弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決はこれを破棄する。
     本件を東京地方裁判所に差戻す。
         理    由
 弁護人福田覚太郎の控訴趣意は同人作成名義の控訴趣意書と題する書面記載の通
りである(但し論旨第二点以外の論旨は省略する)。これに対し当裁判所は次の通
り判断する。
 論旨第二点について、
 <要旨>証拠調の範囲を変更する場合には裁判所は檢察官及び被告人又は弁護人の
意見を聽かねばならぬことは刑事訴訟法第二百九十七條第二項に明定する所
である。従つて一旦証拠調の決定をした後で之を取消す場合にも当事者の意見を聽
くべきものである。本件訴訟記録を調査するに原裁判所は昭和二十四年三月二十八
日Aを証人として取調ぶべき旨決定を宣し、次いで同年四月一日前きに決定した右
証人に対する証拠決定を取消す旨宣告したことは各前記日附の各原審公判調書の記
載に徴し明らかである。而して原裁判所が前掲取消決定の際檢察官及び被告人又は
弁護人の意見を聽いた旨の記載は該公判調書に記載がないからこれらの者の意見は
聽かなかつたものと断ずる外はない。果して然らば原裁判所の右証拠決定の取消決
定は違法であり該違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから原判決は破棄を
免かれない。弁護人の論旨第二点は畢竟これと同趣旨に帰するから論旨理由あるも
のである。よつて爾余の論旨に対する判断はこれを省略する。
 よつて刑事訴訟法第三百九十七條、第三百八十條、第四百條に則り主文の通り判
決する。
 (裁判長判事 吉田常次郎 判事 保持道信 判事 鈴木勇)

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