弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告訴訟代理人弁護士塩原時三郎の上告理由について。
 第一点 所論は、原判決には人訴三一条の解釈を誤つた違法があると主張する。
しかし、人事訴訟事件においても、裁判所がいかなる限度まで証拠調をするかは、
裁判所が、すでに得た心証の程度により、自由にこれを決することを得るものであ
つて、人訴三一条もこの点に関し何等制限又は変更を加える趣旨を含むものと解す
べき理由はない。そして、原判決の挙げている各証拠を総合すれば、原判決のよう
な認定をすることはできるわけであるから、原審がこれらの証拠によつて得た心証
をもつて十分なものとし、所論のごとき諸点につき更に証拠調をしなかつたことを
捉えて、所論の違法があると言うことはできない。それ故、論旨は採ることを得な
い。
 第二点 所論は、内縁の子は、内縁成立の日から二百日以後に生れた場合、又は
内縁の解消した日から三百日以内に生れた場合は、民法七七二条を類推して、母の
内縁の夫若しくは甞て母の内縁の夫たりし者の子と推定されるから、すでに推定さ
れた父を持つている子が、その父に対してさらに認知を求めることは理論的に矛盾
しその必要はない、と主張する。
 しかし、民法七七二条の適用によつて嫡出子の推定を受ける子が、特に父の認知
を必要としないのは、単に同条の推定があるばかりではなく、さらにその他に民法
七七四条、七七五条、七七七条、人訴二九条により、嫡出子の推定は一定の期間内
に否認の訴を提起してこれを覆す途が設けられているに止まり、それ以外の方法に
おいて反証を挙げてこの推定を争うことは許されていないものと解すべきだからで
ある。また民法七七九条においては、嫡出子については認知を問題としていないし、
民法七七六条では、「その嫡出であることを承認したとき」という表現を用い、認
知という言葉は使つていない。しかるに、内縁の子についても民法七七二条が類推
されるという趣旨は、事実の蓋然性に基いて立証責任の問題として、父の推定があ
るというに過ぎない。それ故、認知の訴訟において父の推定を受けている者が、父
にあらざることを主張する場合には、その推定を覆すに足るだけの反証をあげる責
任を負うわけである。そして、父と推定される者は、認知をまたずして、法律上一
応その子の父として取扱われることもなく、また同様にその子は、認知をまたずし
て、法律上一応推定を受ける父の子として取扱われることもないものと言わねばな
らぬ。だから、父子の関係は、任意の認知がない限りどこまでも認知の訴で決定さ
れるのであり(民法七七九条、七八七条)、その際民法七七二条の類推による推定
は、立認責任負担の問題として意義を有するのである。
 さらに、戸籍の取扱からいつても、嫡出子推定の場合には、婚姻の届出がすでに
あるから、戸籍吏は形式的審査だけで戸籍簿に記入することができるし、父以外の
者でも出生の届出ができていいわけであり、また戸籍法もそうなつている。しかし、
内縁の夫婦については、もとより婚姻の届出はないのであるから、その父と推定さ
れる者の子として父の戸籍に届出ても、実質的審査権をもたない戸籍吏は、内縁関
係の実質を調べるわけにはいかないから、現行戸籍法の解釈としてこの届出を受理
することは許されないものと言わねばならぬ。それ故、戸籍の点からいつても認知
の訴は必要となつて来る。されば、本件において原審が、内縁の子について民法七
七二条を類推すべきものとしながら、上告人に対し被上告人の認知を命じたのは正
当であつて、違法のかどはない。
 よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり
判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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