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 平成15年2月27日判決言渡
 平成12年・第833号 損害賠償請求事件(以下「甲事件」という。)
 平成13年・第2293号 損害賠償請求事件(以下「乙事件」という。)
           判          決
           主          文
  1 原告の請求をいずれも棄却する。
  2 訴訟費用は,甲事件及び乙事件ともに,原告の負担とする。
           事          実
  第1 当事者の求めた裁判
  (甲事件)
   1 請求の趣旨
   (1) 甲事件被告らは,原告に対し,各自,金186万8270円及びこれ
に対する平成10年12月13日から支払済み     まで年5分の割合による
金員を支払え。
   (2) 訴訟費用は甲事件被告らの負担とする。
   (3) 仮執行宣言
   2 請求の趣旨に対する甲事件被告らの答弁
   (1) 原告の請求をいずれも棄却する。
   (2) 訴訟費用は原告の負担とする。
  (乙事件)
   1 請求の趣旨
   (1) 乙事件被告らは,原告に対し,各自,金186万8270円及びこれ
に対する平成10年12月13日から支払済み     まで年5分の割合による
金員を支払え。
   (2) 訴訟費用は乙事件被告らの負担とする。
   (3) 仮執行宣言
   2 請求の趣旨に対する乙事件被告らの答弁
   (1) 原告の請求をいずれも棄却する。
   (2) 訴訟費用は原告の負担とする。
  第2 当事者の主張
1 請求原因(甲事件及び乙事件)
(1) 当事者
ア 原告は,平成元年12月26日生まれの男子であり,平成10年1
2月12日当時,満8歳で小学校3年生であっ      た。
     イ 乙事件被告Aは,昭和61年4月25日生まれの男子であり,平成
10年12月12日当時,満12歳で小学校6      年生であった。
       甲事件被告Bは被告Aの父,甲事件被告Cは被告Aの母である。
     ウ 乙事件被告Dは,昭和61年10月13日生まれの男子であり,平
成10年12月12日当時,満12歳で小学校      6年生であった。
       甲事件被告Eは被告Dの母であり,甲事件被告Fは,同日当時,被
告Dの養父であった。
   (2) 事故の発生
     原告は,平成10年12月12日午後3時ころから,八千代市a公園
(以下「本件公園」という。)で遊んでいたとこ    ろ,本件公園内に設置さ
れたいわゆる「箱ブランコ」(以下「本件ブランコ」という。)で遊戯中に転倒
し,右大腿骨骨    折の傷害を負った(以下「本件事故」という。)。
   (3) 事故の発生状況及び態様
     原告は,本件事故発生当時,乙事件被告らとともに本件ブランコで遊ん
でいた。被告Dは,本件ブランコの道路側の座    席に被告A及び原告を背に
して座り,原告は,被告Aから「一緒に押して。」と頼まれ,被告Aの隣に立ち,
被告Aとと    もに本件ブランコを手で押して揺らしていた。被告Aは,被告
Dの促しによって,本件ブランコを力の限り強く押し,自    らも制御できな
いほどに大きく揺らし,そのため,被告Aより年下で,身長が低く,腕の長さ(リ
ーチ)も短い原告は,    体を伸ばし,足を数歩前に出して本件ブランコを押
し,本件ブランコが揺れ戻ってきたときには,足を数歩後ろに引いた    り,
斜め後ろに飛び上がらなければならなかった。原告は,このようにして本件ブラン
コを揺らしているうちに次第に恐    怖心を抱くようになり,とっさに本件ブ

    ンコから遠ざかろうとしたが,揺れ戻ってきた本件ブランコを避けること
ができず,本件ブランコの座席後部が原告の右    大腿部に衝突して不自然な
格好となり,足が地面に着いた後に体が地面に着いて転倒し,前記傷害を負った。
   (4) 甲事件被告ら及び乙事件被告ら(以下,合わせて「被告ら」とい
う。)の責任
     ア 本件ブランコは,共振現象を利用し,わずかな力で大きな揺動を引
き起こすことができる上,その鉄製かごの重量      が約90キログラムと
非常に重いため,その揺動のさせ方によっては,揺れ幅の最下点における衝撃が極
めて大き       く,場合によっては死亡事故に至るおそれもあり,本件事
