弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 第一 申立
 一 控訴人
 (主位的申立)
 1 原判決を取り消す。
 2 本件を東京地方裁判所に差し戻す。
 (予備的申立)
 1 原判決を取り消す。
 2 控訴人と被控訴人との間で、別紙物件目録一ないし八二記載の各土地(以下
「本件土地」と総称する。)に生立している各立木(以下「本件立木」と総称す
る。)が控訴人の所有に属することを確認する。
 3 被控訴人は、本件立木につき、控訴人が明認方法を施行することを妨害し、
かつ、控訴人が施行した明認方法を除去してはならない。
 4 被控訴人は、本件立木を伐採又は搬出してはならない。
 5 訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。
 二 被控訴人
 主文同旨
 第二 事案の概要
 一 本件は、控訴人が、株式会社真里谷(以下「真里谷」という。)に対する貸
付金債権の担保として、同社から本件立木の譲渡を受け、その後、本件立木の所有
権を確定的に取得したと主張して、真里谷に対する会社更生法に基づく保全管理人
による管理を命ずる旨の決定(以下「保全管理決定」という。)に伴い保全管理人
に選任されたA、真里谷に対して更生手続が開始された後においては、その開始決
定と同時に管財人に選任された被控訴人に対し、前記第一の一の予備的申立2ない
し4のとおりの裁判を求めている事案であって、当事者双方の主張は次のとおりで
ある。
 二 控訴人の請求原因
 1 真里谷は、東京地方裁判所平成五年(ミ)第一号、第一三号会社更生申立事
件につき、同年八月五日、保全管理決定を受け、Aが保全管理人に選任された後、
同六年一二月二日、更生手続開始決定を受け、被控訴人が管財人に選任されてい
る。
 2(一) 控訴人は、平成三年二月二八日、真里谷との間で、(1)控訴人が真
里谷に対し、二〇〇〇万円を利息年六パーセント、弁済期同五年一二月三一日、真
里谷が第三者から差押え・仮差押えを受けるなどしたときは、期限の利益を失うと
の約定で貸し渡し(以下「本件消費貸借契約」という。)、(2)本件消費貸借契
約上の債務を担保するため、真里谷が所有していた本件土地に生立している本件立
木を譲り受け、真里谷が右債務を遅滞したときは、控訴人が本件立木の所有権を確
定的に取得し、その評価に従い、右債務の清算をする旨のいわゆる帰属清算の約定
の契約(以下「本件譲渡担保契約」という。)を締結した。
 (二) 真里谷は、平成三年七月三一日、その所有する有価証券につき株式会社
オリックスから仮差押えを受け、前記期限の利益を失ったのに、控訴人に対し本件
消費貸借契約上の債務の弁済を遅滞したので、控訴人は、本件立木の所有権を確定
的に取得したところ、真里谷は、その際、控訴人が本件譲渡担保契約に基づき本件
立木の所有権を確定的に取得したことを異議なく確認しているだけでなく、同年八
月二〇日には、本件立木の価格が二〇五〇万円と評価され、前記約定に基づき控訴
人が真里谷に対し支払うべき清算金が存しないことを異議なく承諾している。
 3 控訴人は、平成六年一月六日、本件立木の大部分につき、「当地全域の立木
全部は控訴人の所有である」などと記載した約五〇センチメートル四方大のベニヤ
板等(以下「本件ベニヤ板等」という。)を釘で打ち付けたが、これは立木の譲渡
についての対抗要件である明認方法を施行したものというべきである。
 4 しかし、真里谷の保全管理人に選任されたAは、本件立木が真里谷の所有に
属すると主張して、平成六年四月下旬、控訴人が釘打ちした本件ベニヤ板等を撤去
し、真里谷の管財人に選任された被控訴人も、本件立木が真里谷の所有であると主
張して、控訴人が本件立木に明認方法を施行することを禁止しているので、控訴人
が改めて本件立木に明認方法を施行しても、これが被控訴人によって除去されるお
それは高く、また、被控訴人が自ら本件立木を伐採又は搬出するおそれもある。
 5 よって、控訴人は、本件立木の所有権に基づき、被控訴人に対し、本件立木
が控訴人の所有に属することの確認、本件立木につき、控訴人が明認方法を施行す
ることの妨害及び控訴人が施行した明認方法の除去の禁止、本件立木の伐採及び搬
出の禁止を求める。
 三 請求原因に対する被控訴人の認否
 1 請求原因1の事実は認める。
 2 請求原因2のうち、真里谷が株式会社オリックスから控訴人主張の仮差押え
を受けた事実、真里谷が控訴人に対し本件消費貸借契約上の債務の弁済をしていな
い事実は認めるが、その余の事実は否認する。
 3 請求原因3のうち、控訴人が本件立木に本件ベニヤ板等を釘打ちした事実は
認めるが、その釘打ちが立木の譲渡についての対抗要件である明認方法を施行した
ものであるとの主張は争い、その余の事実は否認する。
 4 請求原因4のうち、被控訴人が本件立木を伐採して搬出するおそれがあると
の事実は否認し、その余の事実は認める。
 5 請求原因5は争う。
