動しうるような態勢を不断に保
持すべき極めて強い要請が存し、そのためには軍隊の駐留する基地内の規律と秩序
を常時厳格に維持する高度の必要があることはたやすく肯認しうるところである。
原判決の認定するところによれば、本件命令は、軍隊の保安に危険を及ぼし、その
活動の障害となるおそれのある基地内の行動を阻止するための措置として発せられ
たものであるが、前記のように基地内における規律と秩序維持の要請が極めて強い
ものであること、その要請を満たすためにいかなる措置が必要かつ適切であるかは、
諸般の事情に照らして判断されるべき問題であり、これに関する責任ある当局の判
断が著しく合理性を欠くものでない限り、これを否定することは相当でないこと、
本件命令が基地内の集団的行動のみを禁止するものであることをあわせて考えると、
たとえその禁止がある程度包括的であり、かつ、無条件なものであるとしても、こ
れをもつて合理的な理由を欠く基地管理権の行使と断ずることは相当でない。他方、
駐留軍労務者は、休憩時間中における個人的な行動の自由については格別制約され
ていないし、また、基地内における集団的行動の形態による組合活動や意見表明活
動は許されないとしても、それ以外の形態によるこの種の活動や基地外におけるそ
れは自由とされているのである。そうすると、本件命令が労働者の休憩時間の自由
利用を不当かつ実質的に阻害するものとして、労働基準法三四条三項に違反するも
のということはできないし、また管理権の合理的な行使として是認されうる範囲を
こえて、不当に駐留軍労務者の組合活動や意見表明活動の自由を制限するものとし
て、基地管理権の濫用であると断ずることもできないのである。
 右の次第であるから、これと同趣旨の原審の判断は正当であり、原判決に所論の
違法はなく、論旨は採用することができない。
 同第四点について。
 論旨は、要するに、本件命令が労働者を組合活動の故に不利益に差別的取扱をす
ることを禁止した労働組合法七条に違反しないとした原判決は、労働組合法七条一
号の解釈を誤つたものであるというにあると解せられるところ、本件命令自体は、
駐留軍労務者に対し、大会、示威運動、祝典、会議、集合を禁止したものであるに
とどまり、労働者が労働組合の正当な行為をしたことの故をもつてこれに対し不利
益な取扱をしたものということはできないから、これにより労働組合法七条一号違
反の問題を生ずるものではなく、原審の判断は、結論において正当である。原判決
に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 同第五点について。
 本件命令が合理性を欠くものでないことは、前記第一点に関する判示のとおりで
あり、また所論のように本件命令の解釈適用の限界があいまいであるともいえない。
したがつて、本件命令が著しく合理性を欠き解釈適用の限界があいまいであること
を前提とする所論違憲の主張は前提を欠き、論旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意
見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    江 里 口   清   雄
            裁判官    関   根   小   郷
            裁判官    天   野   武   一
            裁判官    坂   本   吉   勝
            裁判官    高   辻   正   己

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