故の際のように乱暴に揺らした場合には,本件ブランコに      弾みがつい
て予想以上に揺れ幅が大きくなり,本件ブランコを押している者が揺れ戻ってきた
本件ブランコに衝突さ      れて傷害を負う危険性を有している。
     イ 乙事件被告らは,本件事故当時,小学校高学年であり,本件ブラン
コで日常的に遊んでいたので,上記のような本      件ブランコの危険性を
経験上認識し,本件ブランコを押して遊ぶ場合には,自己らより年下で,身長が低
く,腕の長      さも短く,運動能力も劣る原告が,揺れ戻ってくる本件ブ
ランコから逃げ切れずに傷害を負う可能性があることを予      見すること
が可能であったのであるから,本件ブランコを強く押して大きく揺らし,原告が逃
げ切れないほどの弾み      がつくことを回避すべき注意義務があったにも
かかわらず,同被告らは,これを怠り,上記(3)のとおり,被告D       
は,被告Aに対し,本件ブランコを大きく揺らさないように注意せず,かえって,
本件ブランコを大きく揺らすよう      原告及び被告Aに指示し,被告A
は,本件ブランコを力の限り強く押
      し,自らも制御できないほどに大きく揺らしたものであって,同被告
らには過失がある。したがって,乙事件被告ら      は,民法709条に基
づき,原告が本件事故により被った後記損害を賠償する責任がある。
     ウ 本件公園は,原告及び乙事件被告らが通学する小学校から数分の場
所にあって,同小学校の児童らの遊び場となっ      ており,本件ブランコ
は以前から本件公園に設置されていた遊具であるところ,甲事件被告らは,児童ら
が,複数人      が向かい合って席に座ってゆらゆらと揺らして楽しむとい
う本件ブランコの本来の遊び方よりも危険性のある方法で      遊ぶことが
多かったこと及び上記イ記載の本件ブランコの危険性を容易に予見できたのである
から,甲事件被告ら       は,日頃から,自己の子である乙事件被告ら
に,本件ブランコの通常の使用方法や本件ブランコの危険性について教     
 え,本件ブランコを使用する際には自己ないし他人が怪我をすることのないよう
気をつけ,余り大きくブランコを揺      らさないように注意すべき義務が
あったにもかかわらず,これを怠
      り,上記の教示,注意をしなかった過失がある。したがって,同被告
らは,民法709条に基づき,原告が本件事故      により被った後記損害
を賠償する責任がある。
       また,同被告らは,乙事件被告らが自己の行為の責任を弁識するに
足りる知能を備えていない場合には,民法71      4条に基づき,原告が
本件事故により被った後記損害を賠償する責任がある。
     エ 本件事故は,被告らの共同の過失により発生したものであるから,
被告らは,民法719条に基づき,連帯して原      告の損害を賠償する責
任を負う。
   (5) 損害
原告は,本件事故により,以下のとおりの損害を被った。
ア 治療費        33万8090円
原告は,本件事故による前記傷害の治療のため,本件事故当日から
平成11年3月4日までG病院に入院し,退院      後も同年4月2
6日まで同病院に通院し(通院実日数2日),治療費として33万8090円を要
した。
     イ 看護のための交通費  5万0180円
       原告の父母は,原告の看護のため,平成10年12月13日から平
成11年3月24日までの間13日間にわたり      タクシーを利用して上
記病院に赴き,その費用として2万0800円を要し,また,113回(原告の母
は85回,      原告の父は28回)にわたり電車を利用して上記病院に赴
き,その費用として2万9380円(1回当たり260       円)を要し
た。
     ウ 入通院慰謝料     148万円
       原告は,前記受傷及び入通院により精神的苦痛を受けたものであ
り,これに対する慰謝料は148万円が相当であ      る。
   (6) よって,原告は,被告ら各自に対し,不法行為に基づき,上記損害合
計186万8270円及びこれに対する不法行     為の日以後の日である平
成10年12月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
の支払を求     める。