 四 被控訴人の抗弁
 1 本件消費貸借契約及び本件譲渡担保契約の無効
 仮に控訴人と真里谷との間で本件消費貸借契約及び本件譲渡担保契約が締結され
たとしても、両者の通謀してした虚偽表示によるものであって、無効である。
 2 控訴人が本件立木に施行した対抗要件の否認
 仮に控訴人が平成三年七月三一日に本件立木の所有権を確定的に取得したとして
も、本件立木に本件ベニヤ板等を釘打ちしたことによって控訴人主張の明認方法を
施行したのは同六年一月一六日であるところ、控訴人は、当時、真里谷に対する会
社更生申立事件において保全管理人が選任されたことを知っていたから、被控訴人
は、会社更生法八〇条一項の規定に基づき、控訴人が本件立木に施行した対抗要件
を否認する。
 控訴人は、この点につき、立木の譲渡についての対抗要件である明認方法の施行
は単独行為であるとして、右否認の対象とならないように主張するが、明認方法
も、所有権の取得を対抗するための公示方法である以上、譲受人の所有権の取得を
外部的・客観的に表示する譲渡人の意思に基づくものであることを要するのであっ
て、明認方法が単独行為であるといわれているのは、事実行為としての明認方法の
施行については譲渡人が行う必要がなく、譲受人が行って差し支えないというにと
どまり、これが対抗要件として有効となるためには、譲受人の事実行為としての明
認方法の施行につき譲渡人の明示又は黙示の同意があることを要するものというべ
きであるから、控訴人が単独で本件立木に本件ベニヤ板等を釘打ちしても、これに
よって本件立木の所有権の取得を第三者に対抗しうるものではない。
 また、控訴人は、保全管理人のいわゆる第三者性を争うが、保全管理決定には会
社財産に対する差押えの効力があるから、保全管理人は、会社財産につき権利を主
張する者に対して第三者の地位に立つものというべきであって、この点からして
も、保全管理決定時に本件立木につき対抗要件を充足していない控訴人がその所有
権の取得を保全管理人に対抗する余地がないことは明らかである。
 五 抗弁に対する控訴人の認否
 1 抗弁1の事実は否認する。
 2 抗弁2の主張は争う。
 会社更生法八〇条一項は、債務者が権利移転の原因行為をしながら、同項所定の
相当の期間内に対抗要件を充足させないでおいて、支払の停止又は破産・会社更生
手続開始の申立などがあった後、いきなり対抗要件を充足させることは、一般債権
者の予測を裏切り、それらの者を害する結果となるため、これを否認しうることに
したものであって、右否認が認められるのは、対抗要件を充足させる債務者の行為
であるか、これと同視しうるもの、あるいは、対抗要件の充足につき債務者の協力
ないし加功があった場合であることを要するものというべきである。
 これに対し、本件で問題となっているのは、控訴人が本件立木に本件ベニヤ板等
を釘打ちして施行した明認方法であるところ、立木の譲渡についての対抗要件であ
る明認方法は譲受人である控訴人が単独で施行しうるものであって、譲渡人である
真里谷の行為によるものでも、これと同視しうるものでもなく、その施行につき真
里谷の協力ないし加功があったわけでもないから、控訴人が本件立木に施行した明
認方法が被控訴人の否認の対象となる余地はないものというべきである。
 原判決は、控訴人が本件立木の所有権の取得をその敷地の所有権又は管理処分権
限を取得した保全管理人に対抗することができるか否かの問題として本件を把握し
ているが、保全管理決定をもって更生手続開始前の会社から保全管理人に対する権
利の移転を擬制する余地はなく、本件は、控訴人と保全管理人との民法一七七条の
規定する対抗関係が問題となる場合ではない。
 第三 証拠(省略)
         理    由
 一 前提となる事実関係
 本件立木が真里谷の所有であったこと、控訴人が本件立木にその主張に係る明認
方法として本件ベニヤ板等を釘打ちしたが、真里谷の保全管理人に選任されたA
は、本件立木が真里谷の所有に属すると主張して、これを撤去したこと、その後に
真里谷の管財人に選任された被控訴人も、本件立木が真里谷の所有に属すると主張
して、控訴人が本件立木にその主張に係る明認方法を施行することを禁止している
こと、以上の各事実は当事者間に争いがない。
 二 本訴請求の当否
 1 控訴人は、本件消費貸借契約及び本件譲渡担保契約に基づき、真里谷から本
件消費貸借契約上の債務の担保として本件立木の譲渡を受け、真里谷が右債務を遅
滞したため、本件立木の所有権を確定的に取得し、その後、本件ベニア板等を釘打
ちして明認方法を施行したと主張するが、控訴人が本件立木の所有権を取得したも
のであるか否かはともかく、控訴人が本件立木に本件ベニヤ板等を釘打ちしたこと
は、それ自体をみれば、立木の譲渡についての対抗要件である明認方法の施行と認
めるに足るものというべきである。
 2 これに対し、被控訴人は、本件ベニヤ板等の釘打ちによって控訴人が本件立
木に明認方法を施行したとしても、会社更生法八〇条一項に基づき、これを否認す