   2 請求原因に対する被告らの認否
   (1) 請求原因(1),(2)の事実は認める。
(2) 請求原因(3)の事実は否認する。
      被告Aは,本件ブランコを通常の押し方で押していたのであり,こと
さらに強力に押したりしていない。被告Dは,     原告及び被告Aに背を向
けて本件ブランコに座っていたので,自ら本件ブランコを揺らすことはできない
し,本件ブラ     ンコに力を入れたこともない。また,乙事件被告らは,1
人乗りブランコから本件ブランコに移動した際,原告が後か     らついてき
たため,被告Aが原告に対し「あっちへ行って遊べ。」と言い,同被告らが交互に
「おまえは止めてお       け。」と指示して原告を制止したが,原告が敢
えて上級生である同被告らの遊びに加わって来た経緯がある。
     原告は,本件ブランコの揺れ戻しの最中に,何らかの拍子で転倒して右
股関節の後横を地面に強打し,その衝撃によっ     て右大腿骨の中間部より
やや上方の部分を骨折する傷害を負ったのであり,その傷害は,本件ブランコが直
接原告の身     体に衝突して生じたものではなく,本件ブランコの揺れの大
小と直接の関連はない。
   (3) 請求原因(4)アの事実は不知ないし否認する。同イの事実は否認ないし
争う。同ウの事実のうち,本件公園が児童の     遊び場になっていたことは
認め,その余は不知,否認ないし争う。同エは争う。
     本件事故の態様は,上記(2)のとおりであり,乙事件被告らには本件事故
の発生に対する予見可能性がないから,不法     行為責任を負うことはない
し,被告Aの親権者の被告B及び被告C,被告Dの親権者の被告F及び被告Eが不
法行為責     任を負うこともない。
   (4) 請求原因(5)の事実は不知。
           理          由
 第1 当事者及び本件事故の発生について
    請求原因(1),(2)の事実は本件当事者間に争いがない。
 第2 本件事故の発生状況及び態様について
  1 前記争いのない事実と証拠(甲3,9ないし11,13ないし17,1
9,21の(1)ないし・,22,乙1,6,丙    2,原告本人,被告A本人,
被告D本人)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故の発生状況及び態様について,
次の事実が   認められる。
(1)本件ブランコは,ゆりかご型ブランコ,安全ブランコ等と呼ばれている
ブランコであり,対面式の座席が鉄パイプ製の    円形のかごに取り付けられ
ていることから「箱ブランコ」と通称されている。本件ブランコは,左右に「ハ」
の字型の青    色に塗装された鉄パイプ製の支柱を配し,支柱の間の青ペンキ
で塗装された鉄パイプ製の横棒に,黄色に塗装された鉄パ    イプ製の円形の
かごが吊されており,かごの中には,対面式のラワン製の座席と底板が設置されて
いる。
(2)本件ブランコは,次のような方法で使用されていた。
ア 鉄パイプ製のかご内の座席に児童が腰掛け,又は底板の上に立ってか
ご全体を前後に揺り動かす方法。
イ 鉄パイプ製のかご内の座席に児童ないし幼児を腰掛けさせ,保護者又
は年長の児童がかごの座席の横の位置から両脇     をつかんでかご全体を
前後に揺り動かす方法。
    ウ 鉄パイプ製のかご内の座席に児童を座らせ,1人ないし2人の児童が
かごの外側に立ち,座席の後ろから座席背もた     れのパイプの最上部に手
をかけてかご全体を前後に揺り動かす方法。
    エ 鉄パイプ製のかご内の座席背もたれ最上段に立ち,かご全体を揺り動
かす方法。
(3)乙事件被告らは,平成10年12月12日午後4時過ぎころ,本件ブラ
ンコで遊ぶこととした。被告Dは,本件ブラン    コの座席の左側に1人で座
り,座席の前にある鉄パイプ製のかごの中央の横棒をつかんでいた。被告Aは,被
告Dの真後    ろの地上に立って本件ブランコを押し,原告は,被告Aの右側
に立って本件ブランコを押していた(上記(2)ウの方法。    なお,乙第2号証
(被告C作成の陳述書)には,被告Aが,本件事故当日,原告が被告Aの左隣に立
って本件ブランコを    押していたと話していた旨の供述記載があるが,前掲
各証拠に照らして採用し得ない。)。
    被告A及び原告の本件ブランコの押し方は,両足を固定せずに本件ブラン
コの座席背もたれのパイプの最上部をつかんで    本件ブランコを押し出し,
いったん手を本件ブランコから離し,揺れ戻って来た本件ブランコの上記部分を再
度つかむと    いうものであった。
     原告は,上記のようにして本件ブランコを何回か押していたときに地面
に倒れ,被告Aは,原告が右側臥位で倒れてい    ることに気付いて本件ブラ
ンコを押すのをやめ,本件ブランコを止めた。原告は,動こうとしたが,足が折れ
ているよう    な感じがして動けず,救急車が到着するまで倒れた状態でい
た。
    原告の父であるHは,本件事故の発生を知り,救急車が到着する前に本件
公園に駆けつけ,乙事件被告らから事情を聞い    た。
(4)Z市の救急隊は,同日午後4時22分に本件事故発生の通報を受け,同
日午後4時32分に本件事故現場に到着した。    救急隊が到着した時,原告
は,本件ブランコの脇に右側臥位で地面に倒れており,意識は清明であったが,右
大腿の痛み    を訴えて歩行困難な状態であった。
    原告は,救急車でG病院に搬送され,医師の診察を受けた。原告は,診察
の際,右大腿部に変形及び著明な腫脹が見ら     れ,また,右下腿部には擦
過傷が見られたが出血はなかった。上記医師は,右大腿骨骨幹部中央よりやや頭
(近位)側で    横骨折と骨の転位があり,遠位側前方が凸であると診断し
た。
(5)「箱ブランコ」での遊戯中の事故として新聞等で報道された事故には,
以下のようなものがある。
    ア 箱ブランコから転落し,あるいは箱ブランコを押していて転倒した幼
児・児童が,箱ブランコの底板と地面との間の     すきまに体を挟まれ,あ
るいは箱ブランコの鉄パイプ製のかごに衝突される事故。
    イ 箱ブランコの背もたれ部分の上に立って箱ブランコを漕いでいて,箱
ブランコから転落する事故。
    ウ 指が支柱に挟まれる事故。
  2 本件事故の発生状況及び態様について
(1) 原告は,本件事故発生当時,被告Aが,本件ブランコを強く押して自ら
も制御できないほどに大きく揺らしたため,原    告は,体を伸ばし,足を数
歩前に出して本件ブランコを押し,本件ブランコが揺れ戻ってきたときには,足を
数歩後ろに    引いたり,斜め後ろに飛び上がらなければならなかったと主張
している。そして,原告は,その本人尋問において,上記    主張に沿う供述
をし,本件事故当時の本件ブランコの高さについて,押し出したときには,本件ブ
ランコの円形のかごの    中心にある,静止時に地面と垂直に配置される鉄パ
イプの作動角度が,30度ないし45度(角度は,鉛直線に対する角    度を
意味する,以下同じ。甲第10号証の写真・,・,以下,括弧内の数字は同号証の
写真番号を示す。)より少し大き    く,あるいは45度(・)になるまで上
がり,揺れ戻ってきたときには15度ないし20度(・,・)より少し大きくな 
   るまで上がっていたと供述している。
     しかし,原告本人の供述に徴すると,原告の記憶は曖昧な部分が多いこ
とが窺われ,原告本人尋問の約2か月前に作成    された原告の陳述書(甲第
19号証)には,本件事故の発生状況に関し重要と思われる,原告が本件ブランコ
を押してい    た際に,揺れ戻ってきたときに斜め後ろに飛び上がっていた旨
の供述は記載されていないのである。また,被告Aは,そ    の本人尋問にお
いて,本件事故当時の本件ブランコの高さについて,押し出したときには32度な
いし33度(・と・の    中間)まで上がり,揺れ戻ってきたときには16度
ないし17度(・と・の中間)まで上がっていた旨,原告本人の上記    供述
に反する供述をしている。そして,原告本人の上記供述が本件事故から3年9か月
を経過した後にされており,これ    を客観的に裏付ける証拠も存在しないこ

    を考慮すると,原告本人の上記供述を直ちに採用することはできない。
    したがって,本件事故発生の際の本件ブランコの揺れが原告主張のとおり
のものであったと認めることは困難である。
(2) 次に,原告は,被告Aの右隣で上記のようにして本件ブランコを押して
いたところ,予期した以上に揺動するようにな    り,揺れ戻ってきた本件ブ
ランコを避けることができず,本件ブランコに衝突され,その衝撃により不自然な
格好となっ    て,足が体より先に地面に着いてその後体が落ちて転倒し,右