ると主張するので、控訴人が右明認方法の原因として本件立木の所有権を取得した
ものであるか否かはさておき、以下、被控訴人主張の否認の当否につき検討するこ
ととする。
 (一) 会社更生法八〇条一項は、対抗要件の否認につき規定しているが、その
趣旨は、権利移転の対抗要件は、その原因行為とは別に、それ自体が同法七八条の
規定する否認の対象となりうるものであるところ、既に原因行為によって生じた権
利移転を完成する行為にすぎないことから、原因行為それ自体に否認の理由がない
場合には、できる限り対抗要件を充足させることによって、当事者に所期の目的を
達成させようとするとともに、権利の移転があっても、対抗要件を充足しない限
り、その譲受人は当該権利の取得を他の一般債権者に対抗することができないの
で、結局、当該権利は更生会社の財産を構成することになるところ、権利移転が生
じた後、対抗要件を充足することもなく推移したのに、その後になって対抗要件が
充足された場合には、その間に形成された当該権利が会社財産を構成するものであ
るとの一般債権者の期待を覆す結果となるため、権利移転の効果が生じた日から一
五日を経過した後に悪意でされた対抗要件の充足行為を否認しうるものとしたもの
である。
 (二) 会社更生法八〇条一項の右趣旨・目的に照らし、同項が否認の対象であ
る対抗要件充足行為の主体につき明示的に限定を加えていないことに鑑みると、指
名債権譲渡の場合は、その対抗要件制度が当該債務者の譲渡についての認識を通じ
て第三者に対する公示という構造をとっているため(最高裁判所昭和四九年三月七
日第一小法廷判決・民集二八巻二号一七四頁参照)、民法四六七条は右債務者が当
該譲渡についてした承諾を対抗要件としているが、このような当該権利の譲渡当事
者以外の第三者の行為を会社更生法八〇条一項に基づく否認の対象とすることは、
同項の予定しないところである(最高裁判所昭和四〇年三月九日第三小法廷判決・
民集一九巻二号三五二頁参照)としても、法が、権利の譲受人に対し、譲渡人の承
諾のもとに、右譲受人の単独の行為により右権利の譲渡についての対抗要件を充足
する行為をすることを認めている場合には、右承諾ではなく、譲受人のした対抗要
件充足行為そのものが会社更生法八〇条一項の否認の対象たる対抗要件充足行為と
認めるのが相当である。
 <要旨>(三) ところで、立木ニ関スル法律一条所定の要件を具備する立木の譲
渡につき、同法一六条は、その譲受人が、当該立木の存する土地の所有権又
は地上権の登記名義人の証明書により右立木が自己の所有に属することを証明する
ときは、所有権保存登記をすることができるとしているが、この対抗要件充足行為
も、会社更生法八〇条一項の否認の対象となりうるものと解すべきであることは、
前記説示のとおりであり、したがって、同項所定の期間の経過後に悪意でされたも
のであるときには、同項により否認しうるものと解するのが相当である。そして、
右の理は、立木の所有者とその地盤の所有者とが同一人であり、立木ニ関スル法律
に基づき所有権保存登記がされていない場合で、右立木のみについてされた譲渡に
つき、いわゆる明認方法が譲渡人の承諾のもとに譲受人によってされたときにも妥
当するものと解すべきであり、右対抗要件の充足行為が譲受人の単独の行為によっ
てされたことそれ自体は、会社更生法八〇条一項に基づく否認権の対象とならない
とすべき理由とはならないものと解すべきである。
 3 控訴人が、本件譲渡担保契約締結の際、真里谷から、本件立木につき明認方
法を施すことの承諾を得ていたとしても、本件ベニヤ板等を釘打ちして本件立木に
施行した明認方法は、本件譲渡担保契約の締結時及びこれに基づき控訴人が本件立
木の所有権を確定的に取得したと主張する時から約三年ないし二年半も経過した後
であって、かつ、真里谷が保全管理決定を受けた後にされたものであるうえ、弁論
の全趣旨によると、控訴人において真里谷が保全管理決定を受けたことを知って右
明認方法を施したものと認められるから、右明認方法は、会社更生法八〇条一項に
基づく否認権の対象となるものというべきである。そして、被控訴人が、原審の第
一回口頭弁論期日に右明認方法につき否認権を行使して否認したことは、記録上明
らかである。したがって、控訴人は、本件立木の所有権の取得をもって被控訴人に
対抗しえないものというべきであるから、控訴人の本訴請求は、いずれもその余の
点について判断するまでもなく理由がなく、これを棄却した原判決の結論は相当と
いうべきである。
 三 よって、本件控訴は理由がないことに帰するので、これを棄却することと
し、控訴費用の負担につき、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり
判決する。
 (裁判長裁判官 柴田保幸 裁判官 小林亘 裁判官 滝澤孝臣)
 (別紙)
 物件目録一ないし八二(省略)

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