大腿骨骨折の傷害を負ったと主張している。そして,原告    は,その本人尋
問において,場所は分からないが,本件ブランコが原告に衝突した記憶がある旨の
原告の上記主張に沿う    供述をしており,また,原告の陳述書(甲第19号
証)には,原告が,揺れ戻ってきた本件ブランコを避けることができ    ず,
本件ブランコが原告の右大腿に衝突して転倒した旨,原告の上記主張に沿う供述記
載がある。
     しかし,他方,原告は,本人尋問において,本件ブランコが原告に衝突
したかどうかはよく覚えていない旨の供述をし    ている上,本件ブランコが
原告に衝突する前に転倒した覚えはないと供述する一方で,転倒した後にブランコ
がぶつかっ    たかどうかは覚えていないと供述するなど,本件事故の際に原
告が転倒した原因,その際における本件ブランコの状況     (本件ブランコ
が原告と接触したのかどうか,接触したとして,どのように接触したのか)だけで
なく,転倒と衝突との    先後関係,衝突の瞬間及びその直前,直後の原告の
行動ないし動作あるいはこの間の具体的な事態について,上記1(3)    で認定
した以上に積極的に述べる部分はない。そうすると,原告本人の上記供述及び陳述
書の上記供述記載を直ちに採用    することはできない。
     また,原告を背にする形で座っていた被告Dは,その本人尋問におい
て,本件事故が発生した瞬間を見ていないと供述    しており,証拠(丙1な
いし3)によれば,被告Dは,被告Fの事情聴取に対しても同様の供述をするほ
か,座っていた    ときに何かが本件ブランコにあたったかどうかも分からな
い旨述べていることが認められる。原告の隣で本件ブランコを    押していた
被告Aは,その本人尋問において,本件事故が発生した瞬間を見ていないと供述し
ており,証拠(乙6)によ    れば,被告Aは,平成14年4月ころの被告C
の事情聴取の際にも同様に述べていることが認められる。
     そして,本件事故については,その発生時の様子を目撃した客観的な第
三者といえる者は存在しない。
     さらに,証拠(甲11ないし15,18,乙3の(1)ないし(3),4)及
び弁論の全趣旨によれば,当裁判所が,原告の    右大腿骨骨折の受傷原因に
ついて専門的な知識経験を有する民事調停委員の意見を聴取するため,本件を調停
に付したと    ころ,民事調停委員である医師I(以下「I医師」という。)
は,原告の診療記録等及び骨折部分のレントゲン写真を検    討し,原告の右
大腿骨骨折は,受傷部位に外力が加わったことにより生じたものではなく,股関節
付近に右横付近から外    力が加わったことにより,骨が最も細く弱い箇所が
骨折したものであり,原告は,不自然な体勢で体をひねって転倒し,    転倒
の際,足が体よりも先に地面に着いて,その後体重が加わったことにより上記骨折
が生じたものと推認され,本件ブ    ランコが原告にぶつかったことは確認で
きな
    いとの意見を述べたことが認められる。
     もっとも,証拠(甲11,13ないし15,17)によれば,本件事故
現場で救急活動に当たった救急隊は,その作成    にかかる救急活動記録票
(甲17)の「事故等の概要」欄に「ブランコが大腿部に当たり負傷した」と記載
し,原告が救    急車でG病院に搬入された際に作成された外来申し送り書
(甲15)には,「箱形ブランコに乗っていて(押していて)    強く右大腿
部打ち」との記載が,同病院の診療記録(甲11,13)には,「箱型ブランコで
遊んでいてぶつかった」と    の記載が,同病院の看護記録(甲14)には,
「ブランコを押していてそのブランコが右大腿部を強く打ち」との記載が    
あり,原告又は原告の父であるHその他の者が本件事故直後に上記各記載に沿う説
明をしていた可能性がある。しかし,    仮にこれらの者が上記各記載に沿う
説明を
    していたとしても,その説明が正確であることを裏付ける証拠はなく,か
えってI医師の意見によれば,原告が本件ブラ    ンコに右大腿部を打って骨
折したとの上記各記載は客観的な裏付けを欠くことになるから,いずれも採用する
ことはでき    ない。
     また,I医師の意見を前提としても,本件事故については複数の態様を
想定し得るのであって,原告主張の態様以外の    事故態様を全て排斥するこ
とはできない。そうすると,原告の主張に沿う陳述書(甲第19号証)の供述記載
は客観的な    裏付けを欠くものであり,この点からも容易に採用することは
できない。
     したがって,本件事故の態様が原告主張のとおりのものであったと認め
ることは困難である。
  (3) 以上のとおりであるから,本件事故の発生状況及び態様が原告主張のと
おりのものであったと認めることはできない     し,本件事故の発生状況及
び態様がどのようなものであったかを確定することは困難である。
 第3 被告らの責任について
  1 原告は,本件事故の発生状況及び態様が原告主張のようなものであること
を前提として,被告Aが原告において避けるこ   とができないほど本件ブラン
コを大きく揺らし,被告Dが被告Aに対し上記のように本件ブランコを揺らさない
ように注意   せず,甲事件被告らが,乙事件被告らに対し,本件ブランコを使
用する際には,自己ないし他人が怪我をすることのないよ   う気をつけて使用
するように注意すべき義務を怠ったことによって本件事故が発生したと主張する。
    しかし,本件事故の発生状況及び態様が原告主張のようなものであったと
認めることができないことは前記第2の2判示   のとおりであるから,被告ら
にこれを前提とする原告主張の注意義務やその違反があったということはできな
い。
    また,本件ブランコでの遊戯につき被告らに注意義務違反,すなわち,過
失があったか否かは,本件ブランコの設置状況   及び使用方法,揺動行為の程
度,乙事件被告ら及び原告の年齢等を総合考慮して判断されるべきところ,前記の
とおり,本   件ブランコは児童が日常接する遊具として本件公園に設置されて
いたものであり,被告Aの本件ブランコの使用方法は本件   ブランコの使用方
法の中でも特に危険性のあるものではなく,被告Aの揺動行為も原告主張の程度で
あったとは認め得ない   のであり,また,原告は,本件事故当時,小学校3年
生であり,自ら本件ブランコの危険性を認識することのできる能力を   一応備
えていたと考えられるのであって,このような事実関係の下においては,乙事件被
告らに過失があったということは   できないし,甲事件被告らについても同様
である。
  2 なお,乙事件被告らは,その本人尋問において,いずれも,原告が本件ブ
ランコを被告Aとともに押そうとしたとき,被   告Aが原告に対して「おまえ
はやめておけ。」と告げるなど原告が本件ブランコを押すことを止めさせるような
発言をした   と供述し,証拠(乙6,丙1)によれば,乙事件被告らは,被告
Cないし被告Fの事情聴取に対しても同様の供述をしてい   たことが認められ
る。また,被告Aは,その本人尋問において,本件ブランコが非常に危険であると
思っていたわけではな   いが,軽く思っていたと供述しており,少なくとも,
被告Aは,本件ブランコが原告にとって危険なものであることを認識   し,あ
るいは認識し得たことが窺われる。
    しかし,一般に,遊具については,その性質上,通常有すべき安全性を具
備しているものであっても,何らかの事故発生   の危険は避けられないもので
あることに照らすと,被告Aの前記発言等はこのような抽象的な危険を危惧したも
のにすぎな   いと考えられるのであって,これをもって直ちに,被告Aが本件
事故という具体的な事故の発生を予見し得たということは   できない。
 第4 結論
    よって,原告の本訴両請求は,その余の点について判断するまでもなく理
由がないから,これをいずれも棄却し,訴訟費   用の負担について民事訴訟法
61条を適用して,主文のとおり判決する。
      千葉地方裁判所民事第5部
         裁判長裁判官   丸  山  昌  一    
            裁判官   小  濱  浩  庸    
            裁判官   井  原  千  恵

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
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「